
利根川沿いに位置する茨城県境町
地方への移住を検討するとき、「最寄駅からの距離」や「電車の利便性」は気になるポイントのひとつではないでしょうか。しかし茨城県には、鉄道の駅がひとつもないのに、移住者が次々と集まり、人口が増えている町があります。それが、今回ご紹介する境町(さかいまち)です。
「駅がないのに、どうしてそんなに人気なの?」
「実際の治安や暮らしやすさはどうなんだろう?」
そんな疑問を解決するために、この記事では境町の魅力や、移住前に必ず知っておきたい注意点まで、生活に必要な情報を詳しくご紹介します。
CONTENTS
01| 境町の概要:駅がなくても「移住者に選ばれる」先進的な町
茨城県の西部に位置する境町。多くの地方自治体が人口減少に悩むなか、境町は移住者を呼び込むことに成功。
移住促進の専門誌が選ぶ「移住者増の人気地ベスト100」で全国1位に輝いた実績もあり、名実ともに“選ばれる町” となっています。
その原動力となっているのが、町を挙げて取り組んでいる「子育て支援日本一」への挑戦と、地方の常識を覆すユニークなアイデアの数々です。
全国が注目する「最先端テクノロジー」の街
境町は、新しい技術を生活に組み込むスピードがとにかく早いのが特徴です。例えば、夜間の防犯対策として「ドローンによるパトロール」をいち早く導入。地域の治安維持に最先端の目を光らせています。さらに、公共交通の弱点をカバーするために、国内の自治体で初めて公道での定期運行を実現した「自動運転バス」も大きな話題になりました。
街を彩る「隈研吾氏」設計の美しい建築群
境町を語る上で欠かせないのが、世界的な建築家・隈研吾氏が手がけたオシャレな木造建築の数々です。町内には、道の駅さかいにあるレストラン「茶蔵」をはじめ、地元の食材を使ったサンドイッチ店「さかいサンド」や「S-Gallery 粛粲寶美術館」など、隈氏が設計した美しいスポットが点在しています。洗練された「アートと木の温もりを感じる日常」が手に入るのも、移住者、特に感度の高いファミリー層を魅了する理由になっています。
02| アクセス:駅なしの常識を覆す高速バスと自動運転バス
鉄道駅がないという点に対し、境町は高速バスネットワークの整備と、高速道路のインターチェンジ(IC)活用によってアクセス性を担保しています。
高速バスで都心まで最短55分! 圏央道「境古河IC」でマイカー移動もスムーズ
町の中心部にある「境町バスターミナル」からは、東京駅へダイレクトにアクセスできる高速バスが運行しています。所要時間は王寺駅まで最短で約55分、東京駅まで最短で約90分。乗り換えのストレスがなく、座って移動できます。「毎日の満員電車での通勤は辛いけれど、週に数回の都心通勤や、週末のお出かけならバスで十分快適」と、都内から移住したファミリーからも好評です。
また、車を利用する場合、町内には圏央道の「境古河IC」があり、高速道路へのアクセスが非常にスムーズ。都心方面はもちろん、埼玉、千葉、栃木、群馬などの周辺県へも短時間で遊びに行けるため、週末のアウトドアやドライブの選択肢がぐっと広がります。
駅がなくても困らない「自動運転バス」という選択肢
自動運転バスは町内の主要な医療機関、スーパー、学校、役場などの生活拠点を結ぶルートを毎日運行しており、マイカーを持たない高齢者や、自分で運転ができない子どもたちの「普段の足」として活躍しています。駅がないから移動が制限されるのではなく、「駅がなくても町全体が快適に移動できる仕組み」をテクノロジーで解決している点が、境町のすごいところです。
03| 中心エリア周辺の様子:生活利便施設がコンパクトに集約
地方暮らしでよくある「スーパーが遠くて、買い出しのたびに車で片道20分以上かかる……」というお悩み。境町では、その心配はほとんどありません。
境町の日常生活は、「境町高速バスターミナル」および主要な幹線道路(バイパス)沿いを中心として、必要な施設がコンパクトにまとまっています。
幹線道路沿い周辺には、日常の買い物に十分なスーパーマーケット、大型ドラッグストア、100円ショップなどが揃っており、食料品や日用品の調達に不自由することはありません。また、町役場や郵便局などの行政機関のほか、内科や小児科をはじめとする医療機関もこのエリアに集まっています。
このように生活インフラが集約されているため、町内での移動距離が短く、日常生活に必要な手続きや買い物を効率的に済ませることができるのです。
04| 治安と暮らし:地域の目が光る、ファミリーが安心して暮らせる街
移住先を選定するうえで、治安のよさは極めて重要な判断基準となります。境町は犯罪発生率が低く、地域コミュニティや行政による見守り体制が確立されているため、ファミリー層が安心して暮らしやすい環境が整っています。
