August
2023
Vol.51

あの人が好きな街

麻宮彩希

Saki Asamiya

撮影で白馬に1年7カ月。空も土も豊かな場所でした。
SCROLL
取材・文/菅原夏子 撮影/横田公人

大好きな鎌倉に移住して、のびのびと子育てをエンジョイしているモデルの麻宮彩希さん。その暮らしぶりや鎌倉の街の魅力を語っていただくとともに、麻宮さんがこだわる「食」についてもいろいろ教えてもらいました。

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about the FAVORITE TOWN

鎌倉は一度住んだら
離れられない

鎌倉
鎌倉のシンボル、国宝「鎌倉大仏」
麻宮彩希さんが好きな街

鎌倉

「身近に自然があって
自転車で巡れる
コンパクトな街だから心地いい」

なぜ、鎌倉に移住したのですか?

実は、鎌倉に住むのは2回目なんです。前のときは東京に住んでいて、体調を崩してしまって。私は東京の中でも山や川に囲まれた環境で育ったので、どうも都心の環境になじめないんです。それと、水辺が近くにないと何となく落ち着かない。それで、海の近くの街に住みたいなぁ……ということで、思い当たったのが鎌倉です。住んでみたらすっかり気に入ってしまって、心も体も元気になりました。一度、離れたんですが、子どもを育てるならやっぱりここがいいなと思って、また鎌倉へ戻ってきました。

麻宮彩希さんが好きな街

鎌倉の住み心地はいかがですか?

都内から電車に乗って鎌倉駅で降りると、もう空気が違うんです。時間がゆったり流れているというか、ふっと肩の力が抜けてリラックスできます。鎌倉にいると、無理せず自然体でいられるんですよね。緑も多いし、東京と比べて人も少ないので、子どもたちも夏はオムツ一丁に裸足で自由に駆け回って、すっごく楽しそう。大人もここでは裸足にサンダルが基本。そういうカジュアルな雰囲気が居心地いいんです。仕事は都内が多いので通勤には時間がかかりますが、それもあまり不便だとは感じませんね。むしろ距離があるほうがオン・オフの切り替えが自然にできて、仕事にもプライベートにもよい影響がある気がします。

麻宮彩希さんが好きな街

鎌倉は子育てがしやすいですか?

私にとって鎌倉は、子どもが成長していくうえで一番理想的な環境です。私が子どもたちに望むのは、「どんなことがあっても生きていてほしい」ということ。人生の中で苦しいこと、辛いことがあっても、生きる希望を失わない。そういう人は自分の好きなもの、楽しいことを見つけられる人だと思うんです。だから、子どもたちには小さいうちから自由に好きなことをさせて、好きなものを選ばせています。自分の「好き」を見つける練習ですね。鎌倉は海や山など子どもが遊べる場所がたくさんあるし、都会と違って自由度が高いので、それができるんです。あと、まわりの人たちがおおらかですね。特にお年寄りが多いので、ご近所でも、どこかへ出かけたときでも可愛がってもらえる。子どもに対する目線がやさしいというか。ここにいると、子どもが子どもらしくいられるんじゃないかな。

暮らす街として、鎌倉のおすすめスポットを教えてください。

一番はレンバイ(鎌倉市農協連即売所)。とにかく野菜が新鮮でおいしいんです。私はあまりお肉を食べないので食事は野菜中心。毎日のようにレンバイに野菜を買いに行っています。あと、子どもたちの最近のお気に入りは“モンスター”ですね。長谷の鎌倉大仏(高徳院の大仏)のことなんですけど、子どもたちはモンスターって呼んでいます。入口の仁王門にある仁王像なんかもおもしろいみたいで、しょっちゅう子どもたちを連れて大仏を見に行っています。平日は人も少ないし、お寺ものんびり楽しめますよ。

麻宮彩希さんが好きな街

これから鎌倉に移住したいと思っている人へ、アドバイスはありますか?

