公開日: 2023.04.27 最終更新日: 2023.10.26

【ご当地お菓子】創業以来のロングセラー。熊本初の洋菓子店「スイス」がつくる、秘伝の味の「リキュールマロン」

【ご当地お菓子】創業以来のロングセラー。熊本初の洋菓子店「スイス」がつくる、秘伝の味の「リキュールマロン」

── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。

お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第10回は、熊本県の県庁所在地である熊本市の「リキュールマロン」を紹介します。

ライター:吉田友希

ライター:吉田友希

01| 緑の銀紙が象徴的な、お酒と栗が入ったケーキ

リキュールマロンは、1962年に誕生したお菓子。リキュールシロップがたっぷり浸み込んだ生地に、熊本県産の渋皮栗が入ったバタークリームがはさんであるケーキです。

リキュールマロンという名前はもちろんですが、緑色の銀紙に包まれていることから「緑の銀紙のケーキ」「お酒が入った緑のケーキ」などの愛称で親しまれています。

誕生以来見た目と味が変わっていないので、熊本に帰省した人が、懐かしんで買って帰ることも多いお菓子なんだそうです。

02| リキュールマロンをつくるのは、熊本初の洋菓子店

リキュールマロン以外にも、素材や技術、鮮度にこだわったケーキや焼菓子が販売されている
画像提供:株式会社 スイス洋菓子店 リキュールマロン以外にも、素材や技術、鮮度にこだわったケーキや焼菓子が販売されている
画像提供:株式会社 スイス洋菓子店

リキュールマロンをつくっているのは、1962年12月1日に熊本県熊本市で創業した「スイス洋菓子店(SWISS)」です。熊本初の洋菓子専門店として誕生し、以来、60年以上にわたって熊本の人々に愛され続けています。

スイスの創業とリキュールマロンの誕生は同じ年。リキュールマロンは、スイスの初代パティシエによって考案されたロングセラー商品です。

スイスに1962年当時のお話を伺うと、こんなふうに教えてくださいました。

「1962年創業当時は、洋菓子は、和菓子店やパン屋の一角に並ぶ程度でした。家庭での冷蔵庫普及率が28%程度の頃で、まだまだ洋菓子専門店というのが珍しい時代だったんです。そんななかで、スイスはバタークリームを使ったケーキや焼菓子を販売し、多くのお客様に喜んでいただきました。

リキュールマロンは、洋菓子自体が珍しい時代に、熊本のみなさまに『洋菓子でおいしい幸せをお届けしたい』という想いのなかで生まれたお菓子です」。

熟練の手作業で、一つひとつ丁寧につくられるリキュールマロン
画像提供:株式会社 スイス洋菓子店 熟練の手作業で、一つひとつ丁寧につくられるリキュールマロン
画像提供:株式会社 スイス洋菓子店

熊本生まれ・熊本育ちの筆者の両親は、スイスの創業と同じ1960年代生まれです。リキュールマロンにまつわる思い出を聞いてみると、「リキュールマロンは昔よく食べていた。大人になった気分がしてうれしかった」と、教えてくれました。

そして、印象的だったのが「スイスは憧れの店」というフレーズ。洋菓子を食べることが、今よりずっと特別だった時代を知っているからこその表現です。

筆者も幼い頃から、誕生日やお祝い事などの人生の節目でスイスのケーキを食べて育っています。スイスとは、熊本県民の思い出のなかにたびたび登場するお店なのではないかと思っています。

03| あらためて、リキュールマロンをいただきます

緑の包みを開けた瞬間から、ふわっとリキュールの香りを感じます。大きさは、こぶし大程度。スポンジにリキュールシロップがたっぷり浸み込んでいるので、見た目よりずっとずっしり感があります。

ケーキの間には、渋皮栗が入ったバタークリームが。マリトッツォのようなイメージで、たっぷりサンドされています。

クリームは、どこをすくってもまんべんなく栗が入っています。昔ながらのこっくりとしたクリームです。

手で持ち上げると、リキュールシロップがじわっと出てくるくらい、スポンジ部分はひたひたです。公式ホームページに「洋酒を使用しており、アルコール強めです」と記載がある通り、お酒感が強め。芳醇で、濃厚で、まさに大人のご褒美スイーツです。

04| これまでもこれからも、熊本とともに

カフェが併設されているスイス下通店
画像提供:株式会社 スイス洋菓子店 カフェが併設されているスイス下通店
画像提供:株式会社 スイス洋菓子店

スイスが目指すのは、熊本の地で「うちの街に来たらあの店のお菓子を食べてよ」といわれるお店になること。熊本の街の魅力を伺うと、愛情たっぷりにこう教えていただきました。

「熊本の街は、全国でも珍しく生活のなかにお城がとても身近に存在する街ではないでしょうか。熊本城は名勝観光地でもありますが、私たち熊本市民にとっては、日常的に利用する緑溢れる憩いの場でもあります。

私たちは『マチへ行く』『マチナカ』という言葉をよく使いますが、熊本には、熊本城を望みながら『さるく(歩く)』ことができる商店街・繁華街エリアをマチと呼ぶ、独特の文化があります。スイスも、このマチナカ(下通・上通)にも店舗を構え、日常のなかでひとときの幸せな時間を過ごせる憩いの場でありたいと思っています。

また、熊本は豊かな自然に恵まれ、おいしい果物や野菜を生産している農業県でもあります。スイスは昨年創業60年を迎えましたが、これも長年にわたる熊本の方々のご愛顧があってこそです。スイスの基準にかなうものであれば、食材はできる限り熊本県産・九州産を使用したいとの想いがあります。

『これまでもこれからも熊本とともに』の想いで、洋菓子を通じてみなさまに『おいしい幸せ』をお届けしたいと思っております」。

熊本の「リキュールマロン」、ごちそうさまでした。


スイス下通店(本店)
所在地:熊本県熊本市中央区安政町5-2
TEL:096-352-1251
営業:10:00〜21:00、無休
https://www.s-swiss.com/
※熊本市近郊に8店舗あり。ほか、阿蘇くまもと空港、熊本県のアンテナショップ(東京・銀座)での取扱いもあり。オンラインショップでも購入可能

吉田友希

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