四国の南西部に位置する高知県。南を太平洋、北を四国山地に挟まれ、扇を広げたように東西に広がります。四国四県で一番大きく、森林面積が全国で一番多い森林県でもあります。また、最後の清流として名高い四万十川や仁淀川、吉野川などの河川が県内を流れ、海・山・川の自然あふれる地です。総人口は、全県の中で約65万人と、全国で3番目の少なさ。人口減少が続いており、県、各市町村ともに移住者の受け入れに積極的です。第一次産業の占める割合が高くなっており、温暖な気候を生かした農業、豊富な森林資源を活用できる林業、黒潮の流れる太平洋の豊かな漁場での水産業と、自然の恵みを生かしています。第一次産業への就業を促進する施策も整っているので、自然を相手に生活を営みたい人にはおすすめの県といえそうです。
CONTENTS
01| 概要:豊かな自然が魅力だが人口減少が課題
四万十川と佐田の沈下橋
【地理】南部の太平洋、北部の四国山地、数々の清流がつくり出す自然美
四国の南側に位置し、東西に細長く、扇を開いたような形をしている高知県。北側を四国山地で愛媛県と徳島県に接し、南岸は太平洋に面しています。東西に延びる海岸線は約700kmにも及び、西部は岬や湾が複雑な海岸線を描くリアス式海岸、東部は隆起海岸で平坦な砂浜が続きます。北部の四国山地は、標高1,000m超の険しい山々が連なります。平地は少なく、四国山地から流れ出る川の沿岸と海岸に沿った部分に分散して広がります。
面積は約7,104平方キkmで四国四県では一番大きく、四国全域の約38%を占め、全国では18番目の大きさです。県域の84%は森林が占めており、森林の占める割合が全国で1番多い森林県です。
日本最後の清流として名高い四万十川、仁淀ブルーといわれる澄んだ水の流れの仁淀川はじめ、数々の清流が県内各地を流れます。また、沿岸部は室戸岬、足摺(あしずり)岬に代表される絶景ポイントが数多くあるなど、海・山・川に恵まれた自然豊かな土地です。
【気候】冬が厳しい北部を除けば気候温暖で暮らしやすい
四国カルスト
県域の南部全体が太平洋に面しており、海岸部は沖を流れる黒潮の影響を受け、季節風が四国山地に遮られることから冬でも温暖な気候が特徴です。一方、山間部は内陸性気候で、冬は厳しく、積雪も見られます。県庁所在地の高知市の日平均気温は、1月で7度前後、8月で28度前後。日最低気温は1月で2度前後、氷点下になることはほとんどありません。日最高気温は7~9月で30度を超えていますが、35度以上の猛暑日はほとんどないようです。
なお、夏場は黒潮からの南寄りの湿った気流が四国山地に吹き付け雨をもたらし、山間部では平年の年間降水量が3,000mmを超えるところも多く、東部山間地は4,000mmを超える日本有数の多雨地帯でもあります。また、平野部を含め県内のほとんどの地域が2,000mm以上となっています。
【人口】全国で3番めの少なさで、将来はさらに下位に?
高知市の街並み
高知県の総人口は、2024(令和6)年4月の時点で65万9,592人となっており、66万人を割り込んでいます。自然減(死亡者数が出生数を上回る)、社会減(転出が転入を上回る)ともに拡大しており、この1年間で1万人弱の人口減です。ちなみに、1955(昭和30)年の国勢調査では約88万人をピークに、その後増減を繰り返したのち、1985(昭和60)年以降は減少を続けています。都道府県別の人口を見てみると、鳥取県、島根県に次いで3番目の少なさです。
なお、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した2050年までの地域別の推計人口では、高知県は約45万人と推計されており、これは鳥取県に次いで全国2番目の人口の少なさとなります。
県内市町村別の人口では、2023(令和5)年10月現在のデータで上位の市町村は、県庁所在地の高知市が317,901人、南国市が45,839人、香南市が31,951人、四万十市が31,303人、香美市が25,670人となっています。
【地域】地理的な特徴で大きく6つの地域からなる
高知城天守閣と追手門
11市6郡17町6村で構成される高知県。県内は大きく6つの地域に分かれます。東部から西部へかけて以下のよう地域分けされます。
東部エリア:室戸市、安芸市、東洋町、奈半利町、田野町、安田町、北川村、馬路村、芸西村
物部川エリア:南国市、香南市、香美市、高知市
嶺北エリア:本山町、大豊町、土佐町、大川村
仁淀川エリア:土佐市、いの町、仁淀川町、佐川町、越知町、日高村
奥四万十エリア:須崎市、中土佐町、梼原町、津野町、四万十町
幡多エリア:宿毛市、土佐清水市、四万十市、大月町、三原村、黒潮町
【産業】第1次産業の割合が高く、第2次産業は全国でも下位
柏島のマグロの養殖場
2021(令和3年)度の高知県県民経済計算の概要によると、産業別のGDP構成比は、第1次産業が3.0%、第2次産業が18.3%、第3次産業が77.6%となっています。日本全体では第1次産業1%、第2産業26.0%、第3次産業72.7%となっており、第2次産業の比率がかなり低く、第1次産業の割合が高くなっています。
高知県の県内総生産は、都道府県別で見た場合、全国で2番目に小さい規模となっています。その中で、農業生産額は全国で28位、林業と漁業は17位と健闘しています。一方で、製造業の製造品出荷額は全国で2番目の少なさとなっています。
02| 高知移住のメリットは?
