
少ない持ち物でスッキリと暮らすシンプルな生活スタイル。
近頃、持ち物だけではなく、暮らす家も自分サイズに合わせて、「小さな家」を希望する人が増えているそうです。
家に合わせて身の回りを整理すれば、自然と心が落ち着き、心地よい毎日につながります。
今回は小さなお家が多くシンプルライフを始めやすい街として「移住編」で小菅村(山梨)、
「週末移住体験編」で南房総エリア(千葉)の魅力をご紹介します。

山梨県北東部、都内を流れる多摩川の源流部に位置する小菅村。1,000m級の山々に囲まれ、標高は奥多摩湖面の約530mから大菩薩蓮山の約2,000mまでと高低差に富んでいます。総面積の約95%を森林が占めており、森ではミズナラやブナの原生林、イノシシやクマなどの大型ほ乳類や野鳥、花々の観察を楽しむことも。なかでも、小菅村の源流部にある「雄滝」や「白糸の滝」は幻想的な景観で、冬の寒い時期には滝全体が凍る氷瀑を見ることができます。都心から車で約2時間にもかかわらず豊かな自然を堪能できる環境として、毎年多くの観光客やフィールドワークに取り組む学生が訪れている村です。
人口619人(令和6年4月末現在)、高齢化率約45%という課題を抱える小菅村。移住者を呼び込む取り組みとして、役場は移住支援金による移住サポートのほか、児童生徒のいる家族向けに村営住宅の整備も行っていて、子育てしやすい環境になっています。近年では地域おこし協力隊が中心となって「道の駅こすげ」やアスレチック施設の「フォレストアドベンチャー こすげ」などをオープン。特に1日2組限定の一棟貸しの宿「タイニーハウス・こすげ」はミニマルライフを気軽に体験できると人気を得ています。村の課題を自分事として捉える愛村精神を持つ人が多い、魅力的な村です。

小菅つくる座
和田隆男さん



だからこそ昔ながらの文化が残る村
東京で建築家として働いていて、約30年前に仕事の一環で小菅村と出会いました。小菅村は当時、温浴施設を計画している最中で、私が村の特色である自然環境を生かし、木をふんだんに使った建築を提案したところ設計を任されたんです。それ以来、小菅村のあらゆる施設と住宅の設計をおこなう機会が増え、私の仕事もほとんどが木造建築へとシフト。そして、定年退職が近づいてきたころに、家づくりの専門家として地域貢献に取り組みたいという気持ちが湧いてきました。地域おこし協力隊の制度を活用して、ご縁を感じていた小菅村に移住したんです。いまはこの村に「小菅つくる座」という会社を設立し、建物の設計と監理を行なっています。
私はこれまで小菅村の体育館や役場などあらゆる建築を手がけてきましたが、特に地域に貢献できたと実感しているのは私が発起した「タイニーハウスプロジェクト」。12畳程度のコンパクトながら快適な家、タイニーハウスを建てることで小菅村が抱える空き家問題の解決を目指す取り組みです。私が設計するタイニーハウスは100%自然の木材だけでつくられているためコストが抑えられているうえ、充実した設備と木の高い断熱性によって一年中快適に過ごせます。エアコンなどを使えばより快適ですし、小さな空間なので家全体が早く暖まりやすく経済的でもあるんです。今後もタイニーハウスのような地方創生に携わることで住民の受け入れを広げつつ、移住のイメージをよりポジティブなものに変えていきたいと思っています。

小菅村は昔ながらの文化や優しさが残っている街です。住民にはおもてなしの精神が根付いていて、地域や家の訪問者が帰りづらくなるほど、食事などであたたかく迎える文化もあります。フィールドワークで訪れた大学生がその優しさに触れて移住……なんてこともしばしば。お祭りや地域活動も盛んで移住後もすぐに馴染みやすいと思います。小菅村は山に囲まれていて村外バスは1日2本と少なく、アクセスがいいとは言えませんが、村内で暮らす分には困ることはありません。移動販売車やドローン配送によって食料品や日用品などの買い物もしやすいです。都会ではなかなか味わいにくい、人とのつながりを実感できる環境なので、興味のある方はぜひ足を運んでいただきたいです。
マサラ ジェイコ
私と同じく地域おこし協力隊の制度を活用して移住してきた、野島さんが営むカレー屋です。インド好きな彼女らしいとても本格的なインドカレーを味わえます。「マサラ ジェイコ」以外にもバンドイベントの企画など彼女の活動は様々で、地域住民にとってはありがたい存在です。

道の駅こすげ内
暮らしのスポット


タイニーハウス・こすげ


多摩源流温泉 小菅の湯

古民家cafeムッカ

関東地方の最南部に位置する千葉県の房総半島、その南端にある富津岬から太東岬を結ぶ線より南の区域が南房総エリア。千葉県の約20%を占め、南房総市をはじめ館山市や鴨川市、勝浦市、いすみ市などの市町村で構成されています。このエリアの最大の魅力は美しい海と豊かな自然。街にはビーチやマリンアクティビティ、東京湾や富士山が見渡せる山などがあるため遊び場には困りません。また、海に囲まれた環境であるため新鮮な魚介類が豊富に水揚げされ、伊勢海老やアワビ、サザエなどの高級食材が地元価格で楽しめる点も魅力。東京から約90分、横浜から約60分とアクセスもよいため、関東エリアで暮らす人の行楽地として人気を集めています。
黒潮の影響により1年を通して温暖な気候である南房総エリアでは、その暮らしやすさを知ってもらうために「館山市・南房総市トライアルステイ」など多くの移住体験プログラムを実施しています。ほかにも移住に関する取り組みはさまざまで、移住支援制度では最大100万円の支援金、子育て世帯向けの家賃補助や住宅取得奨励金などを用意。農業支援も充実しており、就農相談や住居の貸し出しが受けられる制度もあります。さらに、街ではDIYなどの自給自足スキルを学べる場や機会が多数。空き家をDIYしてつくった家やキャビンを住まいにする文化も根付いており、豊かな自然環境で自由な暮らしを求める方に最適な街です。


自在堂 勝浦
(自在堂 勝浦 妙海寺)

YAMANA HOUSE
