愛猫といっしょに寛ぐ時間に、リビングに飾る猫モチーフの雑貨、ふいにすれ違う路地裏の猫……と、猫を近くに感じる方法はいろいろあるもの。家の近所に猫に関する場所がたくさんあれば、猫の魅力をもっと楽しめますよね。今回は、猫のそばで暮らせる街を見ていきましょう。
photo:Eizaburo Sogo text:Makiko Ogata-
猫に親しめる
スポットが多い猫との楽しい時間を過ごせる猫カフェをはじめ、猫をモチーフにしたグッズやスイーツ、アートなどのモノを通じて猫の魅力を堪能できるスポットがあると、日常のなかでも気軽に猫のかわいさに親しめます。
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猫とばったり会えそうな
場所がある街なかに路地や公園、神社などの猫が好みそうな場所が多いほど、お散歩ついでに猫にばったりと会える可能性が大きくなるでしょう。確実に会えるわけではないからこそ、会えたときの喜びも大きいです。
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人と猫が共生できる
街づくりをしている飼い主がいない猫によるトラブルなどを防ぐために、住民とボランティア、行政が一体となってエサ・トイレ・繁殖などを適切に世話や管理をする「地域猫活動」。人と猫との共生を目指す街なら、生活する上でも安心です。
JR日暮里駅から歩いて 5 分ほどにあり、約 60 店が軒を連ねる「谷中銀座商店街」。地元だけでなく、隣町の人も国内外の観光客もここに来るのを楽しみにしています。そんな「谷中銀座商店街振興組合」理事長で、昭和 9 年から谷中に根ざし旬の貝や川魚が充実する「丸初福島商店」を営む福島正行さんに、谷中に暮らす魅力を伺いました。
谷中は夏目漱石などの文豪が愛した街で、その下町風情が残っている街です。お寺が多く、「谷中霊園」という大きな墓地もあることもあり、自然の豊かさも感じられます。「美しい日本の歴史的風土100選」にも選ばれた街並みは、町会連合と役所が協議しながら、その歴史的風土を残す取り組みをしているのも特徴です。ですから、谷中地区の建物は低いものばかりで、4階以上の高い建物はほとんどないんですよ。また、夜は街全体が本当に静かになるんですが、昼間は道を歩けば人と会って会話ができて、ご近所づきあいがしっかりとできる。そうしたいろいろな面を含めて、魅力ある街ではないかと思っています。
谷中を語る上で重要なキーワードとなるのが「町会」です。谷中に引っ越してきた多くの方は町会に所属していただけるんですね。今の時代は、隣近所と付き合いたくないという方も多いかもしれませんが、谷中の場合は人付き合いがしたくて来られる方が多い印象があります。私が所属する町会の青年部も年々、人が増えていて、今では50人以上に。かなり大きな青年部になりましたね。
町会では、「谷中まつり」に町会で出店したり、餅つき大会や火の用心のイベントを行ったりなど、さまざまな取り組みをしています。みんなで協力していますし、人情味もありますよ。町会に限らず、商店街にいらっしゃる方も私たちとのコミュニケーションを楽しみにされている方が多いので、やっぱり人づきあいを楽しめる方が住んでいる街だと感じます。
上野台と本郷台の谷間に位置することが地名の由来とされる谷中。歴史ある石垣の上にアジサイが咲く「あかじ坂」や、春の桜がきれいな「御殿坂」など、街に坂が数多くある。
谷中はJRも地下鉄の千代田線も使えるのでアクセスがいいですし、谷中銀座商店街を含め商店街が複数ある利便性も人気の理由です。みなさんの谷中のイメージにある猫は、商店街でもたまに見かけることはありますが、地域猫活動によってだいぶ少なくなっていますね。それでも猫は身近な存在ですので、私たちの商店街でも「猫が似合う商店街」をテーマに木彫りの猫を飾るなどの取り組みをしています。
日本を代表する彫刻家・朝倉文夫のアトリエ兼住居だった建物で、彼の作品やコレクションを展示する「朝倉彫塑館」。多いときは猫19匹と暮らすほどの愛猫家で、猫の作品も人気。
猫が少なくなったとはいえ、ゼロになったわけではないので、路地を歩いてみるのも楽しいと思います。「朝倉彫塑館」は多様な作品を見られますが、朝倉先生は猫が好きな方だったので猫の作品もかなり多いですね。谷中は坂も多くてそれぞれに由緒があります。住んでいると日常的に使うのですが、坂巡りもおもしろいのではないでしょうか。また、私たちの商店街も、猫だけにこだわらずに地域の方がどうしたら喜んでくれるかを考えて、街を元気にすることも役割のひとつだと思っています。食べ歩きもできますし、谷中銀座商店街の雰囲気も味わいながら、楽しんでいただけたらうれしいです。 丸初福島商店:東京都台東区谷中3-13-4
