公開日: 2023.12.01 最終更新日: 2023.12.01

【私の移住ストーリー】~学生時代から憧れていた北海道十勝に移住して移動本屋を経営~長谷川さんのケース

【私の移住ストーリー】~学生時代から憧れていた北海道十勝に移住して移動本屋を経営~長谷川さんのケース

北海道・幕別町忠類にあるカフェ「Cafe森の音こ」で出店。実店舗は持たず、さまざまな場所を借りて出店している

今回は東京から北海道十勝に単身で移り住み、移動本屋を営む長谷川さんの移住ストーリーを紹介します。「開拓の歴史がある北海道には、ほかの土地から移住してきた人を受け入れるオープンな気質を感じる」という長谷川さん。そんな北国での暮らしは、長谷川さんにどのような変化をもたらしたのでしょうか?

ライター:鈴城久理子

ライター:鈴城久理子

01| 北国への憧れが強く、「住んでみたい」という気持ちが次第に膨らんだ

北海道と聞いてイメージするのが、この十勝平野の風景という人も多い 北海道と聞いてイメージするのが、この十勝平野の風景という人も多い

目の前に広がる大地に、美しい景色と澄んだ空気。北海道南東部に位置し、19の市町村で構成されている人口約34万人の十勝エリア。その面積は北海道全体の約13%、岐阜県とほぼ同じ大きさに相当します。畑や酪農などの大規模農業が盛んで、農業に憧れて都心から移住する人も年々増えているのだそう。この自然豊かな十勝に長谷川さんが移住したのは、2020年のこと。

食料自給率がカロリーベースで約1200%といわれる十勝は、日本の食を支えているといっても過言ではない 食料自給率がカロリーベースで約1200%といわれる十勝は、日本の食を支えているといっても過言ではない

農業王国として有名な十勝では、乳製品はもちろん、さまざまな野菜や穀類、豆類を栽培していて、沿岸地域では漁業が行われるなど、おいしいものがたくさん。食のほかにも、スキーや渓流釣り、カヌー、ラフティングなどのアウトドアアクティビティが充実。北海道の大自然を満喫できる実に魅力あふれるエリアなのです。

「十勝ヒルズ」で開催されたTeaイベントを主催。本と一緒に美しい自然に触れられるのも北海道ならでは 「十勝ヒルズ」で開催されたTeaイベントを主催。本と一緒に美しい自然に触れられるのも北海道ならでは

長谷川さんがそんな十勝エリアを選んだのは、「好き」という気持ちにシンプルに応えた結果だったといいます。「幼少期に山梨に住んでいたことがあり、八ヶ岳や清里高原に家族で遊びに行っていたんです。それに加えて学生の頃、スウェーデンに交換留学を経験しました。十勝にも山梨の高原エリアや北欧に共通する、北国ならではの雰囲気があったことで、移住したいという気持ちが自然に芽生えたんだと思います」。

02| 移住後に初めて迎えた冬は、 水落としや除雪など慣れないことばかり

美しい雪景色も、暮らす人々にとっては大変なこともあるそう 美しい雪景色も、暮らす人々にとっては大変なこともあるそう

「北海道に住みたい」という気持ちが自然に生まれたことで、移住に関する不安などはなかったものの、初めて迎えた冬は慣れないことばかりでした。特に大変だったのは、凍結や積雪に関すること。「冬期間の運転や水落とし(水道の凍結事故を防ぐための水抜き)、除雪など経験がないことばかりだったので、一年目はかなり慎重になりました。移住するために運転免許を取得したのですが、運転するときも大変でした。でも、だんだん慣れてきましたね」。

03| 移住後は理想のライフスタイルを追求する余裕が生まれてきた

幕別町駒畠のパン屋「里のあかり」を間借りして、満月の夜だけ開く本屋をオープン 幕別町駒畠のパン屋「里のあかり」を間借りして、満月の夜だけ開く本屋をオープン

北海道に住む夢を実現するため、具体的に行動に移していったという長谷川さん。まずは手に職をつけてからでないと地方で理想的な暮らしはできないと思い、東京で書店員や本に関わる仕事に携わって経験を積みました。30歳を過ぎて東京での仕事に体力的にも精神的にも限界を感じ、「移住するなら今だ」と思ったタイミングが2020年だったそう。そして、翌2021年には移動本屋「月のうらがわ書店」をオープンすることに。

「里のあかり」のオーナーとは、公私ともに仲よくしてもらっている 「里のあかり」のオーナーとは、公私ともに仲よくしてもらっている

北海道に移住してよかったと実感するのは、人とのほどよい関係性が保てること。田舎は人と人との関係性が近いイメージがありましたが、プライベートに土足で踏み込まれるような経験もなく、かといって都会のように他人に無関心というわけでもありません。ほどよい距離感を保てるのがいいなって思っています」。また、ここでの暮らしはお金を稼ぐことが優先ではなく、自分が理想だと思うライフスタイルを追求する余裕があるので、気持ちがとてもラクになったといいます。

家具の修繕やリメイクも行う遠軽町の古道具屋店「ナンカデイル」は、お気に入りのお店の一つ 家具の修繕やリメイクも行う遠軽町の古道具屋店「ナンカデイル」は、お気に入りのお店の一つ

もともと古いものが好きで、北海道に来てから家具などの家のしつらいは全て古いもので揃えるようになったそう。ずっと訪れてみたかった「ナンカデイル」は、北見で木工と造形デザインを学んだオーナーが営む遠軽町の古道具店。「このお店にある古物は、アンティークだからおしゃれに見えるとかそういうことではなくて、古いものがただそこにあるという感じがして、いいなあと思えるんです。背伸びをしていないというか、日常的というか、とても心地いいんですよ」。