山・海・川の自然が豊か
仁淀川
東西に長く、北部は四国山地の険しい山々、南部は変化に富んだ海岸線と黒潮の流れる太平洋、そして山々を源流に県内各地を流れる清流と、まさに山・海・川の自然に恵まれた高知県。中津渓谷、四国カルスト、天狗高原などの山岳風景、四万十川や仁淀川沿いの日本の原風景のような景観、そして、桂浜や室戸岬に代表される海沿いの雄大な景色と楽しみは尽きません。また、市街地に住んでいても、車で30分ほど移動すれば、こうした自然に触れ合えるのも大きな魅力。大自然を満喫できる、ラフティングやフィッシング、サーフィン、パラグライダーなどのアウトドアアクティビティも盛んです。
海産物がおいしい
カツオ
700kmを超える長大な海岸線を有し融資、沖を黒潮が流れる高知県。土佐湾沖では、カツオの一本釣りやマグロのはえ縄をはじめ多彩な漁が行われているほか、県内各地の湾内ではマダイやブリなどの養殖も盛ん。また、県内を流れる清流では、アユ漁やウナギの養殖も行われています。こうした背景もあり、各地の漁港に隣接した市場をはじめ、鮮魚店・スーパーマーケットでも新鮮な魚介が安く手に入ります。年間消費量が全国一のカツオをはじめ、キンメダイ、イサキ、ウルメイワシ、キビナゴ、ドロメなど四季折々、多種多様な魚に出合えます。
宴会などが多く、お酒の席が好きな人は楽しい
土佐の皿鉢料理
高知県の人の県民性をひと言で表わす言葉が「おきゃく」。高知の人は、冠婚葬祭や神事、節句など、何かと理由をつけて宴会をするのが大好きです。友人・知人、親類、ご近所さんを招いての宴会自体を「おきゃく」と呼びます。おきゃくでは、知っている人も知らない人も分け隔てなく乾杯でもてなすのルール。見知らぬ人ともお酒を介して打ち解け会えるのが魅力です。高知の郷土料理として名高い「皿鉢(さわち)」ですが、大皿に盛られた海山の幸を中心とした彩り豊かな料理から、好みのものを小皿にとって食べるバイキング方式で、ワイワイガヤガヤの「おきゃく」にぴったりです。
四季を通じて農産物が豊富
高知県産のナス
気候温暖で雨が多く、日照に恵まれた高知県。ナス、ショウガ、ニラ、シシトウ、ミョウガ、ユズ、ブンタンなどの収穫量は全国でもトップクラス。また、農産物直売所の販売金額も都道府県別ランキングで18位となっています。県内人口から見ると、かなりの利用率の高さだと推測できます。数多くの野菜が栽培されており、新鮮な野菜が1年を通して身近で入手できるのが魅力です。
農業や漁業の求人が多い
柏島の養殖場
全国でも農業、漁業などの第1次産業が盛んな高知県。一方で、若い世代の県外流出が続き、現役世代の高齢化が起こっています。こうしたことから、農業、漁業の現場の求人は常にあり、短期アルバイトからさまざまな条件の雇用があるようです。
03| 高知移住のデメリットは?
