大自然を満喫できて、都心部にもアクセスが可能な街。そんな二拠点生活が叶う街が、ますます注目を集めるようになりました。そんな街に移り住めば、心が満たされる瞬間がきっと増えるはず。今回は、自然の豊かさも日常も大切にできる街として、奥多摩、宮津、志布志の三つの街の魅力をご紹介します。
text:Ikumi Ueno、Kanta Kosugi(effect) photo:Eizaburo Sogo
東京都北西部に位置し、面積では東京都の市区町村の中でもっとも広い奥多摩町。全域が秩父甲斐国立公園の指定地域に含まれており、その魅力はなんといっても大自然。雲取山や鷹ノ巣山、川苔山などの山々に囲まれているため、ハイキングも登山も手軽に楽しめます。ほかにも氷川渓谷、鳩ノ巣渓谷、御嶽渓谷など、川遊びや川釣りに適したスポットや、ダムによってせき止められてできた人造湖である奥多摩湖や白丸湖、日原鍾乳洞など豊かな自然を感じる場所がたくさん。
近年は総人口の約1割が移住者というデータもでており、移住者が急増している奥多摩。空き家バンクや住宅の購入に対する補助金制度などの移住支援に街をあげて力を入れているほか、保育料無料、高校生まで医療費無料など、子育て支援も充実しています。暮らしやすさの面でいうと、奥多摩の町内にスーパーはありませんが、車で30分ほど走れば隣町である青梅市にアクセス可能で、大型スーパーやドラッグストアなどで買い物ができるため、さほどの不便さは感じないという人が多いようです。また東京駅までは2時間弱と都心部までのアクセスもそれほど悪くないため、二拠点生活をする人も増えています。多少の不便さはあっても、深い自然の中で暮らす奥多摩での生活は多くの人の心をつかんでいるようです。
編集制作プロダクション
株式会社ミゲル曽田夕紀子さん
生きがいを得やすい街。
つながり、貢献するのが人間の本質だと気付いた。
奥多摩に来る前は赤坂に自宅と事務所を構え、一時期は浅草で暮らしていたこともあったのですが、都心のど真ん中での暮らしに息苦しさを感じていました。田舎暮らしに憧れを抱いて移住を検討し始めましたが、当時はリモートワークも一般的ではなく、急に東京を離れて地方に行くのはハードルが高すぎると思い、二拠点生活も視野に。東京西部の地域であれば仕事との両立もできると思い、空き家バンクを使って家探しをした結果、奥多摩でこの家をみつけることができました。最初は事務所を都内に残したまま二拠点生活がスタートし、その後、コロナ禍でリモートワークが浸透すると事務所に行くこともほとんどなくなってしまったので、事務所を解約したんです。今は事務所もこちらに構えています。
都心から奥多摩に引っ越したというと「不便じゃない?」とよく聞かれます。不便さは多少あっても、もう慣れてしまったし、むしろ不便さを求めて移住したところがあるので、ストレスは感じていません。都内で暮らしていたころは便利な生活に流されて、自分の実感や、考えることがどんどんなくなっていて、自分がつるつるになってしまったように感じていたんです。ちょっと大げさかもしれませんが、もっと能動的に生きたい気持ちがあったので、奥多摩に来てからは少しずつ自分の手で暮らしをつくるようにしています。庭に植えてある梅で梅干しを漬けたり、タケノコでメンマをつくったりしてそれを食べる。生活の裏側にあるストーリーを実感できて、本当に少しですが生きる力がついたと思いますし、それは自信にもつながったと思います。
