公開日: 2023.02.15 最終更新日: 2023.10.26

「ミュージカルに対する違和感の橋渡しをするのが自分の役目」俳優・吉原光夫さんインタビュー Vol.2

「ミュージカルに対する違和感の橋渡しをするのが自分の役目」俳優・吉原光夫さんインタビュー Vol.2

取材・文/小松孝裕(エンターバンク)、撮影/福岡諒祠、ヘアメイク/西川直子

2007年に劇団四季を退団後、最近では朝ドラに出演するなど、舞台を中心にドラマや映画などで活躍する俳優の吉原光夫さん。今回出演するミュージカル「おとこたち」についての意気込みや、役者としての思いなどをお伺いしました。

編集:エンターバンク

編集:エンターバンク

blog

twitter

instagram

01| 出演の決定打は、演劇人として気になる岩井さんからの手紙

――劇団四季からキャリアをスタートされた吉原さんですが、テレビや映画などの映像と舞台と、心構えなどは変わるのでしょうか?

確かに舞台作品の出演は多いですが、舞台だから、テレビだから、映画だからとっいって何かを変えることはないです。今でも自分が舞台俳優に向いているかどうかは、自分自身では分かってないです。たまたま、出会う作品に舞台が多くて、そこから得たものが多かったというだけ。もし1cmでも扉が開いているなら、そこに可能性を持って飛び込んでみようかなという感じで、これまでも映像作品や声の仕事をしてきました。また、舞台にしても、映像作品にしても、与えられた役になりきって演じるということだけを考えています。まぁ、演じることが好きなんですよね。

――今回出演する「おとこたち」ですが、出演にあたって脚本・演出を担当される岩井秀人さんからお手紙をいただいたそうですね

岩井さんは、演劇人として気になっていた方だったので、その方からまさか手紙をいただけるとは思ってなかったです。自分の出演していた舞台を見ていただいた感想や、自分の次の創作に対して手を貸してもらいたいといったことがつづられていて、その手紙が決定打となって、出演を決めました。それに、今回は制作がパルコさんなのですが、パルコさんは常に面白い作品を作られているイメージがあって、いつか出たいなと思っていたので。舞台をやっている人はパルコの作品に出たいと言っている人が多いんですよ。

――吉原さんからみて岩井さんはどんな人ですか?

今回、岩井さんと初めてご一緒させてもらうのですが、人生が見えすぎちゃっている感じがします。人生に対しての視力がいいというか、ある種“病的”にいろんな人の人生が見えているような部分があるのかなと。この「おとこたち」でも、いろんな男たちの姿が描かれているんですけれども、台本を読むだけだと、どうしようもない男だったりするんです。でも、実は自分の父親だったり、なんなら自分自身もそういう部分があるんじゃないかって、見たくないもの、認めたくないものを突き付けてくる。人間のそういった部分を見せつけつつも、舞台作品に昇華させるのが岩井さんの手腕というかすごいところだと思います。ただ、役者としては、しっかりエンターテイメントとして仕上げて、観客の人に笑ってもらえるものにしなければいけないというのは難しいし、楽しい時間でもありますね。

02| 初共演のユースケさん。座長として信頼しています

――今回の作品は、個性派の役者さんが揃っています

橋本さとしさんや藤井隆さんは、過去に共演したことがありましたが、ユースケ・サンタマリアさんは、初共演なんです。今回の舞台は、ユースケさんから始まるんですけど、お客さんと繋がろうとする力とか、自然体で演じている姿が素晴らしいなと。誰でもできることじゃないことをさらっとやっていて、座長として信頼しています。

今回、僕は「鈴木」という男を演じますが、キレ出したら暴力をふるう、どうしようもないやつです。でも、鈴木という役は、今回の出演者の中では、自他共に認めるじゃないですけど、もう、まさにはまり役かなと。見た目も含めて、DVしてそうじゃないですか(笑)。もちろん、実際はしていないですけど。でも、舞台を見た人が、「吉原さんって、家でも殴ってるのかな」と思うような、ちょっと引くくらいの演技ができたら、ある意味成功なのかなって思っています

03| 音楽の力を信じている

――今作は、岩井さんが過去に上演された「おとこたち」をミュージカルにした作品です。

岩井さん自身、ミュージカルは今回が初めてということで、僕は今回、ミュージカル部門として参加しているつもりなんです。実は、岩井さんも僕も、なんで急に歌いだすんだろうとか、ミュージカルというものに違和感を持っていて。でも、ずっとミュージカルをやってきたからこそ、ミュージカルにはいい部分がたくさんあることも知っていますし、岩井さんもミュージカルの魅力をわかっている人です。

なので、いきなり歌うことを、見ている人に“ありかも”と思わせたり、セリフだと悲しくなりすぎるところを歌で表現して、マイルドに見せたりとか、ミュージカルだからこその表現の橋渡し役になるように稽古に臨んでいますし、それは僕にしかできないことだと思っています

ミュージカルに違和感はありますが、その違和感を成立させていくことは好きですし、目をつぶりたくなるようなシーンでも、歌にすることで、お客さんは目を背けないでいてもらえる。音楽の力を信じてますから。

――東京公演だけでなく、大阪や福岡公演もありますね

一時期から考えると、地方公演ができるのはうれしいことですね。とくに今作は福岡公演があるので、楽しみです。ただ、舞台作品って敷居が高いイメージがあると思うんですけど、気軽な気持ちで見に来てもらえたらうれしいなって思っています。街ブラして気軽にお店に入るような感覚で、ふらっと入って楽しんでもらえるような演劇を目指しているので、街ブラの延長で、劇場に見に来てもらえるとうれしいです。

04| ミュージカル「おとこたち」INFORMATION

おとこたち

3月12日(日)~4月2日(日)
東京:PARCO劇場

4月8日(土)~9日(日)
大阪:森ノ宮ピロティホール

4月15日(土)~16日(日)
福岡:キャナルシティ劇場

脚本・演出を担当する岩井秀人が主宰する劇団「ハイバイ」の公演として2014年に初演され、話題を集めた作品を、ミュージシャンの前野健太とのタッグでミュージカルに。愛、不倫、老い、病、死、暴力など4人の“おとこたち”の22~85歳になる間に起こった人生のさまざまな出来事をつづったストーリー。現代のおとこなら誰にでも起こりそうな重たい問題を取り上げつつも、散々だけど思わず笑ってしまう物語として描かれます。

脚本・演出:岩井秀人 音楽:前野健太
出演:ユースケ・サンタマリア、藤井隆、吉原光夫、大原櫻子、川上友里、橋本さとしほか

公式サイト:https://stage.parco.jp/program/otokotachi/

好きな街・福岡の魅力を語る
吉原光夫さんインタビュー Vol.2

好きな街・福岡の魅力を語る
吉原光夫さんインタビュー Vol.2

Tags

エンターバンク

この記事を書いた人

エンターバンク 編集

blog

twitter

instagram

インタビューの記事一覧

暮らしのコラムの最新記事

暮らしのコラムカテゴリー