公開日: 2022.08.23 最終更新日: 2023.10.26

【内覧会レポート】可愛いだけじゃない、アリスの奇妙な世界へ「特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―」

【内覧会レポート】可愛いだけじゃない、アリスの奇妙な世界へ「特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―」

展覧会の様子

2022年7月16日(土)より、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて「特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―」が開催中。19世紀に誕生してから現在まで、アート、映画、音楽、ファッション、演劇、写真など、あらゆるジャンルで表現されてきた『不思議の国のアリス』の世界。小さな頃も、大人になってからも、不思議なアリスワールドに魅了されてきた人は多いと思います。現在六本木で開催されている展覧会は、「アリス」の成り立ちとともに、アリスが世界に与えた影響とその広がりを紹介するもの。その見どころを、内覧会の様子を交えながらご紹介します。

編集部:りょう子

編集部:りょう子

01| 約300点を紹介、かつてない大規模なアリス展


トランプに襲われるアリス、『不思議の国のアリス』より、ジョン・テニエル画、1898~1900年 © Victoria and Albert Museum, London

六本木で開催中の「特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―」は、2021年に英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)からスタートした世界巡回展の日本展。「アリス」といえば誰もが思い浮かべるジョン・テニエルの挿絵から、ディズニー映画のアニメーションセル、ティム・バートン監督による映画『アリス・イン・ワンダーランド』、「アリス」に影響を受けたサルバドール・ダリの作品、バレエの舞台衣装、ヴィヴィアン・ウエストウッドらによるファッションなど、「アリス」にまつわる作品や資料約300点が集まっています。展覧会は5つの章で構成され、すべてを巡ることで、「アリス」が誕生した背景から与えた影響までを知ることができます。

<展覧会の構成>
第1章 アリスの誕生
第2章 映画になったアリス
第3章 新たなアリス像
第4章 舞台になったアリス
第5章 アリスになる

展覧会の様子 展覧会の様子

02| 展覧会のポイント

①アリスが生まれた背景に触れる

『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』。ふたつの物語に登場する少女「アリス」のモデルはアリス・リドゥルという少女で、作者であるルイス・キャロルの知人の娘がモデルとなりました。物語の作者であるルイス・キャロルの本名はチャールズ・ラトウィッチ・ドジソン。彼は数学者で、ルイス・キャロルという名前は、本名をラテン語にしたうえで並び替え、さらに英語に戻したもの。ふたつの「アリス」の物語は、ドジソンがリドゥル家の娘たちに語った即興から生まれました。そんな誕生の物語は、「アリス」好きならば一度は耳にしたことがあるかと思います。

展覧会入り口。アリスが大きな穴に落ちて不思議の国へ入っていったように、会場を訪れる人も不思議の国へ入っていけるのでしょうか? 展覧会入り口。アリスが大きな穴に落ちて不思議の国へ入っていったように、会場を訪れる人も不思議の国へ入っていけるのでしょうか?

展覧会の第1章「アリスの誕生」では、ドジソンによる手書きの構想、挿絵画家ジョン・テニエルの原画をはじめ、物語を生んだヴィクトリア朝の英国の時代背景を紹介。大人になったアリス・リドゥルの写真も展示されていて、見入ってしまいます。原画、写真、ヴィクトリア朝を彩ったものたち…。ゆっくりと見て歩くことで、「アリス」がどのような世界のなかで生まれたか、時代の空気のようなものに少し触れられる気がします。


ルイス・キャロルことチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン、ドジソン家のアルバムより、19世紀 © Victoria and Albert Museum, London


「アリス」のモデルとなったアリス・リドゥル
聖アグネスの姿をしたアリス・リドゥル、ジュリア・マーガレット・キャメロン撮影、1872年9月 © Victoria and Albert Museum, London

第1章の会場では、ドジソンにインスピレーションを与えたアイテムも多数展示。ヴィクトリア朝のイギリスといえば、まさに繁栄の絶頂期。世界最初の万国博覧会である「ロンドン万国博覧会」が開催された時代で、さまざまなものが生まれました。例えば、近頃日本でも人気のアフタヌーン・ティー。1830年代にベッドフォード侯爵夫人によってアフタヌーン・ティーの概念が導入されたそうです。ドジソンはこのお茶会の人気と奇妙にも思えるエチケットに着目し「狂ったお茶会」の場面を創作したそう。

ティーポット「愛は家庭から」
W・メイソン社 ティーポット「愛は家庭から」
W・メイソン社


マッド・ハッターのお茶会でのアリス、『不思議の国のアリス』初刊行版本より、ジョン・テニエル画、1866年、V&A内ナショナル・アート図書館所蔵 © Victoria and Albert Museum, London

展示されている資料には、完璧主義者であったと伝わるドジソンの顔が見うかがえるものも。例えば、このドジソンによる手書きの資料。挿絵に関する案がこれでもかと記入されています。とても細かな性格が見てとれます。

『不思議の国のアリス』の挿絵に関する案
ルイス・キャロル(チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン) 『不思議の国のアリス』の挿絵に関する案
ルイス・キャロル(チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン)

