前川自邸の最大の特色は、外観は瓦葺の切妻屋根という日本の木造伝統建築にのっとりながら、モダニズム建築の5原則「ピロティ・自由な平面・自由な立面・水平連続窓・屋上庭園」のうち、屋上庭園以外を踏襲していることです。ファサード(正面から見た形)はよく見ると五角形になっており「自由な立面」をつくっています。開口部は4枚の引き戸からなる「水平連続窓」で、屋内にはロフトがあり窓を開けると「ピロティ」になります。そして、廊下や縁側のないリビングは「自由な平面」です。前川は、ロフトの書斎で、天気のよい日は寝そべっていたそうです。空襲で銀座の事務所が焼けたのちは、この書斎にこもって仕事を続けました。