公開日: 2024.10.04 最終更新日: 2024.10.04

太平洋岸の穏やかな気候のもとのびやかに暮らせる。静岡移住のメリット・デメリット&移住支援制度

太平洋岸の穏やかな気候のもとのびやかに暮らせる。静岡移住のメリット・デメリット&移住支援制度

静岡市の街並みと富士山

日本のほぼ中央に位置し、東は伊豆半島、西は浜名湖まで、太平洋に沿って約500kmも海岸線が続く静岡県。北側は富士山を象徴とする高い山々が連なる山岳地帯で、全都道府県で13番めの広い県域に、変化に富んだ自然があります。県庁所在地の静岡市、県内最多人口の浜松市をはじめ主要都市は沿岸地域にあり、いずれも気候温暖。本州の東西を結ぶ大動脈である東海道新幹線や東名高速道路、新東名高速道路が県内を走っており、アクセスも非常に便利です。普段はテレワークで必要なときだけ都心へ出張するもよし、さらに居住地の地元で仕事を見つけて暮らすもよし。自分や家族の優先したいライフスタイルに合わせた生活を営むことができるでしょう。

編集:アントレース

編集:アントレース

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CONTENTS

  1. 静岡県の概要:東から西まで大きく4つの地域で構成される
    1. 広大な土地に変化に富んだ自然が点在
    2. 寒暖差が少なく温暖な海洋性気候
    3. 2つの政令指定都市を含め、10万人以上の都市は全部で10市
    4. 地方色豊かな4つの地域に分かれる
    5. ●伊豆地域
    6. ●東部地域
    7. ●中部地域
    8. ●西部地域
    9. 製造業の構成比率がかなり高い
  2. 静岡移住のメリットは?
    1. 東西主要都市への交通アクセスがよい
    2. 静岡市はコンパクトシティで暮らしやすい
    3. 沿岸部から平野にかけては温暖な気候で暮らしやすい
    4. 農産物、魚介をはじめ多くの食の楽しみがある
  3. 静岡移住のデメリットは?
    1. 移住者は多いが転出者も多く、転出超過になっている
    2. 大地震による災害のリスクが高い
    3. 日常生活には車が必要
    4. 新幹線駅は県内に6つあるが、のぞみは停車しない
  4. 移住者の声:子どもたちのいきいきとした表情が物語る函南町の暮らしやすさ
  5. 静岡県移住で失敗、後悔しないための準備: 製造業の就業者数が突出する特徴ある産業構造
    1. ●家の相場
    2. ●仕事
    3. ●静岡県内のアクセス
    4. ●教育
  6. 静岡県移住に関する支援制度・補助金:主要都市には独自の制度も
  7. 静岡県移住におすすめの地域:太平洋岸の主要都市でも移住のメリットは大
    1. ●静岡市
    2. ●三島市
    3. ●藤枝市
    4. ●湖西市
    5. ●浜松市
  8. 静岡県移住後の食生活
    1. ●桜えびのかき揚げ
    2. ●生しらす丼
    3. ●静岡おでん
    4. ●富士宮やきそば
    5. ●キンメの煮付け
  9. 県内スーパー限定のご当地パン
    1. のっぽ
    2. ようかんぱん

01| 静岡県の概要:東から西まで大きく4つの地域で構成される

広大な土地に変化に富んだ自然が点在

熱海温泉街の風景 熱海温泉街の風景

日本のほぼ中央に位置し、太平洋に面する静岡県。東西約115km、南北約118kmにもおよぶ県域は全都道府県で13番の広さを有します。東側の伊豆半島から西側の浜名湖まで、遠州灘、駿河湾、相模湾に沿った海岸線は約500kmにもなります。この海岸線を南側とし、北側は富士山をはじめ3,000m級の山々が連なる北部山岳地帯となり、海岸線から平野へと続くエリアを囲んでいます。この山地からは1級河川の富士川、大井川、天竜川などが流れ出て県域を縦断。海岸までの河口部分に肥沃な平野を形成しています。日本最高峰の富士山日本一の深海湾である駿河湾湖面の広さが日本で10番目の浜名湖を擁するなど、海、山、湖をはじめ変化に富んだ自然が点在し、日本の自然風土の豊かさを体感させてくれます。

寒暖差が少なく温暖な海洋性気候

伊豆・大室山 伊豆・大室山

北部山岳地帯を除けば、1年を通じて温暖で寒暖差の少ない海洋性気候となっています。遠州灘や駿河湾に面する地域の平均気温は15~16度になり、冬は朝方に氷点下になることがあっても、日中は10度を越える日が多いです。春夏秋冬の季節の移り変わりがはっきりとしており、冬は乾燥した晴天の日が多く、平野部では雪はほとんど降りません。一方、標高の高い内陸の大地や山間部は内陸性気候となり、富士山麓や伊豆半島の天城山付近、大井川の上流域などでは冬は厳しい寒さとなります。なお、ときおり大雨や強風、波浪など激しい気象現象に見舞われることがあり、夏から秋にかけては台風の来襲も多く、その上陸数は本州では和歌山県に次ぐ数となっています。

2つの政令指定都市を含め、10万人以上の都市は全部で10市

静岡市の街並み 静岡市の街並み

2023(令和5)年の人口は約357万人で、全国で10位。政令指定都市である静岡市(約68万人)と浜松市(約78万人)、施行時特例都市である沼津市(約18万人)と富士市(約24万人)をはじめ、人口が10万人以上になる都市は全10市となります。なお、県域総面積の64%が居住は困難な森林で構成となっており、人口の大半は平野部に集中しています。

