多くの古民家再生を手がける有限会社東馬建設の住宅展示場 兼 宿泊施設「ようこそ古民家へ 長瀞」へ伺って、
古民家再生の実例を見せていただきました。
「古民家の魅力は、空間の広さとしっかりした建築技術・建材にあると思います」と、言うのは東馬建設の古民家再生住宅展示場運営・管理次長の岡谷さゆりさんです。「都会では望めない古民家の広々した空間に、人はホッとします。また、今では手に入れることが困難な立派な梁(はり)や柱、窓に使われているすりガラスなどに、懐かしさや愛着を感じるのではないでしょうか」
しかし、「いくらよい材を使って高い技術で建てられていても、古民家にそのまま住むのは難しいのです」と同部長の岡谷友彦さんは言います。虫や動物が入り込んでいたり、乾燥によって木材がひび割れていたり、冬になるとすき間風で寒かったり……意外と問題があるからです。
「古い家は傾いていることも多く、補強が必要です。広さゆえに空気の循環が悪いため、快適に住むには改善策を考えなければならないこともあります」
古民家のリノベーションで特に要望が多いのがキッチンの入替え。古いままでは火が心配だったり、使いづらかったり、衛生面が気になったり。そういった場所は古民家としてのよさは生かしつつ新しい技術も取り入れ、安全・清潔・快適をプラスするとよいそうです。
「とはいえ、何でも便利にするのではなく、あえて不便さを残しそれを味わうのもよいのでは?」と岡谷さゆりさん。例えばこの建物では床暖房やIHのアイランドキッチンをプラスしていますが、薪で煮炊きできる竃(かまど)や五右衛門風呂も残しているそうです。 「震災などで電気やガスが止まっても、何とか生活できるのが昔の家のよいところ。子どもたちにも“自分の力で暮らすこと”を教えられます」
では、実際に住むにはどのような古民家を探せばよいのかを2人に聞いてみたところ、「たとえ屋根が落ちていても、ハクビシンが住み着いていても、ちゃんと再生できるので大丈夫。痛み具合は気にせず、自分が中に入った瞬間に“あ、ここはいいな”と直感的に感じた建物を選んでください」とのこと。
「どうリノベーションするのがよいかは、その方の暮らし方・家庭環境・経済事情などで変わります。自分だけで夢を膨らませるのではなく、早い段階でプロのアドバイスを受けることをおすすめします」
次長 岡谷 さゆりさん
有限会社東馬建設
ショールーム兼1日1組1棟貸しの宿:埼玉県 長瀞、東秩父、芦ヶ久保、野上
宿泊・お問い合わせは「ようこそ古民家へ」https://kominkataiken.com/
※各施設は繁忙期を除き、予約が入っていない日であれば見学可能。