生活には車が必須
はりまや橋交差点
高知県内を走る鉄道は、JR土讃線・予土線、土佐くろしお鉄道中村線・宿毛線・ごめん・なはり線、とさでん交通(路面電車)の3路線となっています。高知市内であれば路面電車の利用などで暮らすことも可能ですが、他の路線は運行本数も非常に少なく、生活には車が必須です。
2022(令和4)年時点での高知県の自家用乗用車(登録車と軽自動車の合計)の世帯当たり普及台数は1.128台となっており、全国平均の1.032台を上回っています。特に軽自動車の普及が著しく、2021(令和3)年度の軽自動車保有率(自動車全体の保有台数に対する軽保有台数の割合)は、約55%となっており、全国1位の数字です。生活の気軽な足として軽自動車が好んで使用されているようです。
四国の外へのアクセスが大変
高知龍馬空港
高知県から国内主要都市へ向かうには、空路の利用が一番便利です。高知(高知龍馬)空港から東京(羽田)までは約1時間30分、名古屋(小牧)までは1時間、大阪(伊丹)・福岡までは約50分となっています。一方、鉄道の場合はまず岡山県へ出る必要があり、岡山駅まで約2時間30分はかかります。高速道路を利用する場合も、岡山県までは2時間ほどかかります。その他のアクセス方法としては高速バスの利用が考えられますが、所要時間を考えると空路の利用が現実的といえるでしょう。
夏場は台風の心配がある
気象庁の資料によると、1951(昭和26)年から2023(令和5)年までの期間に発生した台風の上陸数が多い都道府県のランキングで、高知県は鹿児島県に次いで2位となっています。その数は26回で、鹿児島県の43回に比べれば少ないですが、かなりの数といえるでしょう。また、高知県は古くから台風による大きな被害を被ってきました。有名なのは1975(昭和50)年の台風5号で、上陸後の台風の進行速度が非常に遅く、県内各地で大雨による被害を受けました。台風の発生場所は日本の南東海上が多く、そこから北上を始めるとどうしても鹿児島県や高知県の周辺を通過することになるためです。
大型商業施設が少ない
高知市の街並み
日本ショッピングセンター協会の資料によると、高知県内にあるショッピングセンターの数は15。鳥取県に次いで全国で2番目の少なさです。人口が約71万人の岡山市が施設数17となっており、人口約65万の高知県で人口の割に施設が少ないということはないようです。ただ、岡山市の面積は約790平方キロメートル、高知県は約7,100平方キロメートルと10倍近い広さがあるので、かなりまばらな立地といえるでしょう。
04| 移住者の声: 北海道出身の自分たちを魅了した四万十の素晴らしさを全国へ発信
2022年8月、北海道札幌市から四万十市にご夫婦で移住。現在は、カフェ「shimantoよりみち研究所」を営む、谷上大輔さん、麻美さんにお話を伺いました。
新型コロナ禍に、ご家族の不幸が重なるり、お二人とも仕事を辞めることを決意。どこかよその土地で心機一転し、何か一からチャレンジしようと移住を決めた谷上さんご夫婦。
「5年ほど前から北海道以外での暮らしを思い描いていた時、高知県に目をつけ、4年前には実際に下見に来ました。当初は高知市周辺を回ったのですが、もっと田舎に暮らせないかと四万十市まで足を運びました」(大輔さん)
四万十市周辺をドライブしたり、カヌーを楽しんだりした大輔さん。すっかり、四万十市が気に入ったそうです。
「ここなら雄大な四万十川で夫婦そろってカヌーも楽しめる一方で、街中にはスーパーが数軒あって日常の買い物も困らないだろうと思いました。また、主要道路の道幅が広く、運転しやすかったのも決め手になりました」
大輔さんから、熱烈な四万十市推しの報告を受けた麻美さん。
「四万十川の近くに住みたい! という主人の意志が強く、四万十市一択のような感じになりました。私も実際に下見に来たのですが、なんとなくいいなあと思いました」
こうして、「NPO法人四万十市への移住を支援する会」に移住の意志を伝えて支援を仰ぎ、空き家が出るのを待つことに。2022年の1月には、タイミングよく希望通り四万十川のすぐ近くに空き家が見つかり、さっそく大家さんに挨拶をして、移住が決まりました。
8月に引っ越してくると、大家さんや近所の方々があたたかく迎え入れてくれたと言います。
「自宅に招いていただき郷土料理をごちそうしてくださったり、お知り合いを紹介してくださったりと、スムーズに地元に溶け込めるように皆さんが配慮してくださいました。一度ご挨拶すると、次からは気さくに話しかけてくださる方がとても多いですね」(大輔さん)
