── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。
お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第13回は、岐阜県岐阜市で生まれた「起き上り最中」を紹介します。
ライター:吉田友希
CONTENTS
01| 惜しまれつつも一時姿を消した、ダルマの最中
凛々しいダルマさんの表情が愛らしい
「起き上り最中」は、1954年に岐阜市の柳ヶ瀬で誕生しました。戦争が終わり、保存料を大量に使ったお菓子が増えるなか、「子どもたちに安心してたっぷりと手頃に食べられるお菓子を」との想いで生まれたのが起き上り最中です。
見た人が笑顔になるようにと縁起のよいダルマさんの形が採用され、岐阜に所縁のある織田信長公が稲葉山城(現 金華山・岐阜城)を攻略した際に残した「我、正に起き上り最中也」の名言により、名づけられたのだそうです(※諸説あり)。
誕生以来、岐阜市民をはじめとする多くの人に愛されてきたお菓子でしたが、2022年2月に製造元だった「起き上り本舗」が閉店。一時、売り場から姿を消してしまいました。
1965年頃の起き上り本舗本店
画像提供:栄光堂ホールディングス株式会社
当時の岐阜・柳ヶ瀬の街並み
画像提供:栄光堂ホールディングス株式会社
岐阜市民に長く愛された「起き上り本舗」
画像提供:栄光堂ホールディングス株式会社
02| 岐阜・大垣の老舗に引き継がれ、2022年秋に復活
パッケージは復活時にリニューアルされた
起き上り最中は、2022年秋に復活を遂げました。製造を手掛けるのは、岐阜・大垣に工場を構える「栄光堂ファクトリー」。1877年に創業した「鈴木栄光堂(現 栄光堂ホールディングス)」グループであり、豊富な実績や技術のもと、洋菓子から和菓子までの製造を行っています。
栄光堂ホールディングスのブランド戦略室にお話を伺うと、同社と起き上り本舗とでは、引き継ぎ以前からご縁があったのだとか。さまざまなやり取りで意気投合するなかで、閉業時にご相談を受け、引き継ぎに至ったのだそうです。
起き上り本舗の閉店時には、店主の方や街のファンからの惜しむ声がありました。
「閉店は、製造に必要な大型機械の故障など設備面の問題だったため急に訪れました。本来であれば、関係者やファンのお客様に閉店セールやご挨拶を行うところ、まったくできず、心残りだったそうです。地元の方からは『岐阜の銘菓が食べられないなんて』『もっと頻繁に買いに行けばよかった』『閉店する前にクラウドファンディングをして客を頼ってほしかった。援助したかった』などの温かい言葉があったと聞いています。弊社に引き継がれることを知ったお客様には、とても喜んでいただけたそうです」。
包装紙を開けると、以前から使われていた起き上り本舗のダルマのロゴが出現
起き上り最中に対する引き継ぎ前の印象や現・製造者としての想いを伺うと、以下のように答えてくださいました。
「ダルマの形をした最中は全国を探してもユニークですので、縁起物の位置づけとしてポテンシャルのあるお菓子だと感じています。弊社代表の鈴木は、『歴史あるお菓子文化を絶やさずに継承していくこと』を信条としています。後継不足の菓子メーカーをM&Aで引き継がせていただいているのもその理由です。
今回、お店をたたみ灯火が消えそうになった起き上り最中を復活させたことで、後世まで、いつまでも全国のお客様に喜んでいただけるお菓子を目指したいと思っています」。
岐阜・大垣にある栄光堂ファクトリー
画像提供:栄光堂ホールディングス株式会社
03| 大事に引き継いだレシピで、素材にこだわってつくらている
餡がたっぷり! 余計なものが入っていないからこその繊細さを持ちあわせているが、それこそが安心の証
現在、起き上り最中は、栄光堂ファクトリーの大垣工場でつくられています。大量製造するラインに慣れている同社スタッフにとっては慣れない和菓子製造だったため、本格稼働までに時間を要したのだそうです。
画像提供:栄光堂ホールディングス株式会社
起き上り最中のひとつ目の特徴は、小豆の風味が生きた小倉あん。厳選された北海道産小豆が使われています。小豆のうまみを最大限引き出す製法にこだわってつくられているのがポイント。香り高い味わいが広がります。
画像提供:栄光堂ホールディングス株式会社
ふたつ目の特徴は、じゅわっととろける食感の最中のかわ。国産もち米を使用し、余計なものを入れずにつくられています。パリッとしていながら、ほろほろととろけるような食感です。
大垣工場内の生産ライン
画像提供:栄光堂ホールディングス株式会社
起き上り最中は、起き上り本舗のレシピを引き継いでつくられています。つくり手が変わってもなお、昔ながらの思い出の味をそのまま楽しめるというわけです。
04| 子どもから大人まで、見た目にも楽しめる最中
長さ約6cm。大人の片手、幼児の両手にコロンと収まるサイズ感
古くから親しまれる縁起物であるうえに、子ども向けの絵本にも登場するダルマさん。封を開ける前からパッケージを見て笑みがこぼれ、最中が出てくると「わ〜!」と思わず声をあげてしまいます。そして、上品な甘さで元気をチャージしてまたほっこり。「ただの和菓子ではなく、笑顔になれておいしい和菓子を」という、誕生時の想いが垣間見えるお菓子です。
ダルマさんの形は子どもにも受けがいい。ひたすら頭をなでなでしたあと、大きなお口でガブリ
岐阜の「起き上り最中」、ごちそうさまでした。
起き上り本舗
製造者:栄光堂ファクトリー株式会社
所在地:岐阜県大垣市浅草4-62
TEL:0584-87-3550
https://shop.okiagarihonpo.jp/
https://www.rakuten.ne.jp/gold/okiagarihonpo/
※起き上り最中は、以下の店舗を中心に販売されています。
岐阜市内:岐阜駅のベルマートキヨスク、道の駅
大垣市内:奥の細道むすびの地記念館内売店、栄光堂ファクトリーの直売店
オンラインショップでも購入可能。
05| 岐阜市のことならおまかせ! おすすめの建設会社
岐阜県関市で1957年に創業して以来、関・可児・岐阜で注文住宅の設計施工を行う。目指してきたのは、お客様が暮らしてから「建ててよかった」と思える家づくり。
この記事を書いた人
吉田友希 ライター