
無料譲渡や家に関する支援を活用して、移住にかかる費用を抑えよう
地方への移住を考えるとき、現地でどれくらいの生活費が必要なのかを計算するのは必須。なかでも大きな比重を占めるのが住まいの費用です。賃貸なのか購入なのかで、かかるお金は様々です。ところが、そんな悩みを一挙に解決できる方法が! 「一定期間の居住」などの条件をクリアすると、無償で家や土地を譲渡してくれる自治体があるのです。どうすれば費用をかけずに住居を確保できるのか、住宅支援が手厚い自治体はどこなのかご紹介します。
CONTENTS
01| 家賃0円で住める家は本当にある?
移住先の住まい探しは、基本的には通常の家探しと同じように、「賃貸」物件を探すか、「購入」できる物件を探すかのどちらかです。探し方も同様で、民間の不動産会社に相談したり、物件を掲載しているウェブサイトで探したりするのが一般的。地方へ移住する場合は、移住先の自治体の移住相談窓口へ取い合わせるのもひとつの方法です。
いずれにしても、初期費用として、賃貸の場合は敷金・礼金・手数料などで家賃の4~6か月分、購入する場合は物件価格の10~20%の頭金を用意する必要があります。そのほか、物件にかける保険料なども相応のお金がかかることも。引っ越しをするだけでも、かなりの費用を用意しなければならず、住宅を確保するために必要なお金の工面は大きなネックといえます。また、地方によっては賃貸・購入にからわらず、物件を見つけること自体が難しいこともありそうです。
実際に移住した人に対して自治体が行った調査でも、「住宅や土地に関する情報が見つからない」「賃貸物件を探すのに苦労した」といった声があがっているようです。
こうした住まいの確保が問題で移住をためらっている人に、耳寄りな情報があります。それは、自治体によっては移住すると「家賃0円」「購入費0円」で住める家があるということです。
02| 一定期間、同じ住宅に住み続けて無償譲渡を受ける
自治体によっては、紹介物件に定められた期間家賃を払って住み続けると家や土地がもらえるという「移住定住制度」を用意している場合があります。地方では、子育て世代に長く住んでもらうことを目指して行っている施策のひとつです。
その多くは新築の物件を自治体が用意し、都心に比べてずっと低額な家賃を20年あるいは25年といった設定期間払い続けることでマイホームが手に入るのです。
ほかにも、土地のみを無償譲渡され住居は自分で建てる、空き家や自治体が運営する住宅などを無料または低額で提供するといった制度の自治体もあります。
いずれも該当する自治体以外からの移住を最低条件に、新婚世帯、子育て世代などの条件を設けているので、応募に際しては条件をしっかり確認することが肝心です。
03| 空き家バンクなどを利用して、0円もしくは安く購入する
「空き家バンク」とは、主に自治体が運営する、空き家を売りたい・貸したい人と買いたい・借りたい人をマッチングさせる仕組み。自治体がウェブサイトなどで空き家物件の情報を集約・公開し、移住・定住を希望する人に情報を提供しています。
掲載されている物件の多くは有料ですが、なかには0円の物件があることも。無料にしてまで空き家を手放したいのには、それなりの理由があります。住んでいない家の固定資産税などの負担が重い、あるいは取り壊して更地にするには多額の費用がかかる、といった場合が多いようです。
長期間、人が住んでいなかった住宅は、傷んでいるので、住むにあたっては修繕工事が必要です。そのための費用を工面しなければなりませんが、自治体よっては修繕・リフォーム費用などを支給してくれるので、あわせて制度の有無も確認しましょう。
04| 賃貸住宅を格安もしくは無料で借りる
自治体が保有する町営や村営の住宅、あるいは民間から借り上げた物件を、移住してきた人に格安、または無料で提供している自治体もあります。物件は、戸建て、集合住宅など様々で、家族構成に合わせた住宅を用意しもらえる場合も。
また、移住先の現地企業に就業し、企業が保有する住宅や寮に住むことで住宅費用を抑える方法も考えられるでしょう。
05| 移住にまつわる費用の補助を受ける