「いろんな食べ物のおすそ分けもよくいただきますし、北海道では見たこともないような地物の野菜や山菜の料理やとり方も教えていただきました」(麻美さん)
北海道時代とは暮らしすべてがガラッと変わったというお二人。
「2人乗りのカヌーを手に入れ、愛犬も一緒に念願の川下りもできるように。大家さんにアユ漁を教えてもらったので、アユやウナギをとるのも楽しんでいます」(大輔さん)
「春先は山菜やたけのこを山でとってきて食べています。温暖な気候なので庭の野菜もぐんぐん育ちます。道沿いの直売所に並ぶ地物野菜は安くて、味が濃くておいしいです。北海道は野菜のとれる期間が短いので、年中地物野菜が食べられるのはうれしいですね。お魚も新鮮なものが手に入るので、お刺身をよく食べるようになりました。主人が川漁のお手伝いをしているので、四万十川のアユやウナギも買わずにとれたものが食べられるのは、かなり贅沢なことかもしれませんね」(麻美さん)
shimantoよりみち研究所の外観
すっかり、四万十川沿いでの生活に溶け込んだお二人。2023年5月には、カフェ「shimantoよりみち研究所」をオープンさせます。
「将来、お店をやれたらいいな、とは思っていました。まわりの方にも『お菓子がつくれます』といったことは話していたのですが、みなさんが相談にのってくれたり、サポートしてくださったりしたおかげで、移住から1年もたたずに実現してしまいました!」(麻美さん)
今後は、イベントへの出店や地元の人とのコラボ、船を手に入れて四万十川でお菓子を配達できたら、などなど夢が広がります。
家族や札幌時代の友人に会うと、四万十に移住してから明るくなった、とよく言われるという大輔さん。
「知らない土地に来たことで、自分たちから積極的に地元の方々とお話をするようにしてきました。また、お店を始めたことで私たちに興味を持ち、交流をしてくださる方が現れるなど、出会いの場が広がりました。お店の経営をはじめ、やることがたくさんあって大忙しの毎日ですが、お店や畑、道端などで知り合いの方々と時間を忘れておしゃべりするなど、面白おかしい毎日を送っています。きっと、そんな生活が私の表情にも表れているんでしょうね」
今後は、「故郷・北海道をはじめ、県外の方々に四万十の魅力を感じてもらえるような活動ができたら」と語る谷上さんご夫妻。カフェを中心に、人々との交流や夢がどんどん広がっていくことでしょう。
shimantoよりみち研究所のインスタグラムはこちら
https://www.instagram.com/yorimichi_40010/
05| 高知県移住で失敗、後悔しないための準備
●家の相場
高知県の県庁所在地である高知市の家賃や新築物件の相場は次の通りです。
賃貸マンション・アパートの目安は下記。
2DK:55,000円
3DK:65,000円
1LDK:60,000円
2LDK:70,000円
新築・分譲一戸建ては
3,000万円台前半
から多くの物件が販売されています。
中古マンションは
築5年~15年以内:2,000万円台前半
それ以上の築年数:1,000万円台後半
となります。
●仕事
令和2年国勢調査の就業状態等基本集計結果で、高知県の産業別構成比を見ると、1位は医療・福祉で18.4%、2位は卸売業・小売業で15.8%、3位は農業・林業で9.1%となっています。目につくのは、全国平均に比べ、農業が6.1ポイント、医療・福祉が5.0ポイントも高くなっていることです。一方で、製造業は全国平均の15.9%に比べマイナス7.5ポイントと非常に低くなっています。こうした状況からもわかるように、農業・林業に漁業を加えた第1次産業の就業者数の割合が高くなっています。また、高知県は人口10万人当たりの病院数、病床数、医師数、看護師数のどれもが全国でも最上位に位置しており、その結果を裏付ける数字といえるでしょう。
2023(令和5)年賃金構造基本統計調査の都道府県別賃金によると、高知県は27.3万円となっており、全国平均の31.8万円をかなり下回っています。
また、地域別最低賃金をみると、高知県は897円で、全国平均の1,004円を100円以上下回っています。
