東京23区の西の端に位置し、23区中8番目の広さである杉並区。人口は57万人超、23区で6番目の多さです。それぞれの駅が独自のカルチャーを発信する、中央線の人気駅である高円寺駅、阿佐ケ谷駅、荻窪駅、西荻窪駅を擁し、若い人には昔から人気が高いエリア。もともとは東京都の発展とともに成長してきた住宅地域で、駅前の商店街を抜ければ、いずれも閑静な住宅街が広がります。中央線だけでなく、西武新宿線、東京メトロ丸ノ内線、京王井の頭線なども走り、どこのエリアに住んでも都心へのアクセスが便利。それでいて、緑地面積も広く、たくさんの公園があり、潤いのある生活が送れるのも大きな魅力です。そんな杉並区の街の概要や主要駅のアクセス、治安、支援制度などをご紹介します。
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01| 杉並区の概要:商業エリアと住宅街のバランスがよく住みやすい
東京23区の西端に位置し、一般に城西地区と呼ばれるエリアに属している杉並区。東は中野区と渋谷区、西は三鷹市と武蔵野市、南は世田谷区、北は練馬区と接しています。その面積は34.06平方kmで、23区中では8番目の広さとなります。
概ね方形をしており、東西の最長が7.5km、南北の最長 7.2km。区内全域が武蔵野台地の上にあり、ほぼ平坦ながら、西から東へ向かって緩やかに傾斜しています。区内を荒川水系の一級河川である妙正寺川、善福寺川、神田川が東西に流れています。
地名の由来は、江戸時代初期に、この地の領主であった岡部氏が、領地の境界のしるしとして、青梅街道に沿って植えたといわれる杉並木があったことに始まります。杉並木は明治前になくなってしまいましたが、その後「杉並」の名は村名として採用され、町名、さらに区名となって現在に至っています。
東京の発展とともに、自然に恵まれた住宅地域として成長してきた杉並区。1922(大正11)年の高円寺駅、阿佐ケ谷駅、西荻窪駅の開業、翌1923年の関東大震災による都心部からの住民の移転などで人口が増加。さらに戦後の復興とともに人々が流入し、1963(昭和38)年には人口50万人の大台を突破しました。現在の人口は57万2,000人超(2022年)となっており、23区で6番目の人口を擁します。
杉並区の発展の大きな要因となったのが、区内を走る鉄道網です。区内の鉄道は、いずれもほぼ東西に走り、北から西武新宿線、JR中央・総武線、東京メトロ丸ノ内線、京王井の頭線、京王線の5路線、19駅がカバー。中央・総武線の高円寺、阿佐ケ谷、荻窪、西荻窪の各駅に象徴されるように、駅を中心に商店街が延び、それぞれが独特な雰囲気・カルチャーを醸し出しています。そんな駅・エリアごとの際立った個性も杉並区の魅力です。ちなみに、区内には区あてに会則を提出している商店会だけで、杉並区商店会連合会に加盟の商店会が95、未加盟の商店会が36もあり、それぞれが地元に根付いた商店街を形成しています。
区民の通勤・通学、買い物などの日常的な行動のエリアは駅が中心に大きく分けられ、概ね7つのエリアに。区の施設などもこのエリア分けを基準に設置されています。
・井草地域
最も北に位置するのが「井草地域」。西武新宿線の下井草、井萩、上井草の3駅があり、それぞれの駅周辺に商店街が形成されています。周辺は比較的規模が大きめの戸建て住宅が多い、ゆったりとした雰囲気が広がるエリアです。また、高井戸地域と並んで農地面積が広く、区内に点在する屋敷林・農地の保存につとめる「杉並らしいみどりの保全地区」が一番多いのもこのエリアです。
・高円寺地域
区の最も東にあたるのが「高円寺地域」。地域北側にある高円寺駅と南側の東京メトロ丸ノ内線東高円寺駅・新高円寺駅の間の商店街の賑わいで知られ、若者に人気の古着屋の多さは東京随一。また、毎年夏の阿波おどりは見物人が100万人超という大イベントです。規模の小さな戸建住宅やマンションなどで形成される高密度な市街地となっています。
・阿佐ヶ谷地域
高円寺地域の西側に位置するのが「阿佐谷地域」。阿佐ケ谷駅の南北に商店街が延びており活気にあふれる一方、南側の丸ノ内線南阿佐ケ谷駅周辺は杉並区役所をはじめ公共施設が集まるシビックゾーンに。例年10月末に開かれる「阿佐谷ジャズストリート」に象徴されるように、ちょっと大人の雰囲気が漂います。さらに南は善福寺川などの大規模公園や緑地がある、ゆとりあるエリアとなっています。
