
毎日、心穏やかに暮らしたい。誰もがそう願うけれど、災害や犯罪はいつどこで起こるかわかりません。
備えはもちろんのこと、街選びから「安心」をキーワードにしてみませんか?
今回は、災害や犯罪の危険性が低い街として、練馬(東京)、川越(埼玉)、倉敷(岡山)の三つの街をご紹介します。
text:Kanta Kosugi、Ikumi Ueno(effect) photo:Eizaburo Sogo

東京都北西部に位置する練馬。2000年代初頭から練馬駅周辺は「練馬区の中心核」として再開発が推し進められており、大きく向上したのは暮らしやすさ。特に充実した防犯対策が魅力で、商店街や公園などには複数の防犯カメラを設置、駅周辺には警察署や消防署が立地しています。そのため練馬駅がある練馬区の年間犯罪発生数もわずかで治安がよく、通勤・通学も比較的安全。医療施設を含む複合施設やクリニック、調剤薬局も多くあり、子育てにおける心配事が少ないのも魅力です。育児支援ヘルパーや病児保育制度などの子育て支援に街をあげて力も入れており、令和3年から4年連続で待機児童数ゼロを達成しています。
街には全体的に落ち着いた雰囲気が漂っていますが、南口と北口で大きく街並みや施設が異なる練馬。繁華街となっている南口方面にはスーパーやコンビニ、飲食店が多く立ち並んでおり、通勤の行き帰りで買い物や食事ができるのが便利です。北口方面には閑静な住宅街が広がっており、練馬区の花であるつつじを楽しめる平成つつじ公園をはじめ、公園や運動場、学校が点在。緑豊かでのどかな雰囲気が漂っているのが特徴です。南北で都会と自然のバランスがよく、様々なアクティビティも集まるため駅周辺で生活をまかなえます。また交通の便がいいのも魅力で、練馬駅では西武池袋線、西武有楽町線、西武豊島線、そして都営大江戸線の4路線が利用可能。乗り換え不要で池袋まで約10分、新宿まで約18分と都内中心地へのアクセスが良好です。都会の利便性は保ちながら安心・安全の生活を送れる環境が、毎年多くの移住者をよんでいるようです。

エノテカ・アリーチェ
矢立泰介さん



忙しい時に気遣ってくれるやさしい人が多い街
移り住んだ人は街のゆったりした雰囲気に馴染んでいく
練馬に来る前は地元である横浜でイタリア料理店、ワインショップの立ち上げや調理、販売、卸売などに役員として取り組んでいました。働くなかでお客様により近い距離でイタリアの魅力を伝えたいと思うようになり独立。移住先に練馬を選んだのは、お店を開くときに古巣と商圏が被らないようにというのもありますが、何度か訪れてみてのんびりと生活している人が多いと感じたからです。横浜時代は忙しない生活を送っていたので、独立後は店を長く続けるためにも自分のペースで働きたい。かねてより抱いていた理想の働き方と街の雰囲気がマッチしていたので移住を決め、2012年に「エノテカ・アリーチェ」を開業しました。
練馬には思いやりがある人が多いです。移住して今年で13年目になりますが、仕事中のクレームはほとんどありませんし、接客で「気を遣わずにゆっくり作業してください」と言われることもしばしば。練馬には僕と同じように他の土地から移り住んできた人も多いのですが、皆さんの性格が時間とともに穏やかになっていく様を何度も目の当たりにしています。そのような風土も魅力のひとつですが、遊べる場所が近くにある点もいいと思います。たとえば様々なカルチャーと居酒屋が集まる高円寺、中野はバス利用で、体力のある方なら自転車で行ける距離です。コミュニティが多い分、新参者でも友人をつくりやすいので休日も充実した生活を送れます。

