April
2023
Vol.49
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日本のワザ 整理整頓の街

私たちの生活を美しく整えてくれる道具や工芸品が日本各地に数多く存在します。それらは職人たちが脈々とワザを受け継いだことによって、今日の日本に残った名品たち。そんな品々を生み出す街として、今回は日本橋周辺、堺、別府と3つの街をご紹介します。

text:Ikumi Ueno(effect) photo:Eizaburo Sogo

  • 日本橋(東京)
  • 堺(大阪)
  • 別府(大分)
※休業日や営業時間については、各公式サイト等でご確認ください。

日本橋(東京)

高層ビルが増えた日本橋のなかで、風情ある街並みが残る「むろまち小路」

日本橋ってどんな街

歴史と新しさが交錯する街、日本橋。中央区にあるこの街が発展し始めたのは、江戸幕府開府のころ。江戸幕府が江戸と日本各地を結ぶ、東海道や甲州街道などのいわゆる「五街道」を整備していき、その起点に定められたのが日本橋だったのです。やがて日本橋には全国各地から商人や職人が集まり、のちの三越となる「三井越後屋呉服店」や、のちの東急百貨店となる「白木屋」などの商店が続々と開業。日本経済の中心として急激に発展していきました。そんな背景から、現在の日本橋には江戸時代に開業された老舗が残っており、匠の技が職人たちによって受け継がれているのです。

発展が続いていた日本橋ですが、バブル崩壊とともに賑わいが失速していきます。そこでかつての日本橋を取り戻そうと「日本橋再生計画」が発足。2004年の「COREDO日本橋」の開業を皮切りに、「COREDO室町」などの商業施設とオフィスが融合したビルが誕生していきました。物件数は多くありませんが、近年は少しずつマンションも増えており、東京駅や銀座にも近い利便性と、歴史を感じさせる街の風情が魅力の、唯一無二の街として人気を集めています。

日本橋
日本橋の象徴ともいえる麒麟像。明治44(1911)年に完成し、現在は国の重要文化財にも指定されている
街の人
創業300年を超える江戸刷毛、
ブラシの専門店

「江戸屋」12代目店主の
濵田捷利さん

江戸時代に急激に発展し、現在は歴史を色濃く残す街として人気の日本橋。そんな街の移り変わりを間近で見てきたのが、日本橋大伝馬町にある「江戸屋」です。享保3(1718)年に刷毛の専門店として誕生し、現在は約3000種にも及ぶさまざまな刷毛とブラシなどを扱うお店となった「江戸屋」。12代目の店主である濵田捷利さん
に、日本橋の移り変わりや、「江戸屋」が扱う道具の魅力をお話いただきました。
「江戸屋」12代目店主の濵田捷利さん
日本橋
店に入ると天井からぶら下がるブラシに圧倒される
ここで扱っているのは道具で、主役じゃない。
でも自分に合ったいい道具を使うことは、
気持ちまで整えてくれるはずです。

お店の前の道が旧日光街道で、日本橋が発展したのはこの通りからなんです。僕がこのお店に入ったころはこのあたりは問屋街で、この通り沿いに木綿問屋がずらっと軒を連ねていました。街が大きく変わっていったのが、1964年に開催された前回の東京オリンピック。高いビルなんてほとんどなかった街に次々と大きな建物が立ち並び、段々と今の街のような形に近づいていきました。

日本橋

日本橋は、地元愛の強い人が多い街だと思います。その結束が表れるのが、江戸時代から続いているべったら市。2日間の開催中は街の様子が一変するほど、多くの人でにぎわいます。私はべったら市の保存会の会長をしているんだけど、お祭りの開催期間は2日間でも打ち合わせは10回くらいあるし、そのたびに飲み食いするもんだから、そりゃ結束も強くなるよね(笑)。最近はこのあたりにもマンションが増えてきて、他の場所から来た人も多いけど、お祭りのときにはそういう方たちにも声をかけて色々と手伝ってもらっていて、交流の場にもなっていますよ。僕にとってもべったら市は生きがいと言ってもいいほどです。

