地方での仕事探しのヒントとは？
テレワークの普及やライフスタイルの見直しをきっかけに、地方移住への関心が高まっています。しかし「住む場所は決まったけれど、仕事はどうすればいい？ 」「収入は維持できるの？ 」と不安に感じている方も少なくありません。このコラムでは、地方移住を考えるうえで避けて通れない「仕事」について、リアルな現状や見つけやすい職種、働き方の選択肢をご紹介。さらに、移住に適したエリアの特徴や、暮らしてみて感じるメリット・デメリットもあわせて解説します。自分らしい生き方を叶えるために、移住後も安心して働き続けるヒントを見つけてみませんか？
編集：アントレース
CONTENTS
01| 地方でもちゃんと働ける？ 仕事事情と知っておきたいこと
移住を考えたとき、最初にぶつかる“働くこと”への不安
地方移住を検討する際、最も大きな不安材料にあげられるのが仕事・収入面。移住希望者の約半数が懸念事項としてあげています。また、マイナビ転職の調査によれば、移住転職経験者の中で「仕事の選択肢の少なさ」に悩んだという声も多く、実際に転職後は、平均80万円ほど年収が減少したというデータもあります。
移住先で見つかる仕事とは？ 職種や傾向をチェック
地方は「仕事が少ない」と思われがちですが、実際には地域によって求人の内容や数は大きく異なります。全体としては都市部に比べて求人総数は少なめですが、特定の業種では人手不足が深刻で、むしろ採用のチャンスが広がっている分野もあります。
たとえば、介護・福祉、医療、建設、製造、運輸・物流といった“生活やインフラを支える仕事”は、多くの地域で安定した需要があり、未経験者でも採用されやすい傾向にあります。また、観光業や農林水産業など、地域資源を生かした仕事も地方ならではの特徴です。
一方で、デザインやIT関連、事務職などは都市部に比べて求人が限られる傾向がありますが、テレワークの普及により「移住しても今の職を続ける」という選択肢が現実的になりつつあります。
つまり、地方での仕事探しは「職種選び」がカギ。地域の産業構造を理解し、自分のスキルや希望とマッチする業種を見極めることが、移住後の満足度に繋がります。
リモートや複業で実現する“移住とキャリア”の両立
近年、テレワークの普及により、地方にいながら都市部の仕事を継続するケースが増えています。内閣府の調査では、移住希望者の約4割が「今の仕事を続けたい」と回答しており、リモートワークを前提とした地方移住が現実的な選択肢になりつつあります。
また、複業（副業）への関心も高まり、民間調査では地方副業（都市部の企業で働きながら地方の仕事を副業として行うこと）に興味がある都市部のビジネスパーソンは約6割に上るという結果も。地域のプロジェクトや一次産業、観光業とのマッチングを図る自治体の取り組みも進んでおり、新しい働き方を支える環境が広がっています。
このように「ひとつの職場に縛られない」柔軟な働き方が、地方での暮らしとキャリアを両立させるカギとなっています。
02| はじめての移住でも安心。地方でチャレンジしやすい仕事とは？
地方には、未経験からでも始めやすい仕事や、地域に根ざす安定した職種が多くあります。ここからは、はじめての移住でも挑戦しやすい仕事をご紹介します。
①農業・林業などの一次産業
自然の中で体を動かして働きたい人にぴったり。
たとえば……
・野菜や果物の収穫スタッフ
・農家のもとでの研修型就農
・椎茸栽培や茶畑の管理
・林業の補助作業（枝打ちや苗木の手入れなど）
地域の支援制度を使って、ゼロから始める人も増えています。
②介護・医療・福祉職
地域に根ざした仕事として需要が安定している分野。
たとえば……
・高齢者施設の介護スタッフ（資格がなくてもOKな場合あり）
・デイサービスでの送迎や話し相手
・訪問介護ヘルパー
・保育園や障がい者施設でのサポートスタッフ
地域住民との関わりが深く、やりがいを感じやすい職種です。
③観光・宿泊・飲食関連
観光地や温泉地では常に人手を募集していることも。
たとえば……
・旅館やホテルのフロント・清掃スタッフ
・地元食材を使った飲食店のホール・調理補助
・観光案内所の受付やガイド
・お土産店での販売スタッフ
接客が好きな人や、地域文化に触れたい人におすすめ
。
④地域おこし協力隊や行政関連
移住者が地域と関わるきっかけになりやすい仕事。
たとえば……
・地元イベントや観光PRの企画・運営
・空き家の利活用プロジェクトのサポート
・農業や福祉の現場を支援する地域活動員
・地元企業との連携による情報発信やマーケティング
任期終了後に起業したり、地域に定住したりする人も多いのが特徴です。