奥多摩の公式フリーペーパー「BLUE+GREEN JOURNAL」の企画・制作をさせてもらったり、奥多摩の街づくり委員の一員として、街づくりにも参加させてもらったりしています。奥多摩での暮らしの魅力を考えたときに、人口密度の高い街と違って、一人ひとりの影響が大きいことがあるのではないかと思っています。たとえば私のように街づくりに携わったり、地域のお祭りでの仕事を担ったりと、1人ひとりの役割が見えやすく、責任感を伴いますし、それが生きがいにもつながっているのではないかと。このつながりが煩わしい人が多いから都市化が進んでいるのだとは思いますが、孤立化していく社会が本当に幸せなのかな? とは思うんです。人間の本質的にはやっぱり人と人がつながりあって、社会に貢献することにあるのではないかと、奥多摩にきてあらためて考えるようになりました。
白丸湖
エメラルドグリーンの水面がとてもきれいで、家族でよく遊びに行くスポットです。SUPを何度か体験したことがあり、今年は子どもにもやらせてあげたいなと思っています。湖畔にしろまるカフェという、毎週火曜日しか営業していない隠れ家的な素敵なカフェがあって、こちらもおすすめです。
暮らしのスポット
Gotta Coffee
VERTERE Taproom
Satologue
京都府の北部に位置する日本海に面した街。豊かな自然環境が特徴で、海岸には日本三景の一つである天橋立や日本海の若狭湾など白砂青松の景勝地が点在しています。山地には丹後半島中央部の世屋高原、大江山や赤石ヶ岳などの山々が連続しており、世界中から多くの観光客が訪れる観光エリアとして人気です。その恵まれた地形もあり農林水産業が有名。とくにミネラルを豊富に含んだ水で育つ米や山の芋、その水が流れ込んだ海で獲れる魚を使った干物などの海産物加工品の生産が盛んです。特産品のなかにはあさりや松葉ガニ、おつまみとして人気の高いオイルサーディンもあり、食の街としての顔も持ち合わせています。
宮津の歴史は古く、人が住み始めたのは約2200年前に天橋立が形成されたことがきっかけ。奈良時代には丹後国府が置かれ政治や経済、文化の中心地として栄え、江戸時代には北海道から大阪までを日本海回りで航海していた北前船が行き来する港町として発展してきました。現在も交通の便がよく、鉄道・バスは4路線を整備。タクシーも各地で運行しています。また京都市内から電車で2時間、車で1時間40分程度と二拠点生活が可能です。日本海に面するため雨が多い気候で、「弁当忘れても傘忘れるな」という昔から伝わる言葉もあるほど。冬には雪が積もることもあり、1年を通して季節の移ろいを感じながら暮らせる、美しい景観がすぐそばにある街です。
天橋立キャンディ
鹿児島県の東部に位置する志布志。2006年に志布志町、有明町、松山町の3町が合併して誕生したため総面積は約290平方kmと広く、南部には志布志湾、北部には起伏の多い山陵を有する豊かな自然がある点が特徴です。その環境を生かし、マリンスポーツが楽しめる海水浴場やキャンプ場、展望台など自然に触れられるスポットが市内に点在。なかにはウミガメを観察できるビーチもあり、休日の楽しみは底をつきません。さらに食の宝庫としても有名で、太平洋に面した地域ではハモとちりめんじゃこの水揚げで知られ、近年ではウナギと岩ガキの養殖などが盛んになっています。また温暖な気候を生かして栽培されているイチゴやメロン、ピーマンなどの農産品も魅力です。
そんな志布志は、国の中核国際港湾である志布志港が整備された港町。南九州地域では重要な役割を担っており、国内外への航路を複数持つほか、市内の交通の便も整っています。志布志駅を中心にJR日南線や路線バスを整備。高速道路やフェリーの運行もあるため、県外旅行を含むマイカー生活を送りやすい環境だと言えます。最近では住宅購入補助や空き家バンクなどの移住支援制度の充実がはかられており、初期投資を抑えて移住を叶えることができます。すでに移住者、Uターン者の増加がみられており、なかには新たなビジネスに取り組む人も。市名に合った“志”の高い人々が拠点にする、今後の盛り上がりが楽しみな街です。
志布志バーガー
平日は仕事に邁進し、週末は自然に囲まれて、
心豊かな毎日を送れる街を紹介します。