公開日: 2023.12.28 最終更新日: 2023.12.28

【私の移住ストーリー】~地域おこし協力隊員として宮城県仙台市に移住、震災後の街に貢献~岩井寛子さんのケース

【私の移住ストーリー】~地域おこし協力隊員として宮城県仙台市に移住、震災後の街に貢献~岩井寛子さんのケース

仙台の冬の風物詩、イルミネーション。12月から翌年2月にかけて、仙台のあちこちで開催される

今回は、震災後の街に貢献するため、20数年暮らした都内から生まれ故郷の仙台へUターン移住した岩井さんのストーリーを紹介します。現在は地域おこし協力隊の一員として、仙台市の南部拠点である長町駅周辺の街を盛り上げるための活動に邁進しています。

ライター:鈴城久理子

ライター:鈴城久理子

01| 「地域おこし協力隊」ってどんなもの?

宮城県では25自治体、158名の地域おこし協力隊が活躍中(2023年4月現在) 宮城県では25自治体、158名の地域おこし協力隊が活躍中(2023年4月現在)

「地域おこし協力隊」の制度や活動内容

岩井さんが活動している「地域おこし協力隊」は全国各地に設けられていて、宮城県では主に下記のような制度や活動内容となっています。
(出典:みやぎ移住・交流ガイドのサイト)

  • 過疎化や高齢化などの問題に直面する自治体が、都市部の人材を積極的に受け入れるための制度
  • 地域おこし協力隊は地域協力活動を通じて、地域力の向上やその地域への定着などを目指す
  • 地域おこし協力隊員は各自治体の委嘱を受け、概ね1年以上、3年以下、その地域で様々な活動を行う

岩井さんが実際に行っている活動

岩井さんが関わっているのは、長町商店街のイベントや広報のサポート、地域のお祭りの運営サポート、情報発信や地域PRなど多岐にわたります。

02| 仙台市ってどんなところ?

仙台の有名なお祭り「仙台七夕」。藩祖の伊達政宗公の時代から受け継がれている、大切な伝統行事 仙台の有名なお祭り「仙台七夕」。藩祖の伊達政宗公の時代から受け継がれている、大切な伝統行事

仙台市の特徴や人気スポット

約786平方kmの広さに人口1,098,036人を擁する(2023年12月現在)東北地方最大の都市、仙台市。広瀬川の湖畔や青葉山の緑が一体となった街はとても美しく、「杜の都」とも呼ばれています。この街には見所がたくさん。年末年始に各所で行われるイルミネーションや夏のお楽しみである「仙台七夕まつり」をはじめ、伊達政宗公など伊達家三代の霊屋「瑞鳳殿」などの歴史建造物、ちょっと足をのばせば仙台の奥座敷「秋保温泉」でゆったり過ごすこともできます。ご当地グルメも豊富で、有名なご当地グルメは牛タン焼きと笹かまぼこ。また三陸の海の幸など、挙げればきりがないほど。

岩井さんが育ったところ

仙台市や太白区の歴史がわかる写真帖などを、図書館で発見 仙台市や太白区の歴史がわかる写真帖などを、図書館で発見

岩井さんが活動しているエリアは、そんな仙台市南部に位置する太白区長町。地元の歴史にも興味があり、ある時、長町駅前の図書館で貴重な資料を発見したそう。「もともと仙台市内で生まれ育ち、高校までは仙台で暮らしていました。この写真帖には仙台や太白区の昔の姿が写っていて、祖母が見てきた風景はこんな感じだったんだなあ、と感慨深い気持ちになりました」。

03| 岩井さんが仙台市に移住した理由

引っ越してきたばかりの頃の長町駅前。商店街の散策から始め、街になじんでいった 引っ越してきたばかりの頃の長町駅前。商店街の散策から始め、街になじんでいった

移住のきっかけ

岩井さんが仙台市に移り住んだのはいまから約1年半前。高校卒業後、東京の美大で学び、その後は東京周辺でアーティスト活動を行っていたそう。「20代からずっと好きなことをやってきたのですが、2011年に地元が東日本大震災にあったことで、自分にも地元に貢献できる仕事がないものかと考えるようになりました。たまたま知人が教えてくれた地域おこし協力隊に応募したら採用されたので、それをきっかけに戻ってきたんです」。

地域おこし協力隊に任命

仙台市太白区役所にて行われた、仙台市南部拠点地域おこし協力隊の任命式 仙台市太白区役所にて行われた、仙台市南部拠点地域おこし協力隊の任命式

地域おこし協力隊に採用されたことをきっかけに仙台市に移住。区役所で行われた任命式を経て、正式に活動をスタートしました。「長町を中心とした南部地域を盛り上げるため、自分でできることをやっていきたいと思いました。でも、本当に私の能力で地域貢献につながる働きができるかどうか、ちょっと心配でした」と当時を振り返って話してくれます。

アーティストUGYAUとして街のキャラクター「にゃがまち」を開発 アーティストUGYAUとして街のキャラクター「にゃがまち」を開発

「東京に住んでいた頃は個人のアーティストとして作品を制作して発表していました。そのスキルを活かして街の人々や商店街に役立てたいと考えたんです。現在は、非公式であるもののキャラクターの開発や、地元のイベントに関わるビジュアル制作などにも携わっています。自分の能力が誰かの助けになっていると実感できることは、とても幸せなことだと思いますね」。

04| 地域おこし協力隊でどんな活動をしているの?