自治体によっては、移住時の住宅関連費用の補助や定住に対する奨励金などを用意しています。なかには100万円単位の補助金を支給する制度もあるので確認は必須です。主な制度には以下のようなものがあります。
住宅を新築する際の土地購入費や建設資金の補助
移住し、定住をしたい人が新たに住宅を建てる際、土地購入費や建設資金の一部を補助。自治体によっては100万円以上の支給を設定しているところもあります。
既設住宅のリフォーム費用の補助
空き家バンクを通じて購入した物件などで、住まいの補修やリフォーム費用の一部を補助。低額の売買物件の場合、多くはリフォームが必須なので活用したいものです。
賃貸住宅の家賃の補助
先々は住宅の購入を夢見て、まずは賃貸住宅で、という人は、自治体が設けた家賃補助の活用がおすすめ。補助額や補助を受けられる期間など、条件は様々なので確認を。
そのほかの住宅に関連する費用の補助
移住をする際の引っ越し費用や太陽光発電などの住宅設備に関して補助金を設けている自治体も数多くあります。
06| 家賃0円、または低額で住むための条件例
ここで、条件を整理しておきましょう。自治体によって条件は様々で、各項目をしっかりチェックすることが肝心です。
定住期間
住宅の譲渡を受けるには、一定期間住み続けることが最低条件です。その多くは20~25年といった期間になっているので、しっかりと地域に根付いて生活をする覚悟が必要です。
年齢制限
ほとんどの自治体では、人口増加・少子化対策の一環として制度を設けています。そのため、40代以下の子育て世帯、新婚世帯などの条件を課しています。なかには、子どもの年齢などが条件に含まれる場合もあります。
居住する際の条件
住民票を移して住むことになるため、同一世帯の家族全員が実態として居住していることが求められます。
町内会への加入
地域コミュニティになじみ、地域の一員になることを求められるため、町内会への加入や活動への参加を義務付けている場合もあります。
07| 家賃0円の住まいを探す方法
情報を集めることが、0円物件獲得の第一歩。代表的な方法は以下の通りです。
自治体の公式サイト
移住を希望する自治体や周辺地域の自治体のホームページで移住に関するトピックスを探しましょう。近年は移住関連の情報を総合的に掲載したサイトを独立して設けている自治体も多くあります。また、移住に関する施策を都道府県のレベルで行うサイトもチェックをしてみてください。
空き家バンク
空き家バンクは市町村や広域地域ごとに設置されており、各自治体のサイトなどに情報が掲載されています。また、国土交通省の「全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集」をはじめとしたリンク集もあります。そのほか、無償譲渡物件の不動産マッチングを支援するサイトも確認してみましょう。
直接交渉をしてみる
家を手放す意思のある人すべてが空き家バンクや自治体に情報を提供しているわけではありません。もし、現地に知人や親戚などのつてがある場合は、そうした人を介して手放す気のある人を紹介してもらうのもひとつの方法です。
08| 土地・建物の無償譲渡のあるおすすめの自治体
雄武町(北海道)/土地の無償譲渡
オホーツク海からの日の出を見るなら日の出岬
北海道の北東部、オホーツク海沿岸に面した雄武(おうむ)町は、きれいな海岸線が約35kmも続いています。内陸には広大な牧草地が広がり、背後に原生林の山々が連なる雄大な自然あふれる土地です。町の人口は約4,200人。基幹産業は、オホーツク海の恵みを生かした水産業、広大な土地を利用した酪農業・畜産業、および林業です。
◆譲渡内容
・移住宅地(町有地の一部)を無償で貸与し、一定期間内に住宅を建築した場合にその土地を無償で譲渡。
・契約書を締結した日の翌年12月31日までに、条件にあった住宅を建築し、居住(住民登録)すること。
・土地の無償譲渡後、10年間は転居しない。10年間土地または建物を第三者に貸し付けまたは譲渡しない。
七ヶ宿町(宮城県)/土地無償譲渡
一周約2kmある長老湖の紅葉