初代が将軍家お抱えの刷毛師で、幕府から屋号を与えられた「江戸屋」。創業したときは刷毛の専門店でしたが、ブラシの分野でも徐々に認められていきました。幕末のころに黒船がくるっていうんで、今でいうお台場に大砲を設置したんですね。弾を打つと、火薬のカスが砲身にいっぱいついてしまう。そこでそのカスをはらうブラシを考案したところ、幕府から認めてもらい、銀製の賞牌を授与されたんです。うちで販売しているものはいわば道具。主役ではないんだけど、自分に合ういい道具を使うことは気持ちまで整えてくれるはずです。自分がどんなときに使うかを考えながら、実際に触れてみながら選ぶといいと思いますよ。

おすすめスポット

「べったら市」の中心となるのが「宝田恵比寿神社」です。名物のべったら漬けを始め、さまざまな露店が500店ほど出店し、多くの人で賑わいます。コロナ禍でしばらく開催できませんでしたが、昨年は3年ぶりに開催されました。今年も10月19日(木)と20日(金)に開催される予定ですので、足を運んでみては。

宝田恵比寿神社
濵田さんが保存会の会長も務める「べったら市」。
その中心となる「宝田恵比寿神社」
宝田恵比寿神社:
東京都中央区日本橋本町3-10-11
スポット
日本のワザで生活を整える

暮らしのスポット

洋服ブラシやつづら、ほうきなど、職人の高い技術が受け継がれている老舗店が日本橋は数多く残っています。日本のワザで生活を整える、日本橋のスポットをご紹介。
西荻窪
SPOT01
取り扱いは3000種以上。刷毛やブラシの専門店

江戸屋

江戸屋
江戸屋
江戸屋
刷毛とブラシの専門店で、扱う商品は3000種類以上。現在は日本全国の職人が生産を担っており、質が高く長持ちすると信頼を集めている。一般向けのヘアブラシや化粧ブラシなどと、業務用の清掃ブラシや刷毛などを幅広く展開。ヘアブラシ一つとってもさまざまな種類があるため、実際にお店に足を運んで手に取って選ぶのがおすすめ。
東京都中央区日本橋大伝馬町2-16
SPOT02
天然素材で作られる美しさと丈夫さ

岩井つづら屋

岩井つづら屋
岩井つづら屋
岩井つづら屋
文久元(1861)年創業の東京最後のつづら専門店。つづらとは、竹で編んだかごに和紙を貼り、柿渋や漆などを塗って仕上げたふたつきの箱のこと。衣類を入れるものから、小物入れや書類入れとして使えるものまで幅広く展開している。天然素材で作られるため美しく、丈夫なのが魅力。壊れても修理をして長く使うことができ、SDGS意識の高まりから近年再び注目が集まっている。
東京都中央区日本橋人形町2-10-1
SPOT03
丁寧な「草選り」が高品質の証

白木屋傳兵衛

白木屋傳兵衛
白木屋傳兵衛
白木屋傳兵衛
天保元(1830)年創業の江戸箒の専門店。一度使うと手放せなくなると評判の秘密は、「草選り」を行っていること。産地から届いた原料を性質の違いで細かく20等級にわけ、そのなかで職人の基準に適合した上位3等級の草のみを採用している。材料の質だけでなく、軽さ、柄の長さなど、現代人の生活にあわせた約40種類を販売。店頭では試し掃きも可能で、自分にフィットするものを選ぶことができる。
東京都中央区京橋3-9-8 白伝ビル1F

堺(大阪)

注染の様子(写真はナカニ)

堺市は大阪の中南部に位置する政令指定都市。府内では2番目の大きさと人口の多さを誇ります。海外との交易も盛んだった街で、室町時代には「東洋のベニス」と呼ばれ、日本屈指の産業都市となっていきました。そんな堺市で明治20年頃から発展しはじめたのが、和晒(わざらし)業。晒を染める技術として「注染(ちゅうせん)」や「捺染(なっせん)」などの技術が発達していき、その技術を活かした手ぬぐい作りに特化した街になっていったのです。現在も堺市内の、津久野・毛穴地域では手ぬぐいに関連する企業が約300社ほどあるといわれています。

堺市は天王寺や難波など大阪の中心部にも電車で10分程度と、ちょうどよい距離感にあり、暮らしやすさも抜群。商人の街として栄えた堺市には、デパートや大型スーパーだけでなくにぎやかな商店街も数多くあるため、買い物には事欠きません。またエリアによって特徴が異なるのも堺市の魅力。都心部、大阪湾や羽曳野丘陵などの自然。さらに世界遺産ともなっている巨大古墳群「百舌鳥・古市古墳群」があったりと、さまざまな表情を見せる街です。