近年、経営者の高齢化や労働人口の減少などさまざまな問題から、廃業する事業者が増えています。こうした課題を解決する手段として会社の経営権を後継者へと引き継ぐ事業継承が盛んになってきましたが、高知県もまさにこうした問題に直面しています。そこで、高知県では、地方に移住してきた第三者に事業を承継する"新しい事業承継のカタチ"として「継業」をうたい、高知への移住を目指す人にとって新たなビジネスチャンスとなる「事業継業」を推進。窓口での相談受付や独自の情報発信に加え、県内の商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、金融機関などと連携し、潜在的に事業承継に課題を抱える事業者に対する啓発活動を積極的に実施しています。
また、全国で初となる、M&Aであえて企業名を明かす「ネームクリア」による後継者募集を行っています。すでに、高齢の経営者が営む漬物の老舗を味噌製造業者が承継した案件、四万十市の民宿をキャニオニング運営事業者が継承した案件などの成果が上がっています。
2024(令和6)年度には、「事業承継奨励給付金」として、中山間地域の事業引き継ぎを受けた県内の買い手に50万円、県外からの移住を伴う場合には100万円を支給。あわせて、「継業準備支援」として、引継ぎ前に経営ノウハウ等の研修期間を設け、買い手(後継者)に対して生活費を補助。そのほかにも「既存事業の買収補助」と「承継後の取組への補助」などのメニューも用意されています。
●県内のアクセス
土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線
高知県内を走る鉄道は海岸沿いを走っています。東部エリアは土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線が奈半利駅まで伸びていますが、それより東から南のエリアはバス路線のみで、室戸岬を経由し阿佐海岸鉄道の甲浦駅につながります。中部エリアは高知駅を中心にJR土讃(どさん)線、土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線、とさでん交通の路面電車がアクセス網を形成。西部は予土線、土佐くろしお鉄道中村・宿毛線が走っていますが、中村駅から南の足摺岬方面はバス路線のみです。
以上のように南側の海岸沿いには鉄道路線が維持されていますが、北部山沿いには鉄道路線はなく、バス、車でのアクセスとなります。道路は、高松から続く高知自動車道が背骨のように東西に伸びており、各インターチェンジからエリアごとの基幹道路となる国道が伸びています。
06| 高知県がすすめる「二段階移住」:都市から地方への暮らしの移行をスムーズに
近年、移住者の迎え入れに積極的な自治体の中に、都市と地方との暮らしのギャップや不安」を解消することを目的にした「二段階移住」の施策を推進するところが増えてきました。
高知県では、新しい移住のかたちとして「こうち二段階移住」を提案。いきなり田舎暮らしを始めるのではなく、1ステップとして、まずは比較的都市部の高知市に移住・滞在。そこを拠点に県内をめぐって自分に合った場所を見つけ、次のステップとして、安心して最終的な移住をするといった仕組みです。県内に滞在し、移住先を探す際には移住専門スタッフがサポートもしてくれます。また、1ステップの高知市でのお試し移住に関しては、費用を最大22万円補助。移住先をリサーチするために県内市町村を巡る際のレンタカー費用を最大2万円補助してもらえます。
07| 高知県移住に関する支援制度・補助金: 県と市町村の共同で移住者向けの支援金を用意
地方創生移住支援事業(移住支援金)
高知県では、国の補助を活用し、予算の範囲内で高知県と県内市町村が共同して支給する「高知県地方創生移住支援金制度」を実施中です。移住支援金の受け取りには、移住前並びに移住後の要件及び市町村ごとに設けられる個別の条件を満たす必要があります。
前提条件として、東京23区に在住、または東京圏に在住し東京23区に通勤していた人が、高知県移住支援事業の開始日(平成31年4月1日)以降に高知県の市町村に移住し、以下の①~⑤のいずれかの要件を満たす必要があります。
①高知県のマッチングサイト「高知求人ネット」等に移住支援金の対象となる求人情報を掲載した中小企業等に就職すること。
②高知県内で起業・創業し、高知県創業支援事業費補助金の交付決定を受けること。
③プロフェッショナル人材事業または先導的人材マッチング事業を利用して就業すること。
④テレワークにより、移住先を生活の本拠として移住元の所属企業等での業務を引き続き行うこと。
⑤関係人口に関する要件を満たすこと。
