December
2023
Vol.53
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レトロな喫茶店がある街

寒い冬はレトロな喫茶店に出かけてコーヒーを飲んだり、店主との会話を楽しんだりしながら、あたたかく過ごしませんか? 今回は、レトロな喫茶店が多い街として、神保町(東京)、函館(北海道)、神戸(兵庫)の三つの街の魅力をご紹介します。

text:Ikumi Ueno(effect) photo:Eizaburo Sogo

  • 神保町(東京都)
  • 函館(北海道)
  • 神戸(兵庫県)
※休業日や営業時間については、各公式サイト等でご確認ください。

神保町(東京都)

本の街であり、多くの古書店が軒を連ねる神保町

神保町ってどんな街?

23区のほぼ真ん中、東京都千代田区に位置する神保町。江戸時代は武家屋敷(武士が所有していた邸宅)が建ち並ぶエリアでしたが、その後は世界最大級の本の街として有名になりました。100店以上あるといわれている古書店、小学館や岩波書店などの大手出版社、新刊を販売する一般書店が点在し、本好きが訪れる街です。こんなにもたくさんの古書店が広がったのは、明治初期の頃、神保町周辺に明治法律学校(現・明治大学)、英吉利法律学校(現・中央大学)、日本法律学校(現・日本大学)が次々と建設され、学生街となったから。法律書などの書籍を安く手にいれたいという学生達が集まり、古書店街として発展していきました。そんな神保町は、老舗の喫茶店が数多く残る街でもあります。さぼうる、ラドリオ、カフェ トロワバグなど創業から長い時間を経てもなお、日本各地からファンが集まる人気店もあります。

神保町は東京メトロ半蔵門線、都営三田線、都営新宿線と3路線が通り、東京駅まで約7分と、都内の主要な駅へのアクセスもよい街です。住宅街はそれほど大きくありませんが、大学が多く学生街でもあることから、リーズナブルな価格で楽しめる飲食店やスーパーもあり、暮らしやすさは申し分ありません。本の街、レトロ喫茶の多い街としてだけでなく、カレーの街としても有名なため、飲食店巡りをするだけでも楽しい生活を送ることができそうです。古きよき老舗の多い街は、人々をあたたかく受け入れてくれます。

神保町
3路線が通る神保町駅。駅前には書店のほか、飲食店も多く、平日でもにぎわっている
街の人
名物マスターの亡き後を継ぐ

さぼうる 店長伊藤雅史さん

神保町を代表する店といっても過言ではない、喫茶店さぼうる。創業から68年が経った今でも、行列ができるほどの人気店です。現在店を切り盛りするのが、店長の伊藤雅史さん。17年前にアルバイトとして入社し、まさか自分がお店を継ぐとは思っていなかったという伊藤さんが、なぜ継ぐことになったのでしょうか。そして長年神保町で働いてきた伊藤さんに、この街の魅力を伺います。
さぼうる 店長 伊藤雅史さん
さぼうる
神保町駅から徒歩1分の場所にあるさぼうる。店内にはさまざまな置物があり、混沌としたイメージだが、不思議と心地よい空気が流れる
義務感から継ごうと思ったわけではなく、
ここは自分にとって必要な場所だった。
感謝もあるから辞められないんです。

きっかけはナポリタン。入社してから17年目に

このお店に入ったきっかけは、今からおよそ17年前、大学生時代にアルバイトとして働き始めたことでした。たまたま食べたさぼうる2のナポリタンのおいしさに衝撃を受けて、キッチン志望で応募しましたが、結局ホールでの採用になったんです。少しだけならやってもいいかなくらいの気持ちで入社したら、先輩が辞めてしまって、いつの間にか辞められなくなり(笑)。仕事としてはものすごく忙しくて大変だったけれど、とにかく居心地がよかったんですよね。このお店はお客さんが持ってきてくれたおみやげをマスターが全部置いているから、こんなに混沌とした感じなんですけど、お店としてもまさにそんな感じで。どんな人でも受け入れるから、従業員もお客さんも面白い、個性的な人が多くて、店で過ごす時間は楽しかったです。

この店は自分にとって必要な場所

先代のマスターには子どもも親戚もいなかったし、亡くなったらこの店も閉店せざるを得なくなると思って、店を継ぐことになりました。お店を残さなくてはいけないという義務感から考えたわけではなくて、単純にこの店は僕にとって必要な場所だったからです。最初は飽きたら辞めちゃうかもなんて思いもありましたが、近所に住んでいる人にとっても、店を辞めていったOBにとっても、たくさんの思い出が詰まった場所で。いろいろな人から思い出話を聞く度に辞められないと思うようになりました。それにこのお店やマスターに感謝があったんですよね。妻をはじめ、多くの友人もこの店を通して出会わせてもらったし、今の僕の人間関係の大半がここでつくられてる。今はこの恩を返すような気持ちで、店を続けています。

