December
2024
Vol.59

移住してあたたかな暮らしをおくる2名のお部屋を紹介。八ヶ岳の高原に佇む家と湘南の海に近い家。タイプは違えどあたたかく暮らしています

SCROLL
Photo: Hirotomo Onodera(room)、Madoka Sano(front page)、text: Nahoko Sakai

01 美しくも寒い八ヶ岳の冬を心地よく過ごす高原の家

実例01

20歳の時に原村の知人の別荘を訪ねた友枝さんは、針葉樹の深い森と薪ストーブを囲み酒杯を傾ける暮らしに感動し「いつか自分も」と考えるようになりました。29歳でグラフィックデザイナーとして独立すると、八ヶ岳山麓に別荘を建て二拠点生活を開始。そしていずれは完全移住をと考えていたところ「1999年に妻が突然、住民票を移したから! と言いまして。気がついたら原村村民になっていました」と笑います。その1か月後にご家族が、ご自身は東日本大震災(2011年)を機に念願の完全移住を果たしました。

実例01
せっかく移住するなら、「おしゃれで快適」でなければ。寒さに震える家では楽しくないでしょう?

「デザインは人の暮らしをよくするもの。別荘デザインはその究極」と考える友枝さんは、これまでのデザインや店舗プロデュースの経験を生かし、原村で「八ヶ岳移住のコンサルタント」を生業に。お住いの別荘地では130区画をサポートし、そのオーナーによる地域コミュニティも誕生しています。

「移住するなら、その土地の各季節を2、3泊して体験し、一番厳しい季節のことを考えて」という友枝さん。お住いのエリアは標高1,500mで春~秋はエアコン不要の快適さですが、11~3月は最低気温がマイナス15度になることも。そのため「冬をどうするか」が重要であり、家をデザインする際には高気密高断熱・床下エアコン・太陽の光を取り入れているそうです。「屋内では薪ストーブだけで半袖で過ごせ、冬支度は薪を計画的に準備するくらいでほかは何もいりません。美しい冬景色を見下ろしながら飲むビールは最高ですよ」。

いま、友枝さんは「なぜもっと早く移住しなかったのか?」後悔しているそうです。「最高のロケーションで過ごす時間はなるべく長いほうがいい。移住を考えているならば、できるだけ若いうちに、いま、動くことをおすすめします」

実例01
窓から八ヶ岳の稜線越しに見る南アルプスの山々。木々が葉を落とし静寂な白銀の世界となる冬が、実は1 年の中で一番美しい季節だそうです
実例01
母屋の近く、傾斜25 度の斜面に新たに建てた仕事場兼客間の「天空のAtelier」。日々、月の満ち欠けや二十四節気七十二候の移ろいを感じます

もっと部屋のすみずみまで見る

実例01
南アルプスや木曽の山々を一望できる天空のテラス。沈みゆく夕日や満点の星空を眺めて飲むお酒は最高です
実例01
2階は隠れ家のようなプライベートスペース。ご自身で制作したオブジェや絵画、趣味で集めたグッズが満載!
実例01
職業柄、大量の蔵書が移住前の悩みのタネ。こちらでは吹き抜けの壁1面を全面書棚に。図書館のようです
実例01
2階の小さな窓から見える景色も、まるで1枚の絵画のよう。夜は真っ暗になるので照明の配置にも工夫が
実例01
キッチンは角が丸い真っ赤な冷蔵庫、濃紺のポットやフライパンがアクセントに。観葉植物の緑色が映えます

間取り&部屋主プロフィール

「天空のAtelier」は傾斜地に建つため、奥行3.6m、横幅13.65mm の細長いデザインになっています。

Floor plan
実例01間取り

① 大きな窓の外には雄大な山の風景。奥行きのなさを感じさせません

② ダイニングには横に長いテーブルを設置。移住相談に来た人の接客や、同じ別荘地で友枝さんがデザインした家に住むオーナーさんたちが大勢集まるランチ会・飲み会もこちらで

③ 模型やオブジェ制作などの、仕事用スペース

④ プライベートな趣味のスペース

⑤ 書棚

Profile
部屋主プロフィール
部屋主プロフィール
友枝康二郎さん[長野県諏訪郡原村]
年代:60代(モリッシュ カントリー代表、ライフスタイルデザイナー)
住居区分:持ち家 居住年数:37年(「天空のAtelier」7年) 同居人:妻、犬2頭
37年の経験を生かし、八ヶ岳移住相談から土地探し・別荘建築など幅広く
サポート。https://blog.goo.ne.jp/tomodesmo で情報を発信しています

