── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。
お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第17回は、岡山県の県庁所在地である岡山市の「串吉備団子」を紹介します。
ライター:吉田友希
01| 「レトロ」とは違う、素敵なパッケージの吉備団子
岡山のお土産といえば、きびだんごをイメージする方が多いかもしれません。桃から生まれた男の子が鬼退治をする、あの「ももたろう」が、育ててもらったおばあさんにつくってもらい、犬・猿・きじを仲間にするときに渡したのがきびだんごです。
岡山は桃太郎伝説が生まれた街(※諸説あり)。岡山県内には、鬼が住んでいたとされる「鬼城山(きのじょうさん)」や「鬼の釜」などの伝説を裏づける遺産が多く残されています。岡山市の「吉備津神社(きびつじんじゃ)」には、桃太郎のモデルである「吉備津彦命(きびつひこのみこと)」が祀られています。
串吉備団子2箱セット(プレーン・きなこ・白桃・マスカット)
前置きが長くなりましたが、「串吉備団子」は、岡山市にある「つるの玉子本舗 下山松壽軒(しもやましょうじゅけん)」から販売されているきびだんごです。見てのとおり、とっても可愛いです。
レトロなイメージが強いきびだんごとは少しかけ離れているような。けれど、よく見ると“きびだんご要素”がたくさん詰まっている。そんなパッケージが素敵です。
外箱の包みを一枚開けると、鬼退治仲間の犬・猿・きじのイラストが。桃太郎のお話の紹介や、つくり手の想いがわかるメッセージが記されています。
包みをもう一枚めくると、小箱が2つ。細部までデザインが施されていて、串吉備団子にたどり着くまでに何度も手を止めてしまいます。
箱の紹介はこちらで最後です! 外箱から小箱を取り出してそれぞれを開けると、これまた可愛いです。読み物として楽しめるリーフレットも入っています。
小箱のなかの串吉備団子は個包装されていて、一箱に2種類4串ずつの8串入り。2箱合わせると、プレーン・きなこ・白桃・マスカットの4種類すべての味を楽しめる
串吉備団子のパッケージデザインは、人気イラストレーターの大神慶子さんが担当。新パッケージとして、2018年から販売されています。下山松壽軒の下山さんにリニューアルのきっかけを伺うと、こんな風に話してくださいました。
「岡山名物として有名なきびだんごですが、そのイメージがややもすると固定化されているような気がしていました。そこで、これまでにない感覚のパッケージデザインを検討しているときに、大神慶子さんの作風に出会い、魅せられた次第です」。
02| 串にささった「THE おだんご」な形が可愛い
左から、マスカット・白桃・プレーン・きなこ
串吉備団子は、きびだんごが3つずつ串に刺さっています。フレーバーは4種類。すっきりとした味わいの「プレーン」は、伝統の技でつくり続けられています。「きなこ」には、岡山県産のきなこが使われており、香ばしさを楽しめます。
そして、果物の風味を感じられる「白桃」と「マスカット」。岡山生まれの清水白桃と、岡山の特産品であるマスカット・オブ・アレキサンドリアのピューレが使われています。
一粒の直径は約1.7cm。一口サイズのちょうどいい大きさです。
子どもが持つと、とてもしっくりくるサイズ感
串吉備団子は、4種類それぞれに岡山の要素が入っています。どれもやさしい味わいながらも、それぞれに違ったおいしさを感じることができました。
03| 素材のよさを引き出すことに専念
串きなこ吉備団子
下山松壽軒の創業は明治20年。きびだんごは、100年以上も変わらぬ製法でつくられています。
歴代の職人たちによって大事に受け継がれた勘と技を基本とし、柔らかい食感に仕上げているのだそうです。なかでも一番のこだわりは、原材料を厳選すること。
「こだわりは、高品質の原材料を選び抜くという点に尽きます。原価を落とすために、安い原材料に変えるということは一切行いません。その一環として、安易な合成着色料や人工甘味料などは使っておりません。
派手さはありませんが『素材のよさを引き出すことに専念したきびだんごづくり』がモットーです」。
下山松壽軒のきびだんごは、小麦粉が使われていないのも特徴です。使われているのは、国産のもち粉ともちきび粉。鮮度にこだわり、昔ながらの「胴つき製粉」が採用されています。
04| 「創造すること」を大事に、銘菓や創作菓子を手掛ける
お店の外観
画像提供:株式会社 つるの玉子本舗
下山松壽軒は、岡山銘菓の「つるの玉子」を生み出したお店でもあります。つるの玉子は、明治時代に一世を風靡し、今でも愛され続けているロングセラーのマシュマロ饅頭。明治時代に外国人からマシュマロの製法を学んだ創業者が、技法を和菓子に生かしてつくったお菓子です。
2017年には、新たなマシュマロ和菓子ブランド「つるたま」がスタートしました。下山松壽軒が大事にしているのは、「創造すること」。初代の精神や職人たちの魂を受け継ぎながら、お菓子づくりに向き合っています。
昔の店舗外観。岡山駅前の桃太郎大通りにお店を構えている
画像提供:株式会社 つるの玉子本舗
最後に、地域に根差してお菓子づくりを続ける同店に、岡山の魅力を伺いました。
「岡山の魅力は、温暖な気候や過ごしやすさです。風水害や地震などの天災が少ないエリアといわれています。古くから米どころとして知られ、備前米や日本酒が高く評価されています。
また、果物が豊富なことから、近年はフルーツ王国と呼ばれています。とくに白桃は岡山がルーツです。明治32年に、園芸家の大久保重五郎によって岡山で発見された品種です」。
よく見ると、個包装の袋には鬼の姿が。細かなところにも、ももたろうの世界観が表現されている
岡山の「串吉備団子」、ごちそうさまでした。
つるの玉子本舗 下山松壽軒(しもやましょうじゅけん)
所在地:岡山県岡山市北区平和町2-1
TEL:086-222-2357
営業:月〜金 9:00〜18:00、土 9:00〜16:00、日曜休
https://shop.tsurunotamago.jp/
※オンラインショップでも購入可能。
この記事を書いた人
吉田友希 ライター