宮城県の最南西部に位置し、蔵王連峰の南麓に広がる七ヶ宿(しちかしゅく)町。福島県と山形県の両県と境界を接しており、奥羽山脈の東南斜面一帯の周囲約91kmに及ぶ広大な高原の町です。人口は宮城県内で最も少なく約1,200人となっています。基幹産業は農業で、米づくりが盛ん。また果樹栽培も盛んになっており、自社ワイナリーの設立を通じて、七ヶ宿産のぶどうを使用したワインやシードルの製造に取り組んでいます。七ヶ宿ダムや滑津大滝、長老湖など景勝地が点在し、自然を満喫できるスポットも数多くあります。
◆譲渡内容
・町外から移住し、20年間住み続けると、家と土地を譲渡。
・20年間は月額39,000円の家賃を払い続ける。
・40歳以下の夫婦で中学生以下の子どもがいる家族。
・地域の活動(清掃活動、消防団員、地区のイベント)に積極的に参加する人。
境町(茨城県)/新築戸建住宅を無償譲渡
毎年行われる「利根川花火大会」。2025年は約3万発がうちあげられた
茨城県の西部に位置し、利根川と江戸川の分岐点であり、千葉県と埼玉県の県境に接する境町。子育て支援、移住支援などの充実で人口が増加した年もあり、現在の人口は約24,000人です。関東平野のほぼ中央にあり、利根川の豊かな水と緑あふれる田園都市です。圏央道を利用すれば都心、羽田空港、成田空港へは約70分。高速バスを利用すれば東京駅まで最短90分のアクセスのよさも魅力のひとつです。
◆譲渡内容
・町が建築した新築の戸建て賃貸住宅に、月額52,000円で25年間住み続けると土地と建物を無償譲渡。
・世帯主が45歳以下で、中学生以下の子どもがいる世帯または妊娠している者がいる世帯。
※現在は募集停止中。新たな住宅の建設が決定したら、移住定住ホームページに告知を掲載。
常陸太田市(茨城県)/土地を無償譲渡
全長約375mの竜神大吊橋では、バンジージャンプ体験ができる
茨城県の北部に位置し、県内で最も面積の広い常陸太田市。南北に長く伸びた市域の北部は阿武隈山系の山岳地帯、南部は平野部が広がっています。市の中心には久慈川の支流である里川、山田川、浅川が流れ、豊かな自然環境が特徴です。人口は約44,000人。農業が盛んで、「常陸秋そば」の名産地として知られます。JR水郡線が利用でき、常陸太田駅が市の中心に位置しています。東京駅までは2時間10分ほど。また、新宿や東京との間を高速バスが結んでいます。
◆譲渡内容
・自己住宅の建築が可能な市有地(宅地)の無償貸付・無償譲渡を実施。さらに,転入促進助成金最大100万円と隣接する温泉施設の利用券をプレゼント。
・住宅用地を2年間、無償貸し付け。この期間内に床面積50平方m以上の自己の住宅を建築し、居住(※要住民登録)する。
・居住後、常陸太田市定住促進住宅用地譲渡契約を締結し、土地を無償で譲渡。
飯南町(島根県)/新築物件と土地が無償譲渡
約10ヘクタールの敷地にコスモスが咲き誇る東三瓶フラワーバレー
島根県の中南部に位置し、広島県との県境にある山あいの飯南(いいなん)町。中国山地のほぼ中央に位置しており、町域の約9割を森林が占めています。標高約1,000m級の琴引山や大万木山などの山々に囲まれ、町全体が標高約450mの高原地帯で、夏は比較的涼しく、冬は町全体が雪に覆われる豪雪地帯です。人口は約4,200人。基幹産業は農業と林業です。町内に電車の駅がないので、主な交通手段は自家用車とバスです。高速バスは広島駅、松江しんじ湖温泉駅との間の路線があります。
◆譲渡内容
・一戸建ての新築賃貸住宅を25年間賃貸後に、土地・建物を譲渡。
・家賃は月額40,000円。対象は概ね40歳以下の夫婦。
・住宅の間取りは、3パターンから、外内装も指定のものから借り主が選択できる。
・物件は延床面積約100平方m、木造平屋建ての2LDK、オール電化、IHクッキングヒーター、温水洗浄便座が標準仕様。
豊後高田市(大分県)/約100坪の土地無償譲渡
昭和30年にタイムスリップできる豊後高田昭和の町
