JR総武線の両国駅周辺は、江戸時代には交通の要所で、大相撲の興行とともに江戸随一の賑わいを見せ、現在は国技館や江戸の技を受け継ぐ職人の工房、伝統文化を伝える博物館などがある、江戸の歴史と文化を受け継ぐ街。蕎麦屋やちゃんこ料理屋など、このエリアならではのグルメも豊富な一方、生活に必要なスーパーマーケットなどもしっかり揃っています。そんな「日本の文化を楽しめて便利に過ごせる街」両国の住みやすさ、治安情報、お出かけスポット、物件相場をご紹介します。
ライター:立花裕子(MAP&NEWS.net)
CONTENTS
両国国技館
01| 両国エリアの概要:江戸の空気を感じさせる落ち着いた街
墨田川と水上バス
両国は墨田区の南西に位置し、隅田川を挟んで浅草橋の対岸に当たるエリア。年3回大相撲の本場所が行われる「国技館」があり、江戸の食文化体験をテーマにした「-両国- 江戸NOREN」、江戸切子や桐たんす、べっ甲細工の職人工房兼ショップなど、江戸の伝統・文化を色濃く引継ぐ街ならではの施設が揃っています。
街並みは落ち着いた雰囲気で、街行く人も浅草のようにほとんどが観光客という風情ではありません。日常的にお相撲さんの姿を見かけるのは、両国ならでは風景といえます。
02| アクセスと主要駅:秋葉原まで2駅約4分、新宿まで約25分と抜群の交通利便性
両国駅
両国エリアの中心駅は、JR総武線の両国駅。秋葉原、新宿などにダイレクトアクセスが可能で、秋葉原へは約4分、新宿へは約25分で到着できます。東京駅へも秋葉原乗り換えで約15分で行けるので、都心への通勤・通学は非常に便利です。羽田空港へは約1時間、成田空港へは約1時間半とこちらもアクセスしやすく、交通に関してはほぼ不便を感じることはありません。
国技館通りの力士像
両国駅周辺には大型店舗はありませんが、小規模なスーパーマーケットは何軒かあるので、日常の買い物には困りません。総武線の隣駅・錦糸町駅まで行けば、駅直結の商業施設「オリナス錦糸町」ほか大型商業施設や大型家電店などが揃っており、便利に利用できます。
両国駅から国技館までの国技館通りには、道の両脇に計6体の力士像が立っており、相撲の街の雰囲気を醸し出しています。また、両国駅の東口周辺は、ちゃんこ料理屋が多い飲み屋街になっています。
03| 治安:墨田区の犯罪認知件数は23区中少ない方から4番目。両国駅周りは区内でも治安がよい傾向
警視庁が発表している「市区町丁別、罪種別及び手口別認知件数」によると、2021年の東京23区内での犯罪認知件数は合計57,089件。そのうち墨田区は1,817件で、23区の中では、少ない方から数えて4番目でした。両国駅周りの両国1丁目~4丁目での犯罪認知件数は57件。錦糸町駅周りや押上駅周りに比べれば少ない傾向があり、区内の主要駅周りでは治安はいい方だといえそうです。
犯罪の内訳としては、強盗などの凶悪犯はほぼ発生しておらず、最も多いのは自転車窃盗で、全体の約31%を占めています。
04| 日本の文化を楽しめる休日のお出かけスポット4選
江戸時代には歓楽街として栄え、交通の要所でもあった両国エリアは、江戸の歴史や文化が色濃く残る街。江戸時代の芸術や技、味に触れられるお出かけ先がたくさんあります。
①世界的な浮世絵師として知られる葛飾北斎の魅力を発信 すみだ北斎美術館
撮影:尾鷲陽介
世界でも高い評価を受ける江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の作品や、彼が生涯のほとんどを過ごした墨田区エリアとの関わりを紹介する美術館。AOURORA(常設展示室)は7つのエリアで構成され、北斎の生涯を辿りながら、各時期の代表作などを実物大高精細レプリカで見ることができます。錦絵の制作工程を映像を交えて紹介するコーナーや、北斎のアトリエの再現模型を展示するコーナーも見ごたえがあります。
また、さまざまなテーマで開催される企画展では、北斎や門人たちの浮世絵を楽しむことができます。企画展ごとに展示作品が替わるので、年間を通じて多彩な作品を鑑賞することができ、多様な角度から、葛飾北斎の魅力を伝えています。
