古民家をリノベーションした施設や、アンティークグッズを販売するお店が建ち並び、どこかレトロな空気のある、古くからあるものを大切にできる街があります。そんな街に移り住めば、あたたかな気持ちで過ごせるはず。今回は、古くからあるものを大切にしている街として、青梅、十日町、丹波篠山の三つの街の魅力をご紹介します。
text:Ikumi Ueno、Kanta Kosugi(effect) photo:Eizaburo Sogo illustration:Saori Fukada
東京都の北西部に位置する青梅。総面積の60%以上を森林が占め、市内の中心を多摩川が流れる豊かな自然が特徴の街です。豊富な林産資源と川があり、石器時代から集落が形成されていたことが確認されています。江戸時代になると石灰や織物の産業が盛んになり、青梅市の大半が幕府の直轄地となるほど栄えた街でした。その流れから昭和初期には三つの映画館があり、西多摩地域の文化の中心地でしたが、昭和40年代にすべて閉館。その後、1990年代から街おこしのため、青梅市在住の映画看板師の久保板観さんが再び看板を描き、青梅駅周辺に飾り始めたところから、映画の街として知られるようになりました。板観さんが亡くなり、看板の修繕が難しくなったことから、現在は映画看板が撤去されていますが、レトロな街並みはまだ人気を集めています。2021年には旧都立繊維試験場の建物をリノベーションした映画館「シネマネコ」が誕生し、青梅に50年ぶりに映画館が復活しました。
青梅市内にはJR青梅線が通っており、青梅特快に乗れば新宿駅までは1時間、東京駅まで1時間20分程度と都内へのアクセスも可能なため、近年では移住をする人も増えています。市をあげて移住政策にも力を入れており、最大100万円の移住支援金や、遠距離通勤の応援金など移住政策も充実。子育て政策の充実もはかられているため、東京都内の共働き子育てしやすい街ランキングにも度々ランクインしています。東青梅駅や河辺(かべ)駅周辺などの市街地には大型スーパーも多く、生活のしやすさも抜群。豊かな自然を活かしたバーベキューや、ハイキング、渓流釣りなどレジャーも楽しめ、充実した生活が送れます。
シネマネコ 代表菊池康弘さん
若い世代に伝える
人と文化と建築が交わる場所に
青梅に映画館をつくろうと思ったのは、僕のお店に来てくれるお客さまとの会話のなかで、「昔は青梅が盛り上がっていた」、「また青梅で映画が見たい」と言われたことでした。僕が子どもの頃から駅の周辺に映画の看板が飾られていたのは知っていましたが、映画館があったことすら知らなかったので、「そうなんだ」と。お酒も入っていましたし、軽いノリで「いつか実現します」と言ってしまったんです(笑)。僕が13年前に創業した居酒屋「火の鳥」はおかげさまで盛況ですし、青梅にその恩返しができたらという思いもあり、映画館づくりに着手することになりました。
シネマネコは青梅織物工業協同組合の敷地内にある、旧都立繊維試験場という木造建築物をリノベーションしてつくられました。昭和10年に建てられ90年近い歴史を持つ、国登録有形文化財にあたります。貴重な文化財である建物は、全国各地さまざまなところにあるのですが、補修保全をしただけで活用されていないなど、入館料を払って建物を見るというパターンが多いと思うんです。そうなるとよっぽど興味がなければ素通りされてしまう。うちの映画館のように人が集まり交流できる場になると、貴重な建物が本当の意味で活用できることになると思います。映画の街だけでなく、繊維で栄えた街だったことなど青梅の文化を若い世代に伝えられる場であり、人、文化、建築が交わる場所になっていると思いますね。
映画館建設にあたり、クラウドファンディングを行ったのですが、地元を中心に多くの方が応援してくださったのがとてもうれしかったです。なかには「クラファンのやりかたが分からないから」と、現金を持ってきてくださった方も。完成後は、みなさん青梅に映画館が復活したことを本当に喜んでくれました。都内からシネマネコを目当てに青梅に来て下さる方もいて、映画を身近に感じられる環境を気に入り、この近くに引っ越したいと仰る方もいました。青梅は自然も多く買い物スポットにも困ることがないですし、暮らしやすい街です。最近、小中学校の給食も無償化され、さらに子育てもしやくなったと感じます。あとは行政任せではなく、僕たちのように民間企業や団体で地域を盛り上げようとがんばっている人たちも多いエリアだと思います。この魅力が広がって、青梅に移住する人が増えたらうれしいですね。
シネマネコの向かいにある、ダイニング&ギャラリー 繭蔵さんをおすすめします。築100年以上の蔵をリノベーションされた落ち着く空間のなかで、季節の野菜をふんだんに使った料理が楽しめます。毎日仕込んでいるスパイスカレーも絶品です! いつも助けていただいている心強いご近所さんです。
東京都青梅市西分町3-127
暮らしのスポット
シネマネコ
青梅麦酒
ランデヴードブロカント
2005年に1市3町1村の合併で、新潟県の南西部に誕生した街です。日本一の大河、信濃川を中心に豊かな自然と共存する中で生まれた絹織物などの産業や歴史が特産品。アート文化もさかんで3年に1度開催される国際野外芸術祭「大地の芸術祭」では国内外問わず多くの観光客が訪れるほど人気です。美しいブナ林をはじめ芸術的かつ幻想的な原風景が点在しており、忙しなく人が行き交う都会の喧騒から逃れたい人にはぴったり。移住相談窓口の設置など、サポートも充実しているので安心して検討できます。
十日町市は、日本でも有数の雪国でありながら交通の便が整っています。アーケードや商業施設が揃う中心地の十日町駅ほか、主要道路には排雪のための流雪溝を整備。降雪期は除雪車が早朝に作業をしてくれるので通勤通学も困りません。また、東京駅から新幹線で約2時間と首都圏からのアクセスのよさも魅力です。自然に囲まれているため景観もよく、豪雪環境を生かした米や野菜などの農業もさかんでおいしい。忘れかけていた穏やかな心を見つけられる街です。
竹所シェアハウス
兵庫県の中東部に位置し、農地と山林が多くを占める県内第8位の面積を持つ自然豊かな街。黒豆や山の芋、丹波松茸、丹波茶など広大な土地と盆地特有の寒暖差がある気候を生かした農作物や伝統工芸品があり、特産物の宝庫と知られています。かつて江戸幕府によって築かれた篠山城とその城下町が中心エリアで、京文化の影響を受け独自の発展を遂げており、歴史情緒溢れる街並みが魅力。周辺には、商店街があるほか豊かな自然と美しい田園風景も広がっています。スローライフを過ごしたい人にぴったりです。
丹波篠山市は、自然が豊かな上に生活する環境が整っているのが大きな魅力です。市内にはJR線のほか国道など交通アクセス至便。さらに、中心駅である篠山口駅周辺には大型のショッピングセンターやカフェなども立地しています。また、里山の風景が多く残っており、農業体験をはじめとしたグリーンツーリズムに力を入れているのも特徴。観光都市としても栄え、丹波の小京都と呼ばれるほどの歴史ある街です。
MAGNUM COFFEE
そんな夢が叶う、伝統的な街並みや自然とともに過ごせる街をご紹介します。
気になる街があれば、目利きの話をチェックしてください。