地方色豊かな4つの地域に分かれる

韮山反射炉と富士山 韮山反射炉と富士山

県域が東西に長く広がっており、かつての伊豆国、駿河国、遠江国にあたり、廃藩置県の時点では韮山県(伊豆)、静岡県(駿河、遠江)、堀江県(浜名湖北部)の3県で構成されていたエリア。そのため住民の意識、文化風俗、方言などが今も異なるとされます。現在は、大きく4つの地域に分けられます。

●伊豆地域

下田のまちなみ 下田のまちなみ

県内東南部、伊豆半島にあたるエリアで、熱海市、下田市、伊東市、伊豆市など5市5町で構成されます。伊豆半島は東を相模灘、南を太平洋、西を駿河湾に面し、内陸部には標高約1,400mの天城連山が連なります。海・山・川の変化に富んだ自然里山の穏やかな風景がミックスされた季節感あふれる土地です。熱海温泉、修善寺温泉など40以上の温泉や白浜、弓ヶ浜をはじめとした白砂のビーチなど、休日のリラックススポットが充実しています。

●東部地域

沼津の風景 沼津の風景

伊豆半島の付け根にあたるエリアから富士山麓に広がるエリアまで。沼津市、三島市、富士市、御殿場市をはじめ6市4町で構成されます。熱海駅、三島駅、新富士駅と新幹線停車駅が3つあるアクセス便利な地域です。日々の生活のなかで雄大な富士山を眺めることができ、その雪解け水を水源とする清らかな湧き水に恵まれています。また、温暖な気候のなかで育つ野菜・果物が豊富で、沼津港をはじめとした港で揚がる新鮮な魚介にも恵まれています。駅周辺に住めば首都圏への通勤通学も可能ですし、地元での田舎暮らしをするにも絶好のエリアです。

●中部地域

牧之原の茶畑 牧之原の茶畑

静岡県の東西のほぼ中央のエリアで、静岡市街地をはじめ、北部は南アルプスや奥大井の山岳エリア、西側は茶畑が一面に広がる牧之原台地、そして南側は駿河湾の海岸線が長く延びます。静岡市のほか焼津市、藤枝市など5市2町で構成。県庁所在地で都市機能が充実した静岡市では地方都市ならではの便利で豊かな生活ができるほか、山・川・海を身近に感じながらの暮らしも可能です。

●西部地域

浜松市の浜松アクトタワー 浜松市の浜松アクトタワー

愛知県と隣接するエリアで、名古屋を中心とした中京圏と結びつきの強いエリアです。県内最多の人口を擁する浜松市や磐田市、掛川市など7市1町で構成。長野県から流れ出た天竜川の扇状地にあたり、天竜川の西側に三方原台地、東側に磐田原台地が広がります。北部は山岳地帯で、南側は遠州灘の海岸線、西端部には汽水湖として知られる浜名湖があります。浜松市周辺は自動車やバイク、楽器、光学機器などの日本を代表するメーカーの本拠地や工場が集まり、日本でも有数の工業地帯を形成しています。また、のどかな田園地帯や浜名湖周辺の変化に富んだ自然のかたわらで暮らすこともできます。

製造業の構成比率がかなり高い

2020(令和2)年度の静岡県の県内総生産の産業別構成比を見ると、製造業が38.0%と全体の3分の1以上を占めているのが大きな特徴です。全国平均では製造業は20%前後となっており、静岡県の産業の大きな特徴です。製造品出荷額は全国で3位になっており、自動車・バイクなどの輸送用機械器具製造が最も多く、次いで電気機械器具製造業、化学工業が続きます。

高級ホテルも数多い 高級ホテルも数多い

伊豆地域は宿泊・飲食サービス業が3.0%を占め(県内平均1.3%)、製造業の割合が17.8%。他の地域と際立った違いがあり、観光業が大きな産業となっています。静岡県は東側のエリアが首都圏、西側のエリアが中京圏とのつながりが深くなっています。

  • 東部地域:地下水を豊富に利用できることから大手製造業の工場が立地。なかでも富士山麓の地域は製紙・化学工業が盛んで、パルプ・紙・紙加工品の出荷額は全国でも屈指です。
  • 中部地域:国際貿易港である清水港が物流拠点となっているほか、遠洋漁業の漁獲高が全国トップクラス。こうした背景もあり、食品加工業の工場も数多くあります。
  • 西部地域:浜松市を中心に、自動車・バイクおよびその部品、そして楽器が2大産業になっているほか、エレクトロニクスや生産用機械などの生産拠点も多くなっています。温暖な気候のもと、各種野菜やみかんなどの果物の生産も盛んな地域です。

02| 静岡移住のメリットは?

