── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。
お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第16回は、青森県の県庁所在地である青森市の「金魚ねぶた」を紹介します。
ライター:吉田友希
01| 青森の魅力が詰まったまんまる羊羹
金魚ねぶたがたくさん描かれた華やかなパッケージ
金魚ねぶたは、お祭りの「金魚ねぶた」を模したりんご風味のひと口羊羹。「ラッセラー! ラッセラー!」といまにもかけ声が聞こえてきそうな見た目で、中身はりんご味。ねぶた祭りとりんご……、青森の魅力がぎゅっと詰まったお菓子です。
青森ねぶた祭りは、東北三大祭りとして、そして、国の重要無形民俗文化財として全国的に有名なお祭り。歌舞伎や歴史を題材としたさまざまなねぶたや、色とりどりの衣装をまとったハネトたちが街を練り歩く華やかなお祭りです。
2016年からは「熊本復興ねぶた」として、筆者の地元である熊本にも4年連続来ていただきました。ねぶたの美しさやダイナミックな動きは、周囲を熱狂の渦に巻き込みます。パワー溢れる青森ねぶた祭りは、筆者としても、とても思い入れのあるお祭りです。
そんなねぶた祭りに欠かせないのが金魚ねぶた。ねぶた祭りの期間になると、和紙でつくられた金魚ねぶたが街中にぶら下がります。
「金魚ねぶた 8個入」。箱を開けると可愛い金魚がたくさん!
その金魚ねぶたを模したお菓子が、ひと口羊羹の金魚ねぶた。思わず笑みがこぼれる可愛さです。
02| プルンと羊羹が出てくるおもしろさ。食べる過程も楽しめる
金魚の包みも芸術そのもの。食べるのがもったいないですが、開封するとこんな感じ。りんごの実のような、ひと口サイズの羊羹が出てきます。
金魚の形は、ひとつずつ丁寧に手作業でつくられる
食べ方は簡単です。爪楊枝を刺すと、一瞬でプルン! と皮が剥けて羊羹が出てきます。羊羹に皮が付着することなくきれいに剥がれるので、そのまま爪楊枝でいただきます。
ツヤツヤのきれいな羊羹。ひと口で食べるのにちょうどいいサイズ感で、頬張りながらおいしくいただきました。りんごは、青森県産の紅玉りんごが使われています。甘すぎず、すっきりとした味わいで、りんごの風味も存分に楽しめました。
りんご風味の味はもちろん、中身を出す過程が子どもにも大好評
03| 手掛けるのは、165年にわたり愛される飴屋さん
青森市内にある上ボシ武内製飴所の外観
画像提供:有限会社 上ボシ武内製飴所
金魚ねぶたをつくっているのは、1858年に創業した「上ボシ武内製飴所」。上ボシ武内製飴所は、伝統の津軽飴や故郷の素材を生かした創作菓子の製造を行っています。1858年というと、江戸時代。青森の伝統の味であり、青森県民の思い出の味を、長きにわたって守り続けている老舗です。
社長によって津軽飴がつくられる様子
画像提供:有限会社 上ボシ武内製飴所
津軽飴は、昔、青森県内のどの家にも常備されていたくらい、親しまれている食べ物です。良質なでん粉を使用し、添加物を使わずにつくられる津軽飴は、やさしくて深みのある味わい。砂糖の甘さとは一線を画す天然の甘味料は、そのままはもちろん、調味料や料理の隠し味としても重宝されています。
津軽飴の缶には、名人ねぶた師のねぶたが印刷されている
画像提供:有限会社 上ボシ武内製飴所
04| 青森ねぶた祭りのパワーが込められたお土産
金魚ねぶたは、上ボシ武内製飴所が創作菓子の開発を行うなかで誕生しました。いまの可愛い形状にまとまるまでに、デザイナーと何度もやり取りを重ねたのだとか。金魚ねぶた一つひとつが可愛いだけでなく、箱に詰め並べることでねぶた祭りの賑やかさを表現しているのだそうです。
地域に根差し、故郷のお菓子をつくり続ける上ボシ武内製飴所。青森の魅力を伺うと、こんな風に教えてくださいました。
「青森の人にとって、ねぶた祭りは年に一度の大きなお祭りです。青森市にとっては、このお祭りのおかげで一年がまわっているといっても過言ではないくらい大きなイベントです。また、弊社のようなお土産をつくるものにとっては、このねぶた祭りは、日本中の方たちに青森を知ってもらう絶好の機会です。
弊社にはお菓子をつくり続けて165年という歴史がありますが、夏のねぶた祭りでの爆発が青森の人たちの生きる活力になっていると思います」。
過去には金魚すくいの形にして販売されたことも。可愛い……!
画像提供:有限会社 上ボシ武内製飴所
青森の「金魚ねぶた」、ごちそうさまでした。
上ボシ武内製飴所
所在地:青森県青森市本町5-1-20
TEL:017-734-1834
営業:8:00~17:00、土日祝日休
https://www.jyoboshi.com/
※オンラインショップでも購入可能。
この記事を書いた人
吉田友希 ライター