今注目の「トカイナカ」とは?
フルリモートやワーケーションの普及など、自宅で過ごす時間が長くなり、住まいの広さや周辺環境の快適さに目を向ける人が増えました。さらに、仕事中心の生活から、暮らしを大切にする価値観へとシフトし、スローライフやサステナブルな暮らしへの関心も高まり、ライフスタイルの多様化が進んでいます。そんな状況の中、注目を集めているのが、「都市の便利さ」と「自然のゆとり」の両方をかなえる“トカイナカ”。のびのびと子育てをしたい、趣味を楽しみながら心地よく暮らしたい——そんな願いに寄り添う、トカイナカ移住におすすめの街12選をご紹介します。
01| トカイナカって何?
「トカイナカ」とは、「都会(トカイ)」と「田舎(イナカ)」を組み合わせた言葉です。都市近郊にありながら、豊かな自然やゆとりある暮らしが実現できる場所を指します。「都会」は人口や施設が集中し、ビジネスや行政、文化の中心として発展したエリア。「田舎」は自然が多く、人口が少ないのんびりとした地域を指します。「トカイナカ」はその中間に位置し、都市の利便性を保ちながら、自然やゆとりある暮らしもかなう“いいとこ取り”のエリアとして注目されています。
02| トカイナカエリアの魅力
トカイナカの大きな魅力は、都市からのアクセスがよく、通勤や通学にも無理がない距離にあること。自然豊かな環境でのびのびと子育てができる一方で、買い物や医療など生活インフラも整っているため、田舎暮らしに不安を感じる人でも安心できる環境が整っています。地元での仕事も適度にあり、フルリモートや週の一部だけ出勤する働き方にも適しており、「仕事も子育ても、自分らしく」という理想の暮らし方を実現しやすい環境です。
03| メリット
便利さと自然の豊かさ、その両方を叶えるトカイナカ暮らしのメリットをご紹介します。
都市近郊の自然エリア
週末には家族でハイキングや川遊び、四季折々の風景を楽しむ暮らしがすぐそばにあります。移動に時間をかけずに、自然の中で心身をリセットできるのは、都市近郊ならではの贅沢です。
都心へのアクセスがよく、通勤・通学・生活のバランスがちょうどいい
過度なラッシュを避けられたり、急な出社や都市部での打ち合わせにも柔軟に対応できたりと便利です。フルリモートからハイブリッド勤務へ移行しても、暮らし方を大きく変える必要がありません。また、日々の移動時間も現実的。駅や幹線道路が整備されていることが多く、生活に必要な商業施設も揃っているため、ストレスの少ない日常を送ることができます。
子育て・教育に適した環境
自然のなかでの体験学習や地域との交流が盛んで、子どもの感性や社会性を育む機会が豊富です。静かで落ち着いた環境が多く、保育園の待機児童や学校の定員超過も比較的少ない傾向があります。
04| デメリット
トカイナカでの理想の暮らしには、知っておきたい注意点や工夫すべき点があります。
生活や買い物の利便性
大型ショッピングモールや専門店が少ない地域もあり、欲しいものがすぐに手に入らないことも。ネット通販や定期的なまとめ買いで工夫する必要があります。
通勤や交通手段の制約
電車の本数が少なかったり、バスが交通の中心だったりと、公共交通機関に不便を感じるエリアも。車がないと移動がスムーズではないケースもあるため、交通環境を事前に確認しておくことが大切です。
災害リスクや地理的特性への理解
自然と隣り合わせだからこそ、防災意識も必要です。川沿いや山間部の物件は、土砂災害や水害のリスクがある場合も。事前にハザードマップを確認し、自治体の対策や避難体制にも目を向けておくことが安心に繋がります。
地域コミュニティとの関係性
地域行事や近所付き合いが大切にされる傾向があります。人との距離感を大切にしたい人は、移住先の地域性を事前に調べておくのがおすすめです。
教育・医療施設の選択肢
保育園・幼稚園、小中学校の数が限られていたり、小児科・専門医がいる病院へのアクセスに不安を感じることがあるかもしれません。子育て中の場合や持病のある家族がいる場合は、教育機関や医療体制の選択肢の多さなどの事前チェックが重要です。
不動産価格と固定費のギャップ
空き家や中古住宅が比較的安価に手に入る一方で、リフォーム費や自治会費、車の維持費など、想定外の出費がある場合もあります。暮らし始めてからの“見えないコスト”にも注意が必要です。
05| こんな人におすすめ! トカイナカライフ
