全国の自治体で実施している移住者向けサポート。今回は秋田県秋田市で行っている事業と秋田市地域おこし協力隊について、2回にわたって紹介します。前半は、秋田市企画財政部人口減少・移住定住対策課にお話を伺いしました。さらに、神奈川県から秋田市へ移住し、「秋田市地域おこし協力隊」として活動している毛利菜摘(なつみ)さんの経験談や活動も合わせて紹介します。
※画像提供:「秋田市」「秋田市地域おこし協力隊」
ライター:鈴城久理子
CONTENTS
01| 海も山も川にも近く、祭りも盛りだくさん
古くから日本海における海上の要所
大型クルーズ船も寄港する「秋田港」
秋田県の県都である秋田市は、広さ906.07平方kmに県人口の約3割にあたる297,045人(令和6年6月1日現在)を有する中核市。西には日本海、東には出羽山地が広がる自然豊かな街です。秋田新幹線をはじめ、秋田自動車道や秋田港、秋田空港など、陸・海・空の交通の利便性がよく、日本海に面した秋田港は古くから海上の要所として知られてきました。
自然のスポットが満載
岩見川の上流に位置する「伏伸(ふのし)の滝」
交通の利便性もさることながら、秋田市の魅力は何といっても自然の豊富さ。風光明媚(ふうこうめいび)な自然が楽しめるスポットがたくさん点在しています。滝のすぐそばまで近づける、ゆるやかな三段の滝「伏伸の滝」、トレッキングを楽しめる「太平山」や「高尾山」、きれいな夕陽を見ることのできる海水浴場など挙げればきりがありません。
地元が誇るさまざまな祭りが開催
「秋田竿燈(かんとう)まつり」。毎年8月3~6日に開催
秋田市の魅力として忘れてはいけないのが東北三大祭りの一つである「秋田竿燈まつり」。国重要無形民俗文化財にも指定され、黄金の稲穂を模した夜空にきらめく提灯の光を楽しみに、市民、県民はもちろん全国から観光客が押し寄せるほど。そのほか、ユネスコ無形文化遺産に指定された「土崎港曳山まつり(つちざきみなとひきやままつり)」、「大正寺おけさまつり」などの祭りもめじろおしです。
02| 秋田市の移住者向けサポートにはどんな制度があるの?
移住を検討する際に心配になるのは、住む場所や金銭面、仕事に関すること。そこで、実際に秋田市が行っているさまざまなサポートを紹介します。
秋田市移住専用ポータルサイト「秋田市いいわ」では、移住に関するさまざまな情報を提供
住宅関連のサポートについて
- 「秋田市住宅情報ネットワーク」を市の公式ホームページで開設し、空き家バンク情報、賃貸物件の空き状況など住宅情報を公開しています。
秋田市住宅情報ネットワーク
https://www.city.akita.lg.jp/iju-teiju/jutakujoho/index.html
金銭的な援助について
- 秋田市内企業との採用試験にかかる交通費を補助しています(例:関東在住者であれば最大2万円)。
- 県外から秋田市に就職が決定した移住する人に対して、引越費用、住宅取得費用、車の購入費用などを補助しています(要件あり。世帯構成等で使用できる制度が異なります)。
- 住宅などのリフォーム工事に対する費用の補助も行っています。
就職など仕事の援助について
- 東京都中央区八重洲にある「秋田市移住相談八重洲センター」は、無料職業紹介所としての機能を持ち、仕事の紹介のほか、応募資料の添削や面接の模擬試験などの支援を行っています。
移住に関するイベント
「秋田市文化創造館」
移住サポートは、イベントを通じても行われています。その一部を紹介しましょう。
- 令和6年7月26日(金)に東京都中央区京橋の「秋田県あきた暮らし・交流拠点センター(アキタコアベース)」において、セミナーを開催予定。秋田市内で活動する人、秋田市外で活動する人の両者の立場で「秋田」について語るトークイベント。
秋田のこと気になってる人集まれ~!in Tokyo
https://www.city.akita.lg.jp/event/moyooshi/1043205.html - 令和6年10月27日(日)、令和7年2月9日(日)には東京都立産業貿易センター浜松町館にて、秋田県への就職を希望する人向けのイベント「あきた就職フェア」を開催予定。
そのほか、秋田市内でも以下のイベントが予定されています。
- 9月下旬には移住相談団体ツアーを予定。先輩移住者との交流や、稲刈り体験に向けて準備中。
- 移住相談ツアーを開催。秋田市を知るためのツアーをオーダーメイドで実施。申し込み後、地域おこし協力隊と一緒に行程などを決め、1泊2日で市内を回ります。小学校の見学、住環境、移住相談など、自由に盛り込むことができます。
移住を検討している方々へ
飛行機を使えば、首都圏から約1時間の秋田市。都市機能と大自然のバランスが「ちょうどいい」街で暮らしてみませんか? 秋田市への移住を考えたら、まずは「秋田市移住相談八重洲センター」にご連絡ください。秋田市での暮らしの相談はもちろん、就職に関するサポートも行っています。秋田市では他都市に比べて手厚い移住補助制度があるので、ぜひ、ご活用ください。
03| 秋田市地域おこし協力隊について教えて
~毛利菜摘さんのケース~
地元のFMラジオ局にゲストとして出演した毛利さん(写真右)
3年前に神奈川県横浜市から秋田県秋田市へ移住し、「秋田市地域おこし協力隊」として活躍している毛利菜摘さんに、活動や暮らしについてお伺いしました。
「秋田市地域おこし協力隊」はこんな活動をしている
Q:「地域おこし協力隊」ではどのような活動をしているのでしょうか?
