February
2024
Vol.54

おいしいパン屋さんがある街 三鷹

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新生活の準備がそろそろ始まるこの季節。あたらしい生活を始めるなら、朝のひとときを楽しくスタートさせてくれる、パン屋さんが多い街で過ごしてみませんか? 今回は、魅力的なパン屋さんが多い街として、三鷹(東京)、総社(岡山)、八幡浜(愛媛)の3つの街の魅力をご紹介します。

text:Ikumi Ueno(effect) photo:Eizaburo Sogo

  • 三鷹(東京都)
  • 総社(岡山県)
  • 八幡浜(愛媛県)
※休業日や営業時間については、各公式サイト等でご確認ください。

三鷹(東京都)

JR三鷹駅南口から井の頭恩賜公園手前まで続く玉川上水沿いの遊歩道、風の散歩道。

三鷹ってどんな街?

東京の多摩地域東部に位置する三鷹市。その大きな魅力は、都市機能と自然が隣り合わせる地域だということ。神田川、仙川、野川という3本の一級河川があり、江戸時代には農業も盛んに行われる地域でした。今も豊かな川の流れによって周囲に緑が育まれ、公園や緑地の多い地域でもあります。もっとも有名なのは三鷹市と武蔵野市にまたがり、広大な面積を誇る井の頭公園。ほかにも三鷹市と武蔵野市の市境を流れる玉川上水沿いの遊歩道が「風の散歩道」と呼ばれ、市民の散歩コースとしても親しまれています。また太宰治や武者小路実篤などの文豪が愛した街でもあり、文化的な香りを兼ね備えているという特徴もあります。2001年には三鷹の森ジブリ美術館ができたことでも話題になりました。

三鷹のもうひとつの魅力が、首都圏の「借りて住みたいランキング」の5位に入るほど、暮らしやすい街だということ。新宿までは中央特快を利用すれば13分で到着します。そして三鷹駅を中心に、駅直結の「アトレヴィ三鷹」などの商業施設、駅周辺の商店街やスーパーなどもあるほか、吉祥寺にもほど近く、買い物や飲食にも事欠きません。三鷹には個性ある個人経営の店も多く、近年ではこだわりのパン屋がどんどんと増えており、長い歴史を持つ老舗のパン屋とともに注目を集めています。三鷹に暮らせば、ゆったりと穏やかな時間を過ごすことができそうです。

三鷹
駅直結の「アトレヴィ三鷹」も併設された三鷹駅
街の人
老舗パン屋をさらに
パワーアップさせた3代目

トーホーベーカリー 代表松井成和さん

創業73年を迎える三鷹の老舗パン屋、「トーホーベーカリー」。店内には次々と焼き立てのパンが運ばれ、常時100種類ほどのパンがずらりと並びます。そのこだわりのパンを求めて、朝から晩までお客さんが絶えない人気店です。そんなトーホーベーカリーの3代目として店を切り盛りするのが、松井成和さん。生まれも育ちも三鷹という松井さんに、パンのこだわり、そして三鷹という街の魅力を伺います。
トーホーベーカリー 代表  松井成和さん
トーホーベーカリー
平日でも多くの人が訪れ、パンが次々と売れていくトーホーベーカリー
自然も暮らしやすさもある。
派手な街にはない、
のんびりした空気がいいんじゃないかな。

低迷を機に、ヒントを求めて店を飛び出す

今では毎日のようにたくさんのお客さまが来てくださるこのお店ですが、私が別のパン屋で修行を終えてこの店に入った30年ほど前は、お店が少しピンチでした。私が戻ってきた当初は、別のお店でレシピを覚えてきた新しいパンを売り出し、お客さまも多く訪れてくれたのですが、それが長く続かず。何がだめなのか、ヒントを求めて店の外へ飛び出し、ほかのパン屋さんと情報交換をするようになりました。それまで、ほかのお店とレシピを交換しあうことなど考えられませんでしたが、このとき勇気を出したおかげでパンのつくり方だけでなく、並べ方、売り方まで新しい視野を得ることができました。

厳選した素材と徹底した焼き方

パンのつくり方でのこだわりは多岐にわたるのですが、15年くらい前からほとんどのパンに天然酵母を使用しています。また国内産小麦粉をブレンドしたり、北海道産バターを使ったりと素材も厳選。焼き方にも工夫をしており、口にしたときにみずみずしさがあって、次の日に食べてもおいしくなるように焼き上げています。店内には常に100種類ほどのパンが並んでいますが、そのすべてのパンをみなさんに喜んで食べていただけるように、研究を重ねてきました。時間はかかりましたが、おかげさまで街の人に愛されるパン屋になることができたと思います。

