移住することでライフスタイルがガラリと変わる。今回は、そんな専業主婦から社会復帰を遂げた堀内 愛さんに、経験にもとづいた移住のステップを指南してもらいました。仕事と子育ての両立を図れると信じ、静岡県浜松市から山形県・大江町へ家族で移住。現在は、大江町の地域おこし協力隊 新規就農支援担当として、地域の広報活動に励んでいます。
ライター:鈴城久理子
CONTENTS
01| 移住step1:就農希望のご主人の希望を叶える移住先をリサーチ
堀内さん一家の移住を後押ししてくれた、大江町就農研修生受入協議会「OSINの会」のサイト
①オンラインセミナーがきっかけで大江町を検討
ご主人が就農希望だったことから、家族で移住を考えるようになったという堀内さん。どんな移住の方法があるのかを模索していた際、山形県が開催した移住オンラインセミナーに参加。そこで農家の人の話を聞いて興味を持ち、「新・農業人フェア」に参加したといいます。「『OSINの会』の農家の方のお話を伺って、小さな子どもがいても、ここなら移住して就農できるんだと思いました」。
大江町では就農希望者に向け、定期的に現地見学会を行っている
②現地見学会に参加して静岡から移住を決意
その後、現地見学会に参加して実際に農家の人々との触れ合いを楽しみました。「参加した際、ここでは子育て支援が手厚いと感じました。みなさんの優しい人柄に触れることができて、仕事と子育ての両立が図れるのではないかと思ったんです。以前からもっと自然に根づいた生活を送りたいと考えていたということもありました」。こうして浜松市から大江町への移住を決めたのだそう。
情報収集のため堀内さんが閲覧したサイト「おおえぐらし」。大江町地域振興課が運営している
③心配ごとは役場に問い合わせて少しずつ解決
移住する決心をしたものの、言葉も気候も違う環境で知り合いもおらず、本当に生活できるのか、様々な心配や不安が頭をよぎります。見知らぬ土地での子育ての環境、また数年専業主婦だった自分の社会復帰に関する手続きは、わからないことだらけ。そこでインターネットでの情報収集はもちろん、直接役場に電話やメールで問い合わせ、少しずつ心配事を減らしていきました。
02| 移住step2:「地域おこし協力隊」の隊員に就任、広報活動に邁進
現地見学会の就農支援策を説明している様子
①メインのミッションは新規就農者の支援
2023年の春、遂に家族で大江町に移住。同時に、大江町の「地域おこし協力隊」の隊員に就任しました。「地域おこし協力隊」は隊員になって地域で様々な活動をすることで報酬を得られるという、移住者にはうれしいシステム。堀内さんに課せられた主なミッションは新規就農者の支援で、大江町就農研修生受入協議会「OSINの会」の広報活動が主な業務でした。
農家さんと一緒に「新・農業フェア」に参加
②就農ツアーの開催補助やSNS運用など多岐に渡って活動
具体的な広報活動としては、大江町で行われる就農ツアーの開催補助のほか、東京で行われる「新・農業人フェア」などのイベントでの就農希望者の呼び込みの仕事など。また、公式HPやブログなどSNSの運用を通じて、農業のリアルな現状を発信しています。
03| 移住step3:大江町での暮らしに 活動を通して少しずつなじんでいく
左沢町と漆川村が併合して誕生した大江町
雪が積もると、また違った表情を見せてくれる
①町の特徴を把握しながらゆっくりと町民に
堀内さんが移住した大江町は、山形県のほぼ中央部に位置し、約8割は森林という自然豊かな場所。東に蔵王連峰、西に朝日連峰、北に月山を望むという山に囲まれた地形で、日本三大急流の一つ、最上川が流れています。人口は7,269人(令和6年1月末現在)、小さいからこその人の温かみが感じられます。「『地域おこし協力隊』の活動のおかげで、思いのほか早くなじめたかなと思っています。町内へ向けたお知らせなどに活動の様子が掲載されたこともあって、町民のみなさんに声をかけていただくことが多かったですね」。