大分県の北東部、国東半島の西側に位置する町。北は周防灘に面し、東は国東市、西は宇佐市、南は杵築市と接しています。奈良時代から続く由緒ある土地で、豊かな自然やのどかな農村風景が広がります。人口は約21,000人。全国でも有数の手厚い子育て支援策を展開していることで知られ、多くのランキングで上位に入っています。その成果もあり、近年は人口増となった年もあります。
◆譲渡内容
・新築建築用の約100坪の移住者向け宅地を無償譲渡。
・申請者本人、もしくはその配偶者が満50歳未満、あるいは15歳未満の親族が同居。
・1年以内に、住宅の建築に着手すること。
・2年以内に住宅が完成し、居住すること。
09| 空き家バンクで0円物件があるおすすめの移住先
奥多摩町(東京都)
奥多摩湖名物「奥多摩湖麦山の浮き橋」は不思議な歩き心地
東京都多摩地域の北西部に位置、東京都の市区町村の中で最も広い面積で、東京都全体の約10分の1を占めています。その広大な面積の約94%は森林。町全体が秩父多摩甲斐国立公園に含まれる自然あふれる町です。都心から電車で約2時間の距離にあり、「東京都の奥座敷」として、手軽に大自然を満喫できる場所として親しまれています。人口は約4,400人、主要産業は観光業、農林水産業で、特に林業やわさび栽培、淡水魚の養殖などで知られます。
◆0円空き家バンク概要
・町内の手放したい物件を登録する制度「0円空き家バンク」を創設。
・奥多摩町の物件を探しているが、年齢要件や定住要件に合致せず、空き家バンクを活用できない人や、アトリエ、倉庫、別荘等を探している人も利用可能。
・町は物件を手放したい人と物件を活用したい人のマッチングを行うが、物件の案内はしないので、自分で現地を確認する。
川島町(埼玉県)
町内には白鳥の飛来地がある
埼玉県のほぼ中央に位置し、四方を川に囲まれた町で、「川に囲まれた島」とも称されます。人口や約2万人。農業が盛んで、いちじくや米が特産品。地元の直売所で新鮮な農産物を購入することができます。都心から約45kmの距離にあり、交通の便は良好。圏央道の川島ICがあり、国道254号が南北に走っています。鉄道駅はありませんが、バスを利用することで近隣の主要駅(川越駅、本川越駅、桶川駅など)にアクセス可能です。
◆0円空き家バンク概要
・株式会社ジチタイアドと協定を締結し、同社が運営・管理する空き家総合サービス「akisol(アキソル)」を活用し、流通が困難な空き家の無償譲渡を支援。
・マッチング成立の際に発生する手数料の一部を町が補助。
上市町(富山県)
雄大な剱岳
上市(かみいち)町は、富山県の北東部に位置する剱岳のふもとに広がる田園工業都市で、県庁所在地・富山市の東側、約15kmの距離にあります。町の西部は富山平野が広がり、東部は深い山岳地帯。北アルプスの名峰・劔岳がシンボルの自然環境豊かな町です。富山市中心部までは車で約30分。上市駅から富山駅までは富山地方鉄道で約30分。富山市への通勤が可能な交通アクセスの良さで知られます。
◆0円空き家バンク概要
・空き家や農地付空き家を譲りたいとの要望を持つ人と、田舎で農業をしながら暮らすための空き家を探している人とのマッチングを支援。
10| 移住制度を使って住宅にかかる費用を抑えられるおすすめの移住先
赤井川村(北海道)
9月に咲き誇るひまわり畑
北海道の南西部にある赤井川(あかいがわ)村。札幌市、小樽市、余市町、仁木町、倶知安町、京極町に囲まれた地域にあります。北西部のカルデラ盆地に村の中心部と農地が広がり、村の面積の約8割が森林。冬は積雪が多く、北海道内でも有数の豪雪地帯です。夏は気温が上昇しますが、昼夜の寒暖差が大きいため野菜や果物の栽培に適しています。キロロリゾートなど観光業も盛ん。人口は約1,100人。移動手段は車がメインで、札幌市内へは1時間強、小樽市へは約45分、余市町へは20分ほどです。
◆住宅関連の移住支援
・「移住・定住支援事業」として、村内に10年以上居住する意思のある人に対し、最大300万円の住宅建設資金を支援。
・対象となる住宅
1.自らが居住する2LDKまたは3LDK以上の新築住宅(風呂、トイレ付)。
2.店舗や事務所を兼ねる場合でも、居住部分が2LDKまたは3LDK以上の新築住宅であれば対象。