トーホーベーカリー 代表 松井成和さん

派手さがないからこそ暮らしやすい街

三鷹は暮らしやすさも自然もある、とてもいい街だと思っています。とくに緑や公園が多いのが魅力ではないでしょうか。井の頭公園というと吉祥寺のイメージが強いかもしれませんが、一部はれっきとした三鷹ですしね(笑)。そして買い物にも困ることがありません。吉祥寺と比べると派手さはないかもしれませんが、そういう街にはない、のんびりした空気がいいんじゃないですかね。最近、私が個人的にうれしいと感じているのは、三鷹におしゃれなパン屋さんが増えたことです。お互いにいい刺激を受けながら、地域の人がパンのある生活を楽しんでくれるといいなと思っています。

おすすめスポット

トーホーベーカリーの初代である私の祖父と、近隣の丸善精工さん、田島建材さんの先々代の社長が協力し合って昭和の初期に作った神社です。子どものころはよく遊んだ思い出の場所でした。今は役員を務めており、毎年行われる地域のお祭りのときなどは、みなさんと関われる大事な場所となっています。お祭りのあとは地域の方が100人くらい社務所に集まって大宴会が行われる、地域に愛される神社です。

榛名神社
トーホーベーカリーの裏手にある、榛名神社
榛名神社:三鷹市下連雀1-9-7
スポット
こだわりのパン屋が揃う

暮らしのスポット

パン屋さんが年々増えているという三鷹。三鷹を代表するとっておきのお店をご紹介します。
こだわりのパン屋が揃う
SPOT01
種類豊富な焼きたてパンが魅力

トーホーベーカリー

トーホーベーカリー
トーホーベーカリー
トーホーベーカリー
1951年に三鷹で創業。その特徴はこだわりのパンが常時100種類ほど店内に並ぶこと。どんな時間に来ても焼きたてのパンが食べられるとあって、駅から少し離れた距離にあっても、常にパンを求める人でにぎわう。人気のパンは、GOLD塩バターロール、自家製サクサクカレーパン、明太フランスの3種。名物の塩パンには、うまみとマイルドさが特徴のフランス産「ゲランドの塩」を使うなど、どのパンも素材や製法を研究し尽くしてつくられている。
東京都三鷹市下連雀1-9-19
トーホーベーカリー
SPOT02
伝統も新しさも大切に。創業100年超えの老舗

三鷹丸十ベーカリー

三鷹丸十ベーカリー
三鷹丸十ベーカリー
三鷹丸十ベーカリー
大正8年に港区周辺に創業し、東京大空襲を機に現在の地に移転した老舗。パンの製法自体は創業から100年を超えても変わっておらず、昔ながらのパンからクロックムッシュなどの新しいパンまで、新旧織り交ぜたラインナップが魅力。現在は4代目がお店を守り、天然酵母を使うこと、武蔵野うどなど地のものを使うことにもこだわる。この日のラインナップから教えてもらったおすすめのパンは、あんバター、とりの甘酢から揚げ、ジャーマンブレッド。
東京都武蔵野市西久保1-18-12
三鷹丸十ベーカリー
SPOT03
高加水パンという感動体験

siro

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siro
南青山のパンの名店「デュヌ・ラルテ」の元シェフが、2023年にオープンさせたパン屋さん。小麦粉に熱湯を加える湯種製法を、新たに独自解釈した製法を確立。一般的なパンと比べて水分を多く加える、高加水の生地をより進化させた。ほかでは味わったことのないようなもちもちとした食感と甘みが特徴のパンは、すでに多くのファンを生んでいる。店主一押しのパンは、ブリオッシュ食パンの「ブール」、麹のうま味が特徴の「お塩」、塩麹を使用した食事パン「siro麹」。
東京都三鷹市下連雀3-37-28
siro

総社(岡山)

備中国分寺の五重塔は重要文化財に指定されている

岡山県の中南部に位置し、周囲を山に囲まれ、市の中央部を高梁川が流れるなど豊かな自然が残る街。総社市には桃太郎のモデルとされる吉備津彦命と鬼神・温羅(うら)の伝説が残っており、温羅の居城とされた「鬼ノ城」跡は日本100名城に選出。さらに水墨画で有名な雪舟が修行したといわれる寺院「宝福寺」もあり、歴史的な観光スポットの多い街です。そんな総社市はパンの消費量が多い岡山県のなかでも、パン屋さんの件数や出荷量が多いため、パンの街として注目を集めてきました。ご当地グルメ「総社ドッグ」を使って街おこしがされるなど、パンと密接な関わりのある街なのです。