・荻窪地域
阿佐谷地域の西側、区のほぼ中央に位置するのが「荻窪地域」。荻窪駅を中心としたエリアで、区内を走る路線バス約60路線の半数近くが荻窪駅を起点としている、区内最大の交通結節点です。駅周辺の商業施設をはじめ、オフィスビルも多く都市機能が集約。周辺にはゆとりある住宅街が広がります。
・西荻地域
区のいちばん西側にあたるのが「西荻地域」。個性的な個人商店が多いことで知られる魅力的な商店街を中心としたエリアです。北部は善福寺公園中心としたゆとりある住宅街となっています。
・方南・和泉地域
区域の南東端に位置するのが「方南・和泉地域」。地域の東端に丸ノ内線の終点である方南町駅があり、その他の地域を京王井の頭線の西永福駅と永福町駅がカバー。駅周辺には商店街が形成されています。また、東部地域を幹線道路の環状七号線が走ります。
・高井戸地域
そして、南西端の東西に長いエリアを占めるのが「高井戸地域」。エリア内を東から京王井の頭線の浜田山、高井戸、富士見ヶ丘、久我山の各駅が並び、それぞれ商店街を形成。また、井の頭線に並行して神田川が流れます。
杉並区というと、独得の雰囲気を醸し出し、若い人を中心に人気の中央・総武線の4駅に目がいきがち。しかし、それ以外のエリアも都心へのアクセスが便利で、日常生活の買い物には過不足のない商店があります。駅周辺から少し離れると閑静な住宅街が広がっており、ファミリー層の住まいにもピッタリのエリアといえます。
02| アクセスと主要駅:都心部へのダイレクトアクセスも可能
区内を西武新宿線、JR中央・総武線、東京メトロ丸ノ内線、京王井の頭線、京王線の5路線、19駅がカバーする杉並区。アクセスの中心となるのは、JR中央・総武線、東京メトロ丸ノ内線の発着駅である荻窪駅です。
JR中央線を利用すれば、新宿駅までは約12分、東京駅までは約25分です。また、渋谷駅・池袋駅までは新宿乗り換えでいずれも約20分とアクセス至便。西方向では吉祥寺駅までわずか4分。近年人気の高い立川駅までは約25分。東京近郊の人気アウトドアスポットである、高尾山や奥多摩へも直通電車が走っています。
さらに、総武線には東京メトロ東西線が乗り入れています。中野駅から東西線につながり、都心部へのダイレクトなアクセスも可能。高田馬場駅までは約14分、飯田橋駅までは約24分、大手町駅までは約28分となっています。
一方、丸ノ内線は、荻窪駅が始発駅となっているので、朝のラッシュ時にも少し並べば座れるのが大きなアドバンテージ。新宿駅までは約14分、霞が関までは約28分、銀座駅までは約30分と、こちらも都心へ出るのに大変便利です。
このように、通過駅が重なりつつ都心へとつながる2路線が利用可能な荻窪駅。万が一、どちらかの路線にアクシデントが発生した場合、代替のアクセス手段が確保しやすいのも荻窪駅の便利なところです。
杉並区は、区内の東西の移動を電車がカバーし、南北の移動は路線バスがカバーしています。中でも荻窪駅は区内を走る路線バス約60路線の半数近くの起点となっています。駅北口のロータリーからは関東バスと西武バス、南口側は関東バスの路線が発着。駅と住宅地をきめ細かく結んでいます。
03| メイン駅周辺の様子:駅前には大型商業施設、個人商店が点在する商店街も魅力
荻窪駅は、JR中央・総武線のホームが地上にあり、駅周辺は線路によって大きく北側と南側に分かれます。改札は三鷹側の西改札と新宿側の東改札の2つ。西改札は階段を上って跨線橋になった場所にあり、改札口を出れば南北どちらへも降りられます。一方、東改札はホームから地下へ降りた場所にあり、地下通路で南北どちらへも出られます。なお、丸ノ内線の東端改札は、JRの地下通路に面しており、乗り換えもスムーズです。
北口は、駅を出てすぐ、2つの大型商業施設があります。地下通路直結なのが「ルミネ荻窪店」。地下には高級スーパーの「ザ・ガーデン自由が丘」のほか、惣菜店、1階にもスイーツをはじめとしたフードショップやコスメ、2~4階はレディス・メンズファッション、雑貨、書店など、5階にはレストラン街も。もうひとつが、駅から徒歩1分ほどの「荻窪タウンセブン」。地下1階~地上2階と6・7階の半分は服飾・雑貨・食品などの専門店街で、3~5階は「西友荻窪店」に。5階には無印良品の大型ショップもあります。ルミネとタウンセブンは1階と7階を除く各階が連絡通路で行き来ができるので、この2つの商業施設で大抵の買い物ができてしまいます。