3.1棟6戸以上の共同住宅で、1戸の居住部分が1LDK以上の新築住宅(各戸に風呂、トイレ付)も対象。
南相馬市(福島県)
国の重要無形民俗文化財に指定されている「相馬野馬追(そうまのまおい)」
福島県浜通り地方の北部で、福島県いわき市と宮城県仙台市のほぼ中間に位置。年間平均気温は約12度前後で、夏は涼しく、冬は降雪が少ないのが特徴です。毎年7月下旬開催の「相馬野馬追」で知られ、東北有数のサーフポイントが点在することでも有名。また、近年は若手起業家による事業創出や、ロボットや無人航空機の開発実証拠点である「福島ロボットテストフィールド」を中心とした新産業の集積が進んでいます。人口は約54,000人。東京へはJRの特急で約3時間30分、仙台へは約1時間20分と主要都市へアクセスも便利です。
◆住宅関連の移住支援
・「住宅購入等世帯定住促進事業奨励金」多世代同居世帯、近居世帯、多子世帯、移住定住世帯が住宅を新築、購入する際に100万円の奨励金を交付。
・「移住推進住宅支援事業補助金」5年以上居住する意思をもって市外から転入した43歳未満の人が、相双地方で就業又は開業し、市内の民間賃貸住宅に入居した場合に月額1万円の家賃補助を交付。
・「空き家利活用推進事業」空き家バンク登録物件の空き家を活用する人に、空き家改修のための補助金上限100万円(補助率2/12)を交付。別途5万円以上の家財処分費は最大20万円まで補助。※特定区域、多子、新婚、就農、移住の場合は、別途上限25万円(補助率1/12)の加算金あり。
那珂川町(栃木県)
新鮮な魚介類があつまる「おさかな市場」
那珂川(なかがわ)町は栃木県の北東部に位置する町。町の名前の由来でもある関東有数の清流・那珂川が町の中央を流れます。里山の穏やかな田園風景の広がる町で、温泉や美術館、ゴルフ場、キャンプ場などの観光施設も充実。夏から秋にかけては鮎を目当てに多くの釣り人でにぎわいます。人口は約18,000人。移動手段は車がメインで、東京へは約2時間の距離です。
◆住宅関連の移住支援
・定住促進住宅用地貸付事業「農ある田舎暮らし高手の里」町有地を20年間無償で貸与。これにより、希望者は約150坪の土地に新築住宅を建て、家庭菜園などにも利用できる。
・「那珂川町木材需要拡大事業費補助金」新築の木造住宅で、使用木材量の60%以上に八溝材が使用されていると最大で300万円を補助。
・「空き家取得費補助金」那珂川町地域資源情報バンクに登録された空き家を購入した人が対象。購入代金の1/2(限度額30万円)、中学生以下の子どもが同居する世帯は限度額50万円。
佐渡市(新潟県)
佐渡市に行くにはフェリーか高速船を活用する
新潟市沖約80kmの日本海に浮かぶ佐渡島の全体を市域とします。面積は東京23区の約1.4倍に相当し、島の周囲の海岸線は約280km。世界遺産に登録された「佐渡島の金山」やトキの生息地として知られ、多くの温泉や美しいビーチでも知られます。人口は約48,000人。かつては島内に10の市町村があり、2004年の合併で一つの市になりました。主な産業は農業、漁業、観光業で、地元の特産品としては新鮮な海産物や米、酒が有名です。アクセスは島内の両津港と新潟港を結ぶフェリーが頻繁に運行されており、所要時間は約2時間30分です。
◆住宅関連の移住支援
・「佐渡市若者移住家賃補助」新たに佐渡市に転入した若者世帯が、佐渡市内の民間賃貸住宅、または「佐渡市空き家情報」ページに掲載された物件を借りた場合、家賃を1年間補助。県外からの移住者は月額20,000円、県内からの移住者は月額10,000円を、それぞれ上限額とする。※満年齢が40歳未満の人、夫婦で利用する場合、満年齢の合計が80歳未満の世帯など条件あり。
松川村(長野県)
昼夜の寒暖差があることでおいしいりんごが育っている
安曇野の北部に位置し、北アルプスの東側に広がる松川村。標高は560~670mの範囲にあり、村の面積の約56%は森林、約25%は農地が占める豊かな自然環境です。村内に「安曇野ちひろ美術館」があることでも知られます。人口は約9,600人。農業が主要産業でリンゴや米の栽培が盛んです。村内にはJR大糸線が通っており、信濃松川駅などの無人駅がありますが、交通の便はあまりよくないため、日常生活では車が主な移動手段。松本市までは車で約40分の距離です。