東西主要都市への交通アクセスがよい

富士山と新幹線 富士山と新幹線

東海道五十三次で知られるように、静岡県は古くから関東地方と中部・近畿地方をつなぐ大動脈が整備されていました。現在も東海道新幹線と東名高速道路・新東名高速道路が東西に走り、首都圏をはじめ中京圏・関西圏へのアクセスのよさを誇ります。新幹線の駅は東から、熱海駅、三島駅、新富士駅、静岡駅、掛川駅、浜松駅の6つあります。

東京駅までのアクセス時間(こだま利用、静岡駅・浜松駅はひかり利用)は、

熱海駅から約45分、三島駅から約50分、新富士駅から約60分、静岡駅から約60分、掛川駅から約90分、浜松駅から約90分

となっており、静岡駅までは東京への通勤圏内といえるでしょう。

また、名古屋駅までは静岡駅から約55分、浜松駅から約30分。新大阪駅までは静岡駅から約1時間50分、浜松駅から約1時間25分となっています(いずれもひかりを利用)。

新東名高速道路 新東名高速道路

高速道路については、静岡県内に東名高速道のIC(インターチェンジ)が16か所、スマートICが9か所、新東名高速道路のICが11か所、スマートICが5か所設置されており、非常に利用しやすくなっています。

富士山静岡空港 富士山静岡空港

空港は、車の利用で静岡市から約40分、浜松市から約50分でアクセスできる富士山静岡空港があります。国内線は、札幌(新千歳)、出雲、福岡、熊本、鹿児島、那覇、丘珠(夏ダイヤのみ)の8路線、国際線では、ソウル、上海をはじめとした中国各地への定期便とチャーター便が就航しています。

静岡市はコンパクトシティで暮らしやすい

静岡市の街並みと富士山 静岡市の街並みと富士山

県庁所在地として各種行政機関の窓口があるのはもちろん、美術館・ホールをはじめとした文化施設、大学などの教育機関、大規模な商業施設などが、市街地にギュッと凝縮しています。市街地に住めば、車がなくとも自転車の利用で生活を維持していくことができるでしょう。なお、静岡市としても「静岡市中心市街地活性化基本計画」を策定して、官民をあげて中心市街地の活性化やコンパクトシティの推進を行っているのも心強いですね。

沿岸部から平野にかけては温暖な気候で暮らしやすい

アクトタワーと馬込川 アクトタワーと馬込川

静岡市、浜松市をはじめとした主要都市は太平洋沿岸部に近いエリアに並んでいます。夏の最高気温などは東京と大差はありませんが、海からの風が吹き込むので東京都心のような蒸し暑さは感じません。海が近いこともあって冬場も朝夕の寒暖差が小さく、積雪もほとんど見られません。また、日照時間も長く、静岡市で年間2,000時間超となっています。北部山岳地帯や伊豆半島の天城連山などをのぞけば、1年を通じて快適に過ごせるでしょう。

農産物、魚介をはじめ多くの食の楽しみがある

生桜えびと生しらす 生桜えびと生しらす

気候温暖で太平洋沿岸に立地する静岡県。食の豊かさも特筆すべきものがあります。農林産物であれば、茶葉・ワサビの産出額、温州みかん・温室メロン・生シイタケ・芽キャベツの生産量が日本一。その他にもイチゴ、レタスなどの栽培が盛んです。

水産物は、カツオ・カツオ類、キハダマグロ・マグロ類、マアジの産出額、ニジマスの養殖収穫量、サクラエビ・タカアシガニの漁獲量などが日本一です。さらに、干物や鰹なまり節などの加工工場の数も日本一。また、三島や浜松のうなぎも名物です。さらに、静岡おでんや浜松餃子、富士宮やきそばなどの地元グルメも豊富です。

03| 静岡移住のデメリットは?

移住者は多いが転出者も多く、転出超過になっている

各種のアンケートで若い人を中心に移住先として人気の高い静岡県ですが、現状では転入者よりも転出者のほうが多い、いわれる転出超過の県となっています。

総務省発表の2023(令和5)年「住民基本台帳人口移動報告」によると、静岡県の転出超過は6,154人。2022(令和4)年の4,658人から増加が著しく、都道府県別の転出超過数はワースト7位(前年はワースト8位)でした。流出先は東京圏が中心となっており、若年層の流出が目立ちます。

なお、政令指定都市である、静岡市も転出超過が1,400人、浜松市が506人となっています。これは、首都圏、中京圏と密接な関係があり、アクセスもよいがゆえに、気軽に転出できることが原因と思われます。

なお、転入超過だったのは7市町で、トップは富士市の117人、以下、吉田町113人、掛川市112人と続いています。

大地震による災害のリスクが高い

日本列島の太平洋岸では、大昔から周期的に大規模な地震が起こっています。静岡県で近い将来に起きると予測されている大規模地震には、東海地震を含む南海トラフ地震相模トラフ沿いの地震の2つがあります。

このため、県内全域が、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に、沿岸部の静岡市、浜松市をはじめ21市町は「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に、沼津市、熱海市、三島市、富士宮市をはじめ県東部の18市町が、「首都直下地震緊急対策区域」に指定されています。

南海トラフ地震では、静岡県内で最大約10万5,000人が犠牲になると予測。相模トラフ沿いの地震で最大約6,000人の犠牲者発生が想定されています。
このため、静岡県および各市町村はさまざまな対策を講じています。移住を考える地域の状況がどのようになっているのか、また居住地域のハザードマップの状況などを確認することは必須でしょう。

日常生活には車が必要

静岡県は東西交通の要となる新幹線は走っているものの、各エリア内での移動は車中心です。県庁所在地である静岡市の場合でも、JR東海道線と静岡鉄道が走っていますが、いずれも市内を横断するように路線があるため、海側から山側へと向かう路線はありません。路線バスが補完していますが、便数は少なめです。

コンパクトシティである静岡市は地域によっては自転車の利用で日常生活を送ることができますが、他の市町村では生活圏が広いだけに難しそうです。近年、主要都市を除く日本の多くの市町村では、鉄道駅の周辺の商業施設などの衰退が激しく、車利用を前提とした幹線道路沿いの商業施設が取って代わっています。静岡県も例外ではありません。

