公開日: 2025.05.27 最終更新日: 2025.05.26

【ご当地お菓子】初夏に食べたい爽やかな羊羹。ゼリーのように軽やかに楽しめる京都の「桃の菓」

【ご当地お菓子】初夏に食べたい爽やかな羊羹。ゼリーのように軽やかに楽しめる京都の「桃の菓」

京都の「桃の菓」
画像提供:亀屋良長 株式会社

── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。

お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第33回は、京都府の府庁所在地である京都市の「桃の菓」を紹介します。

ライター:吉田友希

ライター:吉田友希

01| 社内みんなのアイデア が詰まった“待望の桃のお菓子”

京都の「亀屋良長(かめやよしなが)」から、毎年4〜8月頃の季節限定で販売されている「桃の菓」。ストレートな名前と、可愛らしい桃のパッケージから、桃を使ったお菓子だとすぐにわかります。

しかし、開けてみると、ちょっと意表を突かれます。

丁寧な包装を開けていくと、なかから3層の美しいお菓子が登場。羊羹でありながら、ゼリーのような軽やかな佇まいが魅力的です。

一番下は、旬の桃を使用した桃羊羹。真ん中の白い部分は、乳酸菌飲料入りのみじん羹(寒天や砂糖、水あめを溶かした液ともち米を乾燥させ挽いた粉を合わせたもの)と。一番上の透明のところには、白ワインで香りづけされた白桃とスライスレモンが入っています。

桃、乳酸菌飲料、白ワイン、レモン……たくさんの原材料で構成されている「桃の菓」ですが、意外ともいえる組み合わせには、社内のみなさんのアイデアがたくさん詰まっているのだとか。亀屋良長の開発ご担当の方に、開発当時のエピソードを伺いました。

「弊社のパッケージは、京都発のテキスタイルブランド『SOU・SOU』さんのデザインを使用することが多いのですが、桃の柄が可愛くて、いつか使いたいなと思っていました。ちょうどその頃、女将が桃のお菓子のニーズの高まりを感じていたこともあり、桃を使った羊羹の開発がはじまりました」。

02| 桃、レモン、ミント……夏でも食べやすい爽やかな味わいに

真上から見るとレモンの存在感があり、爽やか 真上から見るとレモンの存在感があり、爽やか

原材料以外にも、隠し味にはミントリキュールが加えてあるそうで、知れば知るほど奥深いお菓子です。

「以前プライベートで、ヨーグルトムースの上に白ワインで煮た白桃をのせたデザートをつくったことがあり、それをベースに考えました。ヨーグルトは日持ちの面で難しく、悩んでいたところ、八代目から乳酸菌飲料にしてはどうか? とアドバイスをもらい、職人に試作をお願いしました。

ミントリキュールやレモンを取り入れたアイデアは、試作を担当した職人が、夏でも食べやすいようにと試行錯誤して辿り着きました」。

一番下の色は自然の桃由来だそう。鮮やかな発色が美しい 一番下の色は自然の桃由来だそう。鮮やかな発色が美しい

いただいてみると、3層それぞれで味わいや食感が異なります。羊羹のような甘さと、ゼリーのような軽やかさがあり、全体的にはさっぱりとした口当たり。ふわっと桃の香りがして、“桃”をしっかりと楽しめます。

見た目の美しさも「桃の菓」の魅力の一つですが、そこにはこんなこだわりが。

「白桃だけを重ねると、見た目がぼんやりしてしまったのですが、桃の間にスライスレモンを入れて並べることで、白桃の輪郭が浮かび上がりました。爽やかな酸味も加わり、さらにおいしくなりました」。

03| 伝統を生かしながら、今に寄り添うお菓子を手掛ける「亀屋良長」

代々伝わる「菓子配合帳」
画像提供:亀屋良長 株式会社 代々伝わる「菓子配合帳」
画像提供:亀屋良長 株式会社

亀屋良長の創業は、1803(享和3)年。今から220年以上前の江戸時代から引き継がれてきた道具や技術を大事にしながら、伝統的な京菓子をつくっています。

一方で、「桃の菓」のように、遊び心のあるお菓子のラインナップも豊富。伝統に感謝しながらも、「今を生きる人に喜んでもらえる京菓子」をつくっているのだそう。

「和菓子は、お客様に幸せになっていただくものと考えています。愛らしく、自然で、おいしそうであることを大切にしています」と、商品開発の際のポイントを教えてくださいました。

画像提供:亀屋良長 株式会社 画像提供:亀屋良長 株式会社

亀屋良長では、和菓子の楽しさをより多くの人に伝えるために、多様な活動を行っています。日曜日以外、毎日開催の「和菓子手づくり教室」では、職人による実演の後、生菓子づくりを体験できます。参加者は、地域の子どもたち、海外からの観光客などさまざま。伝統の木型を見ることもでき、普段はなかなか味わえない貴重な体験を提供しています。

ほか、大学での講演活動や企業とのコラボにも積極的。若手社員たちによる企画チーム「かめや和菓子部」では、季節ごとに新しいお菓子を開発し、若い感性を生かした斬新なお菓子を店頭で販売しています。

04| おいしい水に恵まれた四条醒ヶ井。店先から湧き出る名水は和菓子づくりに欠かせない

画像提供:亀屋良長 株式会社 画像提供:亀屋良長 株式会社

伝統や技術はさることながら、亀屋良長の大切な要素の一つが「水」です。そもそも、初代が創業の地に現在の場所を選んだのは、店先から良質な水が湧き出ているから。京の銘水であるこの「醒ヶ井水(さめがいすい)」を使用することで、素直な味わいの表現を可能にしています。

店先から湧き出る「醒ヶ井水」。誰もが自由に汲めるように開かれている
画像提供:亀屋良長 株式会社 店先から湧き出る「醒ヶ井水」。誰もが自由に汲めるように開かれている
画像提供:亀屋良長 株式会社

最後に、お菓子をつくり続けている亀屋良長にとって、京都・四条醒ヶ井の街の魅力とは? という問いには、こう答えてくださいました。

「少し足を伸ばすと自然があり、神社仏閣が地域に根差し、信仰も残っていて心が落ち着く街です。歴史や文化が身近に感じられるところに魅力を感じています」。

京都本店の外観
画像提供:亀屋良長 株式会社 京都本店の外観
画像提供:亀屋良長 株式会社

京都の「桃の菓」、ごちそうさまでした。

亀屋良長 京都本店
所在地:京都府京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19
TEL:075-221-2005
営業時間:9:30~18:00(茶房 11:00〜17:00)、1/1〜1/3休
https://kameya-yoshinaga.com/

※オンラインショップでも購入可能。「桃の菓」の販売は8月中旬まで。

吉田友希

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