お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第5回は、新潟県の県庁所在地である新潟市の「浮き星」を紹介します。
ライター:吉田友希
CONTENTS
01| 不思議なおいしさが魅力の「浮き星」
いちご、ミルク、ミント、柚子の4種類のフレーバーが入った「浮き星 缶 thank you from niigata(白)」。新潟らしいイラストが描かれた缶に入っている
画像提供:hickory03travelers
「かわいいご当地コンペイトウ!」だと思って一目惚れしたこちらのお菓子。コンペイトウとはまったく別ものの「浮き星」という伝統菓子でした。
浮き星の中身はあられ。あられに蜜をかけた砂糖菓子です。中身があられの分、砂糖菓子だけど甘さは控えめ。しゃりっと甘い砂糖部分と、サクッとしたあられ部分が口のなかで一緒に溶けて、ほんのりお米の風味も感じられるような。そんな不思議なおいしさのお菓子です。
浮き星は、コンペイトウのように表面がトゲトゲしています。まじまじと見ると、一粒一粒のフォルムも独特でかわいらしいです。
02| 製造するのは明治33年創業の和菓子店
新潟市中央区湊町にある「明治屋ゆか里店」
画像提供:hickory03travelers
浮き星はもともと、「ゆか里(り)」として115年以上新潟県新潟市で愛される伝統菓子です。ゆか里は長きにわたって新潟市民を笑顔にしてきた一方で、時代の変化とともに、お店に並ぶ機会が減っていきました。現在、ゆか里の製造ができるのは、新潟市では明治33年に創業した「明治屋ゆか里店」一軒のみ。
そんなゆか里の後輩として生まれたのが浮き星です。浮き星もゆか里も、製造は「明治屋ゆか里店」が手掛けています。高温の釜に入ったあられに少しずつ蜜をかけながらぐるぐるかき混ぜる昔ながらの方法でつくられます。湿度を調整しながら朝から晩まで9時間かけてぐるぐるぐるぐるぐる……。表面のとげは、職人技と努力の賜物です。
釜につきっきりで作業をする「明治屋ゆか里店」三代目の小林さん
画像提供:hickory03travelers
03| 浮き星誕生の理由。それは「後継ぎをつくるため」
同じ老舗店が製造するゆか里と浮き星。先ほど、ゆか里の後輩が浮き星だと紹介しましたが、浮き星は、ゆか里をこれからも残していくためにつくられたプロダクトでありプロジェクト。
浮き星の仕掛け人は、hickory03travelers(ヒッコリースリートラベラーズ)というクリエイト集団です。「伝統的な新潟のお菓子をこれからもずっと食べ続けたい、次世代につないでいきたい」と願う彼らが、「明治屋ゆか里店」三代目の小林さんに後継ぎを! と動き出したのが2014年のこと。
伝統菓子をよりたくさんの人に気軽に手にとってもらえるように、各フレーバーをミックスしてカラフルにしてみたり、新潟らしいかわいいイラストを添えたりという過程を経て、よりポップな浮き星が誕生したわけです。
ゆか里の製造にプラスして浮き星の製造もはじまった「明治屋ゆか里店」は大忙し。その後、三代目の小林さんの娘さんがお店を手伝うようになり、お婿さんが製造に加わるようになり、現在の四代目に。
同じつくり方で同じお菓子をつくることができる後継ぎができたからこそ、新潟市民は“どこか懐かしい甘い記憶”を次世代に残すことができます。そして、私を含め、全国の人たちが、いまこうして浮き星を手に取ることができています。なんだかとても感慨深いです。
かわいらしい見た目とやさしい味わいで、世代を問わず楽しめる
04| 「新潟」だからできることを大切に
「日常を楽しもう」のコンセプトで活動されているヒッコリースリートラベラーズのみなさん
画像提供:hickory03travelers
浮き星を企画したヒッコリースリートラベラーズは、新潟市中央区の古町エリアを拠点に、ショップの運営からロゴ・イラストの制作やブランディングまで幅広く活動されています。公式ホームページには、浮き星のほかにも、地域の商品の本質的な価値に目を向けたプロジェクトが数多く見られます。
県内出身者、学生時代を新潟で過ごした方、地域の雰囲気が好きで移住した方など、メンバーそれぞれのバックボーンはさまざまだけど、ヒッコリースリートラベラーズのみなさんの共通点は、新潟が好きで地域愛に溢れていること。そんなみなさんに新潟市の古町エリアの魅力を伺うと、こんなふうに教えてくださいました。
「海が近く、農産物もたくさん生産されているため、食べ物やお酒がおいしく、いろいろな飲食店を楽しめます。古くは北前船の寄港地であったことから、全国の文化や人が行き交い、その雰囲気が今も残っています。老舗がありながらも、若い人がお店を開いたりと、“古くて新しい”街です」。
浮き星の上からお湯を注ぐと、星のような形をした粒がぷかぷかと一粒ずつ浮いてくる。蜜が溶けた後のあられはもっちりとした食感に
冷たいサイダーとともにいただくと、浮き星のしゃりっとした食感をより感じられる
ちなみに、浮き星はもともと飲料菓子。浮き星の名前の由来でもあるぷかぷか浮かぶ様子は必見です。新潟県新潟市の「浮き星」、ごちそうさまでした。
ヒッコリースリートラベラーズ
所在地:新潟県新潟市中央区古町通3番町556
TEL:025-228-5739
営業:11:00〜16:00(日曜日は〜17:00)、月曜定休
※浮き星は「ヒッコリースリートラベラーズ」や新潟県内の各店をはじめ、全国で販売されています。オンラインショップでも購入可能。
https://h03tr.shop-pro.jp/
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この記事を書いた人
吉田友希 ライター