都会の喧騒を離れて、自然のなかでゆったりと過ごしたい。そんな願いはあっても、あまりにも自然が豊かな環境には不安を感じる人が多いはず。平日は都市の便利さとスピード感を享受しつつ、暮らしの拠点は心落ち着く静かな環境に。トカイナカは、まさにその理想を叶える場所です。朝は鳥のさえずりや爽やかな風を感じながら、のんびりと庭先でコーヒーを楽しむ。日中は都心の職場へスムーズに通勤し、仕事の合間にはカフェでひと息。夕方には、広々とした公園や自然の中で子どもと遊び、週末には家族で近くの川や山へ出かけアウトドアを楽しむ。そんな生活ができるのがトカイナカです。
06| トカイナカのおすすめエリア12選
都会の便利さと自然のゆとり、どちらもかなうトカイナカ暮らしにぴったりのエリア12選をご紹介します。
利府町(宮城県)
広大な自然があるほか、遊具も豊富に揃う「モリリン加瀬沼公園」
仙台市の北東に隣接し、ベッドタウンとして発展してきた利府町(りふちょう)。JR東北本線を利用すれば仙台駅まで最短約17分と、都市部と行き来しやすい距離感が魅力です。七ツ森や松島湾など、海や山の美しい自然も比較的近く、町内にはショッピングモールや大型施設も揃い、利便性と自然のバランスが取れた暮らしが実現できます。「いい部屋ネット 住み続けたい街ランキング2024<東北版>」で2位に輝いた注目のエリアです。移住支援も手厚く、東京圏からの移住者には世帯で最大100万円または単身で60万円を支給。18歳未満の子ども1人につきさらに100万円が加算されます。さらに、移住希望者向けに「e-ハマハウス」という体験住宅も用意。移住を検討する人が、実際の暮らしを試すことができます。
小田原市(神奈川県)
小田原藩主・北条氏の本拠地「小田原城」
神奈川県西部に位置する小田原市は、新幹線やJR東海道線、小田急線など5社6路線が乗り入れる交通の要衝。市内には18の駅があり、新幹線を使えば新宿駅や品川駅まで約35分と、都心通勤も十分可能な距離です。東京のベッドタウンとしての利便性を備えながらも、相模湾や箱根外輪山の自然、歴史情緒ある小田原城下町の風景など、多彩な魅力が詰まったエリアです。新鮮な魚介を楽しめる早川漁村や、地元密着の商店街もあり、ほどよい人との距離感のなかで、地域との繋がりを感じながら暮らせます。移住検討者には、オンライン相談会や登録制のオンラインコミュニティで実際に先輩移住者や市職員に相談できる制度、空き家バンクの情報提供など、生活を具体的にイメージしやすい支援も用意。海と山、都市機能と歴史が調和した小田原は、バランスのとれた“ちょうどいい暮らし”を求める人にぴったりです。
つくば市(茨城県)
科学について楽しく学べる「つくばエキスポセンター」
つくば市は、2024年人口増加率全国1位を誇る注目の移住先です。つくばエクスプレスを利用すれば秋葉原駅まで約1時間と、首都圏へのアクセスもスムーズ。駅直結の商業施設や大型ショッピングモールが立ち並び、買い物にも困りません。一方で、市内には200以上の公園があり、緑豊かな環境で子育てや休日のレジャーも楽しめます。教育面では、質の高い学びを推進。市内には筑波大学など150以上の研究・教育機関が立地し、子どもたちが先端分野に触れられる機会も多く、またICTや探究型学習などの教育環境が整っています。災害リスクの低い地盤である点も安心材料のひとつ。「つくば市わくわく茨城生活実現事業」を実施し、人手不足の解消を目的として地域の中小企業と移住希望者をつなぐ取り組みも進められています。東京圏からの移住者、または東京圏に通勤する場合には、世帯で最大100万円、単身で60万円の支援金が支給され、18歳未満の子ども1人につき追加で100万円が加算される制度も。
あきる野市(東京都)
四季の移ろいを感じる「秋川渓谷」
「未来へ繋ごうトカイナカ」を掲げるあきる野市は、2025年に市政施行30周年を迎えました。比較的緩やかな秋川丘陵といった平坦部と、山々が連なる山間部により形成された豊かな自然が身近に楽しめるエリアでありながら、市内にある武蔵五日市駅からは、新宿駅まで約60分と、アクセスのよさも魅力です。自然に囲まれながらも通勤・通学の利便性を確保できるため、都市と自然のバランスを求める移住者に人気があります。市は移住相談窓口を土日祝日も開設し、子育て世帯向けの住宅情報をまとめた専用サイトや、暮らしや仕事の情報を発信する特設サイト「KOTOSUM(ことすむ)」を運営。移住希望者が安心して生活のイメージを描けるよう、支援体制が整えられています。
和泉市(大阪府)
和泉市の中心駅「和泉府中駅」