谷中銀座商店街に通じる階段で夕焼けの眺めが美しい「夕やけだんだん」や路地裏など、我が物顔で歩く猫や日向ぼっこしている猫に会えるかもしれない場所も多い。
谷中を散策すると、猫雑貨のお店や猫カフェなどの猫のかわいさを感じられる場所を見つけられる。谷中銀座商店街では7体の木彫り猫を探し歩くのも楽しみのひとつ。
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ウッドデッキが目印の同店では、かわいい保護猫たちが寛ぐ姿を眺めながらおいしいイタリアンを堪能できる。猫たちは人懐っこく、撫でたり、おもちゃでいっしょに遊んだりもOK。猫カフェとしてもレストランとしても充実の空間は、保護猫と里親を結ぶ場でもある。 東京都台東区谷中3-15-1バト・ラボワール101
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伝統的なスタイルのものから季節限定のものまで、色も形もさまざまな招き猫がずらり。その大半がオリジナルで、手づくり・手描きならではの表情の微かな違いも愛嬌があってかわいらしい。自宅の猫そっくりの招き猫をつくってくれるオーダーメイドも行う。 東京都台東区谷中5-4-3
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住宅街の一軒家を展示スペースにしたアートギャラリーで、猫をテーマにする作家の個展や企画展を開催。絵画や陶芸、彫刻などの多様なアートを楽しめる。2週間毎に展示が入れ替わり、ひと言で猫と言っても作風もジャンルも幅広いので、何度でも訪れたい。 東京都台東区谷中2-6-24
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全長約170mの通りに鮮魚、青果、惣菜、カフェなど多彩な店舗が並び、買い物も食べ歩きも店主との会話も満足できる。「猫が似合う商店街」がテーマのひとつで、東京藝術大学の学生が制作した7体の木彫り猫がいたり、猫グッズのお店があったりするのも魅力。 東京都台東区谷中3-13-1(事務所所在地)
街の魅力や住み心地、猫とのつながりなどなど、ここで暮らす方々はどう思っているのでしょう? 谷中で聞いてきました!
長く住んでいる方も谷中に魅力を感じて移り住んできた方も、住みやすさを重視されている方ばかりなので、ふんわりとした柔らかなご近所づきあいができています。住民の方がフレンドリーで、はじめから受け入れてくれているのがうれしいです。下町のなかでも落ち着きがあり、本当に住みやすい街ですよ。
お散歩しながらいろいろなお店を発見できるのも、この街の魅力ですね。猫の雑貨のお店もあります! 個人店が多く、店主の個性を感じながら散策できますよ。
住宅街を歩くと、首輪をつけた飼い猫や、日向で寝ている地域猫を見かけますね。谷中を訪れる方も猫を怖がらせないようにされる方が大半なので、猫にとっても安心な街なのかなと感じます。
谷中の2丁目は高級住宅街、3丁目は下町の雰囲気、山の上の5丁目は景観がいい、というように、谷中といっても1~7丁目までのエリアによっても特色が異なります。住みたい場所も見つけやすいかもしれませんね。
街は少しずつ変化していて、最近はカフェが増えていますし、古い建物をリノベーションしたおしゃれなお店もあるので、散策するのは楽しいですね。上野恩賜公園も近く、谷中から少し歩くだけで世界が広がります。
街で見かける猫は減ってきていますが、ときには「ニャーッ」って声を掛けられることがうれしいです。
谷中に生まれ育ったのでこの環境が当たり前と思っていましたが、大人になってから谷中は交通の便がよいということを実感しました。子育てしていても、上野の動物園でも博物館でも自転車で行けるのはいいですよ。
最近は、隣に誰が住んでいるのかもわからないようなご時世ですが、谷中は住民同士で「おはよう」、「おやすみなさい」と挨拶ができる街です。山手線の内側にありながら夜は静かなので、落ち着いた生活もできます。
特別に何かがよいというよりも、この街が好きだからみんなが住み続けているんだと思います。
愛猫と家で寛ぐ時間は愛おしいもの。でも、街中でも猫を見つけられたら、毎日はもっと楽しくなるはず。今回は、猫を身近に感じられる街をピックアップ。気になる街があれば、目利きの話をチェックしてください。目利きならではの情報をたっぷり話してくれるはず。