新幹線駅は県内に6つあるが、のぞみは停車しない

N700系のぞみ N700系のぞみ

熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松と東海道新幹線の駅が6つある静岡県ですが、「のぞみ」が停車する駅はありません。これは、「のぞみ」は東京~名古屋~大阪を最速で結び、それ以外の中核都市には「ひかり」が停車、各駅には「こだま」が停車と、役割を異にするためとか。県内で静岡市より東の居住者は首都圏へ、掛川より西の居住者は中京圏へ行くことが多いので、概ね不便はありませんが、京都・新大阪よりも西の地方へ出かける際は、名古屋駅での「のぞみ」乗り換えが基本となります。

04| 移住者の声:子どもたちのいきいきとした表情が物語る函南町の暮らしやすさ

函南町役場から望む富士山 函南町役場から望む富士山

2017(平成29)年に都内から函南(かんなみ)町へ移住された、柴田恵梨子さんにお話をうかがいました。

函南町は静岡の東部、伊豆半島の入口に位置し、沼津市、三島市、熱海市、伊豆の国市、神奈川県の箱根町、湯河原町と隣接。箱根南麓の豊かな自然と、どこからでも富士山を望める景観に恵まれたエリアです。近隣都市のベッドタウン的な性格を併せ持ち、東京駅へも電車・新幹線で1時間強のアクセス便利な土地です。

柴田さんは移住のきっかけをこう語ります。「ひとりで子育てをすることになったのですが、都内で家を借りて、仕事と子育てを両立するのは無理があるなと思いました。両親が住む都内のマンションに同居することも考えましたが、私たちが住むスペースの余裕はなさそうで……」

そんなときに頭に浮かんだのが、函南町にある祖父の別荘。「とりあえず、子どもたちを連れて移住しちゃいました!」と、行動にうつしたのだそうです。

移住当初は、求人情報で見つけたサロンに勤務。その後、独立を果たしました。「初めの頃は、よく両親が手伝いに来てくれていたのですが、新型コロナ禍の影響もあり、2人共とも2年前にこちらに移住してきてくれました。今は3世代、家族みんなで助け合いながら暮らし、大好きな美容の仕事も順調なので、とても充実しています」

移住を果たして約7年になる函南町暮らし。函南町のなかでも牛乳で有名な丹那地域に惚れ込んで住んでいます。「第一に、水・空気・食べ物がおいしいです。とくに野菜は絶品! 今では娘も野菜の産地だけでなく、生産者にもこだわるほどになりました」

そんな子どもたちにも大きな変化があったそう。「丹那小学校の教育理念のおかげもあって、生まれ変わったかのように表情がいきいきとしているんです。自分でやりたいことを探す、ものごとにチャレンジしたいっていう気持ちが育まれるんでしょうね。子どもって環境によってこうも変わるんだ、純粋なんだって改めて思いました」

今ではすっかり函南町の生活になじんだ柴田さん一家。「移ってきた当初から、地域の方々には本当によくしていただきました。周りの助けがあってこその生活・子育て。本当にありがたいことです。私たち家族を受け入れ、子どもたちを変えてくれた函南に、なにか恩返しができたらと思っています」

地域に溶け込み、家族みんなで生活を楽しむ様子が、お話からもいきいきと伝わってきました。

05| 静岡県移住で失敗、後悔しないための準備: 製造業の就業者数が突出する特徴ある産業構造

●家の相場

静岡県の県庁所在地である静岡市の家賃や新築物件の相場は次の通りです。

賃貸マンション・アパートの目安は下記。

2DK:60,000円
3DK:75,000円
1LDK:65,000円
2LDK:85,000円


新築・分譲一戸建ては

2,000万円台後半から

多くの物件が販売されています。

中古マンションの目安は下記。

築5年~15年以内:2,000万円台前半
それ以上の築年数:1,000万円台後半


なお、5年ごとに発表される総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」では、静岡県の借家の1か月あたりの家賃は50,500円、全国平均は55,695円、東京都は81,001円となっています。

●仕事

2023(令和5)年度地域別最低賃金によると静岡県は984円。全国加重平均の1,004円、首都圏(東京:1113円、千葉:1,026円、埼玉:1,028円、神奈川:1,112円)に比べると、やや開きがあります。

厚生労働省が2023(令和5)年3月に発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」の、都道府県別賃金(男女計)を見ると、静岡県は294,200円となっていて、全国平均の311,800円を下回っています。ちなみに、首都圏では、東京375,500円、神奈川県が335,600円、千葉県は309,000円、埼玉県は305,200円。隣県の愛知県は312,600円です。

2023(令和5)年12月現在の求人倍率を見てみると、静岡県は1.21倍となっており、全国平均の1.27倍をやや下回っています。

静岡県の産業別の就業者数を見ると、就業者(181万7,048人)のうち、第1次産業は3.5%(6万3,034人)、第2次産業は32.1%(58万3,871人)、第3次産業は62.8%(114万1,032人)となっています。また、産業大分類別では、「製造業」の割合が25.0%で最も高く、次いで「卸売業・小売業」14.8%、「医療・福祉」11.6%となっています(いずれも2020(令和2)年)。

冒頭でも紹介しましたが、静岡県は大きく4つの地域に分かれ、それぞれが地域性を生かした産業が発達しています。現地での就職を考えるのであれば、こうした地域性を頭に入れて、求職活動をするのが賢明でしょう。