北口はバスが発着するロータリーが青梅街道に面しており、青梅街道沿いにもさまざまなショップが。「ドン・キホーテ荻窪駅前店」「ブックオフプラス荻窪駅北口店」といった大型ショップのほか、北側の住宅地へ向かう方面にはいくつかの商店街も。個人商店が多く、駅と自宅の行き帰りに寄って、常連になりたいお店も多いです。さらに、温浴施設やサウナ、休憩スペースなどで構成された「荻窪天然温泉 なごみの湯」も駅からすぐ。気軽に骨休めができるのも魅力です。
一方、南口は、住宅街へと向かう主要な通りが商店街になっていますが、なかでも賑やかなのが、「荻窪南口仲通り商店会」と「荻窪すずらん通り商盛会」。こだわりのカレーショップや自家焙煎コーヒーショップ、ラーメンの老舗、自然食品店、古書店など、個人経営ならではのよさを感じられる店が点在。あわせて、ドラッグストアやスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどもあるので、生活必需品の買い物に困ることはありません。
大型商業施設と商店街がバランスよく共存し、日常生活の買い物から食事、リラクゼーション、趣味まで幅広くカバーしてくれる荻窪駅周辺。住めば住むほど、新しい魅力に出会える奥深い街です。
04| 治安:東京23区でも上位にランクされる安心の街
杉並区の犯罪発生件数は、2021年は2,041件。2018年の3,542件から着実に減少しています。件数自体を見ると多く感じられますが、人口が23区で6番目に多いこともあり、件数だけでは実情を知ることはできません。そこで注目したいのが、人口を同じにした場合の犯罪件数である、犯罪発生率です。2021年の数字を見ると、東京23区では犯罪発生率の低い方から(治安のよい方から)2位となっており、これは治安のよさで常に23区トップに位置する文京区に迫る値となっています。また、犯罪の内容も、最も多かったのは自転車盗難で、そのほかはひったくりや空き巣などになっており凶悪犯はごく少数です。
地域別に見てみると、駅の乗降客数が多く、周辺が繁華街で店舗などが多い賑やかなエリアで犯罪が発生しやすいこともあり、高円寺駅、荻窪駅、阿佐ケ谷駅、西荻窪駅の周辺がやや犯罪件数が多くなっています。逆に乗降客数が少なく、商店街も短く、住宅街が近くまで迫っている地域は治安が良好。井の頭線の浜田山駅、久我山駅、永福町駅、西武新宿線の井荻駅、上井草駅などがあがっています。
こうした治安の向上に貢献しているのが、「杉並区安全パトロール隊」の存在です。区職員(警視庁警察官OB)のパトロール隊は、平日昼間に安全パトロール車(通称青パト)で区内全域を走りながらパトロール活動を実施。さらに、区内6カ所の巡回安全パトロールステーションで、地域住民からのさまざまな防犯相談にも対応。各種防犯キャンペーン、区立小学校の下校時間帯における児童の見守り警戒活動、小学校や保育園などの不審者侵入対応訓練など様々な取り組みに協力。また、委託業者のパトロール隊は、365日昼夜を問わず安全パトロール車で区内全域を巡回しています。
05| マドリームが選ぶ、杉並の緑あふれるユニークな公園
樹木や草などの緑で被われた面積が、区域面積に占める割合のことを緑被率といいますが、杉並区は東京23区でもベスト3に位置し、20%を超えています。また、区による計画的な公園整備が進んだこともあり、区内の公園の数は300にも。なかでもユニークな公園をご紹介します。
スポット①:樹齢100年超の大木が並ぶ住宅街のオアシス「大田黒公園」
日本の音楽評論の草分け的存在で、大正から昭和にかけて活躍した音楽評論家・大田黒元雄氏の邸宅跡地を区立公園として整備し、公開。公園化にあたっては、できる限り原型保存を心がけ、以前にあった池を再現。美しい回遊式庭園が広がります。
園内には樹齢100年を超えるイチョウの並木やケヤキ、アカマツ、シイノキなどの巨木が立ち並び、ヒノキの門と石畳、庭園が一望できる数寄屋造りの茶室、昔ながらの民家の土間を思わせる休憩室などが点在。公園の片隅には、氏が仕事部屋として建てた和洋折衷の建物が記念館として残っており、館内を見学することも可能です。
