

「以前は夫婦ともに片付けが苦手なタイプで、家にものがあふれていました」と笑う大森さん。東日本大震災の時に、地震では家電や包丁などの身の回りのものが“落ちる”のではなく“飛んでくる”のだということを知り、片付けの大切さを実感しました。
「普段から片付いていれば災害時のケガのリスクが減り、現状復帰も早くでき、避難する場合でも必要なものをすぐに取り出すことができます。片付けは家と心が整うだけではなく、命を守ることにもつながっているのです」

大森さんが教えてくれた防災の第一歩は「ものを減らし、出しっぱなしにしない」こと。また、大きな家具・家電は、倒れてきても人に当たらない場所に設置して、しっかり固定しておきます。次にハザードマップなどで住んでいる地域のリスクを確認し、何を重点的に備えればよいか考えます。
備蓄や防災グッズは「いつも使っているもの、食べているものの延長」で備えるのがおすすめ。「美味しくない食事はしんどいでしょう? だから食品は食べ慣れたものを多めにストック。防災グッズも最近はおしゃれなものが多いので、普段から暮らしに取り入れておけばいざという時に慌てません」。
そして大事なのは、グッズ・備品や備蓄・対策は自分や家族の状況に合わせて「カスタマイズする」ことと、「備えっぱなしにしない」こと。「片付けも防災も一度でおしまいではなく、ずっと続いていくもの。半年ごとに見直して、その時の自分や家族の状況に合わせてバージョンアップすることが必要です。完璧ではなくても、やらないよりもやった方がよいに決まっています。暮らしの中に少し防災目線を加えて、できるところから始めてみてくださいね」。






① 電子レンジやテレビなどの家電は、地震で飛び出さないようにしっかり固定してあります
② 片付いた部屋といっても何もないのは寂しいもの。リビングダイニングには複数の観葉植物も置いていますが、天井から吊るす場合は軽いプラスチック鉢にするといった対策を
③ 飲み水や食品などの備蓄は1か所にまとめると、その場所にアクセスできなくなる危険性が。各部屋に分散しておけば安心です。長期保存が可能なものは奥に、そうでないものは入れ替えしやすい手前に置きます
④ 非常持ち出し用品は奥まった部屋ではなく玄関にまとめて

整理収納アドバイザー、防災士
年代:40代
住居区分:持ち家 居住年数:8年 同居人:夫、子ども3人

要さんの前職はキャビンアテンダント。休日は時差ぼけの解消や次の仕事の準備などもあり、散らかった服を戻したり洗濯したりするので精一杯。もともとインテリアや家が大好きだったはずなのに、いつしか暮らしを楽しむ余裕がなくなっていました。
そんなある日、ふと気付いたのは「大変なのは、ものが多いからでは?」ということ。思い切ってものを大量に手放してみると、毎日が楽になり、自分の時間ができ、気持ちが穏やかになり……。「そして、ものを減らすことは部屋が片付き快適になるだけではなく、立派な“減災”になるんですよ」と、要さんは言います。

整理収納アドバイザーとして起業した要さんのお客様の中には、「家の中にものがあふれすぎていて、つまずいて大ケガをした」という方々も。「ものを厳選し自分の暮らし方に合った数に絞り適正な場所にしまうことで、家の中のリスクは減らせるのです。たとえばベッドまわりに家具やものがなければ、寝ている時に大きな地震が起こったとしても命の危険はぐっと少なくなります」。
日本人は“もったいないから捨てられない” という方も少なくありませんが、「使わずに溜め込む方がもったいない、ものを手放すのは前向きな生活行為ですよ」と要さん。捨てるのが苦手な場合は、溜まった割り箸や紙類といった、愛着のないものから手をつけ習慣づけるとよいそうです。「ものを減らすぞ!という覚悟は必要ですが、一度に全部やらなければ!と思わなくて大丈夫。1か所だけでも、寝る前の5分間でもよいので、進めてみてください」。
また、「食品は少し多めに買っておく、ものを固定してみる、避難グッズを用意するなど、毎日の生活に+αで減災を心がけるのも大切です。ちょっと意識を変えることで、きっと暮らしも変わっていくはずです」。






① 階段や玄関といった避難経路には、停電に備え複数の充電式人感センサーや懐中電灯など置いています
② シェルフや冷蔵庫は転倒防止グッズで固定。棚に置くものは厳選し、重いものは上に置かず、粘着固定材で対策を。それでも大きな揺れでは転倒するかもしれませんが、逃げる時間を稼ぐことができます
③ 長期保存が可能な水や防災備蓄などは物入れの奥やベッド下などにわけて収納。災害時に全員が家にいるとは限りませんので、棚や収納ケースにはラベルを貼り、どこに何が入っているかわかるようにしてあります
④ 一時避難グッズは背負いやすいリュックに詰め替えて玄関に

整理収納アドバイザー
年代:40代
住居区分:持ち家 居住年数:11年 同居人:夫、子ども2人