  • 伊豆地域:首都圏からアクセス便利な観光地であり、飲食・宿泊などのサービス業での就職が望めます。
  • 東部地域:製紙・化学工業の大手メーカーの工場が立地。さらに医薬品や医療機器の出荷額も全国トップクラス。
  • 中部地域:静岡市を中心としたエリアなので、商業の規模も大きいです。また、国際貿易港である清水港を中心とした物流関係、焼津港を中心とした食品加工業、お茶を中心とした農業も盛んです。
  • 西部地域:自動車・バイク関連、楽器関連、さらにエレクトロニクスや生産用機械などを中心とした製造業。また、みかんやメロン、各種野菜などの栽培、浜名湖での牡蠣・のり・うなぎの養殖など第1次産業も盛んです。

●静岡県内のアクセス

静岡県では以下の路線が走っています。

  • JR:東海道新幹線、東海道本線、伊東線(熱海駅~伊東駅)、御殿場線(国府津駅・小田原市~御殿場駅~沼津駅)、身延線(富士駅~甲府駅)、飯田線(浜松市の天竜区北西部)
  • 私鉄:伊豆急行線(伊東駅~下田駅)、伊豆箱根鉄道駿豆線(三島駅~修善寺駅)、岳南鉄道線(富士市の吉原駅~岳南江尾駅)、静岡鉄道静岡清水線(新静岡駅~新清水駅)、大井川鐵道大井川本線(金谷駅~千頭駅)、天竜浜名湖鉄道(掛川駅~新所原駅)、遠州鉄道鉄道線(新浜松駅~西鹿島駅)

以上のように、多くの路線がありますが、広大な県域をすべてカバーできていません。また、生活路線もあれば観光路線もあります。電車利用を前提とするなら、居住地選びは慎重に。なお、駅チカだからといって、商業施設などが揃っているとは限りません。駅は電車の乗り降りをするだけの場所で、生活圏はまったく別のことも多々あります。

静岡県が2022(令和4)年に発表した公共交通に関する資料の県民アンケートでは、「公共機関をどのくらいの頻度で利用しますか」には、「ほとんど利用しない」人が約62%となっています。なお、静岡県の免許保有率は約80%と全国平均の約73%を上回っています。さらに通勤・通学における交通分担率は自動車が約64%、鉄道はわずか約8%、バスは約5%となっています。全国平均では、自動車が約45%、鉄道が約23%、バスが約7%ですから、自動車の依存度が非常に高くなっています。

同じく県が発表した「令和2年静岡県の自動車保有台数調査」によると、自家用乗用車1台当たりの人口は1.64人自家用乗用車の1世帯当たり保有台数は1.48台となっており、極めて高い数字です。

このような状況をみると、県内の多くの地域では自家用車が必須といえるでしょう。

●教育

2023(令和5)年度全国学力テストで、静岡県は、静岡県は984円中学3年は国語、数学、英語のいずれの科目も全国平均を上回りました。2007(平成19)年の調査開始から、全科目で全国の平均正答率を上回り続けています。中でも静岡市と浜松市は正答率が高くなっています。

国語 全国平均=70.6点 静岡県=70.6点 静岡市=72点 浜松市=70点
数学 全国平均=51.0点 静岡県=52.3点 静岡市=54点 浜松市=52点
英語 全国平均=45.6点 静岡県=46.8点 静岡市=48点 浜松市=47点

県内にある、高等教育機関は以下のようになります。

  • 国立(四年制大学・大学院)
     静岡大学
     総合研究大学院大学先端学術院遺伝学コース(国立遺伝学研究所)
     浜松医科大学
  • 国立(短期大学・高等専門学校)
     沼津工業高等専門学校
  • 静岡県立大学
     静岡文化芸術大学
     静岡社会健康医学大学院大学
     農林環境専門職大学
  • 公立(短期大学・高等専門学校)
     静岡県立大学短期大学部
     農林環境専門職大学短期大学部

さらに、私立の四年制大学・大学院が13校、私立の短期大学・高等専門学校が4校あり、医学、理工をはじめ文化系まで幅広いジャンルの教育機関が揃っています。

ただ、大学進学時の都道府県別の流入・流出者数をみると、静岡県は約9,200人と大幅な流出となっています。「20~24歳」における都道府県間人口移動においても約2,000人の転出超過に。進学先希望が県内にない・遠い、首都圏・中京圏と隣り合っていて県外に出るのに抵抗がないなどの理由が考えられそうです(いずれも2017(平成29)年)。

静岡県では環境教育に力を入れており、静岡県環境学習ポータルサイト「ふじのくに環境ラボ」というサイトを構築。地球環境・自然共生・資源循環・水循環・大気・水質の5つの分野で学べるようになっています。また、「環境学習フェスティバル」を実施しており、学習会や講座をはじめ観察会や体験学習など多彩なイベントを県内各地で開催。さらに、「静岡県SDGsスクールアワード」において、学校にて児童・生徒のSDGs達成に向けた取組動画(90秒)を募集し、優れた取組を表彰しています。

06| 静岡県移住に関する支援制度・補助金:主要都市には独自の制度も

静岡県では、以下のような支援制度や補助金を用意して、移住を考えている人をサポートしています。

静岡県移住・就業支援金制度
東京圏から静岡県に移住して就業、起業などした人に県と市町が連携して最大100万円を支給。対象となるのは、

・直前10年間のうち通算5年以上、かつ直前に連続して1年以上首都圏に在住し、東京23区へ通勤していた方(一部地域は除外)
・移住後3カ月以上、1年以内である
・5年以上継続して居住する意思があること


