June
2025
Vol.62

防災の意識が高い、2つの暮らしを紹介します

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Photo: Hirotomo Onodera(room)、Jun Imajo(front page)、text: Nahoko Sakai

01 片付けが自分と家族の命を守る 今できることから始めよう

実例01

「以前は夫婦ともに片付けが苦手なタイプで、家にものがあふれていました」と笑う大森さん。東日本大震災の時に、地震では家電や包丁などの身の回りのものが“落ちる”のではなく“飛んでくる”のだということを知り、片付けの大切さを実感しました。

「普段から片付いていれば災害時のケガのリスクが減り、現状復帰も早くでき、避難する場合でも必要なものをすぐに取り出すことができます。片付けは家と心が整うだけではなく、命を守ることにもつながっているのです」

実例01
どんな備えも生きていてこそ役に立つもの。「命を守る」ことを第一に考えた部屋づくりを

大森さんが教えてくれた防災の第一歩は「ものを減らし、出しっぱなしにしない」こと。また、大きな家具・家電は、倒れてきても人に当たらない場所に設置して、しっかり固定しておきます。次にハザードマップなどで住んでいる地域のリスクを確認し、何を重点的に備えればよいか考えます。

備蓄や防災グッズは「いつも使っているもの、食べているものの延長」で備えるのがおすすめ。「美味しくない食事はしんどいでしょう? だから食品は食べ慣れたものを多めにストック。防災グッズも最近はおしゃれなものが多いので、普段から暮らしに取り入れておけばいざという時に慌てません」。

そして大事なのは、グッズ・備品や備蓄・対策は自分や家族の状況に合わせて「カスタマイズする」ことと、「備えっぱなしにしない」こと。「片付けも防災も一度でおしまいではなく、ずっと続いていくもの。半年ごとに見直して、その時の自分や家族の状況に合わせてバージョンアップすることが必要です。完璧ではなくても、やらないよりもやった方がよいに決まっています。暮らしの中に少し防災目線を加えて、できるところから始めてみてくださいね」。

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実例01
避難経路である廊下や玄関はいつもスッキリ片付いた状態に。非常持ち出し用リュックなどは、すぐに取り出せるよう玄関に常備してあります

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実例01
子ども用の持ち出しセットはサコッシュに

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実例01

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実例01
息子さんのベッド下にはカセットコンロストーブ、長期保存水などの大きなものや備蓄食品を、引き出しには、防災スリッパとペットボトルの水を巾着に入れて常備

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実例01
ダイニングの照明は、停電すると自動で非常点灯する蓄電型電球。取りはずして懐中電灯のように使えます
実例01
キッチンに近い和室押入れには、普段の食品のストック。ローリングストックで、使ったら補充しています
実例01
お気に入りのものは貼って剥がせる粘着剤で棚に固定して。防災ライトもスッキリしたデザインを選択
実例01
自宅避難のための備蓄は、各部屋に分散。収納が少ない家でも、ベッド下などの「すき間」を利用できます
実例01
キッチンは危険がいっぱい。ものは出しっぱなしにせず、冷蔵庫などの家電は転倒防止グッズで対策を

間取り&部屋主プロフィール

Floor plan
実例01間取り

① 電子レンジやテレビなどの家電は、地震で飛び出さないようにしっかり固定してあります

② 片付いた部屋といっても何もないのは寂しいもの。リビングダイニングには複数の観葉植物も置いていますが、天井から吊るす場合は軽いプラスチック鉢にするといった対策を

③ 飲み水や食品などの備蓄は1か所にまとめると、その場所にアクセスできなくなる危険性が。各部屋に分散しておけば安心です。長期保存が可能なものは奥に、そうでないものは入れ替えしやすい手前に置きます

④ 非常持ち出し用品は奥まった部屋ではなく玄関にまとめて

Profile
部屋主プロフィール
部屋主プロフィール
大森智美さん[神奈川県相模原市]
整理収納アドバイザー、防災士
年代:40代
住居区分:持ち家 居住年数:8年 同居人:夫、子ども3人
すぐできる防災アイデアをInstagram(@omori_tomomi)で多数発信!お片付けサポート・防災セミナーなどのお問い合わせはOmori tomomi Official website

