今回の移住ストーリーに登場するのは、ワーキングホリデー先のオーストラリアで出会い、帰国後に南阿蘇村でたこ焼き屋をオープンした山口夫妻。山や畑、田んぼに囲まれた小さなお店は、今では地元の人々に愛される憩いの場となっています。そこにたどり着くまでには、どんな物語があったのでしょう?
ライター:鈴城久理子
CONTENTS
01| 地元に戻る意思はなく、九州をメインに移住先を検討
阿蘇五岳をのぞむ赤牛たち。のんびりした様子が伝わってくる
阿蘇五岳と外輪山に囲まれた南郷谷に位置する南阿蘇村は、人口約1万人ののどかな村。白川水源や竹崎水源などの湧水群があり、環境省選定「名水百選」にも選ばれた自然豊かな村です。また雄大な自然が育むお米をはじめ、広大な草原で放牧されている赤牛の肉や乳製品、濃厚な阿蘇の豆腐、そばなど、ご当地グルメが充実しているのも魅力です。
樹齢400年を超すという「高森殿(たかもりどん)の杉」。縁結びのパワースポットとしても有名なところ
南阿蘇村のもうひとつの魅力は、阿蘇五岳の絶景を楽しめること。さらに、近隣にも自然が作り出した神秘的な造形を楽しめるスポットが点在しています。南阿蘇村の東に広がる高森町は、縁結びのパワースポットとして有名な、樹齢400年を超える夫婦杉があることでも知られています。近年そんな美しい自然や住み心地のよさがクローズアップされ、人気の移住先として注目を集めてきました。
家族で雄大な阿蘇山の絶景を楽しみに外出することも。知り合いから預かっている看板犬マメも一緒に
山口夫妻が南阿蘇村への移住を決めたのは、移住先を探していた際にたまたま訪れたこの土地がすっかり気に入ったから。2014年には二人ともワーキングホリデーから戻り、阿蘇市内のホテルで半年間働いていたそう。
たこ焼きを焼くのは雄大さんの担当。「毎日元気に焼いています!」
「僕は神奈川県、妻は石川県出身なのですが、ワーホリから戻ってきたとき、どちらも地元に戻るイメージが思い浮かばなかったんです。それで九州をメインに移住先を探して南阿蘇村に決めました」。2015年に移住し、その2年後にはたこ焼き屋「万福小屋どんぶらこ」をオープン。おいしい焼き方を研究しつつ、二人で切り盛りするようになりました。
02| 人気エリアのため、苦労したのは家を探すこと
自宅はもちろん、店舗の物件を見つけるのもひと苦労
移住する際に大変だったのは家を探すことでした。当時から移住者にとても人気のエリアだったため、家を探すのに四苦八苦。「自治体の空き家バンクを利用していたけれど、なかなか住まいがみつからない。最終的には地元のおばあちゃんが空き家の所有者に掛け合ってくれて、ようやく家が決まりました」と雄大さん。その物件を空き家バンクに登録し、改修工事の補助などを受けることができました。
03| 暮らしたい場所に住んでいる充足感を日々満喫
家でゆっくり過ごす定休日。看板犬マメも一緒にお昼寝
移住して変わったのは生活のリズム。子どもが生まれたこともあり、二人とも早寝早起きするようになりました。ヘビースモーカーだった雄大さんは、「空気がおいしいから」と喫煙をやめたそう。月曜と火曜の定休日になると、のんびりと家で過ごしたり、みんなで外出したり、家族との時間をなにより大切にするようにしています。
ママに切ってもらっても、ヘアカットはまだまだ「イヤイヤ」な年頃
定休日には子どもたちの青空美容室を開くこともあります。「こんなふうに庭でヘアカットできるのも、田舎ならではかもしれません。少しぐらい子どもが泣いても、怒られたり、必要以上に心配されることもないですから。地元の人はみんな親切で接しやすくて、排他的ではないんですね。子育てしやすい環境だと思います」と朋子さん。
自然に恵まれた環境だからこそ、小さな子どもでも草花に興味を持ちやすい