物語に登場するドードー鳥の複合骨格の展示もあり、多くの人が足をとめてじっくりと見ていました。

ドードー鳥の複合骨格。ドードー鳥はドジソン自身を表しているとか ドードー鳥の複合骨格。ドードー鳥はドジソン自身を表しているとか

②多くのアーティストへの影響を感じる

「アリス」の物語は、誕生した後、瞬く間に世界へと広がり、170以上の国で翻訳されました。本だけではなく、映画やアニメーションにもなり、その都度、物語への新たな解釈が生まれていきました。作品、時代によって別の「アリス」が存在し、多様な「アリス」に触れることで、見る側である私たちのなかにも、それぞれの「アリス」が育っていきます。

日本のアーティストにも大きな影響を与えました。

展覧会の様子 展覧会の様子

『よるくま』の作者として知られる酒井駒子さんによる「アリス」。


Alice、酒井駒子、2013年、個人蔵

ひとめ見たら忘れられない、妖艶な雰囲気をもつ絵を描く金子國義さんの「アリス」も。


アリスの証言、金子國義、1999年、個人蔵

絵画のみならず、映像の世界でも「アリス」は表現されていきます。会場では1951年に公開されたディズニー映画『ふしぎの国のアリス』や、チェコのアニメ作家、ヤン・シュバンクマイエルの映画『アリス』も観ることができます。

展覧会の様子
左から「せいうちのセル画」、「アリスとしゃべる花たちのセル画」 1951年 ブライアン・シブリー&デイヴィッド・ウィークス・コレクション蔵
展覧会の様子
左から「せいうちのセル画」、「アリスとしゃべる花たちのセル画」 1951年 ブライアン・シブリー&デイヴィッド・ウィークス・コレクション蔵

舞台やファッションの世界にも「アリス」は飛び出していきました。ズラリと並ぶ衣装を眺めていると、絵画や絵画や映像とはまた別の「アリス」の世界の力強さを感じます。

展覧会の様子 展覧会の様子

こちらはバレエの公演のハートのクイーンの衣装です。迫力…!


ハートのクイーンを演じるゼナイダ・ヤノウスキー、英国ロイヤル・バレエ団公演『不思議の国のアリス』より、2011年 © ROH, Johan Persson, 2011. Sets and costumes by Bob Crowley

展覧会の様子 展覧会の様子

展覧会の様子。トム・ブラウンのオートクチュール 展覧会の様子。トム・ブラウンのオートクチュール

展覧会の様子。ヴィクター&ロルフのオートクチュール 展覧会の様子。ヴィクター&ロルフのオートクチュール

③インスタレーションでアリスの世界に没入する

会場には感覚的に「アリス」の世界を楽しむ工夫もたくさん。日本展の元となるロンドン展の演出は、著名な舞台デザイナーであるトム・パイパーによるもの。会場の随所にどっぷりと世界観に浸かれる工夫があります。

ニタニタ笑うチェシャ猫。時間の経過とともに模様が変わっていきます。

展覧会の様子 展覧会の様子

こちらのアリスは首が伸びます。

展覧会の様子 展覧会の様子

お茶会の風景のプロジェクションマッピングです。食器が様々な模様に変化します。

展覧会の様子 展覧会の様子

03| 気になるミュージアムグッズは?

展覧会を訪れたら必ずチェックしたいミュージアムグッズ。「アリス」ならではの可愛いアイテムが並ぶはずです。

いくつかピックアップしてご紹介します。

こちらは「チェシャ猫のぬいぐるみ」(3,200円)。ジョン・テニエルの原画を忠実に再現しているぬいぐるみです。

左端の帽子はマッドハッタ―をイメージした「MAD HUTTER シルクハット」(154,000円)。オリジナリティあふれる帽子を作り続ける「CA4LA」の表参道店アトリエが、展覧会のためにオールハンドメイドで制作しています。

中央はカチューシャ、右端はリバーシブルハット 中央はカチューシャ、右端はリバーシブルハット

ミュージアムグッズの定番、ポストカードや缶バッジ、フィギュアも。

「活版印刷ポストカード」(各180円) 「活版印刷ポストカード」(各180円)

「缶バッジ」(各660円) 「缶バッジ」(各660円)

海洋堂による限定特装版フィギュア「人形の国のアリス」(各550円) 海洋堂による限定特装版フィギュア「人形の国のアリス」(各550円)

テニエルの挿絵を用いたものはもちろん、ディズニーアニメのアイテムもたくさん。グッズにも多様な「アリス」が展開されているのです。ぜひ、実際に足を運んで、手に取ってみてください。

04| 展覧会情報はこちら

展覧会情報
『特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―』
会期:2022年7月16日(土)~2022年10月10日(月・祝)
開館時間:10:00~20:00(月・火・水曜は18:00まで)※9/19、10/10は20:00まで
休館日:会期中無休 ※事前予約制
会場:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52F

りょう子

この記事を書いた人

りょう子 編集部

内覧会レポートの記事一覧

暮らしのコラムの最新記事

暮らしのコラムカテゴリー