⑤IT・フリーランス系の在宅ワーク
スキルを活かして、どこにいても働ける時代に。
たとえば……
・Webデザイナーやライター
・オンライン講師や翻訳者
・プログラマー、エンジニアのテレワーク
・SNS運用代行、事務代行などの副業型業
コワーキングスペースや移住者向けのサポート施設が整っている地域もあります。
⑥小商い・起業（カフェ・民泊・移動販売など）
自分のペースで、やりたいことをカタチにできる働き方。
たとえば……
・空き家を活用した古民家カフェや雑貨店
・民泊施設の運営（農泊なども含む）
・キッチンカーでの移動販売（パン、コーヒー、惣菜など）
・ハンドメイド作品のネット販売やマルシェ出店
地域の補助金や先輩移住者のサポートを受けながら始める人も多くいます。
未経験からでも挑戦しやすく、地域と深く関わることができる仕事が、地方にはたくさんあります。大切なのは、自分の興味やライフスタイルに合った働き方を見つけること。支援制度や地域の人との繋がりを活かしながら、無理なく一歩を踏み出してみましょう。
03| 地方で活躍するためにあると便利な資格
地方での仕事や暮らしをスムーズにするには、ちょっとした資格が力になることも。未経験でも働きやすくなったり、選べる仕事の幅が広がったりと、移住後の安心感にも繋がります。ここでは、地方での生活に役立つ実用的な資格をご紹介します。
介護職員初任者研修
介護職の入門資格として知られ、介護施設や訪問介護の現場で求められる基本スキルを学べます。地方では高齢化が進み、常に人手が必要とされているため、未経験からでも仕事に就きやすい資格です。通信＋通学の講座で3〜4か月程度で取得でき、資格取得支援制度を設けている自治体もあります。
調理師
飲食業界で広く活用される国家資格で、調理や栄養、衛生管理などの専門知識が身につきます。観光地や道の駅、地域食材を活かした飲食店が多い地方では重宝され、独立開業にも有利です。実務経験が必要なためややハードルはあがりますが、飲食業界で働きながら目指す人が多くいます。
食品衛生責任者
飲食店や食品製造を行う際に必須となる「衛生管理者」になるための資格で、1日（5～6時間程度）の講習を受けるだけで取得可能です。移住後にカフェや民泊、農産物の加工販売などを始める人にとって、最初に取っておきたい実用資格です。
小型車両系建設機械運転者（林業・土木系）
ユンボ（小型ショベルカー）などの建機を操作するための資格で、林業や農地整備、地域インフラの維持管理などに活かせます。地方ではこのような重機を使った作業の需要が多く、地域作業員や協力隊でも即戦力として求められます。数日間の講習で取得可能で、未経験者でも挑戦しやすいのが魅力です。
MOSなどのWeb系資格（Word、Excel、HTMLなど）
パソコン操作のスキルを証明できる資格で、在宅ワークやテレワークに役立つほか、地域の広報・資料作成・Web運営などでも活用されます。地方移住後にリモートで仕事を続けたい人や、地域活動をサポートしたい人におすすめ。独学でも取得可能で、初心者向けの講座や模擬試験も充実しています。
地域通訳案内士（観光系）
訪日外国人向けに特定地域を案内するための資格で、地元の歴史や文化に英語などを交えて伝えることができます。観光業が盛んな地方では、地域を案内できる人材が不足しており、インバウンド需要に対応できるこの資格が注目されています。受験資格の制限はなく、語学力と地域知識があれば誰でも挑戦できます。
資格があることで、地方での仕事の選択肢が広がり、自信を持って一歩を踏み出すきっかけにもなります。興味のある分野から、できることを少しずつ増やしていけば、移住後の暮らしがより豊かで充実したものになるはずです。
04| 暮らし目線で選ぶ、今注目の地方の“住みやすい街”
埼玉県加須市
全長100mの「ジャンボ鯉のぼり」が名物
埼玉県北東部に位置する加須市は、田園風景が広がる自然豊かな環境と、東京まで電車で約1時間という都市へのアクセスのよさを兼ね備えた“ちょうどいい田舎”。市内には大型スーパーや医療機関、保育園・学校などの生活インフラも充実しており、子育て世帯が安心できる住環境が整っています。また、加須市には工業団地や商業施設も多く、製造業や物流、医療・介護、接客業などの求人も豊富です。
ほかにも中学生以下の子どもと一緒に引っ越してくる親子世帯に対して、こんなサポートがあります。
・引越し費用の10％（上限2万円）を助成
・子ども1人につき10kg（最大50kg）の加須産のお米を贈呈
