公開日: 2024.05.02 最終更新日: 2024.05.02

【私の移住ストーリー】~自分の人生を生きるために群馬県中之条町へ移住、花き農家として新規就農~中島正篤さん&桜さんのケース

【私の移住ストーリー】~自分の人生を生きるために群馬県中之条町へ移住、花き農家として新規就農~中島正篤さん&桜さんのケース

自然の中で、季節ごとの花の美しさを堪能できるのもこの仕事の魅力

「誰かに決められた枠の中ではなく、自分で人生を切り拓いていきたい」。そんな意思を持ち、東京の北区から群馬県中之条町へと移住を決心した中島夫妻。もともと興味のあった農業園芸の道を選び、夫婦二人で花き農家を営んでいます。移住して4年、どんな人生のストーリーを送っているのでしょうか?

ライター:鈴城久理子

ライター:鈴城久理子

01| 誰かに決められるのではなく、自分で決めた農業園芸の道へ

自然豊かで風光明媚なこの街に引っ越してきたことで、心身ともに健康になったという正篤さん 自然豊かで風光明媚なこの街に引っ越してきたことで、心身ともに健康になったという正篤さん

群馬県の北西部に位置し、新潟県と長野県に隣接する中之条町。昭和30年に中之条町、沢田村、伊参(いさま)村、名久田(なくた)村が合併し、平成22年には六合(くに)村を編入して現在のような街になりました。広さは439.28平方キロメートル、14,436人(令和6年4月1日現在)が住んでいます。4年前、野反湖や芳ヶ平など自然美にあふれるこの街に、中島夫妻は移住してきました。

中之条四万にある「日向見(ひなたみ)薬師の足湯」は、国指定重要文化財に指定されている無料の足場 中之条四万にある「日向見(ひなたみ)薬師の足湯」は、国指定重要文化財に指定されている無料の足場

中之条町には数々の温泉があり、なかでも人気なのが古くから旅人の疲れを癒してきたといわれる四万(しま)温泉。草津温泉や伊香保温泉とともに「上毛三名湯」のひとつとして数えられ、「四万(よんまん)の病に効く伝説の湯」として鎌倉時代から親しまれてきました。もちろん、中島さん一家も家族で足を運んだことがあるそう。

毎年1月に行われる「鳥追い祭」は、冬の風物詩の一つ 毎年1月に行われる「鳥追い祭」は、冬の風物詩の一つ

「鳥追い祭」「お茶講」など、古くからの祭りや伝統芸能民族行事が数多く現存しているのも特徴です。鳥追い祭は、田畑の作物を荒らす鳥や獣を追い払い、五穀など作物の豊かな実りをはじめ、町内厄除や家内安全を祈願したことが始まりといわれています。

現在は、「ハナボウズ」という屋号で活動中 現在は、「ハナボウズ」という屋号で活動中

この中之条町を移住先に選んだのは、サラリーマンとして働いていた正篤さんが生き方を変えたいと感じたことがきっかけでした。「人に決められた枠の中の仕事ではなく、自分ですべて決断して生きていきたいと思ったんです。また、サラリーマン時代に鬱になったのも移住の理由の一つでした」。もともと園芸農芸に興味があり、就農するにも生活するにもベストと考えたのが、中之条町だったそう。

02| 住まいと仕事に不安を持ち、桜さんは地域おこし協力隊員に

夏は暖かく、冬は寒い。四季がはっきりしている中之条町 夏は暖かく、冬は寒い。四季がはっきりしている中之条町

移住するにあたり、まず悩んだのが家と仕事でした。「住む場所と仕事がなければ、やっていけないのではないかという不安がありました。そこで移住にあたり、妻が地域おこし協力隊員に入隊し、『中之条ガーデンズ』に勤めることにしたんです」と正篤さん。中之条ガーデンズは全国でも珍しい回廊式の庭園で、全国から観光客が訪れる地元の人気スポット。ここに桜さんが勤務し、正篤さんは新規就農者としてのスタートを切ります。

03| 中之条町は子育て支援が厚く、ファミリーで住みやすい

花き農家の先輩から譲り受けたドリコスとオダマキの種まきを、親子で楽しむ 花き農家の先輩から譲り受けたドリコスとオダマキの種まきを、親子で楽しむ

家と仕事に関する不安は大きかったものの、移住生活は順調にスタートし、少しずつ花き農家としての形を調えていきました。うまく軌道にのれたのも地元の人々の協力があってこそだったそう。「中之条町には移住コーディネーターが常駐していて、住む場所や地域とのつながりのきっかけをつくってくれるんです。おかげで大いに助けられました。それと、国や自治体からの新規就農者支援を利用したことも大きかったと思います」。