さぼうる 店長 伊藤雅史さん

下町感があり、つながりも強い街

神保町には大学進学を機に初めて来ましたが、最初の印象はビルが多いという感じ。さぼうるで働くようになり、常連さんやマスターと話すようになってから、いろいろな古いお店があるんだってことが段々分かってきて。休憩時間にそういうお店に行くようになりました。神保町で暮らしたことはないですが、暮らしている方からお話を聞くとみんな楽しそうにしていますよ。下町感のある街なので、仲間がつながっている感じで。先日は4年ぶりに神田祭りが開催されましたが、すごくいいお祭りになったと思います。コロナ禍で開催されなかった間に、うちのマスターも含め重鎮が亡くなってしまったり、コロナ禍で閉じた店があったり。そういったこともあったからこそ、みんないろいろいろな思いを抱えて当日を迎え、一つになることができたのかなと思います。

おすすめスポット

よく通わせてもらっている、小宮山書店さんです。昨年オープンしたギャラリーにもちょくちょく遊びに行かせてもらっています。親子で経営をされているので、悩んだときに相談をさせていただくこともしばしば。人生の先輩として尊敬するお二人です。

小宮山書店
さぼうるから徒歩1分ほどの場所にある、小宮山書店
小宮山書店:
東京都千代田区神田神保町1-7
スポット
コーヒーの香りが心地いい

レトロな喫茶店

古書店街があり、独特の文化が香る神保町には、本をじっくり読みたくなるような魅力的でレトロな喫茶店が点在しています。神保町を代表するレトロな喫茶店をご紹介します。
レトロな喫茶店
SPOT01
神保町の顔

さぼうる

さぼうる
さぼうる
さぼうる
創業68年を迎える神保町名物の喫茶店で、名物はピザトーストとクリームソーダ。ピザトーストは分厚いパンにピーマンやマッシュルームなどの具材とチーズがたっぷり。耳の部分はカリッと、パンの部分はふわっとした食感がたまらない。クリームソーダは7色展開で、天然氷を使用しているため、アイス部分が溶けにくいのが特徴。隣に店を構える「さぼうる2」では、ナポリタンを販売している。
東京都千代田区神田神保町1-11
SPOT02
香り高いコーヒーを楽しむひと時

カフェ トロワバグ

カフェ トロワバグ
カフェ トロワバグ
カフェ トロワバグ
昭和51年開業の喫茶店で、現在は先代の娘である三輪徳子さんが店を守る。5年から10年ほど寝かせたオールドビーンズを、ネルドリップで淹れた「トロワブレンド」は、まろやかな酸味、甘味、苦味が楽しめる極上の一杯。カウンター裏にずらりと並んだアンティークカップを選べるのも楽しい。
東京都千代田区神田神保町1-12-1 富田ビルB1F
SPOT03
ウィンナーコーヒー発祥の店

ラドリオ

ラドリオ
ラドリオ
ラドリオ
昭和24年に創業した老舗喫茶。外観や内観は当時の面影をそのまま残しており、店を訪れた客をノスタルジックな気持ちにさせる。コーヒーの上に生クリームをのせたウィンナーコーヒー発祥の店として有名。このメニューは創業当時の常連客がウィーンに行った際に飲んだコーヒーを再現している。
東京都千代田区神田神保町1-3

函館(北海道)

ビュースポットとしても知られる八幡坂

函館は北海道の南端、渡島半島(おしまはんとう)の南東部に位置し、北海道の中では温暖な気候の街です。
津軽海峡、太平洋、噴火湾と三つの海に囲まれた港町で、江戸時代に鎖国が解かれたあと、いち早く開港した港の一つが函館港でした。西洋文化が入ってきたことにより、元町公園内にある旧函館区公会堂、函館ハリストス正教会など、和洋折衷の様式を取り入れた建物が建ち並ぶようになりました。今でも独特な景観を残している函館には、レトロな喫茶店や古建築を生かした喫茶店も数多くあり、市民の憩いの場として人気です。