さらに、市内の暮らしを体験できる移住体験ツアーや、気軽に相談できるオンライン移住相談窓口も用意されています。生活コストを抑えながら、安心して働ける環境がそろった加須市。地方でのびのび暮らしながら、安定した仕事も確保したい方におすすめの移住先です。
神奈川県相模原市
都市機能と豊かな自然を兼ね備える街
神奈川県北部に広がる相模原市は、東京に近く、新宿・町田エリアへ電車でアクセス良好。それでいて、緑豊かな里山や湖、田畑の広がるのんびりとした暮らしも楽しめる“トカイナカ（都会と田舎のいいとこ取り）”の代表格です。都市機能と自然が調和したこの街は、働きながら、家族とゆったりとした生活を送りたい人にぴったりの移住先です。
相模原市は、仕事支援の体制も万全。市が運営する「相模原市就職支援センター」では、地域密着型の求人紹介やキャリア相談を行っており、再就職や移住後の働き方に不安を感じる人にも寄り添ったサポートが受けられます。さらに、ロボット産業に特化した「さがみはらロボットキャリア」では、ものづくり系企業とのマッチング支援も充実。市内で注目されるロボット・IT分野でのキャリア形成を後押ししています。また、求人検索・職場見学・相談をワンストップで行える「サガツクナビ」もあり、移住後の就職活動をスムーズに進められる環境が整っています。
そして、相模原市では、移住＋新生活を応援する制度も複数用意されています。
・結婚・転入に伴う新生活支援（最大15万円）
・若年世帯や子育て世帯向け：中古住宅購入や改修費の補助（最大100万円）
・住宅取得時の補助金（新築・建売に最大20万円）
こうした制度は、子育てや住まいに不安を抱える若い世代の移住を力強く後押ししてくれるはずです。
岐阜県恵那市
紅葉が美しい恵那峡
『田舎暮らしの本』（宝島社）で2年連続第1位を獲得した恵那市は、名古屋圏や東京圏からのアクセスがよく、里山の自然と生活利便を兼ね備えた“理想の田舎暮らし”ができる地域。恵那市は住まい支援と移住者向け制度が手厚く、「えなで暮らそう奨励金」により、50歳未満の方が恵那市内で住宅を取得した場合、取得費用の10分の1（上限30万円）を補助。さらに子どもと同居で＋20万円、岐阜県外からの転入で＋10万、新婚世帯は＋20万円など、満たすと最大で80万円まで拡大可能です。
恵那くらしビジネスサポートセンターでは、地元企業とのマッチングやキャリア相談で就職支援を実施。若者世代だけでなく、就職氷河期世代にも対応する支援体制が整っています。
岡山県倉敷市
観光地として名高い倉敷美観地区
倉敷市は瀬戸内海に面し、複数のJR駅（倉敷駅周辺や児島、新倉敷など）を持つため、アクセスのよさと生活利便性が高い街。アウトレットをはじめ、大型ショッピング施設や医療機関が充実しており、“都会と田舎の両方の魅力”が揃った理想の「トカイナカ」都市です。
「くらしき移住就労サポートデスク」では、倉敷市へのUIJターンや移住を検討している方を対象に、以下のような相談・支援を無料で提供しています。
・市内求人の紹介・面接セッティング
・応募書類の添削やキャリア相談
・就職後の生活フォロー
・住まい探しや移住支援制度の案内
移住先で“働くこと”への不安がある方にとって、就職・住まい支援がワンストップで受けられる点は非常に心強い魅力です。また、倉敷市と高梁川流域圏（新見市、高梁市、矢掛町など）が連携し、移住検討者向けに2か所のお試し住宅を運営しています。家具・家電・自転車・無料Wi Fi完備で、2泊3日〜最大1か月の滞在が可能。住環境や仕事環境を実際に見て判断する機会として利用できます。製造業や観光サービス、医療介護など幅広い職種の求人がありつつ、移住者向けに専門の就労相談窓口と住まい体験制度を整備。さらに、生活に必要なインフラや商業施設が揃っていて住みやすく、自然環境も豊かなので、都市と田舎のよさを両立したい方に最適です。
長崎県五島市
五島市のシンボル、大瀬崎灯台
離島ならではの美しい自然に囲まれながらも、生活インフラがしっかり整った長崎県五島市。大型スーパーや病院、保育所から高校までの教育環境も充実しており、「島暮らし」と「暮らしやすさ」を両立できる魅力的な地域です。
仕事面でのサポートが特に手厚く、若年層を対象にした奨学金返済支援制度をはじめ、移住前の就職活動でかかる旅費の一部を補助する制度や、起業や事業拡大に対する最大1,200万円の支援制度も整備されています。さらに、地元での仕事探しをサポートする「就業ガイドマップ」も提供されており、地域の産業や求人傾向、相談窓口などの情報がひと目でわかる工夫も。初めての土地でも、安心して新しいキャリアに踏み出せる体制が整っています。
また、子育て世帯には引っ越し費用の補助が用意されており、新しい生活を始めるうえでの負担を軽減してくれます。