夏に行われる水郷大江夏まつり灯ろう流し花火大会は、地元民の大切なイベント
②地元民が楽しみにしているイベントの情報を収集
大江町では一年を通して様々なイベントが行われており、なかでも人気なのが8月15日に行われる「水郷大江夏まつり灯ろう流し花火大会」。そのほか、2月には「旧正初市」、3月には「大江のひなまつり」、9月には「大江の秋まつり」など、枚挙に暇がないほど。「活動を通じて、こういった公のイベントやサポートについての情報が入ってくるので、とても助かっています」。
赤みがかった白色の薄い皮に包まれた白桃は名産品の一つ
③様々な種類の果物などの農産物を積極的にPR
大江町は果樹の農業が盛んで、堀内さんもそのPRに力を入れています。お土産としても人気の白桃は「川中島白桃」「アカツキ」という品種が主で、どちらも大ぶりで糖度が高いのが特徴。収穫時期は「川中島白桃」は8月下旬から、「アカツキ」は7月末からだそう。「大江町の水は清らかなので、自然の恵みがたっぷりの農産物が本当においしいんです。知り合いの方に果物や野菜などをいただくこともあるんですよ」と堀内さん。
山形県の果物の代名詞でもあるラ・フランスは大江町でも栽培が盛ん
大玉で甘い果実が特徴のスモモ「サンルージュ」
そのほか、ラ・フランスやスモモ、りんごなど大江町は果物の名産地として県内外で知られています。堀内さんも参加したという現地見学会では、時期によって収穫体験や試食などの楽しみもあるのだそう。
山菜の王様といわれるタラの芽をはじめ、山菜もたくさん採れる
8月になるとお米の花が咲く。数時間だけ開花するという幻の花
「大江町の魅力は、自然が豊かで町民のみなさんが優しいこと。移住した当初は言葉がよくわからなくて苦戦しましたが、みなさんがゆっくり話してくれるので少しずつ慣れていきました。冬はちょっと厳しさを感じる環境ですが、植物や動物、昆虫など多種多様な生き物の移り変わりを見られるのは、私にも子どもたちにとっても大きな刺激になっています」。
04| 移住step4:支援制度利用して地元のネットワークになじむことが大切
新規就農者への支援の一環として住宅の貸し出しなどもある
①使える支援制度は最大限利用する
地域おこし協力隊の活動を行うことで、周囲に馴染みやすくなったという堀内さんから、移住する場合のアドバイスをもらいました。
「私の場合、活動で町内外に出かけることも多く、土地勘をつかむのがやや早かったように思います。でも、地域おこし協力隊の活動をしない場合でも支援を受けることができますよ。大江町では新規就農者へ向けて、色々な支援を行っています。例えば、西山杉の木を使った大江町型住宅の貸し出しがあります。家族を連れて就農研修を行う場合に貸し出してもらえるシステムで、家賃補助(上限4万円/月)と光熱費補助(上限1万円/月)を支援してもらえます」。
「大江の秋まつり」の様子。囃子屋台が町を練り歩く
②自分から意識的にアクションを起こす
「実際に住んでみないとわからないこともたくさんあるので、ある程度の情報を集めたら思い切って飛び込んでみるのもいいのではないでしょうか? 使える支援などは利用し、意識的に地元のネットワークの中に入っていく。町の中を歩き回ってみる、知らないことや困ったことがあったら素直に誰かに頼る。そんなふうに少しでも行動を起こすことが大切だと思います」。
※「OSINの会」の公式HPとインスタグラムはこちら!
http://www.osinnokai.jp/
https://www.instagram.com/osinnokai/
※「おおえぐらし」の公式HPはこちら!
https://www.town.oe.yamagata.jp/oegurashi/
05| まとめ
「地域おこし協力隊」の活動を通じて得た移住後の幸せ。移住を検討する際、このようなケースもぜひ参考にしてみてください。
この記事を書いた人
鈴城久理子 ライター
雑貨紹介や料理、インテリアなど暮らし系の記事を中心に執筆することが多いライター。ただいまメダ活実践中。