── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。
お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第29回は、和歌山県の中部に位置する有田市の「果樹園の濃厚みかんジュレまるごと1個入り」を紹介します。
ライター:吉田友希
01| みかんがまるごと1個入って、インパクト大
「果樹園の濃厚みかんジュレまるごと1個入り」。
名前に“まるごと”がついているあたり、フタを開ける前から期待感が高まります。みかんのデザインがあしらわれたパッケージも可愛らしいです。
では、さっそく開けていきましょう!
フタを開けると、うっすらみかんが。
スプーンですくってみると、名前の通り、みかんがまるごと1個。それも、そのままの形で入っています。
……驚きました! みかん好きにはたまらない、とても贅沢なゼリーです。
02| みかん農家だからこその本格的な味わい
みずみずしい有田みかん
画像提供:株式会社 早和果樹園
このゼリーを手がけるのは、日本一の生産量を誇る温州みかんの産地、和歌山県有田市にある「早和果樹園」です。和歌山・有田地域で生産される温州みかんは、ブランドみかん「有田(ありだ)みかん」として、全国で食べられています。
早和果樹園の広報ご担当の方は、有田みかんに関してこう教えてくださいました。
「有田地方は、年間を通じて温暖な気候であること、夏場に雨が少ないこと、日当たりがよく水はけのよい石垣階段畑があること、秩父古生層の栄養豊富な土壌を持っていることから、温州みかんの栽培に非常に適した地域とされています。これらの条件下のもと栽培される有田みかんは、甘味と酸味のバランスにすぐれた濃厚なおいしさが特徴です」。
画像提供:株式会社 早和果樹園
「果樹園の濃厚みかんジュレまるごと1個入り」は、特別なおいしさを持つ有田みかんを存分に堪能できるゼリーです。みかんを知り尽くしたみかん農家による、みかん好きのためのゼリーというわけですね。
現在は名前が変わっていますが、前身となる商品の発売は2007年から。
「加工品として100%ストレートジュースを扱うなかで、とあるお取引先から『このジュースの味そのままのゼリーがあればいいのに』というお声をいただいたのが、開発のきっかけです。
果汁を固める素材を探すなかで、一般的なゼリーのような素材だとみかん本来の味わいが出ないことがわかり、寒天メーカーに寒天とこんにゃく粉を配合した特別なゼリー剤を開発していただきました。独自のゼリー剤を使うことで、期待通りの商品が誕生しました」。
冷蔵庫で冷やして食べるのがおすすめ。凍らせてシャーベットのようにするのもおいしいそう。
味わいは、まさにみかんそのもの。とても濃厚でジューシーです。
「当店では、果汁量や食感が異なるみかんゼリーを複数販売しておりますが、なかでも『果樹園の濃厚みかんジュレまるごと1個入り』は、当店のゼリーのなかで最も多い果汁量(果汁91%)を実現しています。水は一切使用していないため、有田みかんそのままの味をお楽しみいただけます。
また、天然素材の寒天とこんにゃく粉で固めているため、お子様から大人まで安心してお召し上がりいただけます」と、こだわりを教えていただきました。
ゼリーのなかから現れるみかんのコンポートは、甘さ控えめのシロップに漬け込んで仕上げているそう。果肉の甘さが引き立っています。
03| 「収穫されたみかんはすべて資源」。捨てない加工がモットー
画像提供:株式会社 早和果樹園
早和果樹園では、みかんの6次産業化に力を入れており、有田みかんの魅力を届けるために、さまざまな加工品の開発を行っています。
「果樹園の濃厚みかんジュレまるごと1個入り」をはじめとするゼリーのほかにも、ジュースやジャム、調味料など、本当に幅広く展開されています。そのなかで、気になったのが「みかんの皮」というカテゴリー。並々ならぬ思いを感じます。
「果肉だけではなく、みかんの外皮や薄皮も余すことなく活用する『捨てない加工』を基盤とした商品開発を行っています。早和果樹園には、収穫されたみかんをすべて“資源”として捉える考えが根付いているからです」。
みかんの皮剥きの様子
画像提供:株式会社 早和果樹園
加工の方法にも注目です。
早和果樹園の加工品のすべてにおいて、チョッパーパルパー方式が採用されています。
聞き慣れない言葉ですが、チョッパーパルパー方式とは果汁を搾る際の手法のひとつ。みかんの皮を剥き、果実の中身を薄皮ごと裏ごしする方法だとか。みかんの皮は、一つひとつ人の手で剥かれています。
手間ひまがかかるチョッパーパルパー方式によって搾られた果汁は、みかんの旨味がたっぷり。一般的には皮ごと搾ってしまう搾汁法が多いなか、皮を剥いてから搾ることで、雑味のない“みかんを食べているかのような味わい”を追求できるのだそうです。
「果樹園の濃厚みかんジュレまるごと1個入り」のおいしさの秘密もここにあります。
早和果樹園が企画したさまざまな加工品
画像提供:株式会社 早和果樹園
04| 「みかんの価値を上げる」ことが使命
早和果樹園の生産部のみなさん
画像提供:株式会社 早和果樹園
1979年に、みかん農家が立ち上げた組合が前身となって創業した早和果樹園。その後、新しい農法やICTシステムの導入、みかんの6次産業化など、先進的な農業を実践してきました。「みかんの価値を上げる」ことを使命とし、「一人でも多くの人においしい有田のみかんを届けたい」という創業から変わらぬ想いとともに、日々進化を続けています。
そんな早和果樹園が近年とくに力を入れているのが、地域人材の育成です。
「和歌山県有田地方は、半島振興法の対象(※)であることからも、不便な地方といえます。地方外に就職する若者も増えているのが現状です。早和果樹園では、新卒の複数人採用と育成に力を入れ、農業やみかんを通じて若者が活躍できるような場づくりに取り組んでおります」。
※三方を海に囲まれ、幹線交通体系から離れているなどの制約の下にある地域が対象。産業基盤や生活環境の整備などにおいて難しさがあるゆえに、人口減少や高齢化などの問題を抱えやすいとされる。
また、和歌山・有田の魅力については、こんな風に教えてくださいました。
「山川海に恵まれ、温州みかんが素晴らしくおいしく仕上がる特異地です。温暖な気候と自然豊かな山々など、都会にはない柔らかな気持ちで生活ができる環境だと思います。また、大阪などの都会にも比較的近いので、観光にもぴったりです。弊社でも今後、観光直売に力を入れていく予定です」。
みかん農地が広がる様子
画像提供:株式会社 早和果樹園
和歌山・有田の「果樹園の濃厚みかんジュレまるごと1個入り」、ごちそうさまでした。
早和果樹園
所在地:和歌山県有田市宮原町新町275-1
本社TEL:0737-88-7279
直営店(本社店)TEL:0737-22-3390
直営店(本社店)営業時間:9:30~17:00(土日祝10:00〜17:00)、不定休
https://sowakajuen.com/
※「果樹園の濃厚みかんジュレまるごと1個入り」は直営店(本社店・南紀白浜店)のほか、オンラインショップでも購入可能。
この記事を書いた人
吉田友希 ライター