②江戸っ子が愛した花火の歴史や構造を知る 両国花火資料館
提供:一般社団法人墨田区観光協会
東京の夏の風物詩・隅田川花火大会の起源は、8代将軍徳川吉宗の時代に開催された両国川開きで、花火が打ち上げられたことに遡ります。両国花火資料館は、そんな両国花火の歴史を伝える施設。館内には、花火の歴史はもちろん、花火玉の断面図模型や打ち上げ筒の模型、花火師の纏う衣装「半纏」などが展示されており、花火の歴史と仕組み、花火師たちの思いを知ることができます。
夏の花火シーズンには大勢の人でにぎわい、ショップで購入できる花火の絵葉書などは、お土産品としても人気です。
③江戸時代から受け継がれる「江戸切子」の美しさに触れる すみだ江戸切子館
提供:すみだ江戸切子館
墨田区認定の江戸切子工房ショップ。館内には、日常使いできるグラスや盃、器から、ギフト品、切子作家の逸品まで、ほかでは見られない品々が並んでおり、ついつい目移りしてしまいます。江戸切子の歴史や制作工程、制作に使う道具を展示するコーナーもあり、江戸切子の歴史に触れられるのも嬉しいところ。館内では商品の制作も行われており、窓越しに職人の技を見学することが可能です。
また、祝日を除く火曜~土曜は、毎日「江戸切子体験」も開催中。制作に使用する機械の扱い方を教えてもらったうえで、実際にグラスカットに挑戦でき、カットしたグラスは持ち帰ることができます。
④レトロな空間でおいしさと文化の今を楽しむ -両国- 江戸NOREN
提供:株式会社ジェイアール東日本都市開発
「美味しさと文化の今を江戸空間でつなぐ」をコンセプトにした複合飲食施設。1929年に造られた両国駅の旧駅舎をリニューアルしたもので、中央の吹抜け空間には、原寸大の土俵や火の見櫓、江戸の町家をイメージした建物が並んでいます。集まっている飲食店は、1871年創業のもんじゃ焼きの名店「月島もんじゃ もへじ」、元大関の本格ちゃんこ鍋が食べられる「ちゃんこ霧島」、江戸の名物料理・しゃも鍋が味わえる「根津 鶏はな」、やぶ蕎麦の老舗「やぶ久」、日本古来の伝統食「味噌」を食する機会を提供する「麺場 田所商店」、毎日市場から直送される新鮮な魚介類メニューがいっぱいの「築地食堂 源ちゃん」の6店舗。まるでタイムスリップしたような気分で、江戸の食を心ゆくまで堪能できます。
05| 人口は微増、待機児童は減少傾向
両国エリアを含む墨田区では、人口増加に伴い待機児童も大幅に増加したことから、2016年・2017年度に緊急対策として「墨田区待機児童解消計画」を実行。以後も、待機児童の解消や子育て支援の充実に関して、継続的な取り組みを進めています。墨田区の人口は毎年微増が続いていますが、2018年から待機児童は減少傾向にあり、2021年4月時点では前年比-68人の29人となっています。
また、墨田区民間賃貸住宅転居・転入支援制度があり、子育て世帯(未就学の子どもがいる世帯)が区内で民間賃貸住宅へ転居した場合、または区外から親世帯と同居・近居するために区内の民間賃貸住宅へ転入した場合は、転居費用の一部の助成が受けられます。
06| 両国エリアに住みたいと思ったら、知っておきたい家賃相場と新築物件の価格帯
両国駅周辺エリアの賃貸物件の家賃相場は次の通りです。
1DK:119,800円
1LDK:159,900円
2K:106,300円
2DK:125,300円
2LDK:203,100円
3LDK:243,500円
新築・分譲一戸建ての価格相場は
6,000万円台
となっています。
また、両国駅周辺の中古マンションの価格相場は、5,000万円台となっています。
両国駅周辺の賃貸物件の家賃相場は、墨田区全体の平均に比べれば高めです。隅田川の対岸の浅草橋周辺との比較では、1K~2Kでは両国駅周辺の方が安いものの、2DK以上では両国駅周辺の方がやや高い傾向が見られます。東隣の錦糸町駅周辺との比較では、全体的に両国駅周辺の方が少し高めです。
この記事を書いた人
立花裕子(MAP&NEWS.net) ライター