のいずれも満たし、

・静岡県のマッチングサイト掲載の就業先に就職した
・県の支援を受けて起業した
・テレワークを行う


などの条件のうちいずれかを満たす必要があります。

なお、支援金額は、単身移住の場合は60万円世帯での移住の場合は100万円です。2023(令和5)年4月1日以降に移住した場合は、18歳未満の世帯員を帯同した場合100万円/人が適用されます。


テレワーク対応リフォーム補助制度
住宅内に新たにテレワークスペースを確保するためのリフォーム(必須工事あり)や感染予防・家事負担軽減などのリフォームへの補助を行う場合の補助制度。静岡県への移住を予定されている人も利用できます。1戸あたり上限35万円が給付(最大で対象工事70万円分の50%半額を補助)され、さらに床の工事などで県指定のしずおか優良木材を10平方メートル以上使うと、最大14万円の補助金が加算されます。なお、必須工事の机の造り付けなどを行い、残りの補助金枠で水まわりなどの設備交換を行うことも可能です。

07| 静岡県移住におすすめの地域:太平洋岸の主要都市でも移住のメリットは大

●静岡市

静岡市中心地 静岡市中心地

静岡県の県庁所在地で、3つの区からなる政令指定都市です。北部の南アルプスから南部の駿河湾まで豊かな自然環境を有し、中心となる平野部は温暖な気候に恵まれています。市の中心部は、かつては今川家や徳川家の城下町だったエリアで、行政機関、文化施設、商業施設、医療施設などが集まったコンパクトシティで都市機能が充実。お茶や桜えび、プラスチックモデルなど、全国的に知られる多様な産業や、国際貿易の拠点・清水港での交易などが、市の経済を担っています。かつて「共働き子育てしやすい街」ランキングで1位になったこともあるなど、子育て支援にも定評があります。また、県との連携で「静岡市移住・就業補助金」を実施しています。

「結婚新生活スマイル補助金」
静岡市で新生活を始める新婚世帯の新生活に係る住居費や引越費用を補助。上限は条件によって変わり合計30~60万円となっています。

「静岡生活体験プログラム付きお試し住宅」
静岡市への移住に意欲がある人に向け、静岡生活体験プログラム付きのお試し住宅を用意。静岡県外在住の人で、静岡市移住支援センターに相談をした人が対象。期間は3泊4日~2週間以内で、利用料金は1日500円/1組となっています。

「移住希望者向けまち歩き案内」
毎月1回、土曜日に、JR静岡駅周辺を職員が一緒に歩いて案内してくれる1時間程度のまち歩きツアー。希望に応じて、その他の地域も対応してくれます。

「特定優良賃住宅子育て支援事業」
静岡市が認定している特定優良賃貸住宅の新規入居者を対象とした家賃減額補助。規定の世帯所得月額の範囲で、小学校6年生までの子どもを扶養している世帯が対象です。

●三島市

三島市のまちなみ 三島市のまちなみ

静岡県東部、伊豆半島の付け根で、富士南麓と箱根西麓にあたるエリアにある三島市。かつての東海道の宿場町であり、三嶋大社の門前町として栄えてきました。富士山の伏流水がいたるところで湧き出て、清らかな水の流れる水の都です。三島駅からは新幹線「ひかり」で東京まで約45分でアクセスでき、朝の通勤時間帯には始発電車もあり、東京発の新幹線最終が三島駅終着と便利。転職をせずに暮らすことも可能ですし、テレワーク移住にも最適です。県との連携で「静岡市移住・就業補助金」を実施しています。

「住むなら三島移住サポート事業」
市内に、戸建て住宅を新築、建売り住宅及び中古戸建て住宅を購入、または新築・中古マンションを購入して転入した若い世帯に対し補助金を交付しています。補助金額は、県外からの移住は100万円(三島市移住・就業支援補助金の交付決定者は50万円)、県内他市町からの移住は20万円(申請者又は配偶者の父母のいずれかが市の住民基本台帳に記録されている人)となっています。

「三島市移住・子育てリフォーム事業」
県外から移住する(した)若い世帯、市内に住む中学生以下の子が属する世帯で、 10万円を超えるリフォーム工事を行う場合に、上限20万円を補助します。

「みしまっ子すくすく祝金」
子どもの誕生を祝福し、三島市で保護者が安心して育てることができるよう支援するための祝金。出生児が第1子の場合は1万円、第2子の場合は5万円、第3子以降の場合は15万円が贈られます。

●藤枝市

藤枝市のまちなみ 藤枝市のまちなみ

静岡県のほぼ中央に位置し、東側が静岡市に隣接する藤枝市。北部は赤石山脈の南端に接し豊かな緑に覆われ、南部には肥沃な志太平野が広がり市街地を貫くように瀬戸川が流れる穏やかな風土の街です。JR東海道本線、新幹線、国道1号バイパス、東名高速道路、新東名高速道路といった日本の大動脈が東西に走っておりJR藤枝駅からは隣接する静岡駅または掛川駅から新幹線が利用可能。富士山静岡空港へもアクセス便利な土地です。JR藤枝駅駅周辺は、市が主導したコンパクトシティを目指す再開発が進み、商業施設や都市機能が集積しています。また、市街地から車で20分ほど行けば、山あいの自然豊かな田園地帯が広がっており、ゆったりとした田舎暮らしを楽しみながら、近隣都市へ仕事に通うこともできそうです。