02 あふれる”もの”はリスクの元 手放す暮らしで”減災を”

実例02

要さんの前職はキャビンアテンダント。休日は時差ぼけの解消や次の仕事の準備などもあり、散らかった服を戻したり洗濯したりするので精一杯。もともとインテリアや家が大好きだったはずなのに、いつしか暮らしを楽しむ余裕がなくなっていました。
そんなある日、ふと気付いたのは「大変なのは、ものが多いからでは?」ということ。思い切ってものを大量に手放してみると、毎日が楽になり、自分の時間ができ、気持ちが穏やかになり……。「そして、ものを減らすことは部屋が片付き快適になるだけではなく、立派な“減災”になるんですよ」と、要さんは言います。

実例02
ものを手放すことでリスクは減らせます。「もの」ではなく「自分」が主役の暮らし方を選択して

整理収納アドバイザーとして起業した要さんのお客様の中には、「家の中にものがあふれすぎていて、つまずいて大ケガをした」という方々も。「ものを厳選し自分の暮らし方に合った数に絞り適正な場所にしまうことで、家の中のリスクは減らせるのです。たとえばベッドまわりに家具やものがなければ、寝ている時に大きな地震が起こったとしても命の危険はぐっと少なくなります」。

日本人は“もったいないから捨てられない” という方も少なくありませんが、「使わずに溜め込む方がもったいない、ものを手放すのは前向きな生活行為ですよ」と要さん。捨てるのが苦手な場合は、溜まった割り箸や紙類といった、愛着のないものから手をつけ習慣づけるとよいそうです。「ものを減らすぞ!という覚悟は必要ですが、一度に全部やらなければ!と思わなくて大丈夫。1か所だけでも、寝る前の5分間でもよいので、進めてみてください」。

また、「食品は少し多めに買っておく、ものを固定してみる、避難グッズを用意するなど、毎日の生活に+αで減災を心がけるのも大切です。ちょっと意識を変えることで、きっと暮らしも変わっていくはずです」。

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実例02
パスタやカップ麺など常温保存できる食品は、多めに購入してストック。食べた分だけ補充するようにすると、いざという時の備蓄になります

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実例02
主寝室の前には懐中電灯を

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実例02

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実例02
折りたためるヘルメットや一時避難グッズなどは玄関にまとめて。アルミブランケットや簡易トイレといったグッズは、100円均一ショップでも揃えられます

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実例02
レンジフード上には粘着固定剤で対策したオブジェ、壁にはわらの鍋敷きと軽いドライフラワーを飾って
実例02
洗濯機の上のスペースを収納に。天板に奥行きがあるので、ケースの後ろには長期保存水を備蓄しています
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上の息子さんの部屋。倒れると危険な本棚は、息子さん自身が考えてウォークインクローゼットの中に設置
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消火器はコンロ脇に起きがちですが、火が出たら近寄れないので、3歩ほど離れた引き出しに入れてあります
実例02
すぐに逃げられ、危険性が少ないダイニングにだけは、背の高いシェルフを設置。棚の小物には落下対策を

間取り&部屋主プロフィール

Floor plan
実例02間取り

① 階段や玄関といった避難経路には、停電に備え複数の充電式人感センサーや懐中電灯など置いています

② シェルフや冷蔵庫は転倒防止グッズで固定。棚に置くものは厳選し、重いものは上に置かず、粘着固定材で対策を。それでも大きな揺れでは転倒するかもしれませんが、逃げる時間を稼ぐことができます

③ 長期保存が可能な水や防災備蓄などは物入れの奥やベッド下などにわけて収納。災害時に全員が家にいるとは限りませんので、棚や収納ケースにはラベルを貼り、どこに何が入っているかわかるようにしてあります

④ 一時避難グッズは背負いやすいリュックに詰め替えて玄関に

Profile
部屋主プロフィール
部屋主プロフィール
要めぐみさん[神奈川県横浜市]
整理収納アドバイザー
年代:40代
住居区分:持ち家 居住年数:11年 同居人:夫、子ども2人
出張お片付けサービスや自宅の収納をお見せするホームセミナーの詳細はInstagram(@megumi_home)またはhttps://ameblo.jp/megumihome-blog/