練馬は子どもからお年寄りまで幅広い年齢の方が住みやすい街です。駅周辺には商店街や飲食店が並ぶうえに、土地が平坦であるため自転車移動による買い物も楽ちん。学校や一般住宅街が多く、道路幅が広くて安全性が高いので子育てにもぴったりだと思います。また防災性に優れた街づくりが施されていて、よく公共下水道の整備や工事の現場をみかけます。特に印象的なのは街のあちこちに設置された貯水タンク(雨水浸透ますと雨水浸透トレンチ管などの雨水浸透施設のこと)。練馬には石神井川や白子川といった水害リスクのある場所が点在していますが、これまで氾濫や大雨による道路浸水などを経験したことはありません。
バール イタリアーノ ダ パオロ
イタリア産のワインやクラフトビールのほか、フードメニューも豊富に揃えるバールです。お店を営む早川ご夫妻の素敵な人柄もあって、練馬に住む多くのお酒好きから愛されています。飲み放題などのイベントもあり、コミュニティを築きやすいのが魅力です。

藤和シティコープ103
暮らしのスポット


エノテカ・アリーチェ

図鑑カフェ fumikura

LITTLE NEST CAFE

埼玉県の南西部に位置し、県のなかでも人口3位を誇る中核都市、川越。川越市はJR線(埼京線・川越線・八高線)、東部東上線、西武新宿線の3路線が乗り入れているため、池袋、新宿、渋谷など都内の主要な駅まで乗り換えなく1時間程度でたどり着くことができるとあって、ベッドタウンとしても人気です。また大型店から商店街までお店も揃っており、買い物のしやすさも抜群。こういった暮らしやすさが魅力の川越ですが、江戸時代に徳川家と深いかかわりがあったことから蔵造りの街並みを今も残しています。「小江戸・川越」の愛称で親しまれ、多くの観光客が訪れる街でもあるのです。
そんな川越は、平成16年に「川越市防犯のまちづくり基本方針」が策定されたことによって、街をあげて防犯に力を入れています。令和5年の犯罪件数は、取り組みが始まった平成16年の72.6%まで減少。とくに注目を集めているのが、地域で防犯パトロールなどを行う団体や、小学生の登下校の見守り活動を行う地域の人の活動の拠点として、旧交番を利用する「地域自主防犯ステーション」。行政任せにするのではなく、市民も一緒に防災に取り組む姿勢が川越市の特徴です。またほかにも防犯灯の設置や修繕、空き家対策の推進、青色回転灯防犯パトロール車による定期巡回など、さまざまな防犯の取り組みが充実しており、今後益々安心して暮らせる街づくりが加速していきそうです。


クレアモール 川越新富町商店街
(東武東上線、JR川越線の川越駅から北に向かって約1.2kmのエリア)

瀬戸内海に面した、岡山県南部の街。岡山市に次ぐ人口で、都市機能の充実、自然豊かな環境、文化的な街並みが融合し、人気を集めている街です。交通利便性の面からみると、岡山駅までは電車で20分弱、そこから新幹線で主要都市までアクセスが可能。また倉敷駅周辺にはデパートやアウトレットモールなど大型商業エリアが広がっており、買い物に困ることもありません。ほかにも江戸時代に建築されたとされる白壁土蔵など、伝統的な建築物が今なお残されているのも大きな特徴です。美しい街並みを誇る「倉敷美観地区」や鷲羽山などの観光スポットも多く、観光地として人気の街でもあります。
そんな倉敷市は、平成30年7月に起こった西日本豪雨で大きな被害を受けました。その教訓を活かそうと災害対策機能を集約した「防災危機管理センター棟」の建設が進んでおり、2026年4月の完成が予定されています。この建物は震度7クラスの地震にも耐える免震構造となっており、屋上には災害時にも電気が供給できるような設備も。またセンター棟には消防局や水道局も集約され、大規模災害時の連携を強化できる仕組みとなっています。防災・災害に対する意識調査によると岡山県民の意識がかなり高いことが結果にも表れており、過去の災害から立ち上がり、二度と同じ悲劇を起こさないという強い意志が感じられる街です。