移住支援金の支給額は、単身60万円、世帯100万円となっており、子育て世帯加算として18歳未満の世帯員1人について最大100万円の支給,/span>となっています。
高知県地域課題解決起業支援事業費補助金
社会的事業分野において高知県で起業する人及びSociety5.0関連業種等の付加価値の高い産業分野での事業承継または第二創業した人に対して、予算の範囲内で補助金が交付されます。通常枠(社会性及び必要性が非常に高い事業・県内全域)については、下限60万円、上限200万円。中山間地域枠(社会性及び必要性が高い事業・県内の中山間地域)については、下限30万円、上限100万円が支給されます。
高知家で暮らし隊会員制度
高知出身者と、高知へのU・Iターンに関心がある人を対象にした無料会員制度。無料の登録をすれば、U・Iターンに役立つあらゆる最新情報がメールで受け取れます。また、マイページのWEB会員証を対象施設で提示することで、レンタカーや引越し費用の割引きなど、お得な会員特典が得られます。さらに、定期開催されるアンケート抽選会や会員限定交流会にも参加できます。
交通費半額支給制度
高知県への移住を検討している人が、高知県内を訪問し、就職・転職活動を行う際の交通費の一部を支給。金額は、1人あたり年2回まで、最大35,000円で、高知への交通費の半額相当となります。
起業支援制度
「こうちスタートアップパーク(通称:KSP)」では、起業を考え始めたばかりの人から、具体的に起業に向けた準備を進めている人まで一貫サポートが受けられます。段階に応じて専門家やコンサルタントによる起業相談をはじめ、セミナーやプログラムへも無料で参加可能です。
08| 子育て支援施設:無料の施設が県内各所に
地域子育て支援センター
高知県では、子育て相談はもちろん、子育て親子間の交流を深めたり、親子で参加できる楽しいイベント開催したりする地域子育て支援センターが、各市町村に設置されており、その数は48かカ所にもなります。母子健康手帳の交付が受けられる子育て世代包括支援センターと併設している施設や、保育所に併設している施設、公共施設や商業施設内にある施設など、形態は様々。運営は、各市町村が直接運営しているものから社会福祉法人やNPO法人などに運営を委託しているものまであります。
09| おすすめの地域:利便性なら高知市だが、自然豊かな地域も考慮したい
●高知市
高知市街
高知県の中部に位置し、県庁所在地である高知市。人口は約30万人と県内で最多、県内の人の半数近くが高知市に住んでいることになります。
市の北側は山地、南側は太平洋に面し、その間に田園風景が広がる変化に富んだ自然に恵まれています。年平均気温は約17度と気候温暖。年間の日照時間、年間降水量ともに全国で上位に位置します。
市内の中心地域は、かつての土佐藩の城下町で、今も県の政治・経済・文化の中心地となっており、商業施設も集まる利便性の高いエリアです。市街地は南北約3km、東西約5kmとコンパクト。自転車で十分移動可能ですが、路面電車やバス、電車による交通網もあるので自動車がなくても暮らせます。そのほか、豊かな自然の傍らに造成された住宅街、豊かな緑に覆われた山地、田畑が広がる田園エリア、浦戸湾などの港湾エリアと、多彩な暮らし方ができるでしょう。
なお、高知市では、「高知市地方創生移住支援金」制度が利用できます。
・高知市ガイドツアー
移住を検討している人を対象とした、参加費無料のガイドツアー。市街地、鏡地区、土佐山地区の各コースが設定されているほか、参加者の行きたい場所を巡るフリーコースも相談にのってもらえます。
・移住体験滞在施設
高知市へ移住を検討している人が事前に移住を希望する地域の生活を知り、地域の人との交流を深めることを目的にした移住体験滞在施設。「しいの木」は2~28泊まで利用できる短期滞在用の宿泊施設。まず、こちらに滞在して高知市と自分の相性が見極められます。そのうえで移住を決意した人が、仕事や住まい探しをして生活基盤を作るベースになる長期滞在用(1か月以上6か月以下)の「いっく」も用意。長・短2つの施設で、手厚く移住を支援してくれます。
●梼原町(ゆすはらちょう)
梼原町の風景
高知県西部に位置し、四国山地を挟んで愛媛県との県境にある梼原町。町の面積の91%を森林が占め、雄大な四国カルストが広がる自然豊かな山間の町です。四国カルストは日本三大カルストのひとつで、全国でも珍しい標高約1,445mの高地に形成されており、晴れた日には太平洋から瀬戸内海までが一望できる風光明媚な場所です。