そして近年では全国屈指の福祉文化先駆都市をめざしているほか、子育て制度の推進などにも力を入れており、岡山県内でもっとも人口が増加している街でもあります。暮らしやすさの観点から見ると、スーパーやドラッグストアのような店が点在しており、生活必需品の買い物に困ることありません。大型商業施設はありませんが岡山市や倉敷市に隣接しているため両市に30分ほどでアクセスができ、買い物やレジャーを楽しむこともできます。子育て世帯の移住も増えており、今後は街がさらに活気づくことが期待できそうです。

鬼ノ城
日本100名城のひとつ、鬼ノ城
SPOT01
こだわりがつまったフランスパンが人気

ナンバベーカリー

ナンバベーカリー
2016年にオープンしたパン屋。長時間熟成法によって生み出されるパン生地は、小麦粉のうまみや甘みを最大限に引き出しているのが特徴。常時、約80種類ほどのパンが店内に並び、ハード系や食事系のパンの品揃えが多い。看板商品は店主のこだわりがつまったフランスパンで、1日3回の焼き上げのタイミングを待つ人も。スタイリッシュな店構えも人気の理由のひとつで、店内にイートインスペースを備えているため、多くの人でにぎわう。
岡山県総社市駅南2-34-1

八幡浜(愛媛)

西日本有数の水産都市である八幡浜市。タイやヒラメ、アジなど200種類以上の魚が水揚げされる

愛媛県の南西部に位置し、太平洋の黒潮が流れ込む宇和海に面する港町。明治時代は「伊予の大阪」と呼ばれるほど九州や関西地方との海上貿易が盛んでした。現在は1日20往復のフェリー便が行き来する「九州の玄関口」となっています。また、漁場にも恵まれていて四国有数の水揚げを誇る魚市場も。宇和海の特質上、旬の魚が多く年間200種類以上の魚が水揚げされるのです。今もなお、昔の名残として街ではレトロな雰囲気が見られ、そのあちこちにおいしいパン屋さんが点在しています。

八幡浜市は、海や山など自然が身近にあるため食文化が豊かな住みやすい街とされています。特にみかんなど柑橘類の品質や生産量は全国トップクラス。平均よりも温かい気候のため、栽培のみならず人が暮らす環境としても適しています。また、重要文化財の「日土小学校」をはじめとする近代モダニズム建造物や宇和海など、歴史と美しさを感じられる景観も大きな魅力です。中心地の白浜エリアはショッピングセンターや商店街、温泉などがあり生活のしやすさも充分。1番遠い地域からでも車で約20分と交通の便も整っています。豊かな食と自然に囲まれて、のびのびと生活が送れる街です。

八幡浜
歩くとカタカタと木の音が響く木製遊歩道「もっきんろーど」
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塩パン発祥の名店

パン・メゾン八幡浜本店

パン・メゾン八幡浜本店
平成9年創業、八幡浜市の中心部にある塩パン発祥のお店。常に約130種類のパンを販売していて、なかでも人気No.1を誇るのはやはり「塩パン」。暑さで食欲が落ちる夏でもおいしく食べてもらいたいという思いから生まれ、その魅力はサクッ、モチッ、カリッ、の3つの食感が楽しめること。店内はあたたかみのある落ち着いた空間で、イートインスペースがあるため焼きたてのパンをその場で味わえる。また無料でコーヒーの提供を行っているのも嬉しい。
パン・メゾン八幡浜本店
愛媛県八幡浜市北浜1-8-15

街をよく知る“目利き”に聞いてみよう

毎日の朝を彩るパン。
住む街にお気に入りのパン屋さんがあれば、起きるのが楽しくなりそうです。
気になる街があれば、目利きの話をチェックしてください。
File 01

研究所勤務の外国人が多く、
おいしいパン屋さんが育つ街

つくば(茨城)
アジア住販
アジア住販
File 02

お洒落パン屋さんも多数。新旧が
入り混じる街並みが人を魅了する

中目黒(東京)
シルバシティ
シルバシティ
File 03

瀟洒な住宅街という顔を持つ大阪の
ウォール街。おいしいパン屋さんもある

北浜(大阪)
エムスタイル 北浜店
エムスタイル 北浜店