さまざまな事情を経て、新たな住み家を見つけた人たち。今回は、「脱サラして故郷の舞鶴市で漁師をしたい」というご主人の提案があったことから、Uターン移住を決心したというまりげさん一家を紹介します。牡蠣と四兄弟を育みつつコミックエッセイストとして活動する日々には、どんなストーリーがあるのでしょうか?
ライター:鈴城久理子
CONTENTS
01| ご主人の「故郷で漁師を継ぎたい」 という提案から舞鶴へ移住を決意!
舞鶴湾に面し、海と山に囲まれた自然豊かな土地とあって、移住者は年々増えているそう
人口約7万7千人。京都府北部の中丹地域に位置し、日本海に面する港町、舞鶴市。海と山、豊かな自然に囲まれつつ交通の利便性もよく、都市部からも車なら2時間以内でアクセス可能という暮らしやすさが魅力です。まりげさん一家が埼玉県からこの舞鶴市に移住してきたのは、7年前のこと。
「舞鶴市は夫の生まれ故郷なんです。移住前は私が生まれ育った埼玉県に住んでいたのですが、夫から『脱サラして故郷の舞鶴で漁師の仕事を継ぎたい』という提案があり、Uターン移住を決心しました」。
100年余りの歴史を持つ赤れんが建造物など、見所もいっぱいの舞鶴市
移住先の舞鶴市には、美しい海や山、畑のほかさまざまな見所が点在しています。その代表的なものの一つとして挙げられるのが、明治33年から大正10年頃に建てられた赤れんが倉庫。この舞鶴赤れんがパークでは毎年「赤れんがフェスタ」という観光イベントが行われていて、まりげさんご夫婦も参加するようになったそう。
五老スカイタワーから見える舞鶴湾のリアス式海岸。牡蠣の養殖地としても有名
舞鶴市のもう一つの魅力は、なんといってもおいしい食べ物。なかでも舞鶴港で水揚げされた魚介類は、わざわざ遠方からも目当てに訪れる人が多いほど有名です。移住後はそんな“おいしいもの”を育むことに、まりげさんご夫婦も貢献することになります。
ご主人が家業の漁業を継いだ現在は、まりげさんも牡蠣の養殖業をサポート
「岡山八朗兵衛商店」という屋号のもと、舞鶴の海で獲れた牡蠣や魚などを販売するネットショップをオープン。さらにもう一つの家業である農業も並行して継ぐことになりました。まりげさんも家事や育児、本業のコミックエッセイを描くかたわら、家業をサポート。ネットショップでの販売のほか、「赤れんがフェスタ」でのイベントなどにも参加するなど、多忙な日々を送るようになりました。
02| 育児に精一杯の時の移住計画
新しい土地での暮らしは不安もたくさん
知り合いがいない土地での暮らしに、最初は戸惑ったことも
現在はコミックエッセイの著書を発刊するなど、順調な暮らしに見えるものの、移住の話が持ち上がったときは不安がいっぱいだったというまりげさん。
「夫から移住したいと提案を受けた当時、息子たちはまだ2歳と0歳だったんです。育児で精いっぱいの頃だったので、自分の知り合いがいない土地で新しい暮らしを始めることに、大きな不安がありました」と当時を回想しつつ話してくれます。
03| 築100年の古民家をリノベーション
家族で過ごす時間も増えて幸せを実感
自然豊かな土地柄ゆえに、ヤモリの住み家となっていたリノベーション前の古いキッチン
移住先で選んだ住まいは、5年もの間放置されていた築100年の古民家。当然ながらすぐに住むことはままならず、仮住まいをしつつ家業の合間に夫婦でセルフリノベーションをすることに。
「本音を言うと、最初はこの古民家を一体どうするつもりなの? と心配したくらいなんですよ。でもそれぞれの意見を尊重しながらコツコツとリノベーションをしたことで、大好きな空間に生まれ変わりました」。
暗くて使いにくかったキッチンが、心地よいスペースに大変身!
