豊かな生活とは切っても切り離せない、“食”。そこに住むだけで食生活が充実し、日々の暮らしが楽しくなる街があります。新鮮でこだわりの食材が手に入る、市場や食の専門店。景色のいいスポットが近くにあり、料理がおいしく感じられる。今回は、そんな心地のよいキッチンのような街として、豊洲の魅力をご紹介します。
text:Ikumi Ueno(effect) photo:Eizaburo Sogo
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新鮮な食材が手に入る
市場が近い
新鮮な食材が手に入る市場が近くにあれば、生活が豊かになります。普段は見ることができないような珍しい食材を見つけたり、活気あふれるセリの様子を見学したり。観光気分で楽しむのもおすすめです。
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こだわりの品が揃う
食の専門店がある
こだわりの品が揃う専門店は、その食材について知り尽くした店員さんが必ずいるはず。とくに昔から続く老舗なら安心してお買い物ができ、食生活が充実します。
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景色のいいスポットがあって
料理をさらに
おいしく味わえる
外で食べる料理は、不思議とおいしく感じるもの。絶景が近くにある街なら、なおさら食を楽しめること間違いなし!
※新型コロナウイルスの影響により、休業や営業時間の変更が発生している場合があります。 詳細は各公式サイト等でご確認ください。
急速に変化する、豊洲の街並み。
でも、食を通じた昔と変わらないつながりは
いつでも、僕の心を温かくしてくれます。
子どもの頃からずっと暮らしている豊洲ですが、大きく街は移り変わっています。この街の今の魅力は、便利さではないでしょうか。昔は門前仲町や銀座まで行かないと手に入らないものが多かったのですが、今は街が開発されて大型店も増え、なんでも揃う。映画館やバーベキュー場、公園などの遊ぶ場所も充実しています。また豊洲のことを今はだれでも知っていて、豊洲に住んでいると言えば「ああ、いいところに住んでるね」と言ってもらえるようになりました。僕は高校の頃は杉並まで通っていましたが、「豊洲」と言ってもほとんどだれも知らず、「夢の島の先だろ?」なんて言われたこともあったくらい(笑)。自分の街をみんなに知ってもらえるようになったのはうれしいですね。
僕は「肉のイチムラ」の3代目になります。店内に大きく「うまい肉売ってます」と書いて貼ってあるのですが、おいしいお肉を手ごろな価格で販売する。これがお店として大切にしてきたことです。僕がお店を継いだとき、このあたりは工場町で、工場で働く人の寮や社宅が多くあり、そこに暮らす人たちに少しでも喜んでもらえればと考えてお店を経営してきました。近年は近くに大型スーパーが増え、苦しい時代もありましたが、その思いに変わりはありません。そこで始めたのが、毎週金曜日の特売デー。個数限定ではありますが、揚げ物を半額で販売しています。この特売デーのインパクトと、リニューアルオープンして店舗がきれいになったこともあり、若い方たちや、近所の子どもたちが買いにきてくれることも増えてきました。新しくこの街に来た世代に、「おいしい」と言ってもらえるのが何よりのやりがいになります。
豊洲の大きな出来事としては、2018年の豊洲市場の開設が記憶に新しいところです。このことは我々商店街にも転機となりました。豊洲市場の移転が遅れ、市場の方たちがなかなか営業を始められず困っていたというのもあったのですが、私たち商店街も市場の活気を取り入れられないかと考え、商店街と市場が手を組むことになったんです。そこで生み出されたのが「豊洲シーフードカレー」。豊洲市場のマグロを使ったカレーは豊洲のさまざまな場所で売られており、親交の証となっています。市場と商店街、場所は違えど、同じ豊洲という街でよい食材を提供したいという思いは同じ。街が急速に変化していくことはときに不安にもなりますが、食を通じた昔と変わらないつながりは、いつでも僕の心を温かくしてくれます。
深川五中近くにある歩道橋。「周りにどんどんとマンションが立ち並んでも、昔と変わらないこの歩道橋を見ると心が落ち着く」と市村さん。
僕の母校である深川五中の前の、晴海通りにかかる歩道橋です。街が大きく変わっていくなかでもこの歩道橋だけは、僕が小学生くらいの頃からずっと変わらずにここにあるので、この景色を見ていると昔の感覚に戻るんですよね。先日も中学の同級生のLINEグループに、歩道橋から見える中学校周辺の桜の画像を送ったら、なじみのある風景をみんながとてもなつかしんでくれて。青春のいろんな思い出がよみがえる、そんな場所です。
肉のイチムラ:東京都江東区豊洲4-6-3-102