函館は建築物だけでなく、観光名所を数多く備えた国際観光都市でもあります。函館山山頂展望台から見える夜景は、日本三大夜景に数えられるほどの美しさ。また、対馬海流と親潮が流れ込んでぶつかりあうことで、豊かな漁場を形成しており、海の幸が豊富なことも魅力の一つです。このように観光地としての印象が強い街ですが、人気が高まるにつれ交通の便も年々よくなってきており、近年は住みやすい街としても注目を集めています。飛行機、船、新幹線と三つの交通機関が通っているため、国内外へのアクセスも抜群。程よい都市機能も整っているため、暮らしやすさも備えた街となっています。

函館の夜景
函館の夜景
SPOT01
大正時代の建物をリノベーション

ひし伊

ひし伊
黒漆喰(くろじっくい)の外壁が目印の喫茶店。大正時代に建築された質蔵を昭和57年にリノベーションして誕生した。十勝産あずきの自家製あんを使った白玉抹茶クリームあんみつのほか、抹茶セット、パフェ、ワッフルやサンドウィッチなど和洋メニューを多く取り揃える。レトロモダンな店内でくつろぎのひとときが楽しめる。
ひし伊
北海道函館市宝来町9-4
SPOT02
旬のフルーツを使ったスイーツが人気

CafeTUTU

CafeTUTU
赤レンガ倉庫群にある昭和初期の倉庫をリノベーションした、ミッドセンチュリーモダンティストのカフェ。自家製スイーツに定評があり観光客だけでなく地域住民にも人気がある。季節ごとに変化するパフェやケーキは、お店のインスタグラム(@tutuhakodate)で確認を。また自家焙煎で酸味が少ない「ブレンド#2」のコーヒーも名物。
CafeTUTU
北海道函館市末広町13-5 金森洋物館隣

神戸(兵庫県)

神戸ポートタワーが映える神戸の街並み

兵庫県の南東部に位置し、大阪湾に面した世界有数の港町。神戸港は函館港と同じく、幕末から貿易港として栄えた日本の玄関口でした。神戸は外国人居留地が設けられ、西洋文化や習慣を積極的に受け入れてきたエリア。ハイセンスな文化が形成され、おしゃれな街としても注目を集めてきました。そんな神戸には趣があるレトロな喫茶店が点在しており、異国情緒溢れる街の風景に溶け込んでいます。

神戸市は、2023年の全国住みたい街ランキングの8位、近畿圏の住みたい街ランキング1位になるなど、常に住みたい街の上位に入っている街でもあります。その理由は、須磨海岸や六甲山など、海と山の自然が身近にあること。中心地の三宮エリアには飲食店やデパートなどが数多くあり、生活しやすい環境が整っていることなどがあげられます。さらに、貿易港として栄えてきた街だけあって、交通の便が整っていることも大きな魅力。自然と都市部のバランスもよく、住みたい街上位に入るのも納得の街です。

異国情緒が漂う神戸旧居留地
異国情緒が漂う神戸旧居留地。休日のショッピングが楽しい
SPOT01
クラシック音楽が流れる

茜屋珈琲店

茜屋珈琲店
昭和41年、日本初の高級珈琲専門店として創業。店内はレコードでクラシック音楽を流し、ゆったりとした雰囲気の中で落ち着いてコーヒーが飲める空間になっている。大倉陶園を中心に、約200客のカップの中から好みのものを選ぶことも可能。都会の真ん中にありながら、外の喧騒はほとんど入ってこない大人の雰囲気が漂う店。
兵庫県神戸市中央区北長狭通1-9-4 コースト岸卯ビル2F
SPOT02
創業60年余、神戸を代表する純喫茶

元町サントス

元町サントス
神戸で高品質なコーヒーを提供してきた萩原珈琲が経営する喫茶店。元町商店街に店を構えて60年を超える。こだわりのコーヒーはもちろん、昔ながらのホットケーキやプリンも看板商品で、どこか懐かしさを感じる味わいが魅力。オリジナルブレンドのコーヒー豆の販売も行っている。
兵庫県神戸市中央区元町通2-3-12

街をよく知る“目利き”に聞いてみよう

温泉やカフェで体をあたためたり、素敵な街並みを散策しながら心を癒したり。
寒さが厳しい冬でも、あたたかく穏やかに過ごせる街を紹介します。
気になる街があれば、目利きの話をチェックしてください。
File 01

夜はライトアップされた
蔵造りの町並みを散策できる街

川越(埼玉)
アースシグナル株式会社
アースシグナル株式会社
File 02

日本最古の「道後温泉本館」
体も心もぽかぽかになれる街

松山(愛媛)
株式会社レントハウスまつやま
株式会社レントハウスまつやま
File 03

おしゃれなカフェが軒を連ね
さまざまな楽しみが集まる街

渋谷(東京)
株式会社ヴィダックス
株式会社ヴィダックス