「トカイナカで子育てしやすいまち」を掲げる和泉市。大阪のベッドタウンとして知られ、なんば駅へ電車で約30分、関西空港へ車で約26分と、アクセスのよさが魅力です。大型ショッピングモールが複数あるので、日常の買い物には困りません。移住支援も充実しており、リフォーム費用の3分の1(最大100万円)を補助。さらに、市外から対象地域への移住で30万円の支援が受けられ、中学生以下の子どもがいる場合は1人につき25万円を加算。市南部への移住・定住世帯には最大150万円の支援もあり、子育て世帯にとって心強い環境が整っています。
三木市(兵庫県)
高さ約4メートル、幅約30メートルの「黒滝」
兵庫県の三木市は週刊誌『女性自身』の調査において、「住みやすいトカイナカ<大阪圏>」で2位に選ばれたこともある人気のエリアです。山陽自動車道、中国自動車道、舞鶴若狭自動車道が通り、三木駅から神戸駅まで電車で約60分、大阪駅へも約90分とアクセスも良好。都市圏への通勤・通学がしやすい利便性を持ちながら、酒米として有名な山田錦の一大産地として豊かな水田や緑に囲まれた自然環境が暮らしにゆとりをもたらします。人手不足の解消を目的として、移住をきっかけに三木市で就職または起業した人向けに世帯移住に対して最大100万円、単身は60万円の支援金を支給。「トカイナカ三木新生活応援事業」では、新生活にかかる住居費や引越し費用の一部も補助され、住居費で最大100万円まで補助されます。
大垣市(岐阜県)
松尾芭蕉の「奥の細道」ゆかりの地である大垣市
岐阜県の南西部に位置する大垣市は、東洋経済「住みよさランキング2022」の都道府県別で県内第1位に輝いた街。名古屋駅まで電車で約30分の通勤圏内にあり、利便性は抜群です。豊かな自然に加え、関ヶ原の戦いの歴史的舞台や松尾芭蕉の「奥の細道」終焉の地としても知られ、歴史と文化が息づいています。子育て世代を支援する取り組みも充実。住宅取得やリフォームにはそれぞれ最大30万円の補助があり、移住準備にかかる交通費や宿泊費は最大6万円の補助が受けられることも。
名張市(三重県)
美しい山々に囲まれた「青蓮寺湖(しょうれんじこ)」
名張市は三重県西部に位置し、山野や渓谷に囲まれた自然豊かな街でありながら、大阪や奈良、京都、名古屋といった大都市圏へ1~2時間でアクセスできる利便性が魅力です。周囲を山に囲まれ、中央部から北部にかけて広がる市街地は、静かな暮らしを求める移住者にぴったりの環境です。移住者向けには専用サイト「なばり暮らし」があり、地域の情報を豊富に提供。空き家住宅改修費用の3分の1を補助する制度もあり、上限は100万円、子育て世帯は最大120万円まで支援が受けられます。さらに、「名張市移住定住創業チャレンジ支援事業」は今年で10回目を迎えました。名張市で起業を目指す方に最大100万円の補助金が用意されており、これまでに10名の方が利用し、名張市で新しい暮らしと仕事を始めています。
浜松市(静岡県)
市の玄関口「浜松駅」の北口
浜松市は、古くは徳川家康ゆかりの浜松城の城下町として発展してきました。天竜川が流れ、浜名湖が広がる市内は、オートバイや楽器など世界的メーカーが集まる都市部のほか、農業が盛んな平野部、豊かな海の幸に恵まれた沿岸部、温泉や自然に包まれた中山間地など、多様な顔を持ちます。新幹線で名古屋駅まで約40分、東京駅や大阪駅までは約90分と、都市圏へのアクセスも良好。比較的家賃が抑えられており、広々とした住環境でゆったりとした生活を送れるため、都市の喧騒を離れたい方に適しています。移住支援も充実しており、「こどもみらいテレワーク対応リフォーム補助」や、静岡県の地方就職学生支援金、移住・就業支援金制度なども用意。また東京圏から移住して就職、起業した際に、世帯で最大100万円、単身者には60万円を支給。さらに18歳未満の子どもがいる場合は、1人につき100万円が加算されます。
大村市(長崎県)
標高約330メートルの琴平岳山頂にある自然公園「琴平スカイパーク」
西九州新幹線の開業により空港、新幹線、高速ICという「高速交通の三種の神器」を兼ね備えた長崎県大村市。利便性が高いだけでなく、多良山系の山々や穏やかな大村湾に囲まれた自然豊かな土地には、公園や海水浴場、キャンプ場、さらにはスカイダイビングなど、多彩なアクティビティスポットが点在し、自然を身近に感じられる環境が整っています。東京圏からの世帯移住には最大100万円、単身者には60万円の支援金が支給され、18歳未満の子ども1人につき100万円が加算。また、創業支援や専門人材の活用、先導的人材マッチング事業など、働き方の多様化に対応する支援も実施しています。利便性と自然環境が融合した大村市は、安心して暮らしと仕事を両立したい方におすすめです。