町内には建築家・隈研吾氏の手がけた建築物が数多くあり、その数は世界一とも。その歴史は1990年代に遡り、知人からの紹介で隈氏が当地を訪れ、木造建築の芝居小屋の保存運動にかかわるように。そんな縁から1994(平成6)年に「雲の上のホテル」を設計。以後、「梼原町総合庁舎」「まちの駅『ゆすはら』」「梼原町立図書館(雲の上の図書館)」などの設計を手掛けることに。隈氏の建築家としての歴史がわかると、多くの人が訪れます。
なお、梼原町では、「高知市地方創生移住支援金」制度が利用できます。
・移住定住促進住宅
2013(平成25)年から始めた町の事業で、空き家を町が借り上げて改修した、移住者を受け入れる「移住定住促進住宅」を用意しています。仕組みは、町が家主から家を預かり、トイレや浴室、台所などの水回りを基本に、家のゆがみを調整したり、傷んだ畳をフローリングに変えたりするなどの改修をして移住者に貸し出し、かけた費用を回収できた後に家主に空き家を戻します。1LDKから5LDKまでさまざまな間取りの住宅が揃い、月々の家賃は25,000円と格安。移住の際に頭を悩ませる住まいの確保がスムーズにできると人気です。
・充実した子ども支援
保育園、幼稚園の機能を持つ「梼原こども園」と小中一貫校「梼原学園」があり、さらに保幼小中高の一貫教育をめざしています。子育て世帯への経済的な支援も充実。誕生祝福金をはじめ、こども園保育料・給食費の無料化、子ども医療費助成、小学1年生体操服助成、梼原学園制服助成、中学校海外研修助成、中学卒業祝金をはじめ、各年代ごとにきめ細かな支援を整えています。
●いの町
にこ淵の仁淀ブルー
高知県の中央部に位置し、土佐和紙の発祥地として知られ、四国で最も透明度が高い仁淀川が流れる、歴史と自然に恵まれた町です。2004(平成16)年に町村合併で誕生した町で、高知県の総面積の約6.6%を占める広大な地域で、東南部は高知市、北部は愛媛県西条市と接しています。紙の町として知られる井野地区、山間部の吾北地区、中国山地の峰々からなる本川地区などで構成。多彩な自然がひとつの町の中にあります。市街地から国道を行けば、仁淀川と里山が描く風光明媚な景色に出会え、カヌーやアユ釣り、キャンプなどのアウトドアアクティビティを楽しむこともできます。市街地から高知市までは10km少々の距離と便利です。
なお、いの町では、「高知市地方創生移住支援金」制度が利用できます。
・お試し滞在施設
移住に向けての準備や、いの町の生活環境や自然を体験するための滞在施設です。道の駅 土佐和紙工芸村内の家屋なので、直販所・レストランが利用できるほか、紙漉き、機織り、カヌー・ラフティング、レンタサイクルの体験施設も活用しやすいです(料金は別途)。最大4名での利用が可能で、1泊1,000円、利用期間は2泊3日~13泊14日(7~9月は6泊7日まで)となっています。
・いの町移住者住宅改修費等補助金
定められた条件を満たした人には、住宅改修費が最大30万円、荷物整理・運搬・処分に最大50万円、住宅耐震改修に最大270万円の補助金が設定されています。
●安芸(あき)市
野良時計
県庁所在地・高知市から東へ約40kmに位置する、高知県東部の中心都市である安芸市。南は土佐湾に面し、北部は四国山地を背景に徳島県と接しています。市の中心部は安芸川・伊尾木川を中心に形成された安芸平野が広がり、国道55号を中心に県東部地域最大の市街地を有します。
市の人口は約16,000人。平均気温は約17度で、年間日照時間は2,000時間以上になり、気候温暖。降水量が多く、雪が降ることはほとんどありません。
市内の南部を土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線が走っており、中心駅である安芸駅と球場前駅の間の線路南側にコンパクトな市街地を形成。平地なので、自転車があれば不自由なく暮らせそうです。海・山・川と豊かな自然に恵まれ、商業施設や医療施設もそろった暮らしやすい街です。
なお、安芸市では、「高知市地方創生移住支援金」制度が利用できます。
・引越し支援事業補助金
県外から安芸市へ移住する人が引っ越しのために要した費用を補助してくれます。Iターン、Uターンそれぞれの条件をクリアして人が対象で、補助限度額は単身世帯が5万円、2人以上の世帯が10万円となっています。
・三世代同居等移住支援事業補助金