◆住宅関連の移住支援
・「移住・定住促進補助金」松川村に新たに移住する世帯には、土地及び住宅を取得(購入)し移住した場合100万円、中古住宅等を取得し、移住した場合50万円を補助。
設楽町(愛知県)
名倉川沿いに約1.3kmつづく清水のコヒガンザクラ並木
愛知県北東部に位置する設楽町(したらちょう)は、町の面積の90%以上が森林に覆われており、特にブナの原生林が広がります。三つの主要な水系の源流があり、町内には湧水スポットも点在します。町内は大きく4つの地区に分かれており、地区間は車で15~30分程度で移動可能。四季折々の美しい自然が楽しめ、春には桜、夏にはホタル、秋には紅葉が見られます。登山やハイキング、キャンプ、釣りなどのアウトドアアクティビティも人気です。人口は約4,700人。主要産業は広大な森林での林業のほか、米や各種野菜の栽培です。名古屋へは高速利用で約1時間40分、浜松へは約1時間20分です。
◆住宅関連の移住支援
・「設楽町若者定住促進住宅補助金」町内に住宅を新築する場合、最大200万円を補助。対象となるのは、交付申請時に中学生以下の子どもがいる世帯、配偶者(予定の人を含む)との年齢合計が80歳未満の世帯、もしくは40歳未満の人。
北山村(和歌山県)
約600年の歴史がある北山川筏下り
紀伊半島中央部に位置する北山村。三重県と奈良県に完全に囲まれており、和歌山県の他の市町村とは隣接していない、日本で唯一の飛び地の村です。村の面積の約97%を森林が占める「秘境」として知られますが、近年は地域資源を生かした村づくりの成果もあり、移住者が増えています。人口は約400人とされ、時期により変動。村内及び各地への移動手段は車がメイン。大阪方面へ約3時間20分、名古屋方面へ約2時間30分となっています。
◆住宅関連の移住支援
・「若者定住促進事業/賃貸住宅の家賃補助」村内で住宅を借りて居住する人に対して、家賃から1万円を除いた50%を村が補助。
・「住宅取得補助」村外からの転入者を対象に取得費の10%(上限200万円)を補助。補助金額を上限に、小学生以下の子ども1人あたり25万円を加算。
・「空き家改修補助」村外からの転入者を対象に空き家改修費用の50%(上限100万円)を補助。改修金額を上限に、小学生以下の子ども1人あたり25万円を加算。
※いずれの補助にも一定条件あり。
村の花・チューリップが4月中旬に咲き誇る
日吉津村(島根県)
鳥取県西北端に位置し、日本で4番目に小さな日吉津村(ひえづそん)。村は、米子市に三方を囲まれ、北側は日本海に面しています。人口は約3,600人。チューリップが特産品です。村内に、大型ショッピングモール、病院、学校、保育所などの生活基盤が集約されたコンパクトシティで、充実した子育て支援もあり、県内で唯一人口が増加傾向にあります。地域の中心都市である米子市までは、車で10分ほど。米子市内には米子鬼太郎空港があり、東京はじめ日本各地へ手軽にアクセスできます。
◆住宅関連の移住支援
・「結婚・子育て世帯等応援補助金」村内に新築または中古で専用戸建て住宅及び兼用住宅を取得した世帯へ補助金を交付。上限は50万円で、夫婦の場合は30万円、子ども1人につき10万円を加算。対象は、40歳未満の世帯で、村に5年以上定住の意思のある人。
雲南市(島根県)
「日本の棚田百選」にも選ばれた山王寺の棚田
島根県の東部に位置する雲南(うんなん)市。南部は中国山地に接し、北部は出雲平野に広がります。『ヤマタノオロチ退治』など出雲神話の舞台であり、関連する史跡や伝承地が点在。また、国宝に指定された銅鐸や、伝統的なたたら製鉄など、まさに神話に彩られた地域です。人口は約32,000人。県内有数の製造業の集積地で、食品加工や軽工業が中心となっています。また、自然環境や歴史的な文化資源を活かした観光業も盛んです。移動手段は車がメインで、松江市中心部までは約1時間、出雲空港までは約25分です。出雲空港へは、羽田、仙台、中部国際、伊丹などからの便が就航しています。