一度鎌倉に住んだら最後、離れられなくなりますよ(笑)。とにかく居心地がいい街なのでおすすめです。ひとつアドバイスするなら、自転車は必須! 鎌倉の街は細い道が入り組んでいるし、休日は観光客が多いので車はあまり役に立ちません。断然、自転車が便利。海風が気持ちいいし、サイクリングを楽しむにはもってこいの環境ですね。私もよく子どもたちを乗せてお寺や神社めぐりをしますが、銭洗弁財天のほうまで行くとまったく車も通らないし、緑も豊かで別世界です。ちょっと自転車を漕ぐだけで、そんな場所にたどり着けるのも鎌倉の魅力ですね。

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What is Kamakura like?

麻宮彩希さんが好きな鎌倉は
どんな街?

歴史的な建造物や禅寺・神社などが点在する鎌倉。四季折々に美しい自然豊かな土地は人々を魅了し、国内外から多くの観光客が訪れます。

麻宮彩希さんが好きな街

鎌倉の歴史は古く、起源は1063年まで遡ります。源頼朝が鶴岡八幡宮の社殿を造営したのが始まり。その後、1192年に源頼朝が征夷大将軍となり、鎌倉はその都として栄えます。また、明治以降は保養地、別荘地として人気のエリアに。川端康成や大佛次郎など数々の文学者たちが静かな環境を求めて移り住んだことは有名で、鎌倉文士という言葉も残っています。

麻宮彩希さんが好きな街

もうひとつの鎌倉の魅力は、豊かな自然。三方を山が囲み、一方が海に開けているという地形は鎌倉時代には「天然の城塞」とされてきましたが、現代では自然環境に恵まれているという証拠です。由比ガ浜には砂浜のビーチがあり、鎌倉駅から少し歩くと緑豊かな源氏山のハイキングコースがありと、海も山も身近に感じることができます。また、小さな街ながら街歩きの楽しさも。土産物屋や鎌倉の名店が軒を連ねる小町通りや若宮大路、ローカルな雰囲気が味わえる御成通りなど、魅力的な通りがたくさんあってショッピングも楽しめます。

麻宮彩希さんが好きな街

都心からのアクセスはJRで約1時間、横浜からだと約30分と、日帰り旅にぴったりの距離感。市内の移動は路線バスのほか、シェアサイクルなどもおすすめ。鎌倉~江の島~藤沢を走る路面電車の江ノ電を利用するのもいいでしょう。

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about the LOCAL CUISINE

“土地の食”に魅せられて

いつ頃から“土地の食”(郷土料理)に興味をもったのですか?

かなり前からですが、子どもが生まれて「食」について学ぼうと思って、薬膳の勉強をしました。薬膳は「地産地消」が基本にあって、その土地で採れるものを食べることが、気候風土に合っていて体にもいいという考え方です。つまり、土地の食=郷土料理に近いんですよね。薬膳を学んだことで、郷土料理についてもっと知りたいと思うようになりました。それと、郷土料理は素朴で家庭的なものが多い。私自身は小さな頃、家族で食卓を囲むという習慣があまりなかったんです。だから逆に「家族の団欒」みたいなものに憧れていて。郷土料理にはそういう家庭のあったかさが詰まっているような気がするんです。

麻宮彩希さんが好きな街

どうやって郷土料理を学ぶのですか?

「この郷土料理が食べてみたい!」と思ったら、その土地へ実際に行ってみるんです。そこで出会った地元の人に、食材の費用は負担するのでこの料理を作ってくださいってお願いします。地方の人たちは気持ちにゆとりがあるというか親切で、結構おもしろがって引き受けてくださるんです。あと、ダーツチャレンジみたいなこともしています。部屋の壁に日本地図を貼って、ペンを投げるんです。当たった場所の郷土料理を食べに行くとか(笑)。コロナが流行っているときはインスタグラムで郷土料理を作ってくれる人を募集して、インスタライブで作り方を教えてもらったりしました。

一番、印象に残っている郷土料理は何ですか?

