おひとりさまに限ったことではないですが、どのように暮らしていくのかはライフプランを考える上でもとても重要になります。好きなところに住み替えることができる賃貸や、住宅ローン完済後は負担が減る持ち家、高齢になったときには高齢者施設という選択肢もあります。自分はどのように暮らしていくのか、それぞれの暮らし方のメリット、デメリットと住まいを選ぶときのポイントについてお伝えします。
ファイナンシャルプランナー(CFP):黒須 かおり
CONTENTS
01| おひとりさま女子の3つの暮らし方
住宅については、賃貸のほうが得、持家のほうが得など様々な意見があります。しかし、住まいについては、損得だけで選べるものではありません。それぞれのメリットデメリットを考えてみましょう。
02| 賃貸住宅のメリット、デメリット、課題
賃貸住宅のメリット
賃貸のメリットは、なんと言っても好きなところに住み替えをすることができることでしょう。会社の近くに住むことも、自然の多い静かなところに住むことも選ぶことができます。騒音などのご近所トラブルがあったときも、引っ越してしまえば悩まされ続けることもありません。ライフスタイルや年齢に合わせて間取りや階数を変えることもできるし、引越しをすることで見える景色も変わり気分転換にもなります。また、お給料が上がったら少し家賃が高いところに住んだり、反対にお給料が下がってしまったら住み替えたりして家賃を下げることもできます。
賃貸住宅のデメリット
賃貸のデメリットは、家賃を一生払い続けなければならいことでしょう。賃貸は持ち家と違い、払い続けても自分の物になるわけではありません。現役時代であれば収入に占める家賃の割合はそれほど多くなくても、年金だけの収入になった場合、家賃割合が多くなってしまう可能性もあります。一般的に収入に占める住まいの割合は3割を超えると厳しくなります。例えば、年金金額が 15 万円、収入の3割以下だと 4 万 5000 円の家賃になりますが、選択肢は限られてきてしまうでしょう。
賃貸住宅の課題
賃貸住宅の場合、高齢になったとき借りることができる物件が少なくなることが課題になるでしょう。部屋を貸す側の立場に立って考えれば、若い人のほうがリスクは少ないと考えられます。高齢になれば、介護の問題や入院などして連絡が取れない、孤独死などの可能性もゼロではありません。高齢の人に部屋を貸すことを嫌がる人がいたとしても仕方ありません。
つまり、一生賃貸で暮らしていくのであれば、借り続けることができるのかが課題になります。さまざまな問題が起こったときに、役割を果たしてくれる保証人がいないと貸してくれない場合もあります。保証人は借主よりも若い世代の人が求められることが多いですし、何かあったときに弁済を求められることもあるため、経済的に安定している人である必要があります。そう言った人が親族でいればいいですが、いない場合は「家賃(賃貸)保証会社」などを利用するとよいでしょう。
家賃(賃貸)保証会社とは、なんらかの理由で家賃が払えなくなったとき、借主に代わって家賃を立て替えて支払ってくれます。しかし、家賃に応じた保証料を支払う必要があります。
また、保証人の必要のない賃貸住宅に住む方法もあります。UR 賃貸住宅などは貯金がある程度あったり、収入が安定していたりすれば保証人がいなくても借りることは可能な場合もあります。
03| 持ち家のメリット、デメリット、課題
持ち家のメリット
持ち家のメリットは、自分の好きな間取りにしたり、リフォームしたり自由にすることができます。また、住宅ローンの返済が終われば、それ以降は住まいにかかる費用の負担は大きく減ります。年金が受給できる年齢くらいまでには返済が終わる計画であれば、年金から毎月支払う必要がなくなります。つまり、家が有る限り老後に住む場所に困ることはありません。
持ち家のデメリット
持ち家のデメリットは固定費がかかることでしょう。返済が完了すればローンの負担はなくなりますが、固定資産税は家を持っている限り支払い続けなければなりませんし、家が老朽化すればメンテナンスも必要になります。さらに高齢になれば、手すりや段差の解消など介護用にリフォームも必要になるかもしれません。
他にも、賃貸のようにご近所トラブルがあっても簡単に引っ越すことはできないことや、収入が減少したとしてもローンの支払は続けなければなりません。
持ち家の課題
持ち家の場合最大の課題は、持ち主が亡くなった後のことでしょう。親や兄弟など引き継ぐ人がいる場合は問題ないですが、そうでない場合は、その財産がいずれどうなるのかを考えておかなければなりません。実際に親兄弟が既にいないため、家を買うことを迷っているという人もいました。
