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2021.3.10

【マンション防災士に聞く】Vol.3 災害時の食事は“主食のローリングストック”で備えよう

マンションに住む人にとっての防災を考える本シリーズ。在宅避難をするにあたって心配なのは、やはり食事ですよね。今回は、10日間以上の食事を常備しておく方法や、効率のいい調理法について、マンション防災士の釜石徹さんにお話を伺っていきます。

ライター

ライター : 殿木真美子

在宅避難における食事の備えのポイントは4つ

これまで、マンション暮らしの人は在宅避難が最適なこと、またその際に家の中の安全度をチェックするポイントについて、お話を伺ってきました。今回は、食事の備えについてです。食事の備えとひと口に言っても、どんなものをどれくらい用意すればいいのか、見当もつきませんよね。マンション防災士の釜石徹さんが挙げる備蓄のポイントは4つです。

  1. 備蓄日数は10日間以上を目指す
  2. 災害時しか食べない食料は備蓄しない
  3. 主食のローリングストックを行う
  4. ポリ袋調理で毎日温かい食事をとる

えーっ。災害用の非常食を備蓄するんじゃないの? しかも10日以上なんて!何となく難しそうな予感がしますが、そんなことはないと釜石さんは言います。「私が提案する方法なら、お金もかからず楽しく備えることができますよ」。

ポイント① ―備蓄日数は10日間以上を目指す―

▲マンションの備蓄倉庫では、2~3日分の備蓄が限界だという

まず、なぜ10日分以上も必要なのか、釜石さんに聞きました。「東京湾沿岸部を震源とした直下地震を想定しているからです。東京湾沿岸には東京電力の火力発電所が集中しており、震度6弱以上の場合に多くの火力発電所が装置損傷するとされています。そうなると復旧まで時間がかかり、停電期間が1週間以上になる可能性が高い。10日以上の備蓄は決して想定外ではないのです」。

では、管理組合で共同備蓄をしている場合、10日分以上も想定しているものでしょうか? 「共同備蓄していたとしてもほとんどが全住民の2~3日分で、7日分すら見たことがありませんね。しかし、10日分以上も備蓄するには管理組合の負担が大きすぎます。特に問題なのが、味の好みやアレルギーなどの個人事情、賞味期限切れの大量に余った非常食の処分、買い替えにかかる数十万~数百万円もの経費です」と釜石さんは言います。

確かに、非常食が好きじゃないとか、小さい子どもや介護用に軟らかい食事が必要とか、それぞれが言い出したらキリがありません。「共同備蓄より個人備蓄」、「自分の好きなものを自分が備える」が正解かもしれません。

ポイント② ―災害時しか食べない食料は備蓄しない―

ポイントの2つ目は「災害時にしか食べない食料は備蓄しない」でした。備蓄食料というと、災害用のコーナーに売っている非常食、というイメージがありますが……。「災害用の非常食を大量に買うのはお勧めしません。お金はかかるし保管場所の確保や賞味期限の管理など面倒なことが多いからです」と釜石さん。

▲災害時に調理をするにあたって、カセットコンロはぜひ備えておきたい

確かに、非常食が賞味期限に近づいたらそれらを一気に食べるか捨てるかしなければならず、定期的に買い替えをする必要もある、となると少々、いやかなり面倒ではあります。「私が提唱する方法では、カセットコンロを使って1日3回温かい食事をとることを目指します。非常食が口に合わない、という方でもおいしくいただけるのでお勧めですよ」と釜石さんは話します。

ポイント③ ―主食のローリングストックを行う―

それでは、ポイント3つめの主食のローリングストックとはどんなものなのでしょうか? 「一般的にいわれているローリングストックとは、備蓄している食料を使った分だけ買い足していく方法です。私の提案する“主食のローリングストック”は、家にある主食の量が10日分の必要量近くまで減ってきたら早めに買い足すという方法。まずは、下の図を見てください」。

「朝食にホットケーキミックス粉を使って蒸しパンをつくり、昼はパスタ、夜はご飯を炊くとします。1日に使用する一人分の食材の必要量がわかったら、それに10をかけて10日分にし、さらに家族の人数をかければ一家に必要な主食の最低限の量が出ます。この量が確保できるように早めに買い足すことを繰り返せば、保管場所をそれほど取らずに効率よく常に10日分以上の主食の備蓄をすることができるんです」と釜石さん。

では、おかずは? 「『今、冷蔵庫にある食材で10日分のメニューをつくってみてください』とお願いすると、主婦の方であれば3~5日分のメニューを作成してくれます。つまり、常にそれくらいの備蓄がどこの家庭にもあるわけです。そこに缶詰やレトルト食品を追加すれば、10日分の食事メニューは無理なく組むことができます。一人では考えつかなくても数人で考えるとおもしろいようにメニューが増えていきますよ」。なるほど、それなら誰にでもできそうな気がしますね。

ポイント④ ―ポリ袋調理で毎日温かい食事をとる―

▲ポリ袋調理で一度にさまざまな料理ができる

ポイントの4つ目、ポリ袋調理法とはどんなものなのでしょう? 「カセットコンロさえあれば、普段調理に慣れている人ならいくらでも温かい料理ができるのですが、一度にたくさんの調理を平行してできる点や洗い物が出にくい点などから、私はポリ袋調理法をお勧めしています」と釜石さんは言います。

ポリ袋調理法に使うポリ袋は、「高密度ポリエチレン」という材質でできたもので、融点が110度以上あるため湯煎するのに適しています。スーパーでもらえるポリ袋や厚手のジップロックなどは、融点が100度以下なので避けるのが無難です。

例えば、お米150gと水200ccをポリ袋に入れ、中の空気を抜いて袋の上の方をしっかりと輪ゴムで縛ったら、沸騰したお湯に30分入れて湯煎をするだけで一人一回分のご飯が炊けます。その時に別の袋で野菜を蒸したり、肉や魚を煮汁につけた袋を一緒に湯煎したりすることで、蒸し物や煮物など同時に複数の調理ができるのもいいところです。ただ、この方法にはカセットコンロと高密度ポリエチレンのポリ袋が欠かせませんので、ぜひご家庭に備えてください。

まとめ
主食のローリングストックとポリ袋調理。ちょっとやってみたくなりましたね。マンションの防災訓練の時に、みんなでポリ袋調理を試してみるのもいいかもしれません。また、「普段料理をしている人が帰宅できない、またはケガをしてしまった場合に備えて、家族全員が料理できるようになることが大事」と釜石さん。簡単な料理でも、みんなができるようになれば、家庭の防災力は大幅にアップすることになります。




お話を伺った人 釜石徹さん
災害対策研究会主任研究員兼事務局長、マンション防災士。マンション特有の防災対策の研究を長年続け、マンション居住者は災害時に自宅にとどまる選択を提唱。著書に『マンション防災の新常識』(合同フォレスト刊)がある。