堺(大阪)
SPOT01

ナカニ

ナカニ
1966年創業の染工場。手ぬぐいや浴衣の染色加工などを行っていたが、注染という技術を後世に残すために、工場発のブランドとして「注染手ぬぐい『にじゆら』」を立ち上げ。手ぬぐいのある暮らしをもっと身近にしてほしいと、現代のライフスタイルにあった商品作りを行い、人気を集めている。オンラインショップの他、ルクア大阪店、京都三条店、神戸店、ここことにじゆら、東京染めこうば店、東京日本橋店の直営店を運営。
大阪府堺市中区毛穴町338-6
SPOT02

竹野染工

竹野染工
創業以来、「ロール捺染」に特化した染めを行ってきた手ぬぐい工場。大量生産に適したロール捺染は、小ロットの注文が多い近年では需要がなくなってきており、全国でも職人が減少している。この希少な技術を残そうと生み出されたのが、ロール捺染を使った「リバーシブル染色」。1枚の布の表と裏を違う色に染め分ける、ほかにはない染め方が特徴で、「hirali」、「Oo[ワオ]」の2つの自社ブランドも展開している。
大阪府堺市中区毛穴町355-3

別府(大分)

流れる波のように美しい四海波花籠(写真は別府市竹細工伝統産業会館)

大分県の東海岸のほぼ中央に位置する別府市。その別府市の伝統工芸品が、「別府竹細工」です。歴史はとても古く、奈良時代に書かれた「日本書記」にも表記があるほど。特徴は、別府が日本一の生産地を誇るマダケと呼ばれる竹の品種を使用し、8つの編組(へんそ)という技法によって手作業で作られること。現在ではざるやかごなどの実用品に加え、照明器具やバッグなども作られています。加工が非常に難しく、高い技術を要するため、美術工芸品としても注目を集めており、1967年には生野祥雲斎氏が竹工芸では初めて人間国宝に、1979年には国から「伝統的工芸品」に指定されています。

別府市は大分市に次いで人口が多い街。古くから温泉地としてにぎわってきた観光都市で、市内には別府八湯とよばれる8つの温泉エリアがあり、湧出量は日本一です。観光地として栄えてきた街ですが、自宅でも温泉を楽しめるエリアもあり、温泉好きにはたまらない街。扇状地のため坂が多い地形ですが、山々や高原、別府湾など豊かな自然を有しており、美しい景観が魅力です。

別府(大分)
SPOT01

竹楓舎

竹楓舎
伝統工芸士、一級竹工芸技能士の大谷健一さんが主宰を務める、竹かご制作工房。竹の持つ風合いを生かしながら、毎日の生活にやすらぎを与えられる竹かごを目指して製作を行っている。高い技術を持ち、別府市などが主催する「くらしの中の竹工房展」での受賞歴も多数。全国で展示会も行っている。
info@chikufusha.com
SPOT02

別府市竹細工伝統産業会館

別府市竹細工伝統産業会館
大分県で唯一、伝統的工芸品の指定を受けている「別府竹細工」の展示をしている施設。竹の紹介から竹細工の歴史、竹の編み方が学べるほか、日用品からアートまでさまざまな竹工芸品を観賞できる。短時間で作れる竹鈴や花かごの製作体験も可能(要予約)。併設しているSHOP&CAFEでは、竹製品の購入のほか、竹林を見ながらコーヒーを楽しめる。
大分県別府市東荘園8-3

街をよく知る“目利き”に聞いてみよう

蔵造りの町並みで知られる川越や、「住吉っさん」を擁する大阪市住吉区、世界文化遺産がすぐそばにある堺市など、日本の文化や歴史に触れながら暮らせる街を紹介します。気になる街があれば、目利きの話をチェックしてください。
File 01

蔵造りの町並みで知られ
都心へのアクセスに優れている

川越(埼玉)
秀拓 賃貸部
秀拓 賃貸部
File 02

「住吉っさん」こと住吉大社は
地元民の信仰を一身に集める

大阪市住吉区(大阪)
イエストア
イエストア
File 03

太古の昔から栄えつづける
大阪第2の都市

堺(大阪)
ブリスマイホーム
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