◆住宅関連の支援
・「うんなん子育て世帯応援リフォーム事業補助金」市内に居住する子育て世帯に対して、子育て配慮改修に要する経費の一部を助成。上限30万円、補助率1/3。
・「子育て世帯定住宅地購入補助金」子育て世帯が住宅を取得することを目的に、民間売買により宅地を購入する場合、購入費に対し補助。上限100万円、補助率1/10 。
佐那河内村(徳島県)
大川原高原ヒルトップハウスの3万本の青いあじさいは、7月下旬が見ごろ
佐那河内村(さなごうちそん)徳島県の中東部に位置する徳島県内で唯一の村。徳島市に隣接する山間部にありながら、農山村の文化や風景が色濃く残る閑静な地域です。伝統的な地域コミュニティが今も大切に受け継がれており、住民同士の相互扶助の精神が根付いています。人口は約2,100人。基幹産業は農業で、温暖な気候と緩やかな地形を活かした果樹栽培が盛んです。徳島市の中心部からは約30kmの距離で、車で50分ほどです。JR徳島駅前から村内までのバスも運行されています。
◆住宅関連の移住支援
・「新築住宅の建築・購入又は中古住宅(住宅用地取得、改修含む)の取得の支援」定住を希望する若者に対して、新築や住宅の増改築にかかる工事費を助成。助成限度額は150万円です。助成限度額に加え、村内業者の施工は最高50万円、申請者に中学生以下の子どもがいる場合は1につき50万円(但し加算対象は3人まで)を加算。
・「住宅改修の支援」村内に1年以上居住する者に対して、住宅のリフォームに関する工事費を助成。工事費用50万円以上が対象で、助成対象経費の2/3以内で、限度額は100万円(村内業者の施行に限定)。
竹田市(大分県)
里山保全を目的にはじまった「たけた竹灯籠竹楽」
大分県の南西部に位置し、熊本県と宮崎県に接する地域です。豊かな自然と湧き水、質の高い温泉を有しています。標高250~700mの高原に位置し、四季折々に美しい風景を描く豊かな自然環境が特徴です。人口は約20,000人。主要産業は農業と観光業。カボス、原木しいたけ、トマト、ピーマンなどの高原野菜の生産が盛んです。今も武家屋敷通りなどに城下町の面影が残り、国指定史跡の岡城址、日本一の炭酸泉と称される長島温泉など、観光地にも恵まれています。九州各地への移動には車が便利。福岡駅までは約2時間40分。熊本空港へは約1時間20分、大分空港へは約1時間40分です。
◆住宅関連の支援制度
・「竹田市定住促進住宅取得事業補助金」竹田市内に住宅を新築又は新築購入した場合に、補助金を交付。金額は50万円で、竹田市内に本店または営業所等を有する業者で施工する場合は50万円を加算。
11| 私の空き家リノベーションストーリー
世界を旅した二人がたどり着いた、“自分の時間で生きられる場所”。北海道・富良野に移住した澤井さん夫妻
「cafeゴリョウ」の店舗前でカメラにとびきりの笑顔を見せてくれたオーナーの澤井雅樹さん・加菜子さん夫妻
北海道・富良野。森と畑に囲まれた山里に、赤い屋根の建物が静かに佇んでいます。ここが、澤井さん夫妻が営む 「cafeゴリョウ」。絶品の料理と心地よい空気感、何よりお二人の人柄に惹かれて訪れる人が後を絶たない人気店です。世界70か国以上旅をして、世界のさまざまな文化に触れた二人が、最終的に選んだのは“自然に身を委ね、自分たちのペースで生きる”という暮らし方でした。その物語は、一本のメールから静かに始まります。
ボリビア・ウユニ塩湖での一枚
もともと関西でアパレル業に就いていた二人。休暇があれば海外へ出かけ、世界各地の文化や自然、暮らしぶりを吸収してきました。やがて「観光地ではない場所の空気を感じたい」と、会社を辞めて世界を巡る旅へ。2年弱、日本を離れ続けたある日、富良野に住む陶芸家の友人から「夏、手伝いに来ないか」と一通のメールが届きます。
チリ・イースター島にて