例年11月末には庭園を中心に紅葉のライトアップを実施。幻想的な世界を散策することができます。
スポット②:交通ルールを楽しく学べる「杉並児童交通公園」
善福寺川に面した高台に位置する公園で、子どもたちが楽しみながら交通ルールについて学べる施設。園内を縦横にめぐるアスファルトの道を、公園に備え付けの自転車や足踏式ゴーカートでサイクリングが楽しめます。コースは信号機、横断歩道、歩道橋、立体交差、踏切、一方通行など、実際の道路によくあるシチュエーションを再現。さらに、公園内の道路が善福寺川沿いのサイクリングロードとつながっていて、全長1kmほどのロングコースになっており、都内の交通公園では最長です。
補助輪付き自転車、補助輪なし自転車を中心に後ろに持ち手がついている練習用自転車やヘルメットなどの小物まで用意され、無料で利用可能。ゴーカートは1人乗り用と2人乗り用があり、2人用は保護者が隣に幼児を乗せて走らせます。そのほか、幼児コーナーには様々な種類の足漕ぎの乗り物も用意されています。
さらに、各種遊具が設置されているほか、蒸気機関車のD51が展示されていたり、赤レンガ造りのミニ東京駅があったりと、車好き、電車好きのキッズにはたまらない公園です。
※新型コロナウイルス等の感染状況により貸出を中止する場合があります。
スポット③:防災機能を備え、芝生広場が開放感いっぱいの「下高井戸おおぞら公園」
京王線桜上水駅、京王井の頭線永福町駅または西永福町駅から徒歩10分ほど、神田川沿いの旧東京電力総合グラウンド跡地に、防災設備を備え近隣住民の避難場所となる公園として2017年に開園。
敷地の大部分は芝生広場の「憩いのはらっぱ」となっていて、思い思いに遊べるほか、「子供と遊びエリア」には年齢・体力に合わせて楽しめる遊具も設置されています。なかでも人気は大型のネット遊具。さまざまな形や高さのネットが縦横に張り巡らされていて、上り下りしたり、寝転んだり、飛び跳ねたりと思い思いに遊べます。
管理棟には休憩スペースも用意されており、冷暖房完備でテーブルとイスもあり、たっぷり遊んだあとの休憩やランチに利用できます。また、1階には備蓄倉庫があり、公園内にはかまどに変型するかまどベンチがあるなど、防災機能をしっかり備えた公園です。
※管理棟休憩スペースは、新型コロナウイルスワクチン集団接種会場に指定されているため、閉鎖している場合があります。
06| 独自の支援制度:5年連続待機児童ゼロ。子ども・子育て会議で細かなニーズに対応
早くから待機児童解消に積極的に取り組んできた杉並区。2022年4月時点で、5年連続待機児童ゼロを実現しました。認可保育所整備も力を入れ、認可保育所等への入所決定率も96%を超える成果をあげています。また、「子ども・子育て会議」という委員会が設置されおり、子育てをしている人や関係者の意見を積極的に取り入れることで、よりニーズに沿った支援制度の充実に力を入れています。
出産前後、2歳以下の乳幼児を養育する保護者の家庭には無償の「子育て応援券」を交付。ゆりかご面接を受けた妊婦さんには「ゆりかご券」1万円分を、出生0歳児無償応援券は3万円分、0歳児転入者・1~2歳児用は1万5,000円分が支給されます。
そのほか、日中に、家事や育児を手伝ってくれる人がいない家庭に、区から委託を受けたヘルパースタッフが手伝いに来てくれる「産前・産後ヘルパー」、生後6カ月から就学前児童のいる保護者がリフレッシュなどで子ども預けたい場合に対応し、一時保育を施設でしてくれる「ひととき保育」などで子育てをサポート。
さらに、小学1年生から6年生までの児童が通える「学童クラブ」は、区内に50カ所以上。学校登校日は下校~18時、学校休業日は8~18時、土日は8時30分~16時が利用可能です。
07| 杉並区に住みたいと思ったら、知っておきたい家賃相場と新築物件の価格帯
杉並区の家賃や新築物件の相場は次の通りです。
賃貸マンション・アパートの目安は下記。
2DK:120,000円
3DK:150,000円
1LDK:130,000円
2LDK:160,000円
新築・分譲一戸建ては
6,000万円台後半
から多くの物件が販売されています。
中古マンションは
築5年~15年以内:5,000万円台後半
それ以上の築年数:4,000万円台前半
となります。