公開日: 2023.04.19 最終更新日: 2023.10.26

「最近、戯曲を書いたり、演劇そのものが楽しいんです」岩松了さんインタビュー Vol.2

「最近、戯曲を書いたり、演劇そのものが楽しいんです」岩松了さんインタビュー Vol.2

取材・文/小松孝裕(エンターバンク)、撮影/山下陽子

テレビドラマや映画、舞台などで俳優として活動するほか、劇作家や演出家としても幅広く活動する岩松了さん。作・演出を行い、役者として出演する舞台『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』に出演する俳優たちについて、舞台を銀座にした理由、そして演劇への思いについてお聞きしました。

編集:エンターバンク

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01| 5年くらい前から、戯曲の執筆や演劇そのものが楽しくなってきた

――コロナ禍でもコンスタントに作品をつくられていましたが、作品を作るモチベーションに変化はありましたか?

長い間、戯曲などを書いていますけど、その時そのときで演劇をやろうというモチベーションは変わってきていると思います。でも、最近、ようやっと芝居というものが分かってきたような気がするんですね。以前は “自分が、自分が”と思っていたのですが、一歩引いてみた時に自分だけが社会的にやっているわけじゃないと思えたことが大きいと思います。かつては、作品のアイデアなどは本当に自分の中からしか出てこないような印象を持っていたものが、いろいろなことが自分の中に一回入ってきて、アイデアとして生み出されると考えられた時に楽になったんです。それで、4、5年前くらいから、戯曲を書いたり、演劇そのものが楽しいなと。それでも、書くことは苦しいんですけどね(笑)。

――岩松さんの中で、心境が変化するきっかけはあったのでしょうか?

2019年に上演した『空ばかり見ていた』がそうかもしれないです。美術の打合せをしているときに、すごく楽しかったんです。打合せをしていることが。美術を作るということは本を書くことと連動しているけれど、一緒に作っているっていう感覚というか、この人が何かを自分に与えてくれそうだという感覚を持ったことがきっかけかもしれません。それに、自分の中で、違う領域を引っ張り出すような感覚があって、新鮮さもありましたね。

02| 主人公の女の子のイメージが、黒島結菜さんに重なった

――今作は、黒島結菜さんや井之脇海さんをはじめ、若手実力派俳優が揃っていますね

主人公は、若くて可愛いのに理屈ばっかり言う女の子。『少女ミウ』で過去に共演していて、主人公の女の子のイメージが黒島結菜さんに重なるものがあったので、まず黒島さんに声をかけさせてもらいました。黒島さんの相手役を考えた時に、プロデューサーと話していて、井之脇海くんがいいんじゃないかとなって、お願いしたんです。

櫻井健人くんはオーディションで選んだんですが、その時に、何か感じるものがあって、起用することにしました。青木柚くんは、実は彼もオーディションを受けるはずたったのですが、当日体調を崩してこられなかったんです。でも、以前にNHKのドラマに出ていたのをたまたま見ていて、顔つきがよかったのが印象に残っていたんです。ドラマで演技がよくても、舞台には合わなかったりすることもあるのですが、その時のたたずまいや表情が今回の舞台に合いそうだなと思って、一緒にやることにしました。

――若手が多い中で、松雪泰子さんを起用された理由は?

松雪さんがいなければ、若手グループの演劇になってしまうじゃないですか。そう考えた時に、大人でしかも色気のある人が一人いたほうがいいなと思ったんです。今作での役としては兄妹にとって自分の家庭を壊したかのように見える、父親の愛人。そう考えると松雪さんがピッタリだなと思って、オファーしましたね。

03| 銀座を舞台にすればドラマチックな物語になる

――銀座を舞台にしたのはなぜでしょうか?

僕が書く作品は、基本的に抽象的な場所を舞台にした作品が多いんですけど、過去に『シブヤから遠く離れて』や『市ヶ尾の坂-伝説の虹の三兄弟』といった具体的な場所を舞台にした作品を書いたことがあります。そういう時は、いつもと違う感じを植え付けたいなという意図があるんです。

作品の舞台を銀座にしたのは、ある時「銀座は風向きによって海のにおいがする」という話を聞いたんです。銀座にそんなイメージはないですし、おかしいなと思うじゃないですか。それがすごく新鮮で。あとは、昭和のころからデートの場所といったイメージがある中で、近くには広告代理店があり、“虚”の部分が存在する。

前に、お兄さんと妹の話で『スターマン』という舞台を書いたのですが、今作は『スターマン』の続編的な作品になっていて、自分の中にある銀座の断片的なイメージを重ねていくと、作品がドラマチックになるなと思い、銀座の街を舞台に物語を展開させたいなと思いました。

――過去に書いた作品の後日談を上演するというのは珍しいですよね?

これまでまったくやらなかったわけではないですが、そこまで多くはないですね。ただ、常に新しいものを生み出していると、たまにはこういうことをやらないと疲れるので(笑)。新しい物語ではあるのですが、一回、人物像を作り上げていて、自分の中で積み重なっているものがあるので、人物の背景をもう一度捕まえているような感じで、物語を作っています。本番を楽しみにしてもらえたらうれしいです。

04| M&Oplaysプロデュース『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』INFORMATION

M&Oplaysプロデュース『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』

6月3日(土)~25日(日)
東京:本多劇場

6月28日(水)
富山:富山県民会館ホール

7月1日(土)~2日(日)
大阪:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

7月9日(日)
新潟:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場


早くに両親を亡くし、寄り添うように生きてきたアキオとイズミの兄妹。銀座の広告代理店で働く忙しい兄のために、手作りのお弁当を届けたりし、いつまでも一緒にいたいとイズミは思っている。そんななか、イズミは銀座の街で二人の若い浮浪者と遭遇。一方で、兄のアキオは、父親の愛人だった女性と出会う。そして、兄妹の家庭を崩壊させた女性に、アキオはだんだんとひかれていく。そんな人の気配が消えた年の瀬の銀座でそれぞれのドラマが交錯する。


作・演出・出演:岩松了
出演:黒島結菜、井之脇海、青木柚、櫻井健人、松雪泰子

公式サイト:https://mo-plays.com/kamomeyo/

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