── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。
お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第7回は、宮城県の県庁所在地である仙台市の「シーラカンス モナカ」を紹介します。
ライター:吉田友希
CONTENTS
01| 和×洋。フランスのイズニーバターがモナカのなかに!
「シーラカンス モナカ」
「シーラカンス モナカ」は、モナカのなかになめらかな餡とフランスのイズニーバターが入ったお菓子です。
「シーラカンス モナカ」の中身。バターがたっぷりサンドされている
フランスのイズニーバターとは、世界各国で高く評価されているイズニー社がつくるバターのこと。良質な牧草を食べて育った牛の生乳からつくられる発酵バターは、濃厚で上品な味わいです。シーラカンス モナカには、そんなイズニーバターがたっぷり贅沢に使われています。
シーラカンス モナカのもうひとつの特徴は、塩気を感じられること。シーラカンス モナカは“ゲランド塩を強めに効かせた”モナカで、食べたときにしっかりと塩気を感じます。餡の甘みと塩気のバランスが絶妙で、何度でも食べたくなる唯一無二の味わいです。
トースターで1分弱加熱したあとのシーラカンス モナカ。バターがトロリ
寒い季節は「予熱したオーブンやトースターで30秒ほど温める」のがおすすめということだったのでやってみました。想像するだけでもおいしそうですが、これが本当に絶品です!
包みを開けてそのまま食べるのもおいしいのですが、温めることでバターがトロトロ、餡はほんのり温かくなって、皮はサクサクに。和菓子であり洋菓子でもあるシーラカンス モナカの魅力がより引き立つ食べ方だと感じました。
02| モナカの製造を担当するのは、宮城県丸森町の老舗菓子店「榮泉堂」
サックリ香ばしいモナカがおいしい
シーラカンス モナカの包みを開けるとまず目に入るのが、モナカに描かれた「榮泉堂」の文字。
……?
整理しましょう。
シーラカンス モナカを販売しているのは「maison coelacanthe(メゾン シーラカンス)」。仙台市内に3店舗を構え、フランス菓子を販売している「kazunori ikeda individuel」の新形態店です。シェフ・パティシエは、後に紹介する池田一紀さんです。
そして、シーラカンス モナカに欠かせないサクサクのモナカの皮をはじめ、製造を行っているのは「榮泉堂」さん。宮城県丸森町の人気和洋菓子店であり、池田一紀さんのご実家なんだそうです。
03| シーラカンスに込められた想い
メゾン シーラカンスは、生きる化石とも表現されるシーラカンスがモチーフになっている
メゾン シーラカンスは、フランス菓子をメインで扱うkazunori ikedaの店舗とは違う世界観のお店として2021年8月にオープンしました。
kazunori ikedaでは、刺激的で華やかなケーキをメインで取り扱う一方で、メゾンシーラカンスに並ぶのは、世界中で昔から愛される素朴でありながらおいしいお菓子たち。ポルトガルのエッグタルト「パステル・デ・ナタ」やフランスの国民的お菓子「フラン」など、同店でしか取扱いのないお菓子も販売されています。
軽食もあり、メゾン シーラカンスならではの世界観が楽しめる
画像提供:kazunori ikeda individuel
メゾン シーラカンスに込められているのは、「時代を越えて、古きよきお菓子を伝えていきたい」という想い。他店舗とは違うラインアップがその想いをよく表しています。そして、お店のシンボルとして選ばれたのが、3億5000万年前から変わらない姿で生き続けている深海魚「シーラカンス」というわけです。
シーラカンスの名前がそのままついたシーラカンス モナカは、メゾンシーラカンスの看板商品。明治26年に創業した「榮泉堂」のモナカに、kazunori ikedaならではのエッセンスが加えられ、シーラカンス モナカとして人気を博しています。
04| 東日本大震災を機にパリから故郷・仙台へ
メゾン シーラカンス店内のショーケース。美しいケーキがずらり
画像提供:kazunori ikeda individuel
シェフ・パティシエの池田一紀さんは、宮城県仙台市出身です。24歳で渡仏し、パリ最古のパティスリーや「pâtisserie Sadaharu AOKI paris」のサダハル アオキ氏のもとで長年修行して独立。その後、パリでの開業を目指して準備に奔走する日々を送っていたところ、東日本大震災が起きました。
お話を伺ったところ、故郷で人々が困っている状況を目の当たりにしたときに、考え方が変わったのだとか。「故郷で僕のお菓子を食べてもらおう、パリはその次だ」という考えのもと、帰郷の選択をされたのだそうです。
池田さんが生まれ育った宮城・仙台は杜の都という雅称で呼ばれる緑溢れる地方都市。池田さん曰く、洋菓子業界には「地方都市では本格的なフランス菓子は受け入れられない、売れない」というジンクスがあるのだそうです。「パリで表現したかったことをそのまま故郷の仙台で挑戦したい」と、ジンクスを打ち破るべく一店舗目がオープンしたのが2011年12月のこと。現在では、イケダ流のフランス菓子が市内外から愛され、杜の都に根づいています。
今回紹介したシーラカンス モナカも、池田さんが故郷への想いから生み出した、時代を越えて伝えていきたいお菓子のひとつなのです。宮城・仙台の「シーラカンス モナカ」、ごちそうさまでした。
画像提供:kazunori ikeda individuel
maison coelacanthe(メゾン シーラカンス)
所在地:宮城県仙台市青葉区一番町2-2-3 1F
TEL:022-748-4061
営業:平日 11:00〜19:00、土日祝 10:00〜19:00、元日休
https://www.instagram.com/maison_coelacanthe/
05| 宮城県仙台市のことならおまかせ! おすすめの不動産会社
この記事を書いた人
吉田友希 ライター