森と芝生に溶け込むガラスの家、「グラスハウス」は温室のような住宅です。プリツカー賞の初代受賞者、フィリップ・ジョンソンがセカンドハウスとして建てました。1949年完成当時、雑誌Lifeに掲載されたグラスハウスに対し、多くの人が「丸見えで暮らすの?」と思ったようです。しかし、広大な芝生があり、石垣もあるため、いつも見られることはありません。見られたくないトイレやシャワーブースはレンガ造りの円筒状のコアに収納されています。また、グラスハウスの少し離れには閉鎖的なレンガの家があり、グラスハウスはサロンのように使っていました。
庭園のデザインは、ジョンソンの生涯のパートナーでキュレーターのデビッド・ホイットニーと共に手掛けました。「キャンベルのスープ缶」で有名なアンディ・ウォーホルと3人は友人で、ウォーホルは何度もグラスハウスを訪れ、ジョンソンの肖像画も描いています。
MOMAのキュレーターでもあったジョンソンは、「私はとても高価な壁紙を貼っている」と言ったそうです。森と芝生の壁紙(ガラス)に絵画を飾っていました。
自然と一体化した住宅、という考え方は、板ガラスと鋼材という工業製品によって実現可能になりました。グラスハウスの鉄骨はビルにも使うI字型鋼材です。壁面4面をガラスにしたことで、透明性と反射性を持たせています。自然を感じられるよう、屋内に仕切り壁はなく、ワンルームです。
なお、ガラスと鉄の住宅というアイデアは、ジョンソンが敬愛する近代建築の三大巨匠、ミース・ファン・デル・ローエのものです。ミースは、グラスハウスが竣工した2年後に、恋人のために全面ガラス張りの住宅を完成させています。
ガラスという工業製品が実現した自然との一体感。もしも窓越しに空が見られるとしたら、それは現代の住宅が実現した自然な暮らしなのかもしれません。