公開日: 2024.05.21 最終更新日: 2024.05.21

【ご当地お菓子】食べるのがもったいない! 和菓子店が木型でつくる富山・高岡の「高岡ラムネ」

【ご当地お菓子】食べるのがもったいない! 和菓子店が木型でつくる富山・高岡の「高岡ラムネ」

富山・高岡の「高岡ラムネ」
画像提供:株式会社大野屋

── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。

お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第21回は、富山県の北西部に位置する高岡市の「高岡ラムネ」を紹介します。

ライター:吉田友希

ライター:吉田友希

01| おいしくて、造形美を愉しめる“大人のラムネ”

高岡ラムネ「御車山(みくるまやま)」 高岡ラムネ「御車山(みくるまやま)」

ラムネといえば、幼き頃に食べていた駄菓子のイメージ。富山・高岡で180年続く和菓子店「大野屋」が手掛ける「高岡ラムネ」は、いい意味でそのイメージとはかけ離れています。

画像提供:株式会社大野屋 画像提供:株式会社大野屋

まず目を引くのは、その美しさ。高岡ラムネは、木型で一つひとつ丁寧につくられています。繊細でどこか儚く、食べるのを躊躇してしまうほど。しばらく眺めて美しさを堪能したあとに、ゆっくりいただきたいお菓子です。

高岡ラムネの誕生は、2012年のこと。開発を担当した大野さんにお話を伺いました。

「大野屋では、昔から木型を使ったお菓子づくりをしてきており、木型を代々受け継いでいます。木型は一つひとつの造形が美しく、日本の文化を感じさせてくれます。

木型でつくるお菓子としては落雁や上生菓子がありますが、日常のお菓子に木型を使うことは少なく、木型のお菓子に触れる機会というのは段々と少なくなっています。もっと気軽に木型の造形を楽しめるお菓子をつくれないかな? と、友人と共同開発したのが、高岡ラムネです」。

日本ならではの紙で包む文化が反映された、ご祝儀袋のようなデザインのパッケージ。なかのラムネを保護する役割もあり、かさばらない手土産としても人気
画像提供:株式会社大野屋 日本ならではの紙で包む文化が反映された、ご祝儀袋のようなデザインのパッケージ。なかのラムネを保護する役割もあり、かさばらない手土産としても人気
画像提供:株式会社大野屋

高岡ラムネには期間限定商品もあり、種類が豊富。それぞれで形やフレーバーが異なり、どれも和の雰囲気で素敵です。

02| 古くから地域で続くお祭り「御車山」を表現

今回は、高岡ラムネのなかでも「御車山(みくるまやま)」に注目します。

この御車山は、高岡で古くから続いている「高岡御車山祭」を表現したもの。豊臣秀吉や、加賀前田家初代当主である前田利家とも関わりが深い、歴史のあるお祭りです。国の重要有形民俗文化財・無形民俗文化財の両方に指定されている数少ないお祭りのひとつであり、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

高岡御車山祭の開催場所は、大野屋がお店を構える山町筋エリア。高岡のさまざまな工芸技術により装飾が施された7基の山車が、町内を巡行します。

高岡ラムネ「御車山」では、山車の最上部にある装飾「鉾留(ほこどめ)」や、山車の車輪など、お祭りを象徴するものたちが丁寧に象られています。

1基目の鉾留 鳥兜(とりかぶと) 1基目の鉾留 鳥兜(とりかぶと)

2基目の鉾留 胡籙(やなぐい)に弓矢 2基目の鉾留 胡籙(やなぐい)に弓矢

3基目の鉾留 五鈷鈴(ごこれい) 3基目の鉾留 五鈷鈴(ごこれい)

4基目の鉾留 胡蝶(こちょう) 4基目の鉾留 胡蝶(こちょう)

5基目の鉾留 太鼓に鶏 5基目の鉾留 太鼓に鶏

6基目の鉾留 釣鐘 6基目の鉾留 釣鐘

7基目の鉾留 桐 7基目の鉾留 桐

御車山を先導する源太夫獅子 御車山を先導する源太夫獅子

御車山の車輪 御車山の車輪

前田家の剣梅鉢 前田家の剣梅鉢

どれも本当に細やかで美しいです!

高岡御車山祭は、いわゆる賑やかなお祭りとは違い、どちらかというと静かで厳かな雰囲気なのだそう。「地域の人にとっては、とても大事にしているイベントであり、小さい頃からそこにある、思い入れのあるお祭り」だとも教えてくださいました。

御車山のラムネの包みを開けると、お祭りの解説書が入っていました。お祭りのルーツや7基の山車について詳しく載っているので、ラムネと紐づけながらいただくのがおすすめです。

03| 和菓子屋ならではの素材や製法がこだわり

大正時代の大野屋本店
画像提供:株式会社大野屋 大正時代の大野屋本店
画像提供:株式会社大野屋

1838年に創業した大野屋が、先祖代々大事にしているのは、質の高い素材を使うこと。高岡ラムネはシンプルな素材でつくるからこそ、おいしい素材を使って、おいしく仕上げることにこだわったのだとか。

注目すべきは、富山県産コシヒカリの米粉が使われている点です。

「和菓子屋らしい素材で、かつ、地元の素材を使いたいと考えていました。高岡ラムネは、ラムネといっても、現代版の落雁のようなイメージです。ラムネには通常コーンスターチが使われますが、そこを和菓子屋にとって身近な素材である米粉にしてみようと思い、試行錯誤しました」と大野さん。

ほかにも、御車山には高岡の国吉りんごが使用されており、爽やかなラムネの味わいのなかに、ほんのりとりんごの風味を感じられます。

職人による総手仕上げでつくられているのもポイントです。力加減が強すぎると木型にくっついてしまう一方で、弱すぎるときれいな形が出ないそう。気温や湿度によっても左右される細やかな作業には、職人ならではの勘やコツが欠かせません。

04| 歴史や文化が現代らしく息づいているのが高岡らしさ

大野屋 高岡木舟町本店
画像提供:株式会社大野屋 大野屋 高岡木舟町本店
画像提供:株式会社大野屋

大野屋では、高岡ラムネ以外にも、地域にゆかりのある万葉の歌人・大伴家持(おおとものやかもち)の歌や、地域の風景に着想を得たお菓子が多く販売されています。

大野さんに、富山・高岡の魅力を伺うと、こんなふうに教えてくださいました。

「高岡ならではの歴史的な文化が息づいている街だと思います。歴史的建造物や土蔵造りの街並みなど、歴史・文化を感じられるエリアがある一方で、古いところをリノベーションして新しさを取り入れた施設があったり、鋳物の伝統技術を生かして現代のスタイルに合うものをつくっている後継者がいたり、現代らしい要素も出てきています。高岡の個性をまといながら、現代らしさも感じられる、新旧を織り交ぜたよさがある街です」。

富山・高岡の「高岡ラムネ」、ごちそうさまでした。


大野屋
所在地:富山県高岡市木舟町12番地
TEL:0766-25-0215
営業時間:8:30~19:00、水曜休(祭日を除く)
https://ohnoya.theshop.jp/
※新高岡駅や高岡駅、富山駅などのほか、オンラインショップでも購入可能

吉田友希

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