仙台で食べた「はらこ飯」かなぁ。私、サッカーが好きで、Jリーグのベガルタ仙台を熱心に応援していたことがあるんです。試合を観に行ったときに地元のサポーターの人たちと仲よくなって、ごはんに招いてもらいました。そこで食べたのが「はらこ飯」です。あれが初めて食べた郷土料理だったんじゃないかな。おいしかったってこともありますけど、あのときの楽しい思い出が何より忘れられません。

麻宮彩希さんが好きな街

ほかにも、おもしろい郷土料理の話がありましたら教えてください。

日本だけじゃなくて世界の郷土料理にも興味があります。一番、郷土料理のバリエーションが豊かなのは中国。なかでも、おもしろい! と思ったのが、呼化鶏(ジャオ フア ジー)と呼ばれる鶏料理ですね。とある貧しい中国人がひょんなことから鶏肉を手に入れたのですが、調理道具がないので仕方なくそのまま泥で包んで土に埋めたそうです。すると誰かがそこで焚火をして偶然美味しいローストチキンができあがった、という逸話のある名物鶏料理です。(※諸説あります)これがめちゃくちゃおいしい。それから……おいしいというよりびっくりしたのが、栃木の「しもつかれ」。鮭の頭で出汁をとるんですけど、正月料理で使った食材の余りや節分の大豆の余りを煮こんで作るんですよね。地元のおばあちゃんに作ってもらったのですが、あまり経験したことのない味で…(笑)。郷土料理って、私にとって「おいしさ」より「思い出」。そういう地元の人との触れ合いが大切な宝物になっています。

食育など、お子さんの「食」について気をつけていることはありますか?

強いていえば、「好きなものを食べなさい」というのが私の食育です。私、お口に「あ~ん」っていうのは絶対しないんです。小さな頃から自分が好きなものを選んで、それを親が認めてあげることが大切だと思っています。そのほうが、きっと食べることも好きになるんじゃないかな。実際、子どもたちは好き嫌いがなくて、野菜もよく食べますから。スーパーへ行っても、子どもたちに好きな食材を選んでもらうんです。自分で選ぶといつも同じものになりがちだから、子どもに選んでもらうのもおもしろいですよ。料理をするのも手伝ってもらいます。ただし、キッチンの中ではママの言うことを聞くこと。火や刃物があるので、そこは厳しく言っています。自由にさせるところと厳しくするところ、子育てにはそういうメリハリが大事なんじゃないかなって思うんです。

麻宮彩希さんの心に残る土地の食

  • 仙台の「はらこ飯」

    仙台の「はらこ飯」

    「腹子(はらこ)」とは、この地方の言葉でイクラのこと。鮭を甘辛く煮た煮汁を使って炊いたごはんに、鮭とイクラがたっぷりのっています。麻宮さんのお子さんたちも大好きで、家でもよく作るそう。

  • 鹿児島で食べた「かしわ飯」

    鹿児島で食べた「かしわ飯」

    ごぼうやにんじんなどの野菜と鶏肉を煮詰め、お米と合わせて炊いたごはん。鹿児島をはじめ九州地方では鶏肉を「かしわ」と呼び、かしわ飯はおなじみの家庭料理。「こういう素朴で家庭的な郷土料理が一番好きなんです」

  • 「鎌倉野菜」

    「鎌倉野菜」

    鎌倉は土地が肥沃なので野菜もおいしい。減農薬で栽培されるものが多く、安心安全なのも鎌倉野菜の魅力です。種類が豊富で、カラフルな洋もの野菜がいろいろあるのもの特徴。「見た目が華やかなので料理が楽しくなりますよ」

麻宮彩希さんが好きな街

食にも、子育てにも、しっかりとした考えを持ちつつ、マイペースに子育てを楽しむ麻宮さん。鎌倉という自然体な街が、彼女の生き方にぴったりマッチしているのかもしれません。

麻宮彩希
PROFILE

麻宮彩希
Saki Asamiya

東京都出身のモデル。2人の男の子のママ。CMや雑誌、ショーなどで活躍。趣味は読書、料理。国内外の郷土料理やその土地ならではの食に並々ならぬ興味があり、日本地図を的にダーツチャレンジをして場所を決め、その土地の郷土料理を探す旅へと出かけている。
衣装協力/FRAY I.D(フレイ アイディー)
撮影協力/Pacific DRIVE-IN 七里ヶ浜
神奈川県鎌倉市七里ガ浜東2-1-12
0467-32-9777