三世代が同居や近居となる子育て世帯の市外からの転入費用や定住費用の一部が助成されます。三世代同居等となる子育て世帯の父・母で条件をクリアしている人が対象。引越し費用+住居費(賃貸借)の合計で上限20万円、住居費(購入)+住居費(改修)の合計で上限24万円の2つのタイプがあります。
・空き家改修費等補助金
安芸市空き家バンクの登録されている空き家を改修して安芸市に定住しようとする移住者には、その改修費用の一部が補助されます。上限は270万円です。
●四万十市
四万十川
高知県の南西部に位置。東南は太平洋に面し、北西は愛媛県に接しており、市内の中央部を清流として名高い四万十川が南へと流れ、太平洋へと注いでいます。四万十市の誕生は2005(平成17)年のことで、中村市と西土佐村が合併しました。市内の人口は約31,000人。県内で第4位となっています。
中村地域の中心街は、室町時代からの歴史を誇り、碁盤目状の通りや京町、鴨川、東山などの地名が残っており、「土佐の小京都」として知られます。現在も天神橋商店街をはじめ6つの商店街があり、利便性の高いエリアになっています。一方、西土佐地域は、四万十川の本流・支流沿いの渓谷に集落が点在。豊かな自然と田畑が織りなす里山の風景が見られます。海・山・川と豊かな自然がバランスよく共存しており、さまざまなアウトドアアクティビティが楽しめます。
なお、四万十市では、「高知市地方創生移住支援金」制度が利用できます。
・四万十市お試し住宅
県外から四万十市へ転入し、居住する意志のある人を対象にお試し住宅を提供しています。海の近くの高台にある3DKの木造平屋は、利用可能期間は1~3か月で、利用料金は月3万円です。また、西土佐地域の中心にある木造平屋は、利用可能期間は1~6か月で、利用料金は月25,000円となっています。
10| 高知で楽しめる週末レジャー:豊かな自然を様々なアクティビティで満喫
吉野川
海・山・川と自然豊かな高知県。それぞれのアウトドアフィールドで、様々なアクティビティが楽しめます。
・ラフティング
吉野川、四万十川、仁淀川といった高知を代表する清流で、様々なポイントからラフティングツアーが催行されています。また、ダッキーによる川下りも人気です。
・リバーサップ・パドルボート
四万十川、吉野川、仁淀川の流れが穏やかな流域でのリバーサップ、さめうら湖でのレイクサップが楽しめます。
・キャニオニング・シャワークライミング
吉野川エリアの赤根渓谷や日本三大秘境のひとつ・祖谷渓の支流などで楽しめます。
・ジップライン
四万十川の源流である津野町の森の中、仁淀川の最上流の支流にある岩屋川渓谷、道の駅四万十とおわ内の四万十川越えなど、高知県ならではの自然の中で楽しめます。
・ダイビング・スキューバ
高知県の最南端・大月町にある柏島は、黒潮の流れと豊後水道の出入り口にあたる絶好のロケーション。多彩な生き物に出会える日本でも屈指のダイビングスポットとして人気です。
11| 移住後の朝ごはん:高知の東西を代表する2大ご当地パン
①「永野旭堂本店・リンベル」のぼうしパン
高知のご当地パンといえば、いの一番に名前のあがるのが「ぼうしパン」。名前のとおり、帽子の形をしたパンです。真ん中の頭の部分はふわふわのコッペパン生地で、まわりのつばにあたる部分はサクサクのカステラ生地。その発祥のお店が、高知市の1927(昭和2)年創業の老舗、永野旭堂本店です。
誕生は昭和30年代で、メロンパンを製造中にビスケット生地をかけ忘れ、代わりにカステラ生地をかけて焼いたところ、生地がまわりに広がり、帽子のように焼き上がったとか。当初は「カステラパン」の名前で売られていました。元祖・ぼうしパンは永野旭堂本店の直営店である「リンベル」で購入できるほか、県内の多くの製パン会社がいろいろな形のぼうしパンを販売しています。
②「菱田ベーカリー」の羊羹ぱん
高知県西部地方のご当地パンとして名高いのが、宿毛市で1951(昭和26)年に創業した菱田ベーカリーの「羊羹パン」。昭和40年代に登場したロングセラー商品です。こしあんがたっぷり入った丸いあんぱんの上に、茶色の羊羹をコーティング。「甘さの上ぬり」とも、「甘さの重ねがけ」ともいわれる、まさに甘党のためのパンです。
焼きすぎて焦げたパンの表面を覆うために茶色の羊羹を塗ったのが始まりだそう。プレーンなこしあんのほか、ほろ苦い抹茶、ゆずのピールが入ったゆず、鮮やかな色合いの紫芋、栗の甘露煮が入った栗といったバリエーションもあります。