鳥栖市(佐賀県)
国内外の有名ブランドが多数出店する「鳥栖プレミアム・アウトレット」
福岡県との県境にあり、佐賀県の最東端に位置する鳥栖(とす)市。博多駅まで新鳥栖駅から最速約12分、鳥栖駅からは最速約17分と、福岡都市圏へのアクセスが非常に優れた地域です。この利便性から、九州における交通の結節点として多くの企業が進出し、人口増加率も県内ナンバーワンを誇ります。通勤や通学の利便性が高い一方で、河内ダムを眼下に望むハイキングが楽しめる「コカ・コーラボトラーズジャパン鳥栖市民の森」や「河内河川プール」など、水と緑が広がりほどよい落ち着きが感じられる快適な生活環境が整っています。鳥栖市では、佐賀県と共同で、東京圏からの世帯移住には最大100万円、単身移住には60万円の支援金が支給されます。さらに18歳未満の子どもがいる場合は、1人につき100万円が加算されるため、子育て世帯にも安心のサポートが提供されています。
三木町(香川県)
街の大パノラマと鳥居が絶景の「東の天空の鳥居」
讃岐山脈の麓、香川県の東部に位置する三木町(みきちょう)は、高松市から電車で30分ほどの距離にあり、ベッドタウンとして発展してきました。2021年の「住みやすいまちランキング(大阪圏)」で第2位を獲得。香川大学医学部附属病院をはじめ、生活に必要なスーパーや学校などの施設が充実しており、日々の暮らしに不自由がありません。移住者へのサポートも手厚く、空き家無料相談会をはじめ、東京圏からのUJIターン移住支援事業補助金や地方就職学生支援事業補助金など、多彩な支援制度が整っています。また、移住者同士を繋ぐネットワーク「TSUMIKI」で、新しい環境での不安をサポート。新婚世帯には最大100万円まで支援される制度もあり、若い世代の移住も促進しています。
07| 移住者の声
東京から滋賀県彦根市に移住した福田弘治さん・麻依さん
東京でアパレル会社に勤めていた福田弘治さん・麻依さんご夫妻が、滋賀県彦根市へ移住されたのは2022年頃。コロナ禍と第二子の妊娠をきっかけに、今後の暮らし方を見つめ直したそうです。子どもの成長を考え、夫婦それぞれの地元に近い関西エリア、自然に囲まれたゆとりある生活を求め探していた時に、彦根市に出会いました。
琵琶湖の東北部に位置する彦根市。休日に琵琶湖でSUPを楽しむ福田弘治さんご家族。
実際に住んでみると、家のすぐそばには桜並木があり、大きな川も流れていて、日々季節のうつろいを感じられる環境に大満足。ホタルの舞う夏、雪が積もる冬など、東京では「出かけて見に行く」ものだった自然が、今では日常の風景になっています。「子どもたちに四季を体で感じてほしい」という思いが、彦根で叶ったのだそう。
家の近所にある桜並木の公園で遊ぶ娘さん。
一方で、不便を感じることもしばしば。都市銀行が近くになかったり、車が必須になったり、暮らしの変化に戸惑うことも。子どもの保育園の途中入所では都市部の事情がなかなか理解されず、苦労もあったといいます。
それでも彦根市は交通の便がよく、米原駅を利用すれば京都や大阪はもちろん、東京へも新幹線でスムーズにアクセスできたり、市内には生活に必要な店舗があったり、自然の中にいながら都市の便利さも感じられる“ちょうどいい街”と実感されています。
ご夫婦二人三脚ではじめたセレクトショプ「おんど」。
移住後は、市内でセレクトショップ「おんど」を経営。地元の女性や親子連れのみならず、岐阜や名古屋といった遠方からもお客さんが訪れる地域に愛されるお店となっています。
綿摘みをしているところ。
お客様からの紹介というこ゚縁もあって、地域の無農薬綿花「おうみこっとん」の栽培活動の取り組みも始められました。
無農薬綿花「おうみこっとん」の定植活動を主催。
綿の定植や糸紡ぎ体験を通して、親子や高齢者施設との交流の場も広がっています。
綿繰り(綿から種をはずす)作業をしている参加者たち。
「今後は、自分たちのルーツである地元の滋賀・高島の生地や和歌山のものづくりなど、地域に根ざした素材や職人の技も紹介していきたいです」と話す福田さん。
「彦根は田舎すぎず都会すぎず、初めての移住でも振り幅が大きくなくてなじみやすい街です。刺激がほしくなったら新幹線ですぐ東京にも行けますし、私たちの場合は東京での仕事を続けることもできています。北陸方面にも、お出かけしたいと思える距離です。自分たちのペースで“ちょうどよい暮らし”をしたい方におすすめです」。
移住を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。