境町は年間を通じて犯罪の発生自体が非常に少なく、茨城県内でも治安が落ち着いている地域として知られています。夜間も静かで平穏なエリアが多く、重大な事件が起きることはほとんどないため、小さな子どもがいる家庭や、静かな環境を好む方にとっても非常に暮らしやすい環境です。車社会であるエリアの特性上、車上荒らしなどへの意識は最低限持っておくのが望ましいですが、これも「日常的な施錠を習慣づける」「駐車スペースにセンサーライトを取り付ける」といった、一般的な防犯対策を心がけていれば過度に心配する必要はありません。近隣住民同士の目が届きやすく、お互いを見守り合うアットホームな地域性も、日々の安心感をしっかりと支えています。
05| 境町に住むなら知っておきたいデメリットと注意点
どのような魅力的な街であっても、移住後に「こんなはずではなかった」というミスマッチを防ぐためには、デメリットや注意点を客観的に把握しておく必要があります。境町に暮らすうえで、事前に理解しておくべき具体的なポイントは以下の3点です。
完全な車社会であること
鉄道駅が存在しないため、生活の基本は完全に「マイカー前提」のライフスタイルとなります。町内には自動運転バスや路線バスが走っているものの、本数やルートは限られます。とスーパーでのまとめ買い、子どもの習い事の送り迎え、夜間の移動などは車がないと著しく利便性が低下します。
最寄りの鉄道駅(東部スカイツリーライン「東武動物公園駅」・JR宇都宮線「古河駅」など)へ向かう場合も、自家用車で30分前後、もしくは路線バスを利用する必要があるため、毎日都心へ電車通勤・通学を行う場合は入念なシミュレーションが必要です。
「終バス・終電」の時間が早い
東京駅と境町を結ぶ高速バスは非常に便利ですが、運行ダイヤには注意が必要です。
・東京行きの最終バス:夕方18:10境町発
・東京発の最終バス:夜21:30東京駅発
都内で夜遅くまで仕事や会食がある場合、最終バスに間に合わないリスクが生じます。その場合は、都心から電車で「東武動物公園駅」や「古河駅」などの近隣駅まで移動し、そこからタクシーを利用するか、家族に車で迎えに来てもらうなどの工夫が必要です。
夜間の道路の暗さと起伏(土手周辺など)の確認
利根川に面している地理的特性上、川沿いの土手(堤防)周辺の一部に坂道や傾斜が存在します。町は街路灯や防犯灯の増設を積極的に進めていますが、郊外の農地周辺や住宅街の奥に入ると、夜間は視界がかなり暗くなる場所が依然として残っています。夜間に徒歩や自転車で移動するルートについては、街灯の有無や道幅、坂道の傾斜などをあらかじめ現地で確認しておくことをおすすめします。
06| ファミリーのお出かけにぴったりのスポット
境町はコンパクトに生活利便施設が集約されている一方で、子どもたちをのびのびと遊ばせ、大人もリフレッシュできる工夫が施されたお出かけスポットが点在しています。
ここからは、特にファミリー層に人気の高い3つのスポットを紹介します。
天候を気にせず体を動かせる「境町ニコニコパーク」
全天候型なので安心して遊べ、週末には親子連れでにぎわう人気スポット(画像提供:茨城県境町)
「せっかくの休日なのに雨で外遊びができない」「日差しが強すぎて熱中症が心配」という悩みに対して、大きな安心材料となるのが「境町ニコニコパーク」。元々あった公園をリノベーションし、遊具エリアの全体を覆うような大型の膜屋根を設置した全天候型の公園となっています。雨の日や、日差しの厳しい真夏日でも、日陰で風通しがよい環境の中で思いっきり遊具を楽しむことができます。ふわふわドームやボーネルンド社の人気遊具が揃っており、入場無料で利用できるため、町内外のファミリーから日常的な遊び場として広く親しまれています。
自然とレジャーが融合する「境リバーサイドパーク」
春には満開の桜並木と菜の花が咲き誇る美しい光景が見られる(画像提供:茨城県境町)
町の南側を流れる利根川の広大な河川敷を活かした、開放感あふれるエリアです。緑豊かな敷地内はピクニックや散策に最適で、週末にはのんびりと過ごす家族連れが多く見られます。また、周辺ではレンタサイクル(シェアサイクル)も整備されており、心地よい風を感じながらのサイクリングも楽しめます。春には菜の花や桜を楽しむことができ、夏には国内最大級の3万発の花火を打ち上げる「利根川大花火大会」の会場となるなど、季節ごとに地域の豊かな自然とレジャーを身近に感じられる憩いの場となっています。
子育てと仕事の新しい共存「さかい子育て支援センターS-WORK+KIDS」
子どもは小学校低学年まで1家族90分間無料で利用できる(画像提供:茨城県境町)
