

松本さんご夫妻が以前住んでいたのは、横浜の分譲マンション。住人同士の付き合いはほとんどなく、「これでいいのかな……」と疑問を感じていたそうです。ちょうどその頃、鎌倉では「人とのつながりがある暮らし」が見直されはじめており、晴子さんは頻繁に鎌倉へ通うように。貴志さんを説得して、鎌倉のしっとりと落ち着いたエリアへの移住を決めました。
「せっかく家を建てるなら、猫を飼いたい!」というのが晴子さんの希望。貴志さんは犬派ですが、仕事が忙しく毎日の犬の散歩は不可能です。そのため、新たな家づくりの大前提は「猫と暮らすこと」になりました。そして一級建築士であるお2人は「自分たちが好きな落ち着いたトーン」「猫にとって楽しい」住まいを自らデザインし、2018年に新居が完成しました。
鎌倉住まいをはじめた翌年の春、知人の家の床下で生まれて保護された2匹の子猫が、お2人のもとにやってきました。弟思いで甘えん坊のキジトラはとらじちゃん、怖がりで王子様気質のキジ白ハチワレをまるおちゃんと名付け、ついに猫と一緒の生活が始まったのです。
いざ猫と暮らしてみると、設計の段階では想定していなかった気づきがあり、その都度変更したり付け加えたりすることも。「まるおは脱走癖があるので、掃き出し窓はロックのかかる網戸にしました」と貴志さん。「鉢植えやドライフラワーをたくさん置いていましたが、2匹が来てからは危険なので猫草以外は全部吊るしています」と晴子さん。2階の寝室とゲストルームは壁の下部にあらかじめ「猫窓」を設けて、梁の上などに出られるようにしてありましたが、さらに梁からリビングの壁に沿って板を渡し、家の中をぐるりと駆け回れるようにもしました。一方、どの部屋にも猫が自由に出入りできるため、ウォークインクローゼットの中に畳んでしまっておいた服が毛だらけに……ということも。「猫が入れない部屋もつくっておけばよかったかな、と思っています」
「猫はご飯や散歩の時以外は呼んでも来ません。でも、従順ではないところが魅力です」と、すっかり猫も好きになった貴志さん。晴子さんは「猫がいると、家の中で私以外の誰か(=猫)と夫が会話する声が聞こえてきて、生活が活性化します。また、ものを出しっぱなしにしなくなったり、世話をするために生活が規則正しくなったり。飲み歩きが好きな夫婦ですが、すっかり帰宅時間が早くなりました」とのこと。
お2人にとって猫は癒しになるだけではなく、生活に活気とメリハリを生む存在になってくれています。




① 猫の食器、爪研ぎベッド、猫草などは玄関土間に。家のメンテナンス用に貴志さんがつくったハシゴも猫用になりました
② 猫トイレは人が食事をする場所とは離れた場所に置き、空気清浄機も設置
③ 猫の水飲みの器は洗面台に。ひっくり返してこぼしても掃除が楽です
④ 外が見える洗面所の窓は2匹のお気に入り
⑤ お散歩用ハーネス置き場。猫たちは時折リードをつけて散歩しており、ご近所さんとも顔馴染み
⑥ 人形作家・波津あゆ子さんにオーダーでつくってもらったとらじ&まるおのぬいぐるみ
⑦ 2階には本が大好きな晴子さんの大量の蔵書を納めるブックシェルフ

年代・職業:50代/40代(ともに会社員・一級建築士)
住居区分:一戸建て持ち家 居住年数:8年
同居人:夫婦、猫2匹
Instagram(@toraji_to_maruo)で。動画もご覧いただけます。

「猫はその存在すべてが魅力。とくに柔らかく変幻自在なフォルムがたまりません」というTammyさんは、お母様が猫好きだったこともあり「物心ついた頃からいつも猫と一緒」だったそうです。しかし、都内の賃貸物件は猫の飼育不可というところも多く、大人になって実家を出てからは、思うように猫と暮らすことが難しくなっていきました。
そこで、「猫を中心にした暮らし」ができ、さらに夫のTさんの趣味である自転車とTammyさんの仕事であるドッグウェアづくりのためのスペースが確保できる家を探すことに。2019年に多摩エリアで最適な中古マンションを見つけ、1年近くかけてフルリノベーション。猫と人とが一緒に心地よく暮らせる理想の家づくりを行ったのです。
「猫が壁で爪を研ぐとクロスが痛むので、全て塗装にしました。傷がついたところだけ塗り直せばよく、汚れても水拭きできます。床は猫が滑らないよう無塗装の無垢材にして蜜蝋ワックスで仕上げています」といったように、家づくりで一番に考えたのは猫のこと。猫たちが自由に走り回れるようにリビングは広く、デザイナーさんのアイデアで寝室とリビングを仕切る壁は上部を開けてキャットウォークに。寝室の壁にはTammyさんが自分でキャットステップを設置し、上下運動ができるようにしました。猫が外へ飛び出してしまわないように、玄関ホールとリビングの境には扉を設置するなど、安全性にも十分気を配っています。
また、キャットホイールや自動給餌器・自動給水器・全自動トイレなど、人も猫も快適になるアイテムを設置。ソファは猫が爪とぎをすることを見越して、あえて中古を購入。グリーンは猫にとって安全な種類や猫がかじらないものは床置きで、危ない植物は天井から吊り下げています。こうして猫も人もストレスなく、のびのびと暮らせる家ができました。
Tammyさんに猫と暮らすコツを伺うと、「猫もそれぞれ個性が違うので、合う合わないがあります。保護猫団体の譲渡ではトライアル期間を設けていることも多いので、気にいった猫がいたらまずはお試ししてみることをおすすめします。また、かわいい子猫の時だけではなく、歳を取っても一緒に暮すことを考えてお迎えすればよいと思います」とのことです。
猫はお世話が大変では? と思いますが、「猫が好きなら世話は全く苦になりませんよ。長期の旅行には行けませんが、今はそれよりも猫と一緒にいられることの方が楽しいです」と笑顔で答えてくれました。




① 猫は季節や気分で寝る場所を変えるので、キャットベッドはあちこちに設置
② 紐状のおもちゃは誤飲の恐れがあるため、扉が閉められるショーケースの中に
③ ペットカメラ。1泊で出かけた時など猫の様子を確認できて便利
④ 最も快適な窓際に、トイレ、ホイールなどを設置
⑤ 来たばかりのベルンちゃん、ムックちゃんのためのケージ
⑥ モナちゃんとチビこんぶちゃんはあまり仲がよくないため、自動給餌器は離れた場所に置いています
⑦ Tammyさんのソーイングルーム
⑧ Tさんのバイクルーム

年代・職業:50代(ドッグウェアの制作)
住居区分:分譲マンション 居住年数:5年
同居人:夫、猫4匹
- 編集長
- 久保良子
- エディター
- 清水彩純、吉川綾乃
- コントリビューティング・エディター
- 木下のぞみ、安楽美樹(ブレインカフェ)
小杉環太(エフェクト) - アートディレクター
- 深田さおり(KLEUREN)
- 制作・コーディング
- 東良昭 小島隆(ヒストリアル)
- 編集協力
- 新田周平(LIFULL)
- 発行人
- 井上秀嗣

- 発行元
- 株式会社ブランジスタメディア
東東京都渋谷区桜丘町20番4号 ネクシィーズスクエアビル