「誰かが教えたわけではないけれど、子どもが小さな頃からよくお花を摘んできてプレゼントしてくれるんです。そういう子どもって多いと思うのですが、無垢な心に触れると、親としてもすごく嬉しいですね」。
阿蘇はお米の名産地としても有名。清らかな水で育つその味は絶品
高冷地で昼夜の温度差が激しく、おいしい作物を育むといわれる阿蘇エリア。「移住してよかったと思うことばかりなのですが、やはり安心して飲めるきれいな水があるというのは貴重です。お米はもちろん新鮮な野菜が身近で手に入りますし。ここにはおいしいものがたくさんあるんですよ!」。
04| 南阿蘇村以外で暮らすイメージが持てないほどの地元愛
店内は木をメインにしたあたたかみのあるインテリア
まるでわが家にいるようなアットホームな雰囲気を醸し出す空間は、少しずつ手を加えてプチ模様替え。今はたこ焼きがメインのお店ですが、ゆくゆくは外国人向けのゲストハウスを開くという夢も持っているとか。「私たちはオーストラリアで出会ったので、海外の人が日本や阿蘇の文化に触れあえる場所を提供できれば最高ですね」。
朝に採れた野菜を目当てにやってくる地元民も多い
たこ焼き屋ですが、店頭では地元野菜を販売。ほうれん草やかぶ、アスパラガスにトマトの苗……。その時々の旬の有機野菜を持ち込んでくれるのは、地元の農家の人たち。採れたばかりの新鮮野菜とあって、すぐに間に売り切れてしまうことも多いそう。
南阿蘇村の北西にある菊池市から手伝いにきてくれたお店の常連さん
ゴールデンウィークや夏休みになると、足を運んでくれるお客さんが倍増。忙しいときにはスーパー助っ人が登場します。この日は、以前大繁盛のたこ焼き屋を経営していた経験のある常連さんが、一日限定でお手伝いに来てくれました。すると作業効率だけでなく、気持ちまで余裕が出てくるよう。こんなふうに相互協力し合えるのも、田舎のよさなのかもしれません。
キャラメルナッツスコーンはリピーターが多い人気のスイーツ
朋子さん担当のスコーンやクッキーなどの焼き菓子も人気。子育ての合間を見計らって作っています。並べたそばから売れてしまい、急きょ「追加で焼かなくては!」なんてこともたびたび。
この日販売していたのは、南阿蘇の皮細工工房「drop house」のアクセサリー
店内にはフードやドリンクだけでなく、地元の工房や作家のハンドメイド作品も並びます。こうして地元の人々との交流が広がることで、お店や暮らしにまた一つ広がりをもたらせてくれるようです。
歳月が流れ、お店の裏にある栗の木も立派に成長
「惚れ込んだからこそ、この場所以外で暮らすイメージがまったく湧いてこない」という山口夫妻。少なくとも、子育て中はこの南阿蘇村で暮らしたいと切に願っています。
「自分が本当に暮らしてみたいところがあるのなら、早めに行動してみることをおすすめします。人生は一度きりなので。もし合わなければ出ていけいい。移住先では他責にならず、自責を意識すると、とても暮らしやすくなりますよ」。
山口夫妻(万福小屋どんぶらこ)のインスタグラムはこちら!
https://www.instagram.com/manpukugoya_donburako/
05| まとめ
「住みたい場所でやりたいことをする」。そんなシンプルなことが、人生を豊かにするカギなのかもしれません。次回は、北国に憧れて東京から単身で北海道に移り住んだ方の移住ストーリーを紹介します。
06| 熊本県の家探しならおまかせ! おすすめの不動産会社
熊本市中央区新屋敷に本社、福岡市中央区荒戸に支店を構える不動産売買専門会社。2013年の創業以来、独自の顧客管理システムで売買取引件数を増やし、成長を続けている。
この記事を書いた人
鈴城久理子 ライター
雑貨紹介や料理、インテリアなど暮らし系の記事を中心に執筆することが多いライター。ただいまメダ活実践中。