「子育てファミリー移住促進補助金」
中学生以下の子どものいる子育てファミリー世帯に対し、新築住宅の建築・購入、新築マンションの購入に要する経費、新築住宅又は空き家に移転する際に要する費用を、1世帯あたり最大130万円を補助しています。

「新婚生活サポート補助金」
新婚世帯の新居の取得・賃貸・引っ越し費用・リフォーム費用に対する補助で、1世帯あたり最大80万円が補助されます。

「仲良し夫婦移住定住促進事業」
結婚後、3年以内の子育て前の夫婦に対して、新築住宅の建築・新築マンションの購入、新築住宅に移転する際に要する費用、賃貸借住宅を賃借する際にかかる費用について、1世帯あたり最大100万円を補助。

●湖西市

浜名湖橋 浜名湖橋

静岡県の最西端、愛知県と隣接する湖西市。太平洋と繋がる浜名湖や、静岡と愛知の県境に連なる湖西連峰広く長い砂浜が続き太平洋を見渡すことができる遠州灘海岸など、豊かな自然にあふれています。浜名湖でのフィッシングやクルージング、サーフィン、ウエイクボードなどのマリンアクティビティ、緑豊かな湖西連峰でのトレッキングなど、アウトドア派には絶好の環境が揃っています。愛知県豊橋市に隣接しており、名古屋駅までは東海道本線の快速電車等で1時間少々なので、愛知県への通勤・通学も可能です。

「住もっか『こさい』定住促進奨励金」
湖西市内に住宅を購入・建築し居住する人に、最大100万円の奨励金が交付されます。対象の住宅は、新築住宅や建売住宅のほか、分譲マンションや中古住宅もOK。市外在住の人も対象となります。奨励金は、基本額10万円に、該当の項目に応じて加算され最大100万円です。

「新婚さん『こさい』へおいでん新生活応援金」
結婚・婚姻を機に湖西市に転入する夫婦に対し、10万円の応援金を交付。市外から転入してくるのは、夫婦2人とも、または、夫婦のうちどちらかでもOKです。

「湖西市開業パワーアップ支援資金利子補給制度」
市内で事業を営もうとする創業者または、創業間もない中小企業者の人を支援。静岡県の特別政策資金「開業パワーアップ支援資金」を借り入れた際に、利子の一部を補給する制度です

●浜松市

浜松市中心部 浜松市中心部

静岡県で最多の人口を擁する浜松市。平成の大合併を経て市域が拡大、全国の市町村で2番めの面積を有し静岡県の約2割を占めるほどの広大さ。北部の天竜川中流域の急しゅんな山間地や浜名湖北岸のなだらかな山地、天竜川沿いの低地、三方原台地、浜名湖から太平洋沿岸部にかけての低地と多彩な地形・自然で構成されています。そのため、市街地で都会的な暮らしを楽しめるほか、山間部で自然とふれあいながら田舎暮らしをしたり、郊外エリアで職住近接の暮らしを営んだり、あるいは浜名湖や遠州灘に近いエリアでマリンアクティビティを中心とした生活を満喫することもできます。

自動車産業や楽器製造をはじめとする製造業が盛んで日本を代表する産業都市の顔を持ちます。さらに、農業も非常に盛んで、野菜や果物、花き類を中心に栽培され、全国有数の農業産出額を誇る農業都市でもあります。県との連携で「移住・就業補助金」を実施しています。

「ハマライフ住宅取得費等補助金」
市外から移住してくる人に対して、住宅の新築・取得費用や増築・改修費用、住宅賃貸費用、引越し移転費用などを最大100万円補助します。

08| 静岡県移住後の食生活

●桜えびのかき揚げ

延々と延びる海岸は海域ごとに特色ある魚介が水揚げされ、温暖な気候のもとで農作物がすくすく育つ静岡県。地域ごとに地方色豊かな食文化が育まれてきました。

国内では静岡県の駿河湾でしか水揚げされない「桜えび」。桜えびそのものは、東京湾や相模灘にも生息しますが、漁業の営業許可は静岡県にだけ認められているので、口にすることができるのはすべて静岡産です。ちなみに桜えび漁の許可証をもつ船は、由比・蒲原・大井川地区の合計でわずか120隻。最大の水揚げ高を誇る由比漁港を中心に水揚げされます。冷凍ものもあり通年で食べることはできますが、春漁の行われる3月中旬~6月初旬、秋漁の行われる10月下旬~12月下旬には、獲れたて新鮮な桜えびが味わえます。中でも人気料理は、かき揚げ。たっぷりの桜えびに野菜を合わせ、少なめの衣をまとわせカラッと揚げます。サクサクふんわり食感で、桜えびならではの甘みや旨みが絶品です。

●生しらす丼

沼津市から静岡県中部を経て浜松市にかけての沿岸で獲れ、田子の浦港(富士市)、用宗港(静岡市)、大井川港(焼津市)、福田港(磐田市)、舞阪港(浜松市)などに水揚げされるしらす。静岡県のしらすの漁獲量は全国でも1、2位を争うほど。静岡県では、禁漁期間(1月15日~3月20日)を設けており、それ以外の期間は基本的に漁を行っています。静岡県のしらすの旬は3月下旬から10月頃とされ、中でも6~9月が最もおいしいのだとか。