一部は業者にも手伝ってもらい、2年ほどかけてフルリノベーション。かかった費用は約400万円だったそう。
「途中で心が折れそうになったこともあったのですが、業者さんはもちろん手伝ってくださった友人の励ましで、何とか完成することができました。私たち家族をあたたかく迎えてくださった村のみなさんに、心から感謝しています」。
迷路のような状態だった土間は、開放的なダイニングに
リノベーションしたわが家だけでなく、暮らし自体も大きく変わったまりげさん一家。
「埼玉に住んでいた頃は、夫が往復3時間かけて通勤していました。帰宅したときには子どもたちはもう寝ていたので、家族で一緒に夕食を食べられるのって週末くらいだったんです。今は毎日家族全員で食卓を囲み、その日の出来事などおしゃべりを楽しむことができるので、とても幸せだなって実感しています」。
インスタでは牡蠣やタコのアヒージョを使った食べ方なども紹介
普段の食卓に並ぶのは、丹精込めて育てた魚介類や野菜が中心。インスタグラムでは商品として販売している加工品を宣伝しつつ、おいしい食べ方も紹介しています。
牡蠣を使った料理のレパートリーを広げることにも挑戦中
ご夫婦ともに自営業になってから、台所に立つ時間が増えたというまりげさん。埼玉に住んでいた頃はアパレル関係の仕事に就いていたため、ゆっくり料理を楽しむことが難しかったそう。時間にゆとりができたことが、移住の最大のメリットとなりました。
ありのままの自然に触れられることも、田舎暮らしの醍醐味
幸せな暮らしの中で、唯一の困りごとは虫や動物が多いことだとか。「ムカデが布団に入ってきたり、コウモリやツバメ、ヘビが家の中にいたり。それと、せっかく育てた畑の野菜をイノシシやサル、シカが食べてしまったり……。田舎暮らしはそう甘くないな、と感じますね」と笑って教えてくれました。
04| 移住後の充実した日々
農業、牡蠣の養殖、在宅でマンガを描く日々
商品パッケージのイラストやデザインも手掛けている
移住後、地元の友人への近況報告のつもりで始めたインスタグラムの育児絵日記。いつの間にか活動範囲が広がっていき、今ではコミックエッセイストとして注目を集めるようになりました。それ以外にも、お店の商品パッケージのイラストなども手掛けています。出版社やクライアントとの打ち合わせは、すべてオンラインで進めているそう。
練りに練ってようやく完成した商品のラベルデザイン
パッケージやラベルのほか、名刺やイベントの際の看板など、「岡山八朗兵衛商店」のツールデザインは、すべてまりげさんの担当。どれも舞鶴で獲れる新鮮な魚介類をモチーフにしていて、カラフルな色使いと個性的なタッチが目を引きます。
舞鶴市が行っている「大浦夢プロジェクト」の横断幕のイラストを制作
また、イラストを通じて地元との関わりも持つようになりました。2年半前には舞鶴市大浦地区のプロジェクトにも参加。「2メートル×4メートルの横断幕で、今まで描いた中で一番大きな作品でした。イラストはいつも通りiPad Proで描いたのですが、画面上だと10センチくらいの絵が10倍の大きさになるんです。描いているとき、とても緊張しましたね。今は舞鶴市の大浦会館に飾ってあります」。
お米のほか、ニンジン、白菜、大根、ねぎ、じゃがいもなどの野菜も育てている
漁業と農業、二つの家業を継ぎ、一年中体を動かすようになったまりげさん。どちらも初心者だったため、道具を使いこなすことから教わりました。少しずつ作業にも慣れてきて、毎年の収穫時期が待ち遠しいほどだそう。
庭で摘んだ花は屋根裏部屋に吊るしてスワッグなどに使用
毎日せわしなく体を動かして、充実した日々を過ごすまりげさん。舞鶴は最高の住み家と言います。「今は私の両親も呼び寄せて近くで暮らしていますし、子どもたちが小さいのでまたどこかに移住するということは考えられないですね」。体験者として移住についてのアドバイスを訊ねてみると……。
「移住する前は不安が尽きないと思いますが、覚悟を決めて『エイヤッ!』と飛び込んでしまえば、きっと新しい出会いや発見があるのではないでしょうか。特に最初の一年間は苦労も多いと思います。でも後からその一年を振り返ってみると、『いろいろと不安があったけれど、ここまで何とかやってこられた』という経験が大きな自信につながると思います」。
まりげさんのブログはこちら!
https://marige333.blog.jp/
岡山八朗兵衛商店のインスタグラムはこちら!
https://www.instagram.com/okayamahachirobe/
05| まとめ
舞鶴市では移住者に空き家の改修工事費用の一部を補助したり、東京圏から舞鶴市へ移住して就業する移住者に対して支援金を支給したりするなど、さまざまな支援を行っています。もし移住を考えているなら、舞鶴市もぜひ候補に入れてみませんか?
この記事を書いた人
鈴城久理子 ライター
雑貨紹介や料理、インテリアなど暮らし系の記事を中心に執筆することが多いライター。ただいまメダ活実践中。