

墨田区の木造賃貸アパートで暮らしていた高橋さんと夫の純平さんは、息子さんが2歳の時に「家を建てよう」と決めました。しかし、都内ではなかなかよい土地は見つからず、気に入っても予算に合わず……。近隣県にまで視野を広げてみたところ、思い出したのが埼玉県の宮代町。夫婦ともに好きな建築家が設計した公共施設があり、何度か訪ねたこともあった町で、ピンと来る土地に出会えました。
そこはいわゆる旗竿地で、宮代町の売地としては狭い40坪。通常ならば土地を目一杯活用してできるだけ広い家にするのですが、高橋さんご夫婦は「余白のある空間をつくった方が心にも余裕が出るのでは」と、建築面積が敷地の40%ほどの「小さな家」を建てました。

「自分たちに必要な機能、メンテナンスや維持のことを夫婦で話し合い、いまは家族4人、将来は夫婦2人になっても必要十分なだけの “ちょうどよい家” にしたかったのです」と高橋さん。高橋さんも純平さんも実家はそこそこの広さがある戸建てでしたが、子どもたちが独立したあとは、空いた部屋を持て余していました。その様子を「もったいない」と感じていたのだそうです。
設計は建築デザイナーである高橋さんが担当し、小さくても圧迫感が出ない様々な工夫を。吹き抜けや明り取りの窓を設置し、仕切り壁を最小限にしたため、家の中心である居間は風や光が通り抜ける開放感がある空間になりました。一方でそれぞれ自分の時間を持てるよう、「気配を感じながらも他の家族からは姿が見えない居場所」もあちこちにつくってあります。純平さんは「小さな家はマンネリ化するかと思っていたのですが、居場所がたくさんあり、自由度も高いので飽きません」とのこと。
今後手狭に感じるようになったら「駐車場を借りてキャンピングカーを置き、別室にしてもいいですね」と純平さん。たくさんの本を読みたければ図書館に、遊びたければコミュニティセンターや近くの川に行き「足りないものは外で補えばいい」というのがお2人の考え方。「自分の家だけにとどまらず、町の中に居場所をつくっていくのも暮らしの楽しみの一つ」なのです。「町も我が家」の延長だと考える高橋さんご一家は、自分たちらしい小さな家でとても豊かな日々を過ごしています。




① 木造2階建て・延べ床面積約81平方mの「小さな家」。庭もリビングの一部です。外壁は宮代町の特産品ぶどうをイメージしたワインカラーにしました
② トイレや洗面台は1階だけにして省スペースに
③ 収納は扉ではなく布カーテンで目隠しを。開け閉めが楽で、見た目も柔らかな印象になります
④ 本棚やベンチはビスやノリを使わない組み立て式なので、模様替えも簡単
⑤ 唯一完全に仕切られた8畳の寝室。子どもたちが大きくなったら間仕切りをつけて子ども部屋にする予定です

年代・職業:30代(建築デザイナー、一級建築士)
住居区分:持ち家 居住年数:3年
同居人:夫、子ども2人

miokoさん一家が、家を購入する際に最も重視したのは「いま住んでいる実家から近い場所」ということ。都内では土地の価格は高いものの、お子さんの学校や夫のOさんの通勤を考えると、遠くへ行くことは考えられなかったそうです。「狭い旗竿地を購入して、建坪8坪・3階建ての小さな家を建てる」ことになりました。
新居は建築上の制約もあり、収納スペースを確保できませんでした。そこで最初はたくさんの大型家具を置いてみたのですが、あっという間に物が増え、収まりきらないくらいいっぱいに。圧迫感や地震の時の危険性もあり「これではいけない!」と思ったmiokoさんは、整理収納やインテリアについて学び資格を取ることにしました。

「小さな家で快適に暮らすこと」を目指したmiokoさんは、大型家具を全て処分、背が低くて収納力がある家具に変えました。大量にあった物は「いま使う物・本当に必要な物」だけを厳選し、残りは売ったりリサイクルしたりして徹底的に減量を。
そんなmiokoさんを見て、ご家族も次第に「いまの家のサイズに合った物の持ち方」に慣れてきたのだそうです。「物を捨てることに罪悪感がある人も、売る・譲るなどして、家から出すのだと考えればハードルが下がります。また、買っても置く場所がないと実感できれば、買い物に慎重になり余計な物を買わなくなります」
物には優先順位をつけて「使う場所」にまとめます。できるだけケースなどに収納しますが、出しておくなら可愛いアイテムでまとめれば、ごちゃつき感はありません。また、ムダな動きでストレスにならないよう、家具や物は動線を考えて配置してあります。
同時に狭さを感じさせない部屋づくりもスタート。例えば、暗い色だった床を明るめのタイルに貼り変えたり、色数を減らしナチュラル+無彩色で統一したり。床が見える足つきの家具を選ぶのも、部屋を広く見せるコツなのだそうです。
「小さな家は、掃除がしやすく、光熱費も安上がり。家族との距離感もちょうどよく、そして何よりも物の持ち方を見直すことができ、狭い空間を住みこなすという楽しみがあります」というmiokoさん。自分たちらしい暮らしを楽しみながら、「小さな家」のもっと快適な住まい方を模索中です。




① トイレ・洗面所・バスルームなどは1階に集約
② 服好きなOさんもこのスペースに収まる数に服を減らしました
③ 玄関脇にある唯一のつくり付けの収納には家族のお出かけグッズをまとめています
④ 娘さんたちのバレエの練習用に置いた大型の鏡は、部屋を広く見せる効果があります
⑤ 鉢植えや花瓶に生けたグリーンがニュートラルカラーの室内に彩りを添えます
⑥ 自然に家族が集まるリビングは、物を出しっぱなしにせずにスッキリと
⑦ 3階は2人の娘さんの部屋。それぞれの部屋の片付けは本人に任せています

年代・職業:40代(整理収納アドバイザー1級、ルームスタイリスト1級)
住居区分:持ち家 居住年数:7年半
同居人:夫、娘2人、猫

- 編集長
- 久保良子
- エディター
- 清水彩純、吉川綾乃
- コントリビューティング・エディター
- 木下のぞみ、安楽美樹(ブレインカフェ)
小杉環太(エフェクト) - アートディレクター
- 深田さおり(KLEUREN)
- 制作・コーディング
- 東良昭、大迫礼乃(ヒストリアル)
- 編集協力
- 新田周平(LIFULL)
- 発行人
- 井上秀嗣
- 発行元
- 株式会社ブランジスタメディア
東京都渋谷区桜丘町20番4号