しらすは、釜揚げしらすやしらす干し、たたみいわしなどの加工品でも手軽に食べることができますが、甘みたっぷりの「生しらす」のおいしさには代えられません。鮮度が勝負の生しらすを味わうなら、漁港近くのお店へいくほかありません。中でも人気は生しらす丼。ご飯の上にたっぷりの生しらすをのせ、わけぎをいろどりにのせ、醤油をちょっぴりかけて。まさに海の恵みというおいしさです。

●静岡おでん

静岡市民の身近な食べ物で、現地では「しぞーかおでん」といわれる静岡おでん。お店で鍋をのぞくと、ぎょっとするのが真っ黒な汁。牛スジ肉をだしのメインに各店がそれぞれのレシピで作った汁の中に、串に刺した具を入れて時間をかけて煮込んでいます。具では黒はんぺん(サバやイワシを皮や骨ごとすり身にしたもの)が最大の特色。そのほか牛スジやモツなどの肉類、コンニャクや大根、卵などが定番です。青海苔や魚のだし粉をかけていただくのポピュラーな食べ方です。汁の見た目ほどしょっぱくはなく、まろやかな味わいです。専門店だけでなく、駄菓子屋などでも売っていて、市民はおやつ代わりに子どもの頃から親しんでいるのだとか。

●富士宮やきそば

一見、ふつうの焼きそばですが、一口食べれば、その違いに納得するはず。最大の特徴はコシが強く噛みごたえのある麺。そして、肉かすやイワシの削り節を使った味付けも独特です。麺の食感の秘密は製造工程にあります。一般的な焼きそば麺は蒸した後に一度茹でますが、富士宮やきそばの麺は茹でずに急速に冷やし、油で表面をコーティング。麺の水分が少なく、独特のコシが生まれます。麺は富士宮市内にある4社の製麺業者「マルモ食品工業」「叶屋」「曽我めん」「さのめん」のいずれかのものを使用。麺と野菜、ラードを絞った後の肉かすで炒め、ソースで味付けし、イワシの削り粉をたっぷり掛けるのが基本です。4社の麺は市内のスーパーなどでも販売されており、市民の多くはいずれかを手に取るといい、家庭の味としてもすっかり普及しています。

●キンメの煮付け

キンメダイは伊豆半島を代表する魚で、なかでも下田漁港はキンメダイの水揚げ日本一を誇ります。伊豆地方で揚がるキンメダイは、漁獲エリアによって地金目鯛、島キンメ、沖キンメの3種に分類されますが、なかでも一本釣りで獲る地金目鯛は希少な存在。地金目鯛のひとつ稲取キンメは、高級ブランド魚となっています。キンメダイは鮮やかな赤色の皮と脂ののって肉厚な身が特徴。刺し身や焼き物でもたいへん美味ですが、そのおいしさを味わい尽くせるのが煮付け。甘く上品な脂とふっくらとした身が絶品です。

09| 県内スーパー限定のご当地パン

のっぽ

静岡県内のスーパーやコンビニのパンの棚でひときわ目立つのが「のっぽパン」。本体の長さ約34cm、袋に描かれたユーモラスなキリンのキャラクターイラストが目印です。製造元は沼津市の製パン会社・バンデロールで、その発売は1978(昭和53)年。半世紀近く親しまれてきた、まさに静岡県民のソウルフードです。

ふっくらとしたパンの間にくちどけのよいミルク風味のクリームを挟んだ、まさにおやつにピッタリのパン。一番人気は最初に販売されたクリームで、そのほかにチョコやピーナッツなどが通年販売されています。また、季節の味も次々と登場し、販売開始から現在までに200種以上の味が発売されたとか。一時期、製造工場の閉鎖に伴い消滅の危機に瀕したことがありましたが、販売再開を望む県民の声が多く寄せられ製造を再開。こんなエピソードからも、静岡県民の愛情の深さがわかります。
※通年販売は「ピーナッツ」と「丹那牛乳」(チョコは今年から冬季販売に変更)

ようかんぱん

一見したところ、ドーナツにチョコレートをかけたようなルックスですが、実は上にのっているのは、ようかん。つぶ餡パンの上にようかんをほどこし、中央の穴にバニラクリームが入っています。「羊かん」の名が付くパンは全国にありますが、和洋三甘味を用いたのは全国でこちら静岡の「ようかんぱん」だけだそう。三甘味は思いのほか甘さも控えめ、パン生地との絶妙なバランスでクセになりそうな深い味わいです。

「ようかんぱん」を製造しているのは富士市の製パン会社・富士製パン。かつては、静岡県東部の数軒のパン屋で作られていたそうですが、今では1960(昭和35)年からつくり続ける富士製パンだけとなりました。穴の空いたつぶ餡入りのパンを焼き上げた後に一度粗熱をとり、オリジナルレシピの液状ようかんにくぐらせ、ふたたび冷ましてからクリームを絞る。全て職人の手作業で、大変手間のかかる一品です。

一時は洋風のパンの波に押され注文数も減少、手間のかかるようかんぱんは製造中止も検討されましたが、毎日のように購入する地元のコアなファンの気持ちにあと押しされ、今日までその製法を変えずに職人の手作りの味を守っているそうです。そして、2000年代に入り、イベントなどで販売すると人気が再加熱したそうです。2015(平成27)年には冬季限定の「白いようかんぱん」も登場。こちらはクロワッサン生地に、白あん・ようかん・クルミ・バニラクリームで醸し出す新感覚の味わいが人気です。

アントレース

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