公開日: 2024.03.14 最終更新日: 2024.03.14

【ご当地お菓子】おいしくて、やさしくて、みんながうれしいおやつ。石川・金沢の「ハードビスケット」

【ご当地お菓子】おいしくて、やさしくて、みんながうれしいおやつ。石川・金沢の「ハードビスケット」

石川・金沢の「ハードビスケット」

── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。

お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第19回は、石川県の県庁所在地である金沢市の「ハードビスケット」を紹介します。

ライター:吉田友希

ライター:吉田友希

01| シンプルでありながら風味豊かなビスケット

「CHANCE」と描かれたこちらのビスケットは、「ハードビスケット」の名前で親しまれているビスケットです。表面の繊細な模様が、何とも美しいです。

ハードビスケットは、1978年に発売され、40年以上にわたって愛されるロングセラー商品。シンプルだけど、小麦の風味をしっかりと感じられる、飽きのこない味わいです。サクサクとした歯応えがあり、同時に香ばしさを感じます。さまざまなこだわりが込められた、やさしい味のビスケットは、子どもから大人までが一緒に楽しめるお菓子です。

「CHANCE」の模様は、発売当初のなごりだそう。広報ご担当の方にお話を伺うと、こう教えてくださいました。

「現在の商品名である『ハードビスケット』は、本来はビスケットの種類の名前です。当時は、『チャンス』と表記していましたが、『ハードビスケット』と注文するお客様が多く、会社としても呼び名をお客様に合わせることにしました。

しかし、焼き型の『CHANCE』のデザインはそのまま残り、現在もビスケット生地には『CHANCE』の文字が刻まれています」。

謎がとけてすっきりしました。お客様のことを想っての、やさしい改名というわけです。

ハードビスケットを割ってみた様子。名前の通り程よい硬さがあり、満足感が高い ハードビスケットを割ってみた様子。名前の通り程よい硬さがあり、満足感が高い

02| 金沢のビスケットメーカー「hokka」が手掛けている

北陸製菓の工場の外観
画像提供:北陸製菓株式会社 北陸製菓の工場の外観
画像提供:北陸製菓株式会社

ハードビスケットは、石川・金沢にあるhokka(ホッカ)こと、北陸製菓が製造しています。hokkaの設立は1918年(大正7年)。いまから100年以上前に「日本あられ株式会社」として、石川県産のもち米を使ってあられづくりをはじめたことから歴史がスタートしました。

社名を北陸製菓に変更し、ビスケットの製造を開始したのは、少し後の1925年のことです。

「戦時中に、軍の乾パン製造の指定を受けたことをきっかけに、乳幼児食ビスケットや配給パン、学童パンなどの生産を開始しました。以来、米菓だけでなく、ビスケットの製造に力を入れることとなりました」。

hokkaはたくさんの種類のビスケットを販売している
画像提供:北陸製菓株式会社 hokkaはたくさんの種類のビスケットを販売している
画像提供:北陸製菓株式会社

hokkaが目指すのは、家族みんなで食べたいお菓子づくり。それは、お菓子のラインナップを見てみると何となく感じとることができます。2018年には100周年を迎えていますが、創業者の想いをずっと大切にしているのだそうです。

『子どもからお年寄りまでに親しまれるような、日本の家庭のためのお菓子づくりを目指す』という想いが原点にあります。

現在は、北陸から世界に向けて、どんな時代であっても流行に左右されないものづくりを基本としています。アレルゲンや添加物などの余計なものは極力入れない飽きのこないシンプルなおいしさを大切にしています」。

03| “手軽にはつくれない”こだわりの製法

hokkaのビスケットは、原材料から焼き加減に至るまで、とにかく手間ひまがかけられています。ハードビスケットは、シンプルな原料にこだわってつくられています。小麦本来のおいしさを引き出すために、絶妙な配合のレシピが採用されているのです。

原料を傷めないように、ゆっくりと長時間練り上げるのもポイント
画像提供:北陸製菓株式会社 原料を傷めないように、ゆっくりと長時間練り上げるのもポイント
画像提供:北陸製菓株式会社

また、ハードビスケットの焼き色は、一般的なビスケットより少し濃いめ。55mにおよぶ長いオーブンを通る過程で、こんがりとした焼き色に仕上がるのだそうです。じっくりしっかり焼くことで、口溶けが増し香ばしさもアップするというわけです。

型は、1978年発売当時のものを使用
画像提供:北陸製菓株式会社 型は、1978年発売当時のものを使用
画像提供:北陸製菓株式会社

「125gハードビスケット」。なかのお菓子が見える透明のパッケージを採用。安心と一緒にお菓子を届けている 「125gハードビスケット」。なかのお菓子が見える透明のパッケージを採用。安心と一緒にお菓子を届けている

04| hokkaにとって、石川はお菓子をつくるのに絶好の場所

石川県は、霊峰「白山」や日本海など豊かな自然に恵まれている
画像提供:北陸製菓株式会社 石川県は、霊峰「白山」や日本海など豊かな自然に恵まれている
画像提供:北陸製菓株式会社

公式ホームページのなかに、「石川県はお菓子づくりにこだわる上で絶好のステージ」という表現がありました。素敵です!

もっと詳しく知りたくて話を伺うと、石川や金沢について、こう話してくださいました。

「hokkaでは、金沢・石川・北陸ならではの素材や原料を生かしたお菓子づくりに積極的に取り組んでいます。海にも山にも近い金沢は、新鮮で品質の高い食材が豊富に揃っていることから“食の宝庫”ともいわれるほど。豊かな食文化があり、たくさんの新しいアイデアをもらうことができています。

また、歴史と風情あふれる金沢には、どこか懐かしい雰囲気があるんです。その雰囲気が、hokkaの“いまも昔も変わらず、安心とおいしさのために手間を惜しまない工夫をしたお菓子づくり”の姿勢と通じるものがあると思います」。

北陸のソウルフード、揚げあられ「ビーバー」をつくっているのもhokka
画像提供:北陸製菓株式会社 北陸のソウルフード、揚げあられ「ビーバー」をつくっているのもhokka
画像提供:北陸製菓株式会社

この原稿は、「どこか懐かしい」気持ちを抱えた状態で書きました。それもそのはず、筆者がかれこれ8年ほど(4度の引っ越しを経てもなお)愛用しているペン立ては、よくよく見ると、hokkaの「ムーミンママのシナモンブレッド」を食べ終えた後の缶でした。筆者の日常には、いつもhokkaが寄り添ってくれていたというわけです。

石川・金沢の「ハードビスケット」、ごちそうさまでした。


北陸製菓(hokka)
所在地:石川県金沢市押野2-290-1
TEL:076-243-1000
https://hokka.jp/onlineshop/
※直営店「金沢彩匠」のほか、全国の小売店やオンラインショップでも購入可能。

吉田友希

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