この日は、地元の「大衆酒場ニューサイトウ」で、縁日と称した直売会を開催 この日は、地元の「大衆酒場ニューサイトウ」で、縁日と称した直売会を開催

今では不自由なく暮らしていますが、移住前にはこんなユニークなエピソードもありました。「移住する前、移住コーディネーターとの下見や、地域の人々と話をするなかで、ここがどれだけ田舎かを熱弁されました。『コンビニがない。買い物に時間がかかる。人間より獣が多い』とか(笑)」。

りんご畑の収穫祭に出店した際、木登り体験にチャレンジ りんご畑の収穫祭に出店した際、木登り体験にチャレンジ

毎年行われている「中条まちなか5時間リレーマラソン」の走者として参加 毎年行われている「中条まちなか5時間リレーマラソン」の走者として参加

地元のイベントにも積極的に参加し、人とのつながりを広げている二人。移住について熱弁された懸念点も、実際に暮らし始めるとまったく問題がなかったといいます。「オフの日は基本インドアで過ごすことが多いので、都内で暮らしていた頃とあまり変わりません。コンビニが近くにないのは、逆にお金のむだ使いが減ってよかったと感じています。また、保育料や子供の医療費無料など、子育ての支援が厚いのはありがたいですね。今も都内で暮らしているなら、子どもを授かることはずむかしかったのではないかと思います」と桜さんは話します。

04| ハーブなどを栽培する花き農家として夫婦で活動

すくすくと育ってきたオランダセラムを見て、二人とも満足そう すくすくと育ってきたオランダセラムを見て、二人とも満足そう

収穫した花やハーブは作業場に移動して丁寧にチェックし、出荷の準備をする 収穫した花やハーブは作業場に移動して丁寧にチェックし、出荷の準備をする

二人が花き農家を営む中之条町の六合地区は、切り花生産が盛んで「六合の花」として知られる土地柄。宿根草や山野草を中心に、高地ならではの多種多様な草花に彩られています。「ハナボウズ」では主に首都圏の市場へ出荷をしているそう。桜さんは妊娠、出産を機に地域おこし協力隊員を退隊し、現在は一緒にお店を切り盛りしています。

ベニカノコソウやアストランティアローマなど、標高が高い場所でも美しく咲く花やハーブを栽培 ベニカノコソウやアストランティアローマなど、標高が高い場所でも美しく咲く花やハーブを栽培

出店の際には、切り花だけでなく街のドライフラワー加工工場で生産されているドライフラワーも販売 出店の際には、切り花だけでなく街のドライフラワー加工工場で生産されているドライフラワーも販売

中之条ガーデンズで行われたりんご畑の収穫祭に出店 中之条ガーデンズで行われたりんご畑の収穫祭に出店

移住して4年。自分たちを受け入れてくれたこの街に、日々感謝しながら活動する中島夫妻。「独立就農をしてからは、地域の祭りやマルシェに参加し、積極的に出店するようにしています。自分たちのお店に時間をかけ、お金を払う価値を見出してくれる方々にわれわれの時間とお金を返していければいいな、と考えています」。

畑に建つ道祖神は、2023年の中之条ビエンナーレに出展したアーティストから譲り受けたもの 畑に建つ道祖神は、2023年の中之条ビエンナーレに出展したアーティストから譲り受けたもの

現在は、ほかの土地への移り住むことは考えていないという二人。実際の経験からこんなふうにアドバイス。

「移住する前も移住して数年たった今も、正直不安は続いています。けれど、希望があればやっていけるんじゃないかと思います。移住を考えている方が、移住後の生活を想像できるのであれば、その時点で新しい土地での生活に希望を見出せているんじゃないでしょうか」。


※中島夫妻(ハナボウズ)のインスタグラムはこちら!
https://www.instagram.com/hanaboze92/

05| まとめ

もし現状の暮らしに満足していなければ、新天地を求めて移住することで道が開けるのかもしれません。そんな中島夫妻の経験談は、とても貴重なものですね。

鈴城久理子

この記事を書いた人

鈴城久理子 ライター

雑貨紹介や料理、インテリアなど暮らし系の記事を中心に執筆することが多いライター。ただいまメダ活実践中。

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