韓国料理が好きで、左は愛読している本。右はお世話になっていた「Tomono Café」のオーナーとキムチ講習会に参加したときの写真 韓国料理が好きで、左は愛読している本。右はお世話になっていた「Tomono Café」のオーナーとキムチ講習会に参加したときの写真

長谷川さんが今プライベートで夢中になっているのは、韓国に関すること。韓国料理を習ったり、韓国語を勉強したりして、9月半ばには8年ぶりに韓国に行きました。「韓国の食文化は本当に豊かです。韓国料理のあれこれを知りたいときはこの本を開いています。もともとはフランスで出版された本で、韓国の食文化を知りたい人にとってこの本はまさに入門編。歴史やレシピ、地域ごとの特色、テーブルマナーなどが可愛らしいイラストで図解されているんですよ」。

重い本は少しずつ自分の愛車にのせて一緒に引っ越し 重い本は少しずつ自分の愛車にのせて一緒に引っ越し

今いる自分の場所に違和感があると、引っ越しもためらわないのが長谷川さんのこだわり。移住して最初に住んでいたアパートは仮住まいのようなもので、本の整理もできていなかったのだとか。「なぜ好きでやってきた北海道にいるのに満足する住環境にないのか? 」ということを考えた末に、ようやく「ここがいい」という場所に出会えました。

04| 書店業などの活動を通じて「人と出会うことの大切さ」を実感

「月のあかりとかめ」と名づけた出店では、読み聞かせ活動をする「かめと絵本」のオーナーとコラボ。読み聞かせ会やワークショップも同時開催 「月のあかりとかめ」と名づけた出店では、読み聞かせ活動をする「かめと絵本」のオーナーとコラボ。読み聞かせ会やワークショップも同時開催

実店舗は持たない移動本屋のため、販売はカフェや図書館などの一角を借りて出店。「場所をお借りしたり、どなたかとコラボしたりすることで営業が成り立っているので、ご協力くださった方々とのつながりはどんな場面でも大切にしています」。

福島県在住の歌人、麻倉遥さんに作ってもらった「月のうらがわ書店」をイメージした短歌 福島県在住の歌人、麻倉遥さんに作ってもらった「月のうらがわ書店」をイメージした短歌

2014年の夏、富良野のラベンダー畑でアルバイトをしたときに出会ったという麻倉さん。本を読むのが趣味で多くの共通点があり、以来ずっと文通を続けているのだとか。その麻倉さんがお店をイメージして詠んでくれた短歌は、移動書店を続けるうえでも大切な宝物で、ショップカードの裏面にも記載されています。

出店に合わせて手作りのしおりを仕入れることも。これは十勝の夏を思わせる花かごのデザイン 出店に合わせて手作りのしおりを仕入れることも。これは十勝の夏を思わせる花かごのデザイン

不定期ですが、愛らしい花の刺繍をほどこした限定数のしおりを仕入れ、本と一緒に販売。どれも一針一針丁寧に刺された手作り品。本の価格は決められているため、しおりとセットで購入した場合に少し値引きをすることで、足を運んでくれたお客さんに感謝の気持ちを伝えています。

「上川町PORTO」で行われたイベント「本×珈琲×〇〇」に出店。主催は上川町地域おこし協力隊のメンバー、タサキさん 「上川町PORTO」で行われたイベント「本×珈琲×〇〇」に出店。主催は上川町地域おこし協力隊のメンバー、タサキさん

書店業は主に週末に行い、平日4日間は大樹町地域おこし協力隊として活動中。それに加えて、単発で編集や執筆、リモートで以前勤めていた東京の企業の案件に携わるなど、多忙な日々を送っています。

北見市内の小学校で行われたブックトークでは、担当の先生からロゴをあしらったデザートのサプライズも 北見市内の小学校で行われたブックトークでは、担当の先生からロゴをあしらったデザートのサプライズも

本の販売だけでなく、ブックトーク(テーマに沿って数冊の本を紹介するイベント)などのイベントの手伝い役として参加することも。北見市内の小学校では、毎月1回リモートでおすすめの本を紹介する授業に参加しています。「心と心を通わせて仕事ができるということは、こんなにも楽しいことなんだ」と改めて実感したそう。「生徒の一人が書いてくれたお手紙をもらったり、サプライズでロゴ入りのデザートを用意してくださったり。これからも誠実に仕事をしていこうと心に決めました」。

足を運んでくれたお客さんと一緒に満月の空を見上げるのは、非日常的でとても感動的 足を運んでくれたお客さんと一緒に満月の空を見上げるのは、非日常的でとても感動的

今は住みたいところに住んでいるので、もし今後移住するのなら、海外に行きたいという長谷川さん。いま、最も関心があるのはやはり韓国で、学生時代に留学していたスウェーデンに戻りたいという気持ちも。そんな長谷川さんから移住についてのアドバイスをもらいました。

もし移住に興味があるようなら、思い立ったが吉日。すぐ移住できなくても、そのために今なにができるのかを逆算して行動することが大切だと思います。頭に描いているだけでは、未来はなかなか変わらないですから」。


長谷川さん(月のうらがわ書店)のインスタグラムと公式サイトはこちら!
https://www.instagram.com/tsukimitaini/
https://note.com/a_tsukimitaini

05| まとめ

十勝では市町村ごとに移住支援事業を行っており、地域おこし協力隊で活動すると収入を得られる仕組みも。魅力いっぱいの北海道への移住を考えてみませんか?

鈴城久理子

この記事を書いた人

鈴城久理子 ライター

雑貨紹介や料理、インテリアなど暮らし系の記事を中心に執筆することが多いライター。ただいまメダ活実践中。

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