2018年に築地から移転した豊洲市場。業者が仕入れをする場だが見学エリアや飲食店街もあり、観光地としても人気を集めている。平日早朝に開催されるセリは来場者も通路から見学することが可能で、活気を体感することができる。
東京都江東区豊洲6-6-1
100年以上続く市場の憩い場石神井の台所
センリ軒
1914年、日本橋にあった魚河岸内に創業し、築地を経て豊洲に移転した喫茶店。極寒のなかで作業していた市場の仲買人たちのため、少しでも体が温まるものを、と作られたのが名物の「半熟玉子入りシチュー」。食のプロたちに食べられることで洗練された味は、今も色あせない。
東京都江東区豊洲6-5-1
水産仲卸売場棟3F
土日にはキッチンカーが登場することも
豊洲ぐるりパーク
豊洲公園、豊洲ぐるり公園、豊洲六丁目公園、豊洲六丁目第二公園の4つの公園からなる公園の総称。東京湾を望む景色が人気を集める公園で、とくに豊洲市場を大きく取り囲むように広がる、ぐるり公園の先端部分から見えるレインボーブリッジは絶景。豊洲公園で毎週土・日曜・祝日に行われる「トヨスノマルシェ」にはキッチンカーが登場し、新鮮な野菜やピザなど食に関する販売イベントも行われる。
東京都江東区豊洲2-3-6
(豊洲ぐるりパークセンター)
絶景は最高のスパイス
豊洲ぐるり公園手ぶらBBQ広場
ぐるり公園内に位置し、海に面した景色を楽しみながらBBQができる人気のスポット。その名の通り手ぶらで訪れても機材や食材が揃い、手軽にBBQを楽しめる。食材の持ち込みも自由なため、隣接した豊洲市場で食材を購入して調理することも可能となっている。
東京都江東区豊洲6-5-27
豊洲の見どころは、マンション住民が中心となって進める「コミュニティガーデン」という花壇。豊洲に10か所以上あり、僕もそのひとつであるパークシティ豊洲園芸クラブの会長をしています。東京オリンピック誘致が決まり、2014年に選手やお客さまを美しい花でお迎えしようと花壇作りを始めました。その後、住民の手により花壇が次々とできたんです。それぞれが意匠をこらした花壇を作っているのがまた面白い。ちなみにコミュニティガーデンの立ち上げの経緯を知ったのは、「なぜ豊洲は緑が多いのか」という子どもたちからの疑問に答えるために、園芸クラブの会長として豊洲北小学校の授業に呼ばれ、準備のために調べた結果です。豊洲の子どもたちの視点はさすがだなと思います。豊洲市場もでき、大型スーパーも複数あり、買い物に困らないのも豊洲の魅力。「フードストアあおき」の品揃えや食材の鮮度のよさがお気に入りです。
豊洲に暮らしてよかったなと思うのは、子育てのしやすさ。同じマンションに子どもの同級生が多かったり、保育園・幼稚園、習い事などが一緒だったりしてママ同士のつながりができやすく、みんなで助け合いながら子育てできたのがよかったです。とくに初めての育児のときは悩むことも多く、話を聞いてもらえるだけで心が楽になったことを覚えています。豊洲の商店街「豊洲商友会」の事務局で働き始めてからは、地域の方とのつながりが深くなり、思いを持って街を維持している方の存在に気付けました。商店街では冬は歳末イベント、秋はハロウィンなどイベントをたくさん主催していて、とくにハロウィンは300人が参加できるパレードに2000人近くの応募があるほど人気です。子ども達も楽しめますし、イベントを通して住民同士の交流ができるのも街の魅力だと思います。
豊洲の魅力はなんといっても、穏やかな運河と緑に囲まれた環境です。多くのマンションのベランダが運河に面していて、心地よい風が通り抜け、とても静か。うちのベランダからだとスカイツリーや葛西臨海公園の観覧車などが見えるので、それを眺めながら洗濯物を干したり、コーヒーを飲んだりする時間が癒しです。また、新豊洲さくら広場にある「サイタブリア ベイパーク グリル アンド バー」で買える本格的なモヒートが私のお気に入り。運河越しの都心の風景を眺めながら、屋外でモヒートを楽しむ時間が最高です!
“食”は、暮らしに欠かせない重要な要素のひとつ。今回は、新鮮な食材が手に入りやすかったり、さまざまなグルメや食材がそろう商店街があったりと、食を堪能できる街をピックアップしました。気になる街があれば、目利きの話をチェックしてください。目利きならではの情報をたっぷり話してくれるはず。
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“杜の都”で味わうグルメは
肉も海鮮もスイーツも絶品
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日本一長い天神橋筋商店街に揃う
さまざまな食に舌鼓
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豊富なマルシェや朝市には
新鮮な野菜や魚介が並ぶ