在宅ワークを行う親世代にとって、非常に心強い存在となっているのが、この「S-WORK+KIDS」です。「子どもを遊ばせながら、親が仕事や勉強に集中できるワークスペース」をコンセプトにした全天候型の施設で、室内には大型ネット遊具やボールプールなどが完備されています。子どもたちが安全に楽しく遊んでいる様子を視界に入れながら、コワーキングスペースで安心してPC作業や資格の勉強を進めることが可能です。子育てと仕事を切り離すのではなく、同じ空間で無理なく両立できるよう配慮された、新しい時代のライフスタイルを支援する拠点です。
07| 境町の制度:全国トップクラス! 移住・子育て世代への破格の支援
境町が全国からこれほど注目されている最大の要因は、一時的なパフォーマンスに留まらない、人生設計を見据えた手厚い定住・子育て支援制度が確立されている点にあります。
25年住み続けるとマイホームが手に入る「アイレットハウス」
移住時の大きな懸念となる住まいの問題に対し、境町は非常にユニークな「アイレットハウス」という賃貸住宅の支援を行っています。子育て世帯、新婚世帯を対象としていて、月額6~7万円台で、3LDK庭付き、駐車場付きの家が手に入ります。大きな特徴はその戸建て賃貸住宅に25年住み続けると土地と住宅が無償譲渡されること。莫大な住宅ローンを組むリスクを避けながら、毎月の家賃支払いの感覚で将来的にマイホームを確保できる、家計に優しい制度です。募集の時期や戸数には限りがありますので、定期的にチェックしてみましょう。
世界基準の力を育む「英語教育」と、家計を支えるサポート
境町は教育環境への投資を惜しみません。町内のすべての小中学校において、全国平均を大きく上回る配置率で外国人指導助手(ALT)が日常的に授業に携わっており、子どもたちが小学1年生からごく自然にネイティブな英語に触れられる環境が作られています。さらに、町内9カ所の保育園などにも外国人指導助手が常駐しており、英語活動を行っています。また、町内の小中学校に通う小中学生を対象に、英検の受験料を年1回まで町が全額負担しています。受験の精神的・経済的なハードルを下げることで、子どもの挑戦意欲を引き出す好循環が生まれています。
給食費や医療費の減免・助成による確かな負担軽減
毎日の暮らしにおける細かなランニングコストを抑えるための、実用的な助成措置も強固です。境町では保育園児・小学生・中学生以下を対象に、毎月の給食費が無料となる制度を敷いており、子どもの人数が多い家庭ほど実感できる家計の節約につながっています。さらに、子どもの突然の体調不良における通院・入院時の医療費に対しても、20歳の学生まで所得制限のない助成制度が整っています。高額な先進教育や日々の生活費、万が一の医療費など、多角的な面から「子育てに関わる支出を極力抑え、安心して豊かな成長を見守れるようにする」という行政の強い意志が、これらの破格の制度体系に現れています。
08| 境町に住みたいと思ったら、知っておきたい家賃相場と物件相場
移住を本格的に検討するうえで、最後に重要となるのが「実際の住まいにいくらかかるのか」という固定費の実態です。都心と比べてどのくらい住居コストを抑え、生活にゆとりを持たせることができるのか、賃貸と戸建てそれぞれの相場感を見ていきましょう。
賃貸相場:都心の半分以下の予算で、広い間取りが手に入る
境町の賃貸物件は、都心や首都圏近郊の主要駅周辺と比べると非常にリーズナブルです。
• 1LDK:約5.5万円
• 2LDK:約6.5万円
都内であればワンルームを借りるのがやっとの予算でも、境町なら「子ども部屋」や「リモートワーク用の書斎」をしっかりと確保できる、ゆったりとした間取りの物件を見つけることができます。また、多くの物件で駐車スペースが1〜2台分確保されているか、あるいは月額数千円程度で借りられる点も、車社会の暮らしを始めるうえで大きな安心材料です。
戸建て相場:無理のない予算で「広いマイホーム」の夢を叶える
「いつかは広い庭付きの一戸建てを持ちたい」という願いを、将来の家計を圧迫しない現実的な資金計画で叶えやすいのが、境町の大きな強みです。
•新築一戸建て(分譲):約2,000万〜3,000万円台前半
•中古一戸建て:約500万〜1,500万円
都心部で同規模の住まいを購入しようとすると莫大な住宅ローンに追われがちですが、境町であれば毎月の返済額を賃貸の家賃と同等、あるいはそれ以下に抑えることも十分に可能です。敷地自体が広いため、車を3〜4台停められるスペースを作ったり、バーベキューや家庭菜園を楽しめるお庭を設けたりと、地方ならではの贅沢な空間づくりを楽しめます。
09| 経済的なゆとりが、新しい暮らしの安心感に
手厚い行政支援に加え、この安定した住居コストの低さが、境町での暮らしに確かな「ゆとり」をもたらしてくれます。住居費をグッと抑えられた分を、子どもの教育資金や家族でのレジャー、趣味に回すことができるため、日々の生活の満足度を無理なく高めることが可能です。まずは地域の不動産情報を覗いてみたり、自治体の移住相談窓口に相談してみたりしながら、新しい生活のイメージを膨らませてみてはいかがでしょうか。