02 冬の休日はあたたかな我が家と湘南の海・山でのんびり過ごす

実例02

東京都中野区で賃貸マンション暮らしだった奥谷さんご夫妻。「そろそろ家の購入を」と思い探してみると、都内の便利な場所は価格が高く、安ければ都心から遠く「理想の暮らし」は実現できません。そんな折、りんさんは子どもの頃に住んでいた沖縄の海・山を思い出し「子どもが生まれたら自然豊かな環境で育てたい」と湘南エリアでの家探しを提案。将之さんも賛成し、あらためて2人で移住の優先順位をすり合わせて探し直した結果、葉山の海岸から徒歩10分・山にも近い場所にある物件に出会いました。

実例02
移住したら暮らし方が変わった。休日はゆったり、のんびり、近所の海や山を散歩するだけでいい

移住によって、家族の暮らし方は大きく変わったそうです。以前は「休日は映画を見よう、買い物をしよう、と繁華街に出かけていました。でも、ここでは何もせず近くの海岸を散歩するだけで十分なんです」と、りんさん。今年5歳になる息子さんも、海・山でのびのびと遊んでいます。「ショッピングモールがなくても不便は感じませんし、地元のお店は“子連れウェルカム”で、助かっています」。将之さんは「2人とも都内勤めなので通勤時間は長くなりましたが、電車では座れるので仕事や自分時間にあてています」とのこと。徐々に地域とのつながりが広がるのも楽しく、地元の友人も増えました。今年はそんな友人の1人に誘われ、はじめて御神輿を担いだそうです。

葉山町の海辺は冬になると風が冷たく感じますが、気温は都内と大差ありません。全館空調の家の中は暖房器具やカーペットなしでもあたたかく過ごせ、冬の休日は家でのんびりしたり、夏よりも水が澄んできれいな海でサップをしたり、ただ散歩をしたり、絶景の夕日や星空を眺めたり、裏の山に登ったり、庭で焚き火をしたり……。かつて探し求めた理想の暮らしが形になっています。

実例02
移住してからサップを始めました。ボードにお子さんと必要なものを乗せたらキャリーで海まで引っ張って。冬の朝サップも格別だそうです
実例02
冬は庭に出て、焚き火やバーベキューをすることも。特別な「おでかけ」でなくても、家族や地域の友人たちと楽しむ自宅時間が心地よいのです

もっと部屋のすみずみまで見る

実例02
家の中には冬でも青々とした植物が。将之さんが12年前に買った小さなベンジャミンも大きく育ちました
実例02
建物はスケルトンで、内装は自由に決められます。2階のトイレは自分たちで壁を2色に塗り分けました
実例02
ビニールクロスやクッションフロアは使わず、壁は漆喰、床や階段は天然木。自然素材にこだわっています
実例02
こちらの物件は同敷地内の4軒が庭をシェアし、ゆるやかにつながるスタイル。リビング~庭もシームレス
実例02
間仕切りと目隠しのために、クローゼットを部屋の中央に設置。
模様替えの際には取り外すことも可能です

間取り&部屋主プロフィール

Floor plan
実例02間取り

① 土間のようなイメージの玄関。室内との段差をつけていないため、出入りがスムーズです

② 断熱効果の高いサッシで、冬の窓辺でも冷えを感じません。障子風の目隠し扉が内蔵されています

③ もともとリビングだった場所は、おもちゃを置いたりプロジェクターで動画を見たりする、お子さんのスペースに

④ 大きな窓から光が入り、冬でも心地よい暖かさの家の中では、植物もどんどん成長します

⑤ 部屋の真ん中に設置したクローゼット

Profile
部屋主プロフィール
部屋主プロフィール
奥谷将之さん・りんさん[神奈川県三浦郡葉山町]
年代:40代・30代(会社員)
住居区分:持ち家 居住年数:5年 同居人:夫、妻、息子
飾らない親子3人の日々と、葉山暮らしの様子をInstagram(@m.okutani)にアップしています。