山形の「山形さくらんぼマドレーヌ」
画像提供:株式会社 清川屋
── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。
お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第32回は、山形県の「山形さくらんぼマドレーヌ」を紹介します。
ライター:吉田友希
CONTENTS
01| “県産フルーツの眠った可能性”を引き出したいとの想いで開発
いちごやバナナなどと同様、人気のフルーツであるにも関わらず、なかなかお目にかかれない「さくらんぼ」。可愛らしい見た目と認知度の高さから、雑貨などのモチーフによく採用されていますが、お菓子のフレーバーとして見かける機会はそんなに多くないかもしれません。
そんななか見つけたのが、「山形さくらんぼマドレーヌ」。なかなか珍しい、
さくらんぼのお菓子です。
「山形さくらんぼマドレーヌ」は、山形県でさまざまな特産品を手掛ける「清川屋」から販売されています。
さくらんぼの果汁を混ぜ込んで焼き上げたマドレーヌの上に、さくらんぼチョコレートが掛かった、さくらんぼづくしのお菓子です。山形県産「佐藤錦」の果汁が使われているともあり、期待感が高まります。
さくらんぼの国内生産量の約8割を占めている山形県。なかでも最も多くつくられているブランド品種は「佐藤錦」である。甘味と酸味のバランスにすぐれており、宝石のような美しさも魅力
画像提供:株式会社 清川屋
「山形さくらんぼマドレーヌ」が発売されたのは、2018年10月。県産フルーツの眠った可能性を引き出すべく、開発がスタートしました。当時のことを、清川屋のご担当の方はこう振り返ります。
「当社の自社工場の製造ラインでは、『だだちゃ豆』や『つや姫』の米粉など、県産の素材を生かした商品を手掛けてきました。しかし、山形は“フルーツ王国”でありながら、県産フルーツを主役にした自社工場のお菓子は一つもありませんでした。
フルーツを使った商品開発を進めるにあたり、真っ先に浮かんだのが、山形のさくらんぼのなかでも代表的な品種である『佐藤錦』です。
構想を進めるなかで果物加工メーカーとつながり、100%佐藤錦果汁を入手できることが判明しました。『さくらんぼの風味を感じられること』『日持ちがよく、おいしいこと』などを追求し、マドレーヌと佐藤錦を合わせることを思いつきました」。
「山形さくらんぼマドレーヌ」製造の様子。この後のチョコレート掛けは、一つずつ手作業なんだそう
画像提供:株式会社 清川屋
「山形さくらんぼマドレーヌ」の鍵になっているのは、100%佐藤錦果汁です。開発時には、ジャムや果肉を包み込む試作も行ったそう。しかし、食感や味のバランスに納得がいかず、断念。最終的に、果汁をギリギリまで生地に加えた絶妙なバランスを保つ形に完成しました。
さらに、風味をプラスするために、自社ブレンドのさくらんぼチョコレートでコーティング。しっとりとした生地とチョコレートのまろやかさ、その両方から山形のさくらんぼを満喫できる自信作が誕生したのだそうです。
02| ぷっくりとした形には理由あり!
袋を開けてみると、さっそく、ふわっとさくらんぼの香りを感じます。いただいてみると、さくらんぼの上品な風味が口いっぱいに広がります。しっとりとしたやさしい口当たりも至福です。
生地は、ほんのりピンク色。上部の特徴的なふくらみには秘密があるようで……。
「伝統的なマドレーヌは、表面の中央におへそのようなふくらみがあるのが特徴です。おへそのないマドレーヌも多く販売しているなかで、山形さくらんぼマドレーヌの場合は、この形がベストでした。この形になると、外側がほどよく焼き上がり、外側の香ばしさと内側のしっとり感のバランスがちょうどいいんです」。
おすすめの食べ方は、アールグレイやベルガモットのような華やかな香りの紅茶と一緒に食べること。「山形さくらんぼマドレーヌ」のフルーティな香りが際立ち、より楽しめるのだそうです。
03| 創業は350年以上前。地域価値を磨くことを使命とする「清川屋」
明治時代の清川屋
画像提供:株式会社 清川屋
清川屋の創業は、1668(寛文8)年。茶屋と旅籠屋(現代でいう旅館)からスタートし、人力車の運営や日用雑貨店、土産品専門店など、形を変えながらも、一貫して地域に密着した事業を行ってきました。
現在は、店舗・通販・工場を自社で持っている強みを生かし、農産物や加工品に地域の魅力をのせて、全国に発信しています。ミッションは、「地域価値を磨き上げ、共に幸せに生きる」こと。地元が好きなメンバーが集まり、地域貢献につなげるべく、尽力しています。
鶴岡駅前すぐの場所に位置する鶴岡本店
画像提供:株式会社 清川屋
店舗は、山形県内に10店舗、宮城県内に2店舗。青果やお菓子を取り扱う「清川屋」や、県産品ショップ&カフェ「0035」など、複数のブランドを運営しています。
04| 山形の食文化は奥深い。豊かな特産品文化をこれからも
画像提供:株式会社 清川屋
清川屋は自らを「特産品文化創造企業」とし、“地域の特産物に地域の文化と贈る真心を込めて、新しい価値を創造する企業”と定義。地元の生産者やつくり手と密接に関わりながら、情報を集め、言語化することで、特産品の持つ価値を最大化しています。最終的に、「お客様に豊かな特産品文化をお届けすること」をとおして、地域の価値向上に貢献しているのです。
最後に、山形への想いを伺うと、こう答えてくださいました。
「山形は、四季折々の自然や歴史、食文化が豊かに調和した魅力溢れる街です。とくに、山形の食は、知れば知るほど奥深く、驚きと感動と発見があります。多くの方に山形の素晴らしさを知っていただき、山形のことをもっと好きになってもらえたらと考えています」。
山形の「山形さくらんぼマドレーヌ」、ごちそうさまでした。
清川屋 鶴岡本店
所在地:住所: 山形県鶴岡市末広町5-1 マリカ西館1F(鶴岡駅前すぐ)
TEL:0235-22-7111
営業時間:9:00~18:00、休業日なし
https://www.kiyokawaya.com/
※清川屋は山形県内に10店舗、宮城県内に2店舗あり。「山形さくらんぼマドレーヌ」は、オンラインショップでも購入可能。
この記事を書いた人
吉田友希 ライター