「街の人から活力をもらって過ごした福岡には、俳優としての原点がある」俳優・吉原光夫さんインタビュー Vol.1

「海や山や温泉が近くて、気分転換しやすい街です」

天神中洲の那珂川の風景

――舞台を中心に活動されていると、地方公演もあるかと思いますが、これまでに行った場所で印象的な街はありますか？

僕は劇団四季にいたのですが、所属していたときは東京以外に大阪、名古屋、福岡に常設劇場があったんです。それで、地方公演となるとロングランが多くて1年くらい現地にある寮のような場所に住んで公演することになるんです。引っ越した感じですね。僕は大阪や名古屋公演にあまり縁がなくて、一番思い出が多いのが福岡なんです。今でも昔住んでいた街のような感覚がありますね。

福岡には「ライオンキング」の公演で行ったのが最初です。それまでも久留米市などで公演することはありましたが、常設劇場ではないので短期間だったんです。なので、長期間、福岡に住むのがそのときは初めてで。まだ20代前半とかで、飛行機に乗って地方に行くっていうことにすごくワクワクしていましたね。飛行機のチケットを握りしめて、就航時間よりもものすごく早く空港で待っていたのを覚えています。

志賀島から望む博多湾

――初めて見た福岡はどのような印象でしたか？

海にも山にも、温泉地にも近くて、いろんなところにふら～っと行けちゃう街だなって。月曜日が休演日でそれ以外は基本的に部屋と劇場の往復。福岡にいるのに、九州のほかの場所にはなかなか旅行できないんです。なので、休演日に何人かでお金を出しあってレンタカーを手配して出かけていました。ちょっと離れた海を見に行って、海の近くの温泉に入って、お酒を飲んだりしていましたね。

舞台の本番ってすごく楽しみでもあるんですけど、不安や緊張もあって、毎日公演をすると疲れ切ってしまうんです。癒しというかリフレッシュできる場所が、休演日にパッと行ける場所にあるのはよかったです。しっかり気分転換ができて、ここに住み続けたいなって思うくらいには助かりましたね。

――吉原さんにとって、リフレッシュしやすい街だったんですね。海や温泉以外に思い出に残っている場所はありますか？

川端商店街は、今でもよく行く場所のひとつです。当時はキャナルシティ博多に劇場があったので、いわゆる通勤経路として川端商店街を通っていたんです。僕が劇場に入るのが9時とか10時だったんで、商店街のお店もシャッターを開け始めて、開店の準備を始めていて、一緒に毎日の始まりを感じていました。帰りには時間があれば商店街でご飯を食べたりして、だんだんと仲よくなったお店も増えて、劇場に向かうときに「行ってきます」とか、向こうから「今日は、何回公演？」なんて聞いてくれたりもして、そんな何気ない触れ合いが毎日の活力になっていましたね。

川端商店街で火事が起こったことがあって、ひいきにしていたお店も燃えてしまったし、劇場に通うにも火事の現場を通らなければいけなかったりで、すごく心が痛みました。でも、ひいきのお店が別の場所で営業再開したと聞いたので、買い物に行ったりして、商店街の人たちの温かさとか元気さに救われましたね。

吉原さんがよく通っていた川端商店街

――福岡は、吉原さんにとってどのような街ですか？

東京から一番離れている常設劇場ということで、羽を伸ばせるなという思いはありましたね。しかも、当時は八王子の実家に住んでいたので、自分はお金を出さずに少しいいマンションで一人暮らしができるとあって、ちょっとステータスが上がった気分になっていましたね（笑）。

東京公演だと通勤に時間がかかっていたりしていたんですが、福岡公演だと、劇場まですぐなうえに、基本的に劇場と寮との往復だったんで、演劇としっかり向き合えた時間でもありました。自分が苦しかったときとか、転換点みたいなタイミングはだいたい福岡にいたこともあって、いつ訪れても自分の原点を思い出す街ですね。今でも公演で訪れたら顔を出すお店もありますし、プライベートでもよく友達に会いに行ったりしています。

東京から飛行機で約2時間、新幹線だと約5時間。政令指定都市に指定され、九州でも随一の街としても知られる福岡市。福岡空港から市内中心地までのアクセスもよく、国内の観光客だけでなく“アジアの玄関口”としても人気を集めています。

転勤したい街ランキングなどの常連として知られる福岡。理由のひとつに、中州で遊ぶ楽しさがあげられる

歴史的に、大陸との窓口となり、交流の拠点として栄えてきた福岡市。現在では、西日本では大阪市に次ぐ150万人という人口を誇り、九州の行政や経済、交通の重要拠点となっています。また市内には、キャナルシティ博多やKITTE博多などの大型商業施設や、水族館のマリンワールド海の中道といった遊べるスポットなども充実しており、街としての満足度も高いです。

そして、注目を集めるのが“食”。博多（長浜）ラーメンをはじめとした屋台グルメはもちろん、天神中洲の那珂川には、日本におけるうどん・そばの発祥の地という石碑があり、うどんも有名です。ほかにも、玄界灘で採れた新鮮な魚介など、福岡グルメは人気を集めています。

また、770年以上の伝統を誇る「博多祇園山笠」や、例年5月3・4日に開催され多くの人でにぎわう「博多どんたく」といった全国的に知られるお祭りだけでなく、音楽イベントなども盛んで、イベント目当てに集まる観光客も多いです。

観光のイメージが大きい福岡市ですが、住む場所と働く場所が近く、周辺には娯楽施設などもあり、いろいろなスポットがコンパクトにまとまっていることから、便利な住環境になっています。また、都市は大きな公園が多く、市街地は山並みに囲まれていることから、緑も多く、住みやすい都市としても人気が高いです。