親兄弟だけでなく、甥や姪などもいない場合遺言書がなければ、その財産は国のものとなります。国のものになることが自分の意思と異なる場合は、事前に専門家に相談して「遺言書」を残しておいた方がよいでしょう。自分が亡くなった後、自分の財産をどうするのも考えておきましょう。
04| 高齢者施設のメリット、デメリット、課題
高齢者施設のメリット
老後は高齢者施設で過ごしたいという人もいるでしょう。高齢者施設にもグループホームや特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホームなど選択肢は多くあります。
民間の介護付き有料老人ホームや公的施設の特別養護老人ホームは介護状態であっても受け入れてくれます。将来、自分が介護状態になるかどうか予想することは難しいですが、そうなったときでも入居金や月額利用料を支払うことで、住む場所や介護サービスを受けることができることはメリットと言えます。
高齢者施設のデメリット
高齢者施設は入居したい施設によっては入居の一時金が数十万円から数千万円もかかる場合があります。さらに、月額の利用料も5万円程度から 35 万円くらいかかることもあり、費用面で負担が大きくなることがデメリットです。
高齢者施設の課題
高齢者施設に入居するための課題は、資金と入居できるかどうかでしょう。資金はあらかじめ施設に入居することを想定して準備しておくこともできますので、しっかりと準備しておきましょう。また、費用負担の軽い、公的な施設の場合は入居の順番待ちや入居条件が厳しいことが多く、必ず入居できるとは限りません。そういった場合は、民間の施設も検討しておくとよいでしょう。
05| 住まいを選ぶポイント
老後の住まいを選ぶときは働いているときとは、少し違った目線で考えましょう。たとえば、費用、住環境、周辺環境の3つのポイントはしっかりと抑えて選ぶようにしましょう。
06| 費用
持ち家の場合、住宅ローンの支払いが無理のない金額であるのか、何歳まで続くのかが大きなポイントになります。たとえ収入が減少したとしても支払えるのか、元気で働けるうちに返済できるのかなどの資金計画はとても重要です。また、リフォームなどがある場合の費用も前もって計画しておきましょう。
持ち家の場合、老後に売却して高齢者施設への入居一時金などにすること可能です。
また、賃貸の場合は、一生涯家賃が続くことになります。そのため、老後資金の準備をするときは、生活費だけでなく、家賃分も含めて準備をしておくようにしましょう。
さらに、現役時代と同じ場所に住み続けられるとは限りませんので、どこかのタイミングで家賃の安いところに住み替えすることも考えておくとよいでしょう。
07| 住環境
おひとりさまが老後に安心して住むことができる住居を選ぶには住環境もとても重要です。例えば部屋の中のちょっとした段差や、扉の開き方などそれまで気にならなかったことが、高齢になると不便に感じることが増えてきます。住居を探すときは、バリアフリー の目線を持って探すと安心でしょう。
また、高齢者に限ったことではないですが、不審者への対策、防犯カメラ、オートロック、管理人などセキュティの高いところが安心です。
加えて、ゴミ捨て場までの距離や、分別方法なども毎日の生活の中では重要になります。
08| 周辺環境
高齢になると、生活する範囲もそれまでとは違い狭くなります。電車やバスを使うにも、近くに駅やバス停がないと不便ですし、車を持っていたとしてもいずれは免許の返納をして運転しなくなることもあります。ですから、公共の交通機関が近くにあるかどうかは調べておきましょう。
また、買い物をするためのスーパーや銀行、病院なども近くにあるか確認しましょう。
毎回出かけるたびにタクシーを使わなくてならなくなると、それだけでも支出が増えてしまいます。
09| まとめ
40 代、50 代になり、このままおひとりさまライフを楽しむためには、将来の住みかたについて考えておかなければなりません。持ち家、賃貸、高齢者施設などさまざまな選択肢はありますが、それぞれメリットデメリットがあり、どちらがいいと決めることはできません。しかし、どのような選択肢になるにしても、資金がかかることは間違いありません。親からの相続などがない限り、すべての資金を自分で準備しなくてならないため、現役時代にしっかりを資金計画を立てておきましょう。
この記事を書いた人
黒須 かおり ファイナンシャルプランナー(CFP)