新型コロナウイルスの蔓延で変わってきた住宅事情。特に影響が大きかったのは、出勤や通学が制限されたことによる家での過ごし方ではないでしょうか。自宅で仕事や勉強をすることを余儀なくされ、ワークスペースの確保に困惑した人も多かったと思います。今回は、コロナ禍でワークスペースがどう変化したかを見てみましょう。
ライター: 殿木真美子
CONTENTS
01| 在宅ワークで、ワークスペースの確保が課題に
▲三菱地所「第二回就業者アンケート」より作成
新型コロナウイルスによって最も影響を受けたもののひとつが「在宅ワークの推進」と「学校のオンライン授業」による住宅環境ではないでしょうか。
三菱地所の15,000人を対象にした調査では、コロナ禍前にはほとんどの人がオフィス勤務でしたが、現在50%以上在宅ワークを実施している人が約7割という結果になっています。学校も一時はほとんどがオンラインになり、都内の大学などでは今でもオンライン授業がメインとなっているところも多いようです。
家族のうち、何人かが自宅で仕事や勉強をしていると、部屋の出入りや音に気を使ったり、集中できなかったりと、何かと支障が出てきます。家時間が増え、ストレスを抱えている人も多いことでしょう。これまでそのような状況を想定していなかっただけに、「ワークスペースをどう創出するか」はコロナ禍の中で大きな課題となりました。
02| 住宅メーカーはワークスペース付き住宅を次々と発表
▲旭化成ホームズ「ワンフィット」セミオープンタイプのワークスペース
では、在宅ワークをしている人たちは家の中のどんな場所をワークスペースとしているのでしょうか?
旭化成ホームズくらしノベーション研究所による「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」調査報告では、在宅ワークで最も使う場所として、夫・LD(ダイニングテーブル+その他のLD)4割:個室(共用個室+専用個室)6割だったのに対して、妻はLD派が75%にも達したそうです。
LDと個室では、それぞれ異なるメリットがあります。仕事の合間に調理や洗濯などの家事を済ませられるのがLD派のメリット。個室では落ち着いて仕事に集中することができます。それぞれ、仕事や家事の都合に合わせてLDを選ぶか、個室を選ぶかを選択しているようです。
これらのニーズを受けて、住宅メーカーも新しい商品を続々と発表しています。そのほとんどにワークスペースが見られるのが特徴です。例えば、旭化成ホームズが提案する「onefitto(ワンフィット)」という商品には、2種類のワークスペースが。一つは引き戸や内窓で家族とつながるセミオープンタイプ、もう一つはオンオフの切り替えができるベランダに隣接したクローズドタイプのワークスペースです。どちらの部屋も、仕事や勉強だけでなく趣味など多目的に利用できそうですね。
▲旭化成ホームズ「ワンフィット」のクローズドワークスペース
03| マンションにもニューノーマルに対応した工夫が登場
戸建てのハウスメーカーがコロナ対応住宅を発表する一方で、マンションも負けてはいません。
そもそも、マンションの利点のひとつに共用施設があり、中にはコロナ以前から、ラウンジや特別に設けたWi-fi完備のスペースで仕事や勉強ができるようになっているマンションもありました。コロナ禍で発売されたマンションに関しては、共用部に入居者専用のシェアオフィスルームを設けている物件が散見され、中には防音ブースや会議室を備え、LANケーブルや大型モニター、複合機まで完備した施設もあるようです。専有部分も、これまでサービスルーム(納戸)扱いだった部屋をワークスペースとするなど、工夫が凝らされるように。
04| 中古マンションを購入し、リノベーションする人も
また、中古マンションを購入してリノベーション、という選択をする人も増えています。リノベーションのよい点は、既存の壁などを一度すべて取り払ってスケルトンの状態にしてから、自分たちにピッタリの間取りをデザイナーとともにつくり上げていくところにあり、まさに「オーダーメイド」の家づくりが可能なところ。
物件探しからワンストップでリノベーションをサポートしてくれる「リノベる。」のデザイナー、藏本恭之さんにお話を伺うと、リノベでワークスペースを要望する人が「特別に増えている」とのことです。
▲リノベる表参道ショールーム。寝室にワークスペース用のカウンターを設けている
05| リノベーションで家族にピッタリの空間を手に入れる!
▲広々とした土間空間にテーブルを置いた藏本さん邸のワークスペース
「コロナ以降、10組中6、7組はワークスペースを設置していますね」と藏本さん。そもそも中古マンション+リノベを考えたきっかけが、賃貸で在宅ワークをやっていて限界を感じたからという方も多いそうです。
採用されたのは、リビングと一体となったオープンタイプのワークスペースも多いとのことですが、こもった空間にしたいとの要望でWICの中に小さなデスクカウンターを設けるケースなどもあります。
ちなみに、藏本さんのご自宅もコロナ前にリノベーションをしているそうで、12畳ほどもある広々とした玄関の土間空間が特徴的な家。現在在宅ワークも多いという藏本さんですが、その土間空間にテーブルとイスを置いて仕事をしているそう。
「元々は趣味のキャンプ道具を置いたりDIYをしたりしていましたが、ソファを置いて寛ぐこともでき、何にでもなるフリースペースとして使える空間です。思いがけず在宅ワークとなったので、重宝しています」と藏本さん。
「リノベーションは、自分たちのライフスタイルに合わせて間取りをつくっていけるところが魅力。機能を決めない自由な空間をつくっておけば、今回のような場合でも、将来家族構成が変わってもフレキシブルに使えるのでおすすめですよ」と教えてくれました。
06| まとめ
いかがでしたか? 住宅メーカー、マンション、リノベーションと、それぞれのコロナ禍でのワークスペース事情を見てきました。これから家を購入しようと考えている方、自宅をリノベーションしてワークスペースをつくろうと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
取材協力:リノベる株式会社
“したい暮らし”に合わせて住まいをつくる中古住宅のワンストップリノベーションサービスはじめとしたリノベーション、設計・デザインなどの事業を手がける。
この記事を書いた人
殿木真美子 ライター