長町駅周辺のお店をPRするため、facebookやインスタグラムでも情報を発信 長町駅周辺のお店をPRするため、facebookやインスタグラムでも情報を発信

長町駅周辺のお店や施設をPR

多岐にわたる活動の中でも、とても重要なのが長町駅周辺のお店や施設をPRすること。そのためにFacebookを用いたグループ「いがすぺ!長町」の運営管理を行っており、常に新しく魅力的な情報を発信しています。

運営管理する地域情報発信のためのFacebookグループ「いがすぺ!長町」のPR用カードを制作 運営管理する地域情報発信のためのFacebookグループ「いがすぺ!長町」のPR用カードを制作

2022年8月に長町やその周辺エリアの情報コミュニティとして開設された「いがすぺ!長町」。「いがすぺ!」とは「いいね」という意味の仙台弁。「長町っていいでしょう?」と思っている人々に向けての情報アップページです。その管理やPR用カードの制作などにも携わっているそう。

お祭りやイベントの運営サポート

地域で最も大がかりなお祭り「広瀬川灯ろう流し」を運営する実行委員会をサポート 地域で最も大がかりなお祭り「広瀬川灯ろう流し」を運営する実行委員会をサポート

地域で行われるお祭りの運営をサポートするのも大切な活動です。「ここで一番大きなお祭りがこの『広瀬川灯ろう流し』なんです。昭和53年に一時中断を余儀なくされたものの、『夏の賑わいを取り戻そう!』と市民が立ち上がって平成2年に復活しました」。広瀬川を囲む長町と南材地区の商店街、町内会が運営の中心となり、旧暦での仙台の送り盆に合わせて、毎年8月20日に開催されているそう。

商店街のイベントが行われると、広報や設置のサポートスタッフとして参加 商店街のイベントが行われると、広報や設置のサポートスタッフとして参加

長町ではもちろん、太白区内ではさまざまなイベントを行っています。開催場所としてよく使用されるのが、この長町駅前の広場。マルシェやワークショップ、ステージなどお楽しみもいっぱい。できるだけたくさんの人に興味をもってもらえるよう、アイデアを出し合いながらサポートしています。

地域のボランティア

長町商店街の小規模多機能型居宅介護施内には駄菓子屋が併設。その間に設置する引き戸を制作 長町商店街の小規模多機能型居宅介護施内には駄菓子屋が併設。その間に設置する引き戸を制作

「DIY」ならぬ「DIO(Do It Ourself=私たちでつくる)」を合言葉に、プロ・素人問わず参加型で建築やリノベーションを行っている「ミライデザインワークス/チームDIO」。小規模多機能型居宅介護施内にある地域交流スペースの「マイムテラス」で行った引き戸作りに、岩井さんもチームとともに参加したそう。

この日は秋保ワイナリーのぶどう収穫のボランティアに参加 この日は秋保ワイナリーのぶどう収穫のボランティアに参加

果物の収穫時期になるとこんなボランティアも。「腰掛に座って専用のハサミでぶどうを収穫していくのですが、約2時間半ひたすら作業を進めました。風の音とハサミの音、虫の羽音……。久しぶりに無になった気がします」。

「ながまちカプセルトイ」プロジェクト

非公式ではあるもののキャラクターの「にゃがまち」がトイカプセルに! 非公式ではあるもののキャラクターの「にゃがまち」がトイカプセルに!

2022年より「みやぎ地域おこし協力隊フェス」が開かれるようになりました。目的は、県内の地域おこし協力隊員の活動を紹介し、県民に理解を深めるとともに、隊員が生産した商品などの展示や販売を地維持で交流を深めること。2023年11月末から12月初めに開催された第2回目では、「ながまちカプセルトイ」プロジェクトをお披露目。カプセルを開けると、アイテムのほか、長町の豆知識やお店で使えるクーポンなども入っているそう。

2023年4月から月いちで制作を始めた地域紹介ポスター 2023年4月から月いちで制作を始めた地域紹介ポスター

05| 地域紹介のためのポスターやチラシ制作

毎月長町エリアで行われた出来事やイベント情報などを紹介するポスターを、「長町駅前プラザ」というコミュニティスペースで展示させてもらっています。

この日はアーティストUGYAUとして、「自分のアートを伝えるプレゼン」という初の体験をしたそう この日はアーティストUGYAUとして、「自分のアートを伝えるプレゼン」という初の体験をしたそう

06| 地元アーティストとしての活動

地域おこし協力隊員としての直接の活動ではないものの、20代から続けている個人の活動も上手く絡ませています。この日は、NPO法人スロコミと株式会社ユカリエという地元の組織を中心とした「ながまちアイディア会」のプレゼンテーションにパネラーとして参加。自身の活動をPRする機会に恵まれました。

地域おこし協力隊員として活動することで、すぐに地域に溶け込めるようになったそう 地域おこし協力隊員として活動することで、すぐに地域に溶け込めるようになったそう

生まれ育った同じ仙台市内ではあるものの、ほとんど縁がなかったという太白区長町。そこに移り住んで1年半、移住したいと思っている人たちへのアドバイスをたずねると……

「最初は目新しいことばかりでしたが、活動を通じて長町の商店街や行政の人々に温かく受け入れていただきました。地域おこし協力隊がきっかけで移住するというのは、最初からその町にがっちり関わるというちょっと特殊な形ではありますが、だからこそ臆せずに積極的に交流をもてる方法だと思います」。


※岩井さんのインスタグラムはこちら!
https://www.instagram.com/local_vitalization_h.ugyau/

07| まとめ

地域に積極的に関わって街づくりに参加する。そんな形の移住も素敵ですね。最終回は、宮城県内で実際に行っている移住サポートについて紹介します。

鈴城久理子

この記事を書いた人

鈴城久理子 ライター

雑貨紹介や料理、インテリアなど暮らし系の記事を中心に執筆することが多いライター。ただいまメダ活実践中。

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