自然と利便性、そして働く環境までが揃った五島市は、理想の暮らしを叶える移住先としておすすめです。
05| 地方で働く魅力と注意点
地方で働くことには、自然に囲まれゆったりとした環境や、地域との繋がりを感じられる魅力があります。一方で、都会とは異なる働き方や生活スタイルに戸惑うことも。ここでは、地方勤務ならではのメリットと気をつけたいポイントを紹介します。
メリット①通勤ラッシュの回避
都市部では朝の満員電車で毎日1時間以上通勤にかかっていた方が、地方では車で15分の通勤に大幅に短縮されることも。渋滞も少なく、出勤前に家族と朝食をゆっくり取れるなど、時間と心に余裕が生まれます。
メリット②生活コストが安い
都内の1LDKマンションの家賃が10万円以上かかるのに対し、地方では同じ広さで5万円以下ということも。土地代も安いため、広い一戸建てを持つ夢も実現しやすく、家庭菜園やDIYを楽しむ人も多くいます。
メリット③自然豊かな環境
山や海、川などの自然が身近にある環境で、四季折々の風景や地元の食材を楽しめるのも地方暮らしの魅力です。休日の過ごし方にも幅が広がり、心身のリフレッシュにつながります。
デメリット①求人の選択肢が少ない
地方では専門職やIT系、クリエイティブ職などの求人が少ない傾向があります。医療・福祉・製造・建設・観光など地域密着型の仕事に偏っており、自分の経験と合わないことも。職種転換やスキルの見直しが必要になる場合があります。
デメリット②移動が不便
電車が1時間に1本、バスは1日数本という地域も。車を持っていないと買い物や通院も難しくなるため、自家用車がほぼ必須。また、冬の積雪地域ではスタッドレスタイヤの準備や除雪も日常の一部になります。
移住前に「お試し居住」や短期滞在を活用
自治体によって3泊4日で「実際にその町のスーパーで買い物をする」「地元の診療所を調べてみる」「自治体の就職窓口に行ってみる」など、リアルな生活を試すことができます。この制度を利用して“想像と現実のギャップ”を減らすことも。
また、地域住民との交流会などで本音の声を聞くことも大切。なかには「思っていたより閉鎖的」、「人間関係が濃すぎて疲れた」という声もあるため、現地の空気を自分の肌で感じておくと安心です。
06| 移住先での仕事の見つけ方とは？
知らない土地で本当に働けるのか、不安に感じるのは当然のこと。ここからは、移住先で仕事を見つけるための具体的な方法やポイントをご紹介します。
ハローワーク
ハローワークは全国に設置された公共職業安定所で、移住先の地域に特化した求人も多く扱っています。地域の企業と強い繋がりがあり、地元での雇用を積極的に支援。職業相談や履歴書の書き方指導、職業訓練の紹介など、求職者を幅広くサポートしてくれます。U・Iターン専用窓口が設けられている地域もあり、地方での再スタートを後押ししてくれます。
移住先の自治体サイト
移住を検討している地域の自治体ホームページには、地元の求人情報や移住支援制度、暮らしのサポート情報が詳しく掲載されています。空き家バンクや創業支援、地域おこし協力隊の募集など、一般的な求人サイトには載っていない地域密着の情報を得られるのも魅力。移住希望者向けに定期的な説明会やイベント情報を掲載している場合もあります。
移住者向け説明会・相談会
移住フェアや自治体主催の相談会は、地域の担当者や地元企業と直接話ができる貴重な場。現地の暮らしや働き方をリアルに知ることができ、具体的な移住のステップも見えてきます。交通費支援付きの現地ツアーや、企業訪問を伴う説明会もあるため、実際の生活を体感しながら検討できるのもポイントです。
地域限定求人サイト
日本各地の魅力的な求人を紹介する「地域特化型求人サイト」も注目されています。たとえば「日本仕事百貨」や「TURNS仕事百景」などでは、単なる求人情報ではなく、「この町でどんな人が、どんな思いで働いているか」といったストーリーとともに仕事を紹介。農業や観光、伝統工芸など、地域性のある職種に出会えるチャンスもあります。
転職エージェント（地方・Uターン専門）
地方への移住やU・Iターンに特化した転職エージェントでは、非公開求人の紹介や、面接対策、企業とのやりとりまでトータルでサポートしてくれます。都市部からの転職に不安がある人でも、専任のキャリアアドバイザーと相談しながら安心して進めることができます。地域密着型のエージェントを選ぶことで、地元企業との強いつながりを活かしたマッチングも期待できます。
Twitter
URLをコピー
この記事を書いた人
アントレース 編集
Follow!