南米にいた二人は旅を中断し、ひと夏を富良野で過ごすことに。翌年もまた声がかかり、富良野へ。そこで感じたのは、自然に逆らわず、自分の時間で生きている地元の人たちの姿。観光地でも都会でもない、ゆったりとした“生活のリズム”に、二人は大きな魅力を感じました。「この土地の空気のなかで冬も過ごしてみたい」澤井さん夫婦はそう思い立ち、富良野でひと冬過ごすことにしたのが移住への大きな転機となりました。
当時、築80年を超える古い納屋。自然に囲まれた静かな環境に惹かれ、この建物を修理して暮らしたいという思いが芽生えた
その時、地元の人が紹介してくれたのが築約80年の古い納屋。壁は傾き、屋根は沈み、屋内に霜が降りるほどの荒れ果てた建物でした。しかしその姿を目にしたとき、「これがまっすぐに起き上がったら、ここに暮らそう」と直感したそう。傾いていた壁が真っすぐに戻った瞬間、二人はここで暮らすことを決めました。寒さに震える冬を耐え、やがて春が来て、「ひと冬越せた」という確かな自信が生まれました。
地元の大工さんの指導を受けながら、夫婦2人で修繕をスタート。住みながら少しずつ手を入れ、理想の店舗へと再生させた
本格的な移住を決めた二人は、改修と暮らしを同時に進めながら、長年の旅で培った感覚を活かせる「カフェとゲストハウスをつくろう」と考えるようになります。世界中で出会った食文化や、さまざまな宿の居心地のよさ。旅を続ける中で「いつか自分たちの手でつくりたい」と思っていた空間を実現し、2008年12月に「cafeゴリョウ」が誕生しました。古い木材をそのまま生かした天井や階段。朽ちて空が見えていた壁は大きな窓へ生まれ変わり、四季の風景を額縁のように切り取る空間になりました。
2人のこだわりが詰まったcafeゴリョウの店内。柔らかな木漏れ日が射しこみ、穏やかな時間が流れていく
ラベンダーシーズンには多くの観光客が訪れる富良野ですが、冬はまったく表情が変わります。とにかく冬が長く、そして厳しい。冬季は最高気温も氷点下、時にはマイナス30度近くまで気温が下がり雪も続く。移住したばかりの最初の冬、奥様が「実家に帰ろうかな……」と思ってしまったのも無理はありません。それでも二人は、この季節を“楽しむ時間”へと変えていきました。雅樹さんはもともとスノースポーツ好き。今ではシーズン150日以上滑るほどで、朝は山へ向かい、午後は店に立つ——そんな冬のリズムが自然と暮らしに馴染んでいきました。家から約10分でスキー場へ行ける距離感は、まさに富良野ならではの贅沢です。「どこかへ遠くに行かなくても、この場所にいることが心地いいんです。ここでのんびり過ごす時間が、今は一番の贅沢ですね」この土地での生活に自信がつき、日々の営みが安定してくると、二人の中で「もう一歩、地域に深く関わりたい」という思いが芽生え始めます。
現在では、カフェと並行してワイン用のブドウ栽培もスタート。土地の恵みを活かし、この地ならではのブドウを丁寧に育てている
カフェの運営が軌道に乗り、やがて二人はワイン用ブドウの栽培にも挑戦します。「農業は地域や行政からの信頼が不可欠で、簡単には始められません。『この人なら』と認めてもらって初めて耕せる。そんな土地の文化に敬意を払いながら、丁寧に取り組んでいます」と雅樹さん。さらに富良野は、行政や教育の柔軟さも特徴的で、外から来た人にも開かれた土地。冬だけ短期移住してくる家族が受け入れられるなど、移住者に優しい環境が整っています。
富良野は国内有数のパウダースノーを誇る。「盆地パウダー」を目指して、国内外から毎年多くのスキーヤー・スノーボーダーが訪れている
富良野で20年近く暮らしてきた澤井さん。最後に、これから移住を考えている方へメッセージを伺いました。「まずは、その土地に“身を置いてみる”こと。固定観念を持たずに過ごしてみると、本当のよさが見えてきます。そして、冬をどう楽しむか——、それが富良野暮らしの鍵だと思います。自分で選んだ暮らしなら、自分でいくらでもよくしていける。それを楽しめる人なら、きっとどこでも幸せに暮らせると思います。」
世界を旅した二人が最後に選んだ、富良野という場所。そこには、自然に抱かれながら“自分の時間で生きる”という、静かで豊かな答えがありました。
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