A:移住定住コーディネーターとして移住相談ツアーや移住者交流会の実施、秋田市の魅力発信のほか、それぞれの特色を活かしたイベントの企画や運営などを行っています。秋田市の場合は、市と隊員は委嘱関係にあります。
移住者が運営するゲストハウスで、子どもたちの水遊びイベントを企画
Q:具体的にはどんな活動を手掛けたのでしょうか?
A:私の場合は妊婦のときに秋田市に移住して出産したことから、子育て中のママとしての経験を活かし、子育て世帯向けの移住者交流会を企画・運営しています。秋田市産の大豆を使った味噌づくりや、移住者が運営するゲストハウスでの子どもたちの水遊びイベントなどを企画しました。ほかに、不定期で「あきたマママルシェ」というイベントを開催し、託児スペースを併設したマルシェを開いています。育休中に趣味で制作した作品を販売するなど、小さなお子さんがいても楽しく参加できるよう運営しています。また、「秋田おやこ劇場」という親子で芸術鑑賞を楽しめる市民団体の運営も行っています。市民であっても、移住者であっても、子育てをしながら楽しめる環境づくりを心掛けています。
昨年行った移住相談団体ツアーでの稲刈り体験。写真中央が毛利さん
隊員になるとこんなメリットがある
Q:隊員になったことで、どんなメリットがありましたか?
A:移住して隊員になったことで、私のような、Iターンで親族も身近にいない夫婦でもたくさんの方と知り合うことができ、また子育てを支えていただきました。金銭的な援助についても、希望すれば、市の予算の範囲内で家賃を負担してもらえます。秋田市では子育て世帯や若者に向けた移住の助成があるほか、「ファミリーサポートセンター」に登録すると、スタッフの自宅で子どもを預かってもらえるという制度があります。近所に親戚のいない移住者はみなさん利用されていて、首都圏に比べると圧倒的に費用が安いんです。未就学児限定ではないので、子どもがいる人にはうれしい制度です。保育料の助成も手厚いので助かっています。
ハロウィーンの時期には、親子で楽しめるイベントを開催
Q:移住してよかったこと、また秋田市の魅力を教えてください。
A:海も山も近いので、気軽に趣味のキャンプを楽しめますし、2歳になる息子が広い公園や海でのびのび遊んでいる姿を見ると、本当にこちらに移住してよかったと実感します。横浜に住んでいた頃は夫婦ともに遅い電車で帰り、休日出勤もあるような暮らしでした。今は通勤時間も大幅に短縮でき、子どもとゆっくり過ごすことができます。ただ雪国での暮らしは初めてだったため、一年目は雪道に車をはめたり、雪寄せがわからなかったり、バッテリーが上がったりとさまざまな苦労もありましたが……。でも、困ったことが起きてもまわりの方が快く助けてくださるのが、本当にありがたいです。この街の魅力ですね。
初めての出産・子育てでも、地元の人々のおかげで心地よく暮らせることが秋田市の魅力なのだとか
毛利さんから、秋田市への移住を考えている人へのメッセージ
横浜で生まれ横浜で育った私ですが、自分の地元と同じくらい秋田を好きになりました。気軽な気持ちで飛び込んだことで、新たな発見もあり、息子との時間も持てて季節を感じながら充実した日々を送ることができています。秋田各地には、先輩移住者であり身近な存在である協力隊員がいますので、移住を検討している方はぜひお気軽に相談してみてくださいね!
※毛利さんのインスタグラムはこちら
https://www.instagram.com/mouri_natsumi_akitalife/
※秋田市の移住専用ポータルサイトはこちら
https://www.city.akita.lg.jp/iju-teiju/index.html
04| まとめ
「秋田市に移住した人々をサポートしたい!」「秋田市を盛り上げたい!」。自治体や地域おこし協力隊の人々の熱い気持ちが伝わってくる、そんな取材でした。移住を考えている人にぜひ候補に入れて欲しい街のひとつです。
この記事を書いた人
鈴城久理子 ライター
雑貨紹介や料理、インテリアなど暮らし系の記